この記事でわかること
- 離婚手続きを弁護士に依頼すべきケースについて理解できる
- 離婚手続きを弁護士に依頼するメリット・デメリットについてわかる
- 弁護士に依頼したときの費用相場がわかる
夫婦だけの話し合いでスムーズに離婚に至るケースはいわゆる「円満離婚」であるといえます。
「友達同士に戻った」とか「これからもよき理解者である」などといわれる方もいらっしゃいます。
ですが、そうではない離婚のケースが多いのも事実です。
相手の不倫やDV、モラハラ、借金など夫婦の数だけ理由はさまざまです。
「こんなはずじゃなかったのに…」
と精神的なダメージを負われて、深く傷ついてしまった方も多いのではないでしょうか。
一生添い遂げるつもりで結婚したのに裏切られてしまった場合は、精神的に病んでしまうことも珍しくありません。
DVや借金問題を抱えていれば、法的な問題が絡み、自分一人では解決できなくてさらに追い詰められてしまうこともあるでしょう。
そのようなときは、弁護士に依頼すれば適切に解決できるだろうと思われるのではないでしょうか?
ですが、「高額な報酬」がネックとなり、なんだか敷居が高く感じてしまうものです。
ここでは、離婚問題に直面したときに弁護士に依頼するメリット・デメリットについて解説していきます。
協議離婚の手続きを弁護士に依頼すべきケース
いったい弁護士に依頼すべきケースとはどのようなケースが該当するのでしょうか。
下記に一例を挙げてみましたので、ご参考になさってください。
- ・配偶者が離婚に応じてくれず、話し合いがまったく進まないとき
- ・DVやモラハラなどの常習犯である配偶者と離婚したいとき
- ・離婚の慰謝料や財産分与、養育費などの金銭面での折り合いがつかないとき
- ・夫婦どちらも「親権」が欲しいと主張しているとき
- ・離婚後に「強制執行」することができる「離婚協議書」を公正証書で作成したいとき
このようなケースでは、自分一人ではなかなか解決することが難しく法律関係も複雑なので弁護士に依頼した方が早期解決に至ることができるでしょう。
下記で、それぞれのケースについてじっくりみていきましょう。
配偶者が離婚に応じてくれず、話し合いがまったく進まないとき
そもそも相手が離婚にすんなりと応じてくれれば弁護士に依頼する必要はありません。
ですが、お互いに言い分がありなかなか話し合いが進まないケースは珍しくはありません。
「結婚生活が長年に渡る場合」や、「相手が不倫したのになかなか白状せずに話し合いにすらならない」「すでに数年前から家庭内別居が続いておりもはや離婚同然だからいっそのこと早く離婚したい」「家庭内の会話も必要最小限で、数年前から夜の夫婦生活がまったくない」というケースもあります。
このように相手がまったく話し合いに応じず避けているようなケースでは、まずは「別居」をすることをおすすめします。
こちら側は「離婚に向けて真剣なんだ、本気なんだ」という気持ちを示すためにも別居をしてから弁護士に依頼し離婚への準備を始めてみましょう。
意外にも、弁護士からの連絡であれば、相手も素直に話し合いに応じてくれることも多いのです。
DVやモラハラなどの常習犯である配偶者と離婚したいとき
最近では、DVやモラハラがエスカレートして取り返しのつかない事態となるニュースを目にする機会が多くなりました。
もはや一人で何とかできる問題ではありません。
優先すべきは「身体の安全」に尽きます。
相手がヒステリックになることが容易に予想され、話し合いにすらならないのではないでしょうか。
1日も早く離婚したいがために、無理に話し合いを進めようとして「自分に不利な条件」で離婚してしまうケースも多いのです。
後々にトラブルとなることもありますので注意が必要です。
また、相手が実家や別居後の自宅に押しかけてくる心配のある方は、すぐに弁護士に依頼し「接近禁止命令」を裁判所から発令してもらうことが必要です。
弁護士に依頼すれば、相手への連絡や交渉を自ら行うことなく、「代理」してもらうことが可能です。
離婚の慰謝料や財産分与、養育費などの金銭面での折り合いがつかないとき
離婚の際に、必ずといってよいほど「お金のはなし」で揉めることが多いものです。
離婚後の自分や子どもの将来に関わることですので当然のことといえます。
- ・養育費
- ・慰謝料
- ・財産分与
- ・年金分割
- ・婚姻費用の清算
- ・住宅ローンの負担方法
- ・不動産の名義変更 など
このようなケースでは、話し合いもなかなか進まず平行線をたどってしまい時間だけが過ぎていってしまいます。
時間は有限ですので、迷われているのなら弁護士に相談することから始めてみてはいかがでしょうか。
弁護士であれば、過去の裁判例や現在の相場から適切な金額を算出することができ適切に進めることができ、かつ安心できるのではないでしょうか。
また、支払う側に立たされている場合は「支払いが妥当か否か」の判断をしてくれますので、不要な支払いをせずに済みます。
たとえば、「相手から理由もないのに慰謝料を請求されて困っている」「年金や退職金を請求されて困っている」などのケースが挙げられます。
夫婦どちらも「親権」が欲しいと主張しているとき
子どもへの愛情は格別なものであると思われている方も多いのではないでしょうか。
悲しいかな「相手への愛情はとっくに冷めているけれど、子どものことは愛おしくて仕方ない」という話はよく耳にするところです。
夫婦2人だけでスムーズに話し合いが進み協議離婚の合意に至れば、相手にどのような性格的な問題があろうが「親権」を主張することができてしまいます。
たとえば、一般的に親権者となる人は「母親」が多いことが現状ですが、父親である人が自ら「親権」を取りたいと思う場合は、残念ながら裁判上では不利となってしまうことが多いのです。
お腹を痛めて産んだ子だから、母親は必ずしも子どものことを愛しているとはいえないケースも残念ながらあるのも事実です。
子どもを育てていくということは、経済的なことは勿論、日常生活においてもしっかりと目を向け寄り添っていくことが大切です。
母親が親権を取ることに懸念をもたれているのであれば、相手が子どもを連れていってしまう前に早めに弁護士に相談されることをおすすめします。
離婚後に「強制執行」することができる「離婚協議書」を公正証書で作成したいとき
いわば社会問題に発展してしまった「養育費不払い問題」ですが、これらは机上の話ではなく、実際にとても多くの方が悩まれています。
女性の社会進出がめざましい昨今ですが、多くの女性は妊娠・出産により一度キャリアをストップせざるを得ない状況に立たされてしまいます。
当然、父親の収入に頼り結婚生活を送っていくことになりますが、離婚問題になったときには、女性である母親は経済的な困窮に直面してしまいます。
平成28年全国ひとり親世帯等調査結果報告によれば、養育費を受け取ることができている家庭は4.3%と非常に低く、約8割近くの家庭が養育費を受け取ることができずに困っています。
経済的な困窮が、ネグレクトや虐待につながり、学力低下などの問題も大きな問題となります。
例え離婚時に養育費に関して取り決めをしていたとしても、残念ながら約束を破って支払いが滞ってしまうことが多いので、そのようなときは「離婚協議書」を公正証書で残しておくことをおすすめします。
弁護士に依頼することにより、厳格な手続きを要する「公正証書作成の手続き」や「裁判所への手続き」などを一任することができ、煩わしさから解放されることができます。
仕事や家庭の事情であまり時間が取れない方は、費用はかかりますが後々のトラブルも回避できるので検討してみてはいかがでしょうか。
公正証書による強制執行とは?
強制執行についてみていきましょう。
強制執行とは、債務者(養育費を支払う人)に対する債権(養育費の請求)を裁判所が強制力を発動して支払わせる手続きのことです。
「執行認諾の文言」が付された公正証書があれば、煩雑な「裁判所の許可を得る手続き」を経ずに財産を差し押さえることが可能となります。
無事に執行されると「給与」や「銀行口座」を差し押さえることができます。
結果的に、相手から強制的に養育費を回収する(支払いを受ける)ことができるのです。
以上のことから、離婚協議書を公正証書で残す際には「執行認諾の文言」を付すことが必要となります。
弁護士の協議離婚のサポート方法は2種
それでは、実際に弁護士に依頼する場合どのようなサポートが受けられるのかをみていきましょう。
ご自分の事情にあったサポートはあるのでしょうか?
ご参考になれば幸いです。
- ・代理人型
- ・後方支援型
このように2つのパターンがあります。
どちらがご自分に合っているのでしょうか?
どちらもメリット・デメリットがありますので、ここでしっかりと理解し知識を備えておくことが大切です。
以下で詳しくみていきましょう。
代理人型のサポートとは?
代理人型のサポートにおいて、特筆すべきは何といっても「早期解決」といえます。
メリット・デメリットを簡単にまとめたものをご紹介します。
ご参考になさってください。
メリット | ・相手方と直接顔を合わせなくてよい ・すべてを弁護士に任せて、自分は家事、育児、仕事に専念できる(ストレスから解放される) ・相手方も話し合いに応じる(プレッシャーをかけることができる) ・話し合いが早くまとまり合意までの流れがスムーズ |
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デメリット | ・相手の気持ちを刺激し、相手も弁護士に依頼する可能性がある ・相手の気持ちを刺激し怒りを買ってしまうことがある(話し合いが進まない) |
依頼した弁護士に相手方との交渉や煩雑な手続き(公証役場や裁判所など)をすべて任せることができます。
ご自身は、離婚するにあたり希望の条件を伝えるだけでよいのです。
弁護士は、法的な観点から希望の条件に沿うようにアドバイスなどをして、付け加えるべきところは付け加え、削除すべきところは削除して、適正な条件でまとめて交渉を進め解決へと導いてくれます。
仕事や家庭の都合で忙しい方や、相手と顔も合わせるのも嫌などの事情をお持ちの方であれば、こちらのサポートをご検討されてみてはいかがでしょうか。
後になってから「これも入れておくべきだった」と後悔することにならないように、離婚の希望条件などが曖昧なまま弁護士に相談するのではなく、しっかり洗い出しをしておくことも重要です。
時間をかけてもう一度「どのような条件で離婚したいのか」をまとめておきましょう。
また、相手の気持ちを刺激しないためにも離婚問題に精通した経験豊富な弁護士を探すことも重要です。
後方支援型のサポートとは?
前述した代理人型と違い、後方支援型はあくまでも自分自身で交渉や手続きをすべて行うこととなります。
メリット・デメリットをみていきましょう。
メリット | ・弁護士に依頼していることを伏せて離婚協議ができるので相手の気持ちを刺激しない 余計な対立構造を生じさせない) ・弁護士費用を抑えることができる ・離婚協議書作成などの法的知識を要するものは弁護士に依頼することができる |
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デメリット | ・合意に至るまで時間がかかる可能性がある ・すべてを自分で行わなくてはならないため労力を要する |
相手との協議がまとまりかけていて、最終チェックなどを依頼したい場合にはこちらのサポートが向いているといえます。
協議離婚を弁護士に依頼したときのメリット4つ
弁護士に依頼するとどのようなメリットがあるのでしょうか?
以下でご紹介していきますのでご参考になさってください。
- ・手続きをスムーズに進めることができる
- ・手続きを有利に進めることができる
- ・手間を省くことができる
- ・精神的なストレスから解放される
- ・適切な手続きを行う(選択する)ことができる
- ・自分ではできない難しい事案でも対応してもらえる
離婚協議はとても時間と労力を要するものです。
精神的にもとても疲弊してしまいます。
費用はかかりますが、これらを一任できることはメリットといえるのではないでしょうか。
また、調停や裁判では、思っている以上に煩雑な手続きを要します。
不備があれば、修正するのに時間を要してしまいます。
実際の調停や裁判の場面では同行し、主張・立証などの法的なテクニックやアドバイスまで網羅的にサポートしてもらうことができるので安心できます。
協議離婚を弁護士に依頼したときのデメリット3つ
デメリットもしっかり理解した上で弁護士に依頼するか否かを判断することが大切です。
以下で、弁護士に依頼するデメリットを挙げてみましたのでご参考になさってください。
- ・弁護士費用がかかってしまう
- ・必ずしも希望する成果を獲得できるわけではない
- ・弁護士選びを間違えると費用・時間の無駄になってしまう
せっかく費用をかけて弁護士に依頼するのですから、やはり自分の希望通りの成果を得たいと思われるのは当然のことといえます。
ですが、相手の事情なども法的観点から考慮されますので、必ずしも希望通りの成果を得られるわけではありません。
また、弁護士選びもとても重要です。
離婚問題の経験が少ない弁護士や忙しすぎてなかなか時間の合わない弁護士だと、時間がかかり結果的にロスが大きくなってしまう可能性があります。
弁護士に依頼したときの費用は?
気になる弁護士費用の相場についてみていきましょう。
相談料 | 弁護士に相談するときに発生する費用。1時間1万円前後(初回無料の事務所もあり) |
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着手金 | 実際に弁護士に依頼するときに必要となる費用(相場は30万円前後) |
成功報酬金 | 依頼した内容の成果に対する費用。 (例:離婚調停の場合なら離婚調停が解決したときに支払う) |
成功報酬金の相場は30万円前後+経済的利益の10%程度となります。
ただし、事務所や依頼内容により料金が異なりますので事前に確認されることをおすすめします。
下記にケースごとの相場をご紹介します。
親権獲得に対する成功報酬 | 10万円〜20万円 |
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養育費請求に対する成功報酬 | 経済的利益の10〜20% |
慰謝料請求に対する成功報酬 | 経済的利益の10〜20% |
財産分与に対する成功報酬 | 経済的利益の10〜20% |
また、日当(調停や裁判の場合)や実費(印紙・切手代など)がかかることも頭に入れておきましょう。
(参考)離婚の種類は3つある
そもそも離婚にはどのような種類があるのでしょうか。
何となくは理解しているけど具体的にはいまいちわからない方も多いのではないでしょうか。
ここで今一度確認しておきましょう。
・協議離婚→調停離婚→裁判離婚
このように3つのステップがあります。
いきなり裁判離婚に行くわけではなく、一つずつステップアップしていく流れとなります。
まず大前提として、「離婚について夫婦でよく話し合う」ことが必要となることはいうまでもありません。
裁判所を介さずに離婚することは、すべて協議離婚と呼ばれます。
まとめ
離婚はネガティブなイメージにとらえられがちですが、必ずしもそうではありません。
昨今では、決して珍しいことではなく、新しい人生のスタートを切る節目であるともいえます。
ただ、離婚は夫婦2人だけの問題ではなく、子どもがいる夫婦であれば、しっかりと子どものことを守るために考えていかなくてはなりません。
「離婚するときは、結婚するときよりも大変な労力がかかる」などといわれることがあるほど慎重に検討していかなくてはならないことが沢山あるものです。
1人ではなく、2人で築いて来たものなのですから当然のことです。
まずはグッと堪えて、感情的にならずに話し合いましょう。
どうしても解決できなければ弁護士に相談することも検討されてみてはいかがでしょうか。
新しい一歩を踏み出すためには不可欠であり結果的に効率がよいといえるかもしれません。