この記事でわかること
- 離婚訴訟が必要となる場合や認められる理由がわかる
- 離婚訴訟と離婚協議のメリットデメリットがわかる
- 離婚訴訟にかかる弁護士費用がわかる
- 離婚調停で後悔するケースがわかる
離婚の協議が成立せず、調停も不成立となった場合には、離婚訴訟に進むことになります。
訴訟は大変なイメージがありますが、事前にどのようなものか理解しておくことが大切です。
ここでは、訴訟が必要になるケースや訴訟の流れ、メリットデメリットなどについて説明します。
離婚訴訟が必要となる場合・認められる理由
離婚する場合には、まずは当事者同士で話し合いをするのが基本です。
話し合いで離婚に合意できれば、離婚が成立します。
話し合いで合意ができない場合には、家庭裁判所に離婚調停の申し立てを行います。
離婚調停では
- ・離婚するかどうか
- ・離婚する場合の条件(財産分与、慰謝料、養育費など)をどうするか
について、調停委員を介して話し合うことができます。
離婚調停は裁判所で行うものの、あくまで当事者同士の意見を調整する場なので、当事者同士の意見が一致しなければ、調停不成立となります。
調停が不成立となった場合には、離婚訴訟を起こすことになります。
離婚調停を経た後でなければ、基本的に離婚訴訟をすることはできません。
裁判で離婚できる法定離婚事由とは
裁判で離婚するためには、民法で定められている離婚できる理由に該当することが必要で、これを法定離婚事由といいます。
法定離婚事由は、以下の5つがあります。
配偶者が不貞行為をした場合
配偶者が不貞行為を行った場合には、離婚を請求できます。
不貞行為は、肉体関係を持ったという事実が必要で、離婚が認められるためには、ある程度の期間にわたり複数回行われたことが必要な場合が多いので、注意が必要です。
配偶者から悪意で遺棄された場合
悪意で遺棄されたというのは、夫婦の義務である同居、協力、扶助の義務を配偶者が果たさない場合のことです。
一般的に、生活費を払わなかったり、一方的に別居することなどが考えられます。
配偶者の生死が3年以上不明の場合
配偶者が消息不明となって3年経過したような場合には、離婚請求ができます。
ただし、警察への捜索願を出しているなど、生死不明であることの客観的な証拠が必要です。
配偶者が強度の精神病にかかって回復の見込みがない場合
配偶者が精神病になって回復する見込みがない場合には、離婚請求ができます。
ただし、回復の見込みがないのか、夫婦での協力義務を果たせない状態なのかなど、総合的に判断されることになります。
その他婚姻を継続しがたい重大な事由がある場合
上記4つに該当しなくても、夫婦関係を続けることができない重大な理由があれば離婚請求ができます。
具体的には、DVやモラハラ、長期の別居生活で夫婦関係が破たんしている、ギャンブルで借金を繰り返すなどといったことが考えられます。
離婚訴訟と協議離婚・それぞれのメリットとデメリット
離婚訴訟と協議離婚では、それぞれどのようなメリットデメリットがあるでしょうか。
離婚訴訟のメリット
離婚訴訟のメリットは、訴訟の結果には強制力があるため、相手が納得していなくてもそれに従うしかないところです。
訴訟の結果、裁判所が離婚を認める判決を出せば離婚は成立します。
結果には法的な拘束力があるので、養育費や慰謝料等の支払いに関しても相手は従わなければなりません。
相手が判決の結果に従わなければ、法的な措置をとることができます。
離婚訴訟のデメリット
離婚訴訟のデメリットは、主に2つあります。
金銭的負担が大きくなり、時間もかかる
裁判になると自分一人で行うことは困難なため、ほとんどの場合弁護士に依頼することになります。
そうすると、弁護士費用がかかるため、金銭的な負担が大きくなります。
また、裁判には時間がかかり、1年以上かかるケースも珍しくありません。
早期に離婚したい人にとって、時間やお金がかかるのはストレスになるでしょう。
時間やお金をかけても必ず離婚が成立するわけではないことも、精神的に大きな負担となります。
裁判は基本的に公開される
裁判は調停とは異なり、公平性を保つために公開されることが原則で、だれでも傍聴することができます。
そのため、プライバシーが外部に漏れてしまう可能性もあるというデメリットがあります。
実際の裁判では、証拠の提出や主張の方法は、文書で事前に提出する形をとります。
そのため、口頭弁論期日に提出した文書を読み上げることもなく、細かい内容が傍聴人に知られる可能性はほとんどありません。
尋問以外の証拠などについては、閲覧手続きをしなければ見ることはできません。
とはいえ、一部であっても自分たちのプライベートな争いを知られる可能性がある点は、デメリットになるでしょう。
協議離婚のメリット
協議離婚のメリットは、当事者同士の話し合いがうまくいけば時間やお金がかからない点です。
離婚を望む場合、できるだけ速やかに無駄なお金をかけずに手続きを済ませたいと思うのが通常なので、まずは協議離婚を目指すとよいでしょう。
協議離婚のデメリット
協議離婚のデメリットは、知識がないまま離婚してしまうと、自分にとって不利な条件で離婚してしまう可能性があることです。
また、口約束の場合には、相手がその約束を守らないというリスクがあります。
協議離婚の場合でも、合意内容は公正証書を作成して取り決めることをおすすめします。
離婚訴訟の流れ
離婚訴訟の流れは、基本的に以下のようになります。
管轄の家庭裁判所に訴えを提起
↓
第一回口頭弁論期日が指定される
↓
被告(配偶者側)が、反論などが書かれた答弁書を提出
↓
口頭弁論期日において、当事者双方が主張・立証
↓
(裁判所から和解の提示がなされる場合も)
↓
当事者双方が和解案に合意すれば、和解による離婚が成立
※和解案には慰謝料等の条件についても盛り込まれる
↓
離婚を認める判決が確定した場合、離婚届と確定証明書付きの判決謄本を市区町村役場に提出
第一回の口頭弁論で和解成立または裁判所からの結論が出ない場合は、第二回目以降の口頭弁論期日が続いていきます。
和解が成立しない場合、裁判所が離婚の可否や離婚条件を判断し、離婚を認める判決が出れば離婚が成立します。
判決に不服がある場合、当事者は判決書の送達を受けた日から2週間以内に控訴を提起します。
離婚訴訟にかかる費用・弁護士費用
離婚訴訟を弁護士に依頼する場合、どのくらい費用が掛かるのか心配という方も多いのではないでしょうか。
報酬基準は弁護士によって異なりますが、目安について紹介します。
離婚訴訟の弁護士費用
弁護士費用は、基本的に相談料、着手金、成功報酬、実費が発生します。
相談料
まずは相談をすることになりますが、その時に発生する費用です。
1時間あたり1万円が相場となりますが、手続きを依頼する場合には相談料が不要となる事務所もあります。
着手金
正式に弁護士に手続きを依頼する際、手続きに着手してもらうために最初に支払う費用です。
着手金の目安としては、20~50万円程度となります。
離婚の成立以外に慰謝料や財産分与、親権など争う内容が多いかどうかなどによっても金額が変動する可能性があります。
成功報酬
裁判の結果、無事離婚が成立した場合に支払う報酬です。
解決までにかかった期間や案件の困難度によっても変動しますが、30~60万円程度が目安となります。
また、慰謝料や財産分与を獲得した場合には、獲得した慰謝料や財産分与の1~2割が成功報酬として発生するケースが多いでしょう。
実費
裁判の申し立て費用や、弁護士の交通費などといった実費がかかります。
弁護士に依頼するメリット
離婚訴訟では、法律上の離婚理由があることを主張、立証することができなければ離婚は認められません。
裁判での主張、立証には法的な知識や技術が必要となり、調停とは異なり自力で対応するのは非常に困難です。
弁護士は訴訟のプロなので、どのような証拠を提出してどのような主張をすれば有効なのかといったノウハウを有しており、依頼することで有利な結果となる可能性が高くなります。
そのため、裁判に進む可能性がある場合には、はじめから弁護士に依頼する方がよいでしょう。
離婚裁判の判決までの期間
離婚裁判は、判決が出るまでに短くても1年程度はかかるのが一般的です。
争点が多い場合には、さらに時間がかかる場合もあります。
そのため、裁判をした場合でも、裁判所は早期に解決するために和解を提案することが一般的です。
双方が裁判所の提案する和解案に合意すれば、判決によらずに和解による離婚が成立します。
当事者の一方がどうしても離婚に応じない場合などは、判決まで進むこととなり、年単位の時間がかかってしまいます。
離婚調停は後悔が多い理由
離婚裁判の前段階である離婚調停によって離婚した場合に、後悔するケースもあります。
その理由としては、以下のようなものがあります。
調停委員は法律家ではない
調停は、調停委員2名と裁判官1名で調停委員会を構成して行われますが、裁判官はほとんど介入せず、調停委員が主導して行います。
調停委員は法律家ではない一般の市民から選ばれた人がほとんどです。
そのため、調停委員は法的な観点ではなく、自分たちの知見や人生経験などをもとに助言などをするケースが多く、必ずしも法的に公平な観点に立ってくれるとは限りません。
そのため、法的に妥当とはいえない結論に誘導される可能性もあります。
合意内容が調書に記載されていない場合がある
調停は法律家ではない調停委員が主導して行うこともあり、調停調書に合意内容がきちんと記載されていないケースが時々あるようです。
調停調書を作成するのは裁判官ですが、調停委員から合意内容が正確に伝わっていない場合もあるようです。
調停の手続きを弁護士に依頼している場合は、弁護士が調停調書の内容を確認してくれます。
一方、自分で調停を行った場合には、調停調書の内容はわかりにくく、内容の誤りに気付かない可能性もあります。
調停の合意内容は裁判と同じだけの効力があるため、調停調書に誤りや記載不足があるととても厄介です。
まとめ
離婚訴訟は時間やお金がかかるので、できればやらずに済むのが望ましいでしょう。
離婚の話し合いがうまくいかない場合でも、早期に弁護士のアドバイスを受けるなどすることで、訴訟までいかずに交渉がうまくいく場合もあります。
相手の態度がかたくなな場合には、深刻な状況になる前に弁護士への相談を検討するとよいでしょう。