親権者になるにはどんな条件が必要?決定までのチェックポイント5つとその流れを解説 | 離婚弁護士マップ
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親権者になるにはどんな条件が必要?決定までのチェックポイント5つとその流れを解説

この記事でわかること

  • 親権には通常身上監護権と財産管理権が含まれているが、身上監護権のみを取り出して監護権とすることがある。
  • 親権はまずは話し合いで決めるが、合意できない場合には調停を申し立てることとなり、調停でも合意できなければ審判、裁判へと進んでいくことになる。
  • 親権決定のポイントとしては、監護実績や親の心身の健康状態、離婚後の生活環境の見通しや子供の意向などがある。

離婚する夫婦の間に未成年の子供がいると、どちらが親権者になるかという問題があります。

しかし、親権者をお互いが譲らずに離婚まで時間がかかるというケースも多くあるのです。

ここでは、親権というのはどのようなもので、親権者はどのように決めるものなのかについて説明します。

親権とはどんな権利?

親権というのは、未成年の子供の財産を管理したり、法律行為に同意したり、子供を監護・養育したりする権利と義務のことです。

結婚している間は、夫婦で共同して親権を行使することになりますが、離婚後は共同親権は認められず、どちらか一方を親権者に決めなければなりません

親権の内容は多岐にわたりますが、大きく分けると財産管理権、身上監護権の2つがあります。

財産管理権とは

財産管理権の内容は、子供の預貯金や不動産などの財産を包括的に管理する権限と、子供の法律行為に同意する権限があります。

未成年者は自分一人で契約などの法律行為を有効に行うことができないため、親権者の同意が必要となります。

身上監護権とは

身上監護権の内容は、実際に子供の身の回りの世話をして監護・養育していく権限です。

具体的には、以下のようなものが含まれています。

  • ①居所指定権……子供が住む場所を決める権限です。
  • ②懲戒権……子供にしつけをしたり、教育のためにこらしめたりする権限です。
  • ③身分行為の代理権……子供の身分行為を代理して行うことです。具体的には、子供が養子縁組する場合に代理することなどがあります。
  • ④職業許可権……子供が職業を営むことを許可する権限です。

親権と監護権を分けるケース

通常、親権というと財産管理権と身上監護権を合わせたものを指しますが、身上監護権のみを取り出して「監護権」として、親権とは分ける場合もあります

本来であれば監護権は親権の一部として親権者が持つことになりますが、離婚の際に親権者とは別に監護権者を指定する場合、親権者は財産管理権を持ち監護権者が身上監護権を持つことになります。

監護権の分離は子供の利益を考えて行うべきもので、たとえば、子供の身の回りの世話をするのは母親が適しているものの、財産管理能力に著しい問題がある場合などには、親権者は父親、監護権者は母親にするようなケースが考えられます。

親権が決定するまでの流れ

親権者はどのように決定するのでしょうか。その流れと、調停や裁判における親権決定の基準について説明します。

当事者間での話し合い

まずは、夫婦での話し合いにより親権者を決めることを目指します。

未成年の子供がいる夫婦が離婚する場合、親権者を決めなければ離婚できないため、協議離婚の場合には話し合いで決める必要があります。

話し合いの際に大切なのは、子供にとってどちらが親権者になることがふさわしいか、という視点を持つことです。

現実的に自分が養育することは困難である場合には、相手に親権を譲ることを考えた方がよい場合もあります。

調停で親権者を決める

当事者間の話し合いで親権者について合意できない場合には、親権者の指定を求める調停を家庭裁判所に申し立てることになります。

調停では、調停委員や裁判官が当事者それぞれの話を聞いて、助言や提案をしながら双方の意見の調整を図って親権者を決めていくことになります。

裁判官が家庭裁判所調査官に命じて、関係者との面談や家庭、学校訪問などを行い調査するケースもあります。

親権の決定は離婚の条件のひとつなので、協議による親権の決定ができない場合は、離婚そのものが成立しません

そのため、親権が決まらない場合は、親権の決定のみについての調停ではなく離婚調停の申し立てを行い、その調停の中で親権の話し合いもすることが一般的です。

調停不調の場合、審判や裁判で親権者を決める

調停によって合意ができず親権者を決めることができなかった場合には、親権者指定の審判の手続に移行して、家庭裁判所が親権者を指定する場合があります。

ただし、この審判による決定には必ず従わなければならないものではなく、不服申し立てをすることもできます。

審判の手続きは必ず行われるものではありません。多くの場合、離婚調停で親権者の合意ができず、離婚の条件がまとまらないために調停が不成立となったような場合には、当事者のどちらかが離婚訴訟を提起して離婚の成立や条件について争うことになります。

この離婚裁判の中で、離婚条件の一部として親権の指定を裁判所に判断してもらうよう申し立てます。そうすると、裁判所が判決により親権者を決定することになります。

調停や裁判における親権者決定の基準

調停や裁判において親権者を決めるとき、裁判所にはどのような判断基準があるのでしょうか。

子供の福祉、利益を最優先に考え、総合的な事情によって判断することとなりますが、主な基準としては以下のようなものがあると考えられています。

裁判所は多くのケースで家庭裁判所調査官に命じて、監護状況などの調査を行い、これらの基準によりどちらが親権者としてふさわしいかを判断していくこととなります。

①監護の継続性

子供がどちらか一方の親の元で安定した生活を送っている場合には、現在の生活を継続させて子供の生活環境を変えないことが望ましいことから、現在監護している親がそのまま親権者になることが適切だと判断されます。

②親の監護意欲や能力、生活状況

親の監護に対する意欲や能力、適切に監護できる生活状況であるかどうかも判断基準となります。

監護補助者といって、監護を手助けしてくれる人がいるかどうかもポイントになることがあります。

仕事が忙しいなどにより一人で子供を育てるのが困難な場合には、それを補うことができる環境かどうかを判断するためです。

③子の年齢や意向

子供の年齢が幼いほど、母性優先の原則が適用される場合が多く、母親が親権者として優先される傾向があります。(ただし、近年は個別の状況によって実質的に判断されるケースも増えてきました)

また、子供の意向については、15歳以上であれば必ず子供の意向を確認されることとなっています。

15歳未満であっても、10歳以上くらいの場合にはある程度子供の判断能力が認められるため、意向を尊重する傾向があります。

親権者を決めるときのチェックポイント5つ

親権者を決めるときの主なポイントについて説明します。

調停や裁判といった裁判所の判断による場合のポイントとなることはもちろん、当事者間の話し合いの場合でも次の5点について意識することで話し合いがスムーズにいく可能性があります。

親の心身の健康状態や監護能力

子供の養育には、体力や精神力、生活能力など様々な能力が必要です。

親の健康状態に問題がある場合や精神的に不安定な場合などは、子供の養育が難しいと判断されることがあります。

また、経済力が高くなくてもそれほど不利にはなりませんが、経済観念に問題があり借金を繰り返しているような場合には親権者にふさわしくないと判断されることがあります。

このような様々な能力を総合的に見て、監護能力の高さを判断されるのです。

これまでの監護実績

これまでの監護状況がどうだったかは重要なポイントです。適切な監護が行われてきた実績があれば、今後も継続してきちんと監護が行われる可能性が高いと判断されるからです。

どちらが主として子供の養育を担ってきたのか、子供の教育についてどのように関わってきたのか、日頃から子供とどのように接してきたのかなどにより監護実績が判断されることになります。

離婚後の生活環境の見通し

これまでの監護状況も大切ですが、離婚後の生活環境がどうなるかも大切なポイントです。

離婚によりこれまでの生活環境が変化することとなり、生活環境が変わっても子供を適切に養育できるかどうかも判断されることになります。

子供が幼い場合には、子供と長い時間を一緒に過ごせる環境であるのか、仕事などで忙しい場合にはそれを補ってくれる親族などの監護補助者が存在するのか、離婚後の住まいはどうなるのかといったことがポイントとなります。

できるだけ子供を優先した生活設計をしていると、好意的な評価がされる可能性が高くなるのです。

子供との関係性や子供の意向

親権は子供の利益を最優先にして決めるべきものなので、子供の意向は大切なポイントです。

子供がある程度分別のある年齢であれば、子供自身の意向を尊重して判断されることが多くなります。

また、子供が十分な判断能力がない年齢であったり、意向をはっきりと示さなかったりするような場合には、子供と親の関係性を見て、子供にとっての精神的な結びつきが強い親がどちらなのかを判断されることが多くなります。

子供と日頃からきちんとコミュニケーションが取れており、愛情をもって接しているかどうかが親権決定の際に判断基準とされることがあります。

子供の年齢やきょうだいの存在

日本では、子供の年齢が低い場合には母親の存在が必要だという従来からの考え方がいまだに残っているため、母親が親権において有利になります。

ただし、最近では個別の事情によって柔軟に判断される傾向があり、実質的に父親が子育てを担ってきたような場合には、子供が幼くても母親優先とはされないケースも出てきました。

子供にきょうだいがいる場合には、きょうだいは分離させないことが原則とされています。

きょうだいを離れ離れにしてしまうのは、子供の精神面にとって好ましくないと考えられているからです。

まとめ

親権者の決定はあくまでも子供の利益を最優先にして判断すべきものです。

親の感情だけで決めるべきものではないため、客観的に見て子供がどちらの親権で育つことが子供の幸せにつながるのかを念頭に置いておきましょう。

話し合いで決着がつかず調停等に進む場合には、調停委員の意見などに耳を傾けることも大切です。

監修弁護士
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