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3年前の浮気は慰謝料を取れない?不倫の時効について

この記事でわかること

  • 浮気によって発生する慰謝料の種類がわかる
  • 不貞行為の慰謝料を請求することができる期限がわかる
  • 不貞行為の慰謝料を請求するのに有利なタイミングがわかる

配偶者から不倫によって裏切られたときは、精神的な苦痛を受けることとなるので慰謝料を請求することができます。

ただし、無制限に慰謝料請求ができるわけではなく、一定期間放置してしまうと、請求をする権利を失ってしまうことがあります。

ここでは、過去の慰謝料の請求や慰謝料請求の時効、慰謝料請求が有利となるタイミングなどについて説明します。

浮気で請求できる慰謝料の種類とは

配偶者が不貞行為を行ったときに請求できる慰謝料は大きく分けると2種類あります。

それぞれについて説明します。

不貞慰謝料

不貞慰謝料は、不貞行為が行われたことにより発生した精神的苦痛に対して支払うべきものです。

この不貞慰謝料は、配偶者に対する請求と、不貞相手に対する請求が可能です。

配偶者に対する不貞慰謝料

配偶者に対する不貞慰謝料の根拠は、夫婦の義務である「貞操義務」を犯すという不法行為に対しての損害賠償請求権です。

民法上の解釈により、夫婦には貞操義務があり、配偶者以外の相手と性行為を行うことは認められません。

この義務を破ることは不法行為となり、損害賠償義務が発生します。

損害賠償義務とは、不法行為によって発生した損害を埋め合わせる義務のことです。

不貞行為の場合、配偶者に不倫されたことにより精神的にダメージを受けたり、平穏な家庭生活を壊されたりしたという損害が発生します。

この損害を償わせるために、慰謝料を請求する権利が認められるのです。

不貞相手に対する不貞慰謝料

不貞相手に対する慰謝料請求の根拠も、不法行為に基づく損害賠償請求権です。

相手が貞操義務のある既婚者であることを知りながら不貞行為を行ったことにより、不貞相手の配偶者に精神的苦痛を与えたり、平穏な夫婦関係を壊したりするなどの損害を与えたと考えられます。

不貞相手に独身だと偽られていたなどの事情により、既婚者だという事実を知らなかった場合には、慰謝料の支払い義務はありません

また、不貞行為が行われたときに、すでに夫婦関係が破たんしていた場合には、配偶者に精神的苦痛を与えたり夫婦関係を破壊したりといった損害が発生したとは考えられないため、慰謝料請求は認められません。

離婚慰謝料

離婚慰謝料は、不貞行為が原因で離婚せざるを得なくなったことに対する慰謝料です。

離婚慰謝料の根拠も、不法行為に基づく損害賠償請求権ですが、損害の内容が不貞慰謝料とは異なります。

離婚慰謝料の場合、不貞行為によって精神的苦痛を受けたことに加えて、離婚する結果になったことに対する精神的苦痛もあります。

離婚は身分関係や生活全般の変更をもたらす重大な結果で、人生に大きな影響を与えます。

このため、離婚慰謝料は不貞慰謝料よりも損害が大きいと考えられ、慰謝料の金額も不貞慰謝料よりも高額となるケースが多くなります。

夫(妻)への慰謝料請求は離婚後3年以内

配偶者に対して、不貞行為に対する慰謝料はいつまで請求することができるのでしょうか。

基本的に、配偶者が不貞行為をしていた事実と不貞相手のことを知ってから3年以内に請求する必要があります。

なお、不貞相手の顔だけわかっていて、名前や住所がわかっていない場合には、相手を特定できないので不貞相手のことを知ったということにはなりません。

3年が過ぎてしまうと、消滅時効によって慰謝料請求の権利が失われてしまいます。

消滅時効というのは、一定期間行使されないままになった権利を消滅させる制度です。

一定期間が過ぎた後、権利の消滅によってメリットを受ける人が時効を援用(時効の成立を主張)することで、権利が消滅します。

なお、3年が過ぎた場合でも、相手が時効の成立を主張しなければ、請求すること自体は問題ありません。

時効の援用(時効の成立を主張)をするかどうかは債務者(慰謝料を請求された側)が判断することなので、時効を援用される可能性を理解したうえで請求することは自由です。

相手が任意で支払う意思を見せてくれる可能性もあるでしょう。

ただし、あくまでも相手が任意で応じてくれる場合に支払ってもらうことができるものなので、相手が時効を主張した場合にしつこく請求すると、方法などによっては強要罪などの犯罪になる可能性もあるので気を付けましょう。

離婚慰謝料の場合は、離婚から3年

不貞行為が原因で離婚することになった場合の離婚慰謝料については、離婚した時から消滅時効のカウントが始まります。

離婚から3年以内であれば離婚慰謝料の請求ができるので、慰謝料請求をしないまま離婚してしまった場合でも、証拠がある場合には後から請求できる可能性があります。

ただし、離婚慰謝料が請求できるのは、不貞行為が離婚原因となった場合です。

たとえば、性格の不一致などを理由に離婚した後に、実は元配偶者が不貞行為をしていたことが判明した場合でも、不貞行為が離婚原因となったわけではありませんので慰謝料を請求することは困難です。

時々あるのが、不貞行為のことを隠して性格の不一致などを理由に相手から離婚を申し入れられて、慰謝料なしで離婚してしまうパターンです。

心当たりがないのに、唐突に配偶者から離婚を申し入れられた場合には、相手が不貞行為をしている可能性も頭の片隅に入れておいた方がよいでしょう。

10年前の不倫で慰謝料請求は可能?

※離婚の原因として認められ請求出来た実例があると◎←すみませんが見つかりませんでした。

過去の不貞行為に対して慰謝料請求することはできるのでしょうか。

不貞行為から3年を超える期間が過ぎていても、離婚から3年以内であれば配偶者に対する離婚慰謝料の請求をすることができる可能性はあります。

ただし、離婚慰謝料が請求するには、不貞行為が離婚原因となったことの証明が必要です。

不貞行為から10年も経っている場合、すでにこの不貞の問題については決着済みであり、離婚の原因は別にあるだろうと考えることが一般的です。

10年前の不貞が原因の離婚であることを証明するのはとても難しく、理論上は慰謝料請求が可能でも、現実的には非常に困難と言えます。

ただし、昔の不貞だからとはじめから諦めてしまう必要はありません。

不貞行為が判明してから長い時間が経ってから離婚する場合でも、慰謝料を請求が認められる可能性はあるので、弁護士に相談することをおすすめします。

どのような状況で、どういった証拠があれば請求できる可能性があるのか、どれくらいの慰謝料が認められる見込みがあるかなどを経験に基づきアドバイスしてもらうことができるでしょう。

浮気の完全な時効は20年

不貞行為の慰謝料には3年の消滅時効がありますが、これを止めることはできないのでしょうか。

時効には「中断」させる方法があり、時効を中断させれば時効の進行がストップして、またゼロから3年の期間満了までのカウントが始まります。

たとえば、慰謝料の時効のカウントが始まって2年経った時に時効を中断させた場合、そこからさらに3年を経過、つまり当初の時効のカウント開始から5年経過しないと時効が成立しないのです。

時効の中断の方法

時効を中断させる方法はいくつかあります。

それぞれについて説明します。

債務の承認

債務の承認とは、債務者本人が債務の存在を認めることです。

不貞慰謝料の場合、不貞をした本人が不貞慰謝料の支払い義務があることを認めることが債務の承認となり、時効が中断します。

債務の承認は、決まった方式で行わなければいけないものではありません。

ただし、債務を認めることを口頭で発言しただけでは、後日争いになった場合に証明することが難しくなります。

そのため、文書で債務の承認をさせることが大切です。

文書には、「不貞行為の慰謝料を支払います」といった内容を書いてもらい、日付を記入させ、署名捺印させましょう。

できるだけ実印を押印させると証拠能力が高くなります。

裁判上の請求

裁判を起こして慰謝料請求を行うことで、時効は中断します。

裁判を起こした時点で時効は中断するので、訴訟期間中に時効の期間が経過しても時効の完成となりません。

裁判の結果、判決で慰謝料請求が認められた場合には、判決の確定から10年間金銭の支払い請求権は消滅しません

たとえば、判決で300万円の慰謝料支払い請求が認められた場合には、300万円の金銭債権の存在が確定し、この金銭債権の時効は10年となるのです。

なお、裁判を起こした場合でも、後に裁判を取り下げてしまうと時効は中断しないので注意が必要です。

裁判を起こす時間的余裕がない場合

時効中断のために裁判を起こそうとしても、そのためには準備が必要で、思い立ったらすぐに訴訟を起こせるわけではありません。

準備期間中に時効が完成してしまいそうな場合には、「催告」をすることで時効完成までの時間稼ぎをすることができます

催告とは、相手に対して内容証明郵便によって慰謝料請求をすることです。

これにより、時効の完成を6か月間遅らせることができます。

この6か月の間に訴訟を提起すれば、時効を中断させることができます。

財産の仮差押えや仮処分

相手の財産の仮差押えや仮処分、差し押さえをすると時効を中断させることができます。

裁判をする前に、相手が財産隠しをすることを防ぐ目的で仮差押えをするという選択肢があります。

ただし、そのためには相手の財産を特定する必要があります。

たとえば銀行口座を差し押さえる場合には、金融機関名と支店名までわかっている必要があります。

それがわからない場合には、弁護士に依頼して弁護士照会制度などを検討する必要があります。

除斥期間は20年

時効とは別に、除斥期間というものもあります。

除斥期間というのは、法律で定められたその権利が存続する期間のことで、権利を行使しないままその期間が経過すると、権利が消滅します。

不貞行為の慰謝料の除斥期間は20年です。

除斥期間のカウントが始まるのは、不貞行為があったときです。

不貞行為があったときから20年を経過した場合には、たとえ離婚から3年経っていない場合でも慰謝料請求の権利は消滅してしまいます。

時効の中断を繰り返し行った場合でも、20年経てば請求する権利は消滅します。

時効とは異なり、除斥期間には、中断させる方法はありません。

そのため、不貞行為に対する慰謝料は、不貞の時から最長でも20年経てば完全に請求する権利が失われることとなります。

浮気相手への慰謝料請求は3年以内に

配偶者だけではなく、不貞相手にも不貞慰謝料を請求することができます。

不貞相手に対しては、不貞の事実と不貞相手を知ってから3年以内に慰謝料請求をする必要があります。

不貞相手に対しても離婚慰謝料が請求できるのかについて、2019年の最高裁判決で、「特段の事情がない限り」基本的に請求は認められないという最高裁判決が出ています。

離婚というのはあくまでも夫婦が決めることであり、離婚という結果についてまで不貞相手が責任を負うものとはされないという判断がされるようです。

不貞相手に対して請求できるのは、あくまでも不貞慰謝料だと考えておきましょう。

一番慰謝料を請求できるタイミングとは

不貞行為に対する慰謝料を請求する場合、どのタイミングで請求すると有利になるのでしょうか。

不貞行為の慰謝料は、離婚の原因として認められる場合には高額になる傾向があります。

不貞行為による精神的苦痛という損害だけでなく、離婚という人生に大きな影響を与える結果になってしまったことに対する損害が重く評価されるからです。

そのため、離婚請求と同時に慰謝料請求をするのが最も有利になる可能性が高いでしょう。

過去の不貞について、離婚時に慰謝料請求ができないわけではありませんが、たとえば5年前に不貞行為があったものの一度は修復を目指して生活しており、その後夫婦関係の修復がうまくいかずに離婚することになった場合、5年前の不貞行為が直接的な離婚原因となったと評価されるとは限りません。

不貞行為が判明して離婚を決心したのであれば、不貞行為がわかってから1~2年以内には離婚請求と慰謝料請求をする方がよいでしょう。

不貞行為が判明してから3年以上経ってから離婚する場合には、離婚と不貞行為の因果関係を証明することが難しくなり、慰謝料請求が認められなかったり、少額しか認められなかったりする可能性があります。

まとめ

不貞行為に対する慰謝料請求は、事案によって請求できる期間が異なります。

請求できる残存期間や証拠の内容、相手のタイプなどに応じて、どのような方法で請求すべきかどうかも変わってきます。

自分一人で対応することに少しでも不安があれば、弁護士へ相談することをおすすめします。

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