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再婚したら養育費はどうなる?複雑な算定方法を徹底解説

この記事でわかること

  • 養育費が何か理解できる
  • 再婚後に養育費が変化するケースがわかる
  • 再婚後の養育費の計算方法がわかる

子供の養育のためのお金である「養育費」は、離婚時に夫婦の協議などで決められます。

養育費は離婚時の状況や事情によって決められるため、離婚後の事情によっては額が妥当ではなくなる可能性があるのです。

たとえば、離婚後に再婚したらどうでしょう。

再婚によって家計の状況が変化するため、養育費の額や支払い状況が現実とずれてしまう可能性があります。

離婚後の「再婚」という事情変更によって養育費は変化するのでしょうか。

変化するケースやしないケース、再婚後の養育費の計算方法などを解説します。

そもそも養育費って?

再婚による養育費の変化について説明する前に、まずは「養育費とは何か」という基本的なポイントについて確認しておきましょう。

基本知識は再婚後の養育費を考える上でも役に立つはずです。

養育費とは「子供を養育するためのお金」になります。

婚姻中の夫婦は共同で親権を行うことが民法に定められています。

親権とは子供を養い育てる義務であり権利です。

婚姻中の夫婦は子供を養い育てる義務と権利を共同で背負い、分担することになります。

父親である夫と母親である妻が協力して子育てするということです。

しかし、離婚すると親権を夫婦共同で行うことができなくなります。

離婚によって夫婦関係が切れてしまうからです。

離婚すると夫婦は別々の道を歩み、家計という名の財布も別々になります。

夫婦という関係が切れても、子供の父親と母親であるという関係は変わりません。

離婚はあくまで夫婦関係を切るための手続きです。

子供との親子関係を切る手続きではありませんから、離婚しても依然として父と子、母と子という関係は続きます。

離婚後も子供を育て養う義務があるのです。

ただ、離婚後は夫と妻が共同で子育てできませんから、「親権」と「養育費の支払い」というかたちで子供の養育の義務と権利を負います。

離婚する夫婦の片方が親権というかたちで子供を養育し、子供を引き取らなかった側が養育費というかたちで子供の養育の費用を支払うのです。

養育費は子供の養育のためのお金ですから、もらう権利があるのはあくまで子供になります。

慰謝料や財産分与とは「子供のため」という点で性質が異なるのです。

また、親が養育費の権利を放棄しても、子供のためのお金という性質上、子供が請求できる可能性があります。

養育費の額は夫婦で自由に決めることが可能です。

基本的に離婚時に収入や個別の事情、裁判所の公開している算定表などを参考に金額を決めることになります。

養育費の支払い義務と法的拘束力

養育費は子供の生活を保持し、養うためのお金です。

そのため「払わなければそれでいい」という気楽なものではありません。

子供の生活を保持するために「払わなければいけない」という義務があるのです。

養育費の取り決めは、口約束でも有効です。

ただし、口約束だけの場合は即座に強制執行などの手段が取れるわけではありません。

養育費についての取り決めを私的な文書にまとめた場合も同じです。

このようなケースでは裁判所に申し立て、養育費の支払い額や支払方法について定めた上であらためて養育費の支払い義務が課されることになります。

裁判所の判決や調停調書に反して支払いが行われなかった場合は強制執行が可能です。

養育費の支払い義務について公正証書でまとめた場合で公正証書中に構成執行受諾文言があれば、養育費の未払いや滞納について即座に強制執行できます。

養育費の支払いは義務であり、未払いには強制執行という強力な回収方法がとられることがある。

養育費の基本事項としておさえておきたいポイントです。

再婚後に養育費が変化するケース4つ

養育費の支払いは子供の親である以上義務であり、未払いには強制執行などの強力な回収手段が使われることが珍しくありません。

しかし、事情が変わってしまったらどうでしょう。

支払い義務があり時に強力な回収手段を用いられる養育費だからこそ、支払う側の生活や人生を圧迫してしまうリスクがあるのではないでしょうか。

事情は変わるものだからこそ、離婚後の事情変化による養育費額の変更が認められています

離婚後に養育費が変化する可能性のあるケースは次の通りです。

  • ・養育費支払い義務者の収入が減ってしまった
  • ・養育費を受け取っていた側の収入が増えた
  • ・再婚による新しい扶養義務の発生
  • ・養育費を受け取る側が再婚した

なお、以上のような事情があるからといって必ず養育費額の変更が認められるわけではありません。

あくまで養育費の額が変化する可能性があるケースなので、養育費を払う側の収入が下がったからといって即座かつ必ず養育費が変化するわけではないという点に注意が必要になります。

①養育費支払い義務者の収入が減ってしまった

離婚時の収入からは妥当な養育費の金額でも、離婚後の事情によって金額的な負担が重くなってしまう可能性があります。

たとえば、唐突に収入が減ってしまったり、物価の上昇によって手取りが少なくなってしまったりした場合は、収入に占める養育費の負担が重くなりがちです。

離婚時に予想できなかった事情から養育費を支払う側の収入が少なくなった場合、養育費を減額というかたちで変更できる可能性があります。

②養育費を受け取っていた側の収入が増えた

養育費を受け取る側の収入状況が変化した場合も、育費の額が変化する可能性があります。

たとえば、元夫から養育費を受け取っていた元妻の収入が増えたとします。

このようなケースでは、元妻に支払う養育費の額を減額というかたちで変更できる可能性があります。

支払う側の収入の変化も養育費額に影響しますが、受け取る側の収入状況の変化も養育費の額に影響するのです。

③再婚による新しい扶養義務の発生

再婚すると配偶者や子供(養子縁組含む)といった新しい家族関係が生まれます。

新しい家族を扶養しなければならないため、養育費の支払い義務者の収支の状況が変わってくるのです。

たとえば離婚後にしばらく独身だった元夫が月6万円の養育費を支払っていたとします。

しかし、再婚したことで養子と妻を扶養する必要が出たため、月6万円の養育費の支払いが極めて苦しくなりました。

収入には限りがあるため、他にも扶養すべき存在ができてしまうと、養育費を調整せざるを得ないことになるのです。

養育費の支払い義務者の再婚により養育費が変化する可能性があります。

ただし、再婚という理由によって養育費の支払い義務が消えてしまうわけではありません。

あくまで状況に合わせた減額などの変更になります。

④養育費を受け取る側が再婚した

養育費を受け取る側の再婚も養育費の変更要因になる可能性があります。

養育費を受け取る側の再婚相手が子供と養子縁組すると、扶養義務が再婚相手に移るのです。

再婚相手も子供を扶養するわけですから、再婚相手の収入状況に応じて養育費の額が変わる可能性があります。

ただし、再婚相手が子供と養子縁組しない場合は、扶養義務が再婚相手に移りません。

養育費の変更は基本的に認められないのです。

このように、養育費受け取り側の再婚や養子縁組の状況によって養育費が変わってくることがあります。

再婚後に養育費が変化しないケース4つ

養育費を支払っている最中に事情が変わっても、養育費が変化しないケースもあります。

養育費が変化しない4つのケースは次の通りです。

  • ・子供と会わせてもらえない
  • ・養育費を決めてから「相場より高い」と知った
  • ・収入が減ることが予想できていた
  • ・自分や元配偶者が同棲しているが籍は入れていない

①子供と会わせてもらえない

離婚後に子供と会わせてもらえないからという理由で養育費の減額を求めたり、支払いを拒絶したりすることはできません。

なぜなら、面会の問題と養育費は別物だからです。

養育費は子供を養育するためにお金ですから、面会などの条件と引き換えにすることはできません。

よって、子供と会わせてもらえないという理由で養育費の変更はできないという結論になります。

②養育費を決めてから「相場より高い」と知った

離婚時に収入や個別の事情などを踏まえて話し合い、養育費の支払い方法や額を決めた。

お互い納得して決めた養育費の額が相場より高めになっていることに離婚後に気づいた。

養育費を相場くらいの金額にして欲しい。

このような理由から養育費の変更を求めることはできません。

相場より高い」などの理由で養育費の減額が認められると、子供の養育のためにお金が不安定になり、容易に値切りのようなことができてしまうからです。

③収入が減ることが予想できていた

離婚時に予想できなかった減収によっては養育費の変更が可能ですが、あらかじめ減収を予想していたなら話は別です。

あらかじめ減収を予想していながら養育費の額を決めたわけですから、いざ減収という段になって「養育費を変更して欲しい」という話は基本的に通じません。

離婚時に減収も踏まえた額を決めればよかったのではないかという話になるからです。

減収を予想していながら転職したなどのケースでも、養育費の変更は難しいと考えられます。

収入が下がると理解していながら、自分から望んで収入が下がる職場に転職したからです。

④自分や元配偶者が同棲しているが籍は入れていない

離婚後に養育費支払い義務者や受け取り側に新しい恋人ができて同棲したとします。

一緒に暮らしている状態ですが籍は入れていません。

籍を入れずに同棲していた場合は、養育費の額を減額などのかたちで変更することは基本的にできないと解釈されます。

籍を入れていない場合、扶養義務は発生しません。

同棲により実態としては双方が生活費を出して助け合っている状況でも法的な扶養義務はないため、養育費の変更は基本的に認められないのです。

「養育費算定表」を用いた再婚後の養育費計算方法

養育費は基本的に夫婦の協議によって決めることが可能です。

養育費を決める際にはひとつの目安として「養育費算定表」がよく用いられています。

夫婦の協議で養育費が決まらない場合は裁判所で調停や裁判を行い養育費の支払い方法や額を決めますが、このときにも養育費算定表が目安として使われているのです。

たとえば0~14歳の子供が1人いる場合は「(表1)養育費・子1人表(子0~14歳)」を使います。

子供が2人いて、片方の子供が15歳以上でもうひとりの子供が0~14歳の場合は「(表4)養育費・子2人表(第1子15歳以上,第2子0~14歳)」の算定表を使います。

離婚後に養育費を変更する場合は、養育費算定表の目安額をそのまま使うことはできません。

なぜなら離婚時とは状況が変わっているからです。

離婚後や再婚後に養育費を変更する場合は、事情変更を踏まえて養育費を計算する必要があります。

再婚後や離婚後の事情変更によって養育費を変更する場合は、養育費算定表の算出ベースになっている計算式を用いて養育費の算出を行うことになるのです。

再婚後の養育費算出の流れと簡単なシミュレーションをご紹介します。

再婚後の養育費算出の流れ

再婚後の養育費の算出は4つのステップで行います。

  • ・基礎収入を算出する
  • ・生活費指数の確認
  • ・子供の生活費の算出
  • ・養育費の計算をする

流れに沿って計算方法を確認します。

①基礎収入を算出する

再婚後の養育費算出のために最初に行うのは基礎収入の算出です。

基礎収入とは、夫婦の収入そのものではなく、税金や居住関係費、医療費などの特別経費を引いた金額になります。

たとえば会社員の場合、収入が250万円~500万円だと基礎収入は年収の38%です。

自営業の場合は基礎収入が変わってきます。

自営業の年収が0~421万円の場合は、基礎収入は年収の52%になるのです。

②生活費指数の確認

次に生活費指数を確認します。

生活費指数は一般的な大人が100です。

子供は大人より数値が少なくなり、年齢によっても変動します。

  • ・0~14歳の子ども 55
  • ・14歳以上の子ども 90

③子供の生活費の算出

養育費は子供の養育のためのお金です。

よって、子供の養育や生活にどれだけの金額が必要になるかわからなければ算出できません。

ステップ3では子供の養育や生活にかかる金額を算出します。

子供の養育費用は、養育費を受け取る側の主張に基づいて決められるわけではなく、計算式を使って算出されるのです。

子供の養育のための金額を算出する計算式は次の通りです。

養育費支払い義務者の親の基礎収入×養育費を受ける取る子どもの生活費指数÷(養育費支払い義務者の親と扶養義務者の生活指数の合計)

④養育費の計算をする

子供の生活や養育のための金額を算出したら、次の計算式に当てはめて最終的な養育費の計算を行います。

子供の生活費×養育費支払い義務者の親の基礎収入÷(養育費支払い義務者の親の基礎収入+養育費を受け得とる側の親の基礎収入)

この計算式で算出できるのは1年分の養育費になります。

月あたりの養育費を算出するためには、計算結果を12で割って求めることになるのです。

再婚後の養育費算定ケースや例

再婚後の養育費の計算は非常に複雑です。

再婚後の養育費算出への理解を深めるために、2つ例で考えてみましょう。

養育費支払い義務者が再婚した場合

養育費支払い義務者と前妻の間には16歳の子供がいました。

再婚した妻には5歳の連れ子がいます。

連れ子とは養子縁組しており、養育費支払い義務者には現妻と養子縁組した子供の扶養義務もあります。

養育費支払い義務者の年収が600万円、元妻の年収が300万円として計算します。

なお、養育費支払い義務者と元妻は会社員です。

・基礎収入
養育費支払い義務者の基礎収入 222万円
元妻の基礎収入 114万円

・生活費指数の確認
養育費支払い義務者と元妻 100
養子縁組した子供 90
元妻との子供と再婚した妻はそれぞれ 55

222万円×55÷各生活費指数で計算すると年間約41万円になるので、この41万円を養育費の計算式に当てはめると養育費の年額が約27万円になります。

あとはこの27万円を12カ月で割ると、1カ月あたりの養育費の額になります。

実際に計算の流れを追ってみると、かなり複雑なことがわかります。

養育費の支払い義務者が再婚した場合

養育費の支払い義務者が離婚後に家庭を持ちましたが子供がいないケースです。

養育費支払い義務者と前妻の間には16歳の子供がいました。

再婚した妻には前述した通り連れ子はいません。

養育費支払い義務者の年収が600万円、元妻の年収が300万円として計算します。

なお、養育費支払い義務者と元妻は会社員です。

この場合も計算の流れは同じだと思うかもしれません。

しかしこの場合は再婚のみであり、連れ子はおらず養子縁組もしていません。

したがって養育費の減額変更などはなく、基本的に今までの養育費額が維持されることになります。

養育費算定表を用いる際の注意点

養育費算定表を用いる場合、養育費の算出において3つのことに注意する必要があります。

  • ・再婚後の養育費算定は極めて複雑である
  • ・計算違いには厳重に注意する必要がある
  • ・正確な額を把握したい場合は弁護士に相談を

注意点について順番に見て行きましょう。

再婚後の養育費算定は極めて複雑である

再婚後の養育費算定は子供の人数や年齢、再婚相手の収入などを考慮して行われるため、計算が極めて複雑です。

養育費算定ケースや例でも挙げてお話ししたように、養子縁組の有無や連れ子の有無などによっても計算結果が変わってくるのです。

個人で計算すると計算式の解釈ミスや数字のミスなどで、正しい計算結果とは異なった結果が算出される可能性があります。

再婚後の養育費算定は極めて複雑であることを念頭に計算し、計算ミスにも注意する必要があるのです。

計算違いには厳重に注意する必要がある

再婚後の養育費の算定を行う場合、計算ミスに注意する必要があります。

よくあるミスは基礎収入の計算ミス。

それから、算出した子供の生活費を即座に養育費だと勘違いしてしまうケースです。

再婚後の養育費算定では計算式を2回使います。

計算ミスや勘違いには重々注意しましょう。

計算結果をベースに元妻や元夫と話し合うときは、弁護士などの専門家に計算結果をチェックしてもらうことをおすすめします。

正確な額を把握したい場合は弁護士に相談を

再婚後の養育費の計算は非常に複雑なので、養育費の変更をする際は自分で計算せず、最初から専門家を頼ることも良い方法です。

計算ミスをしたまま相手と話し合いをしてしまうと、トラブルのもとになる可能性もあるのです。

弁護士に再婚後の養育費を詳細に計算してもらい、その計算結果を話し合いに用いてはいかがでしょう。

トラブルを防止するという観点でも重要なことです。

まとめ

養育費は離婚時の事情によって額や支払い方法を決めます。

離婚から時間が経つと、離婚時の事情が変わってしまうことがあります。

事情が変わっても養育費額の変更が認められなければ、支払いをする側は重い負担を背負ったまま生活しなければいけません。

離婚後の事情変更によっては、養育費額の変更が認められる可能性があります。

養育費額の変更が認められる可能性のあるケースとは、予期しない減収や再婚などです。

再婚した場合、収入や養子縁組などの事情から養育費が変わってくる可能性があります。

ただし、離婚後に再婚したら即座に養育費の変更が認められるわけではありません。

状況に即して養育費の変更が認められるか判断する必要があります。

また、養育費を変更する際は、離婚時に使った算定の金額をそのまま使うことはできません。

複雑な数式で養育費の算出を行わなければいけないのです。

離婚後の養育費の算出や判断は非常に複雑です。

ミスからトラブルに発展させないためにも、弁護士にアドバイスをもらいながら進めることをおすすめします

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