この記事でわかること
- 浮気の慰謝料相場がわかる
- 慰謝料請求の条件が理解できる
- 慰謝料請求の手続きや証拠集めがわかる
夫または妻の浮気は配偶者への裏切りです。
配偶者は「何らかのかたちで償って欲しい」「謝意を示して欲しい」と思うのではないでしょうか。
慰謝料はまさに「慰謝」。
浮気に対する償いや謝意のひとつのかたちとして請求や支払いが行われています。
夫や妻が浮気をした場合、慰謝料請求できるのでしょうか。
できるとしたら、相場はどれくらいなのでしょう。
また、条件や手続き、必要な証拠などはどうなっているのでしょうか。
この記事には「配偶者の浮気に対する慰謝料請求の際に必要な基礎知識」をまとめました。
浮気による慰謝料の相場は50~300万
夫や妻の浮気に対しては慰謝料請求が可能です。
夫婦が離婚してから他の異性とお付き合いすることは決して悪いことではありません。
しかし婚姻中の場合、夫や妻の浮気は配偶者への裏切りです。
法律用語では浮気は「不貞行為」と呼ばれ、民法770条の離婚事由にも挙げられています。
夫や妻の浮気相手も配偶者に精神的な痛みを与えた相手ですから、慰謝料の請求対象になるのです。
夫や妻の浮気に対して慰謝料が請求できるとして、具体的にどのくらいの金額が相場になるのでしょうか。
まずは夫や妻に対して請求できる慰謝料の相場についてお話しします。
夫や妻の浮気に対して請求できる慰謝料相場は50~300万円だといわれています。
ただし、夫や妻が浮気をすればただちに相場金額の慰謝料が認められるわけではありません。
慰謝料は基本的にケースバイケースであり、個別の事案により計算されるのです。
浮気の状況は夫婦ごとに違っています。
夫婦の関係性や生活などの夫婦ごとに違うはずです。
夫婦や浮気の事案ことに違いがあるのですから、ひとまとめにして計算することはできません。
50~300万円はあくまで浮気全体の相場として考え、個別事情やケースバイケースによって変わってくると知っておきましょう。
浮気の慰謝料相場についてさらに理解を深めるためにも、もう少し詳しく相場を説明します。
夫婦関係を継続する場合の慰謝料相場
夫や妻の浮気後も夫婦関係を継続する場合の慰謝料相場は50~100万円になります。
夫や妻が浮気をしても、必ず離婚という決断を選択する必要はありません。
話し合いの上で離婚せず、このままの生活を続けるという選択肢を取る夫婦もいるのです。
浮気によって離婚しない場合は、浮気の慰謝料相場全体から見ると慰謝料相場は低めになります。
夫婦関係を継続できるということは、決定的な亀裂を回避できたともいえるからです。
なお、夫婦関係を継続する場合、浮気した配偶者には慰謝料を請求しないという決断を下す妻や夫は少なくありません。
配偶者に慰謝料を請求すると、夫婦の財布が一緒のことが多いため、夫婦の財布から慰謝料を払うという結果になることが多いからです。
慰謝料を夫婦共有の財布から支出し、夫婦共有の財布に戻る。
このような奇妙な結論になってしまいます。
浮気が原因で夫婦が別居した場合の慰謝料相場
浮気が原因で夫婦が別居した場合、夫婦関係を継続する場合よりも慰謝料相場はやや高くなります。
慰謝料相場は100~200万円です。
夫婦は基本的に同居しなければいけません。
しかし、同居できないような亀裂が生じたわけですから、夫婦関係を継続できる場合よりも浮気による損害は大きいと考えられます。
そのため、浮気が原因で夫婦が別居した場合の慰謝料相場は、夫婦関係を継続する場合よりも高めになっているのです。
浮気が原因で離婚した場合の慰謝料相場
浮気が原因で離婚に至った場合、夫婦関係を継続できるケースや別居するケースよりもさらに損害は大きいと考えられます。
夫婦という関係ではいられない決定的な亀裂が入ってしまったのです。
そのため、浮気が原因で別居に至ったケースや夫婦関係を継続するケースよりも慰謝料相場は高くなります。
慰謝料額の相場は200~300万円です。
浮気の慰謝料相場全体を見ると50~300万円とかなり開きがあります。
基本的に浮気による損害が大きいほど慰謝料相場も高くなる傾向があるのです。
ただし、金額はあくまで相場なので、浮気によって離婚すれば必ず200~300万円の慰謝料が保証されるわけではないという点に注意が必要になります。
別居や夫婦関係を継続する際の慰謝料もあくまで相場。
最終的にはケースバイケースだと覚えておきましょう。
浮気の慰謝料請求をするための条件
夫や妻が浮気をすると、夫や妻や浮気相手に慰謝料請求が可能になっていますが、そもそも浮気のラインとはどこからなのでしょうか。
浮気のラインは人によって様々です。
男女関係に厳しい人であれば、異性と配偶者が出かけただけで浮気を想像するかもしれません。
人によっては、夫や妻が異性と楽しそうに会話しているだけで浮気判定することもあるのではないでしょうか。
浮気の慰謝料請求は、個人の価値観で「浮気だ」と判断したら認められるわけではありません。
浮気のラインが人それぞれだからこそ、慰謝料請求においては「浮気のライン」にまつわる条件があります。
裁判などで慰謝料請求が認められる浮気のラインや条件はどうなっているのでしょうか。
浮気の慰謝料請求をするための条件は次の4つです。
- ・浮気相手と肉体関係があった
- ・浮気によって夫婦関係が破綻した
- ・浮気をしていた証拠がある
- ・時効が成立していない
条件①肉体関係があった
慰謝料請求が認められる浮気のラインは「肉体関係の有無」です。
浮気のラインは人それぞれかもしれませんが、裁判などの法的な場面では浮気のラインを肉体関係にしています。
肉体関係を証明できる場合は慰謝料請求が認められやすい傾向があるのです。
肉体関係がない場合は慰謝料請求自体が絶対に認められないというわけではありません。
ただ、裁判などの法的な場面では浮気のラインを肉体関係に置いているため、肉体関係なしの場合は高額の慰謝料を認めてもらうことは難しいと考えられます。
条件②夫婦関係が破綻した
浮気によって夫婦関係に亀裂が生じたことが条件のひとつになります。
たとえば、夫が浮気をする前から妻との関係が極めて悪く別居していたとします。
この別居は長期間におよんでおり、夫婦としての実態が形骸化していました。
この状態で夫が浮気しても、夫婦関係はもともと破綻していたわけですから、浮気による夫婦関係の破綻ではありません。
また、浮気によって夫婦関係に損害を被ったともいえないはずです。
もともと夫婦関係が破綻していた場合は、慰謝料請求が認められない可能性があります。
夫婦関係が破綻していたかどうかは、ケースごとに判断されます。
夫婦に喧嘩や別行動が多いからといって、即座に夫婦関係が破綻しているとみなされるわけではありません。
あくまでケースバイケースで判断されるのです。
条件③浮気の証拠がある
妻や夫が配偶者の浮気を主張しても、第三者の目から見て「浮気があった」と判断できなければ慰謝料請求が認められることは困難です。
慰謝料請求を認めてもらうためにも、浮気をしているという証拠が必要になります。
写真や映像、探偵の浮気調査の報告書などが代表的な浮気の証拠です。
他に、浮気相手と肉体関係を持ったホテルの領収書やクレジットカード明細、メールやSNSでのやり取りなどが証拠になる可能性があります。
条件④時効が成立していない
浮気の慰謝料請求は時効が成立してしまうと難しくなります。
浮気の慰謝料請求の基本的な時効は、浮気発覚のときから3年です。
過去の浮気についても、20年経過していない場合は、離婚後に浮気が発覚しても慰謝料請求が認められる可能性があります。
なお、時効が完成している場合でも、配偶者や浮気相手が自発的に慰謝料の支払いをする場合には受け取りが可能です。
時効は法的な知識がないと計算が難しい分野になります。
浮気の慰謝料の時効が心配な場合は、弁護士に時効を確認してもらった方が安心です。
浮気の慰謝料を請求する手続き
浮気の慰謝料を請求する方法は大きくわけて2種類あります。
裁判所を使う方法と使わない方法です。
裁判所を使う方法には「裁判」があります。
裁判所を使わない方法は「内容証明郵便の送付」や「交渉と合意書の作成」などです。
内容証明郵便の送付などから浮気の慰謝料請求をスタートし、浮気相手が交渉や支払に応じなければ最終的に裁判所での裁判になります。
浮気の慰謝料請求の方法を、順を追って見て行きましょう。
内容証明郵便の送付
浮気の慰謝料請求のスタート地点ともいうべき手続きが「内容証明郵便の送付」です。
内容証明郵便とは、日本郵政が提供しているサービスのひとつになります。
郵便局側で送付した手紙の内容と送付の事実を証明してくれるのがこの内容証明郵便というサービスです。
債務の請求など法的な場面でよく使われるが内容証明郵便になります。
法的な場面でよく使われるからこそ、受け取る側である浮気相手に精神的なプレッシャーを与えることができるのです。
内容証明郵便は個人でも送付可能です。
内容証明郵便に慰謝料を請求する旨を記載し、浮気相手へと送付します。
浮気相手がコンタクトを取ってきたら、交渉や合意書の作成へと進みます。
内容証明郵便は弁護士に送付を依頼することも可能です。
弁護士に依頼すると、弁護士名や弁護士事務所名が入ります。
個人名で送るよりも、浮気相手にプレッシャーを与えることができるはずです。
交渉と合意書の作成
浮気相手に内容証明郵便を送ったら、次は浮気相手と慰謝料について交渉します。
内容証明郵便は法的な手続きによく使われるため、浮気相手の方からコンタクトを取ってくる可能性もあります。
送り手、浮気相手、どちらからのコンタクトでもかまいませんので、連絡が取れたら慰謝料について話し合い、決まった内容を合意書にしたためます。
浮気相手と交渉するときは、弁護士に同席してもらうか、弁護士に進めてもらうと浮気相手との不要なトラブル防止が期待できます。
個人で進めると、合意書の条項に穴や記載ミスがあったり、浮気相手が「脅された」など言いがかりをつけたりする可能性がゼロではありません。
後のトラブル対策として、弁護士などの第三者に同席してもらったり、間に入ってもらったりすることをおすすめします。
裁判所での裁判
浮気相手が慰謝料の支払いに応じない場合や慰謝料額で揉めた場合、そもそも浮気相手が内容証明郵便自体を無視している場合などは、最終的に裁判で慰謝料請求を行うことになります。
裁判で慰謝料請求を求める場合は、裁判官という第三者が介在するため、第三者の目線でも「浮気があった」とわかる証拠を準備する必要があるのです。
浮気の証拠をしっかり準備した上で手続きを進めましょう。
慰謝料請求を有利に進めるために証拠集めを
慰謝料請求の際は浮気の証拠が重要になります。
たとえば浮気相手に「慰謝料を払ってください」といっても、浮気の証拠がなければ「浮気はしていない」「勘違いではないか」と言い逃れされる可能性があるのです。
浮気相手や浮気をした夫(妻)が素直に認めて自主的に慰謝料を払うケース以外では、浮気の証拠をしっかり集め、浮気相手などに言い逃れを許さないかたちで慰謝料請求を進めることが重要です。
また、裁判で浮気相手などに慰謝料請求する場合は、判決を下す裁判官が浮気をしたと判断するに足る証拠がないと、慰謝料請求が認められることは難しくなります。
このように、浮気の証拠はとても重要なものなのです。
浮気の慰謝料を請求する段階で証拠は準備しておくようにしましょう。
浮気の証拠としては次のようなものがあります。
- ・探偵の調査報告書
- ・写真
- ・映像
- ・メールやSNS
- ・日記や手記、スケジュール帳
- ・領収書やクレジットカード明細
- ・通話履歴 など
浮気相手と会っていることを証明するだけの証拠は力が弱いため、「浮気相手との肉体関係」を示す証拠を探すことが重要です。
ただ、力の弱い証拠もいくつも集めることで力を持ったり、他の証拠を補強したりできます。
夫や妻の浮気に関係しているものは可能な限り証拠として収集する。
その上で、慰謝料請求の前の段階で証拠を精査しておくといいでしょう。
まとめ
夫や妻が浮気をした場合、慰謝料請求が可能です。
慰謝料の相場は50~300万円という結果ですが、浮気のケースや夫婦の事情によって相場が変わってくる点に注意が必要になります。
慰謝料請求自体は可能でも、浮気の基準や証拠の有無によって慰謝料請求が難しいケースもあるため、合わせて注意が必要です。
浮気の慰謝料を請求するときは、あらかじめ証拠や方法をよく検討し、しっかり準備してから行いましょう。