不倫してしまった…不貞行為をした側から離婚交渉はできない? | 離婚弁護士マップ
  • tel-button
  • mail-button
top center bottom

不倫してしまった…不貞行為をした側から離婚交渉はできない?

弁護士 鵜飼 大(ウカイ&パートナーズ法律事務所)
監修弁護士:鵜飼 大 先生(ウカイ&パートナーズ法律事務所)

鵜飼先生へのご相談はこちら

この記事でわかること

  • 不倫した側からも離婚請求できる場合があることが理解できる
  • 有責配偶者からの離婚請求が認められる条件を知ることができる
  • 不貞行為をした側からの離婚請求を認めてもらう方法がわかる

不倫したのは悪いと思ってはいても、「妻(夫)と暮らすのはもう無理」「不倫相手と再婚したい」ということもあるでしょう。
しかし、離婚は基本的に不倫等をされて被害を受けた側の配偶者から請求するものです。
みずから離婚原因を作った有責配偶者の側から離婚を請求しても、相手が応じなければ基本的には離婚することはできません。

しかし例外もあり、不貞行為をした側からの離婚請求もまったく認められないわけではありません
今回は、不貞行為をした側からの離婚請求が認められるケースや離婚するためにはどうすればよいのかについて解説していきます。

不倫をした側であっても離婚請求できる場合がある

原則として不倫をした側から離婚請求することはできませんが、例外的に離婚請求できる場合もあります。
例外について解説する前に、まずは離婚請求についてわかりやすく解説していきたいと思います。

離婚請求するためには法定離婚事由が必要

離婚は、基本的に夫婦が話し合い、双方の合意のうえで成立します。
双方の合意を得ないで一方的に離婚するためには法定離婚事由といって、法律に定められている離婚事由が必要です。

法定離婚事由は、民法第770条1項に定められています。
そのうちの一つに、「配偶者に不貞な行為があったとき」(同条項1号)という事由があります。
不貞行為とは、配偶者のある者が、自由な意思にもとづいて、配偶者以外の者と性的関係を結ぶことをいいます
不貞行為をされた配偶者は最終的に家庭裁判所に離婚請求して、裁判によって離婚の可否を問うことができます。

例えば、夫が不貞行為をした場合、その妻は調停で話し合いをしても離婚が成立しないときに離婚訴訟を請求できます。
一方で、夫婦関係の破綻の原因を作った夫が離婚請求をしたとしても家庭裁判所はその請求を却下するのが基本です。
却下される理由として、みずから夫婦関係を破綻した原因を作った夫からの離婚請求は、信義則に反しているためです。
信義則とは、「互いに相手の信頼を裏切らないように誠実に行動すべき」という意味です。
不貞行為をした夫は、妻からの信頼を裏切り誠実を欠いているため、離婚請求できないと考えられています。

婚姻関係が破たんしている場合は離婚請求できる

原則として、婚姻関係の破綻原因を作った配偶者は、離婚請求ができません。
しかし、不貞行為があるより前に、別の原因ですでに婚姻関係が破綻していた場合には、離婚請求できるケースがあります。
民法第770条1項に定められた5つの離婚事由の中に「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」(同条項5号)というものがあります。
例えば、長期間にわたり別居をしている夫婦の一方が異性と性的行為をしたとして、性的行為した時点で婚姻関係が破綻しているとみなされたときには不貞行為にあたりません。

また、不貞行為をした場合であっても、不貞行為後相当な長期間別居していれば、有責配偶者でも離婚請求が認められるケースもあります。
実際に、昭和62年9月2日の最高裁の判決に有責配偶者からの離婚請求が長期間にわたる別居を理由として認容された例があります。
とはいえ、有責配偶者からの離婚請求は容易に認められるものではないことに注意が必要です。

有責配偶者からの離婚が認められる3つの条件

昭和62年の最高裁の判決では、有責配偶者からの離婚請求が認められるにあたり次のような条件が提示されました。

  • ・長期間の別居をしていること
  • ・未成熟子がいないこと
  • ・相手方が離婚によって過酷な状態におかれないこと

最高裁の判決を受け、昭和62年以降の裁判例でも、概ねこの3つの条件を満たすかどうかを個別の事情を考慮しつつ判断し、判決が出されています。
3つの条件について、もう少し詳しく確認していきましょう。

長期間の別居をしていること

夫婦が理由もなく別居していることは、夫婦の同居・扶助・協力の義務に反しているので、婚姻関係が破たんしていることを示す事由の一つです。
別居が長期間に及べば及ぶほど、婚姻関係の破たんが認められやすくなります。
不貞行為をした側からの離婚請求が認められやすくなる方法として、ある程度の期間別居を継続するということが考えられます。

どれくらいの期間別居が続けば離婚が認められるのかは、婚姻期間の長さや夫婦の事情等によって異なるので、一概にいうことはできませんが、一つの目安としては5年から10年程度といわれています。
裁判例では、6年の別居で離婚が認められたケースもあれば、17年の別居で離婚が認められなかったケースもあります。

未成熟子がいないこと

未成熟子とは、経済的に自立していない子どものことをいいます。
つまり18歳でも就職して定収入があれば未成熟子ではなく、18歳より年上でも進学や障害がある等の事情で自立できていなければ未成熟子であると判断されます。
夫婦間に未成熟子がいる場合は、離婚によってその子の生活や精神に及ぼす影響の程度が大きくなります。
そのため、たとえ婚姻関係が破たんしていても、有責配偶者からの離婚請求は認められにくくなります。

ただし、未成熟子がいれば離婚請求が一切認められないわけではありません。
十分な養育費を支払う等して妻子の生活に配慮し、社会正義に反しない状況を作ることができれば、離婚が認められることもあります。

相手方が離婚によって過酷な状態におかれないこと

有責配偶者からの離婚請求を認めると、一般的に相手方が精神的・社会的・経済的に苛酷な状態におかれる可能性が高くなります。
夫に不倫をされたうえに離婚までされたのでは、何の非もない妻が多大な精神的ダメージを受けるのは当然です。

また、専業主婦(夫)をしていた場合、離婚後に定職に就き、正社員として働こうと思っても年齢制限等によって就ける職業は限られてしまう可能性があります。
相手方を過酷な状態においてまで有責配偶者からの離婚請求を認めることは、社会通念上、正義に反するため許されません。
そのため、有責配偶者からの離婚請求が認められるには、慰謝料や財産分与、養育費の支払い等で十分に相手方に配慮することが必要です。
お金による解決法が中心となりますが、相手方を過酷な状態におかないことが重要なのです。

離婚条件を決めておこう

「長期間の別居」・「未成熟子がいない」・「離婚後に自身の配偶者が過酷な環境におかれない」という3つの条件を満たした場合には、有責配偶者であっても最終的に裁判で離婚できる可能性が高くなります。
とはいえ、裁判で離婚が認められるには相当数の時間がかかることが予想されます。
「時間がかかっても最終的に離婚が認められればいい」という方であれば、別居の実績を積み重ねていけばよいですが、そのような考えのひとよりも「10年も20年も待てないから早く離婚したい」と思うひとの方が多いのではないかと思います。
そんなときに考えられる手段として離婚協議や離婚調停の場で離婚を成立させる方法があります。
離婚協議や離婚調停であれば、夫婦双方の合意によって離婚が成立するので、有責配偶者であっても離婚の交渉を行うことができます。
ただし、有責配偶者から離婚を切り出す場合、相手方が離婚に合意しなければ、前述のとおり裁判による離婚へと発展してしまうので、相手方の気持ちに寄り添い、かつ納得するような離婚条件を提示することが大切です。

慰謝料

有責配偶者が協議や調停によって離婚したい場合、提示すべき交渉材料として慰謝料があります。
不貞行為は、夫婦の双方が負う貞操義務に反している行為です。
不貞行為によって精神的苦痛を受けた場合、相手方は慰謝料を請求することができます。
相手方が「離婚しない」として慰謝料を提示してこなかった場合には、自分から慰謝料を支払う意思をみせ、具体的な金額について交渉することが大切です。
交渉するときには、あくまで「相手に交渉してもらう」という姿勢で、相手方の感情を逆なでするような発言は避けましょう。
なお、不貞行為が原因で離婚する場合の慰謝料は、100万円~300万円程度が相場といわれています。
ただし、慰謝料は不貞行為をした期間の長さ、婚姻期間の長さ、収入の高さによって大きく異なりますので、あくまで目安として考えましょう。

相手方が婚姻継続の意思を持っている場合、納得させるための解決金が上乗せとなり、本来の慰謝料の金額より高くなる傾向にあります。
更に付け加えれば、「不貞行為を許せない」と相手方が強く思った場合、支払い能力を超えた高額な慰謝料を提示される可能性もあります。
このような場合、相手の感情に考慮しながら、慰謝料の引き下げの交渉も行わないといけないケースもあります。

財産分与

財産分与とは、夫婦が婚姻中に協力した築いた財産、共有財産を分け合うことをいいます。
財産分与の基本的な考え方は、離婚原因に関係なく、夫婦ふたりで半分ずつ分け合います。
ただし、夫婦の一方が専業主婦(夫)で、離婚後、経済的に困窮することが予想される場合には、相手方の離婚後の生活保障する意味を持つケースもあります。
また、慰謝料を財産分与の割合で支払う、慰謝料的財産分与という方法もあります。
本来、慰謝料と財産分与はまったく別の性質を持ちますが、同じお金の問題には変わりないので、一緒に考えることもあります。

養育費

子供の親権を配偶者が取得した場合、ご自身には養育費の支払い義務が生じます。
親子には法律上の扶養義務があります(民法第877条1項)。
扶養義務とは、経済的に自立していない子供に対し、金銭的に援助を行うことです。
離婚した場合、非親権者は養育費というかたちで扶養義務を果たすことになります。
養育費の支払い義務と離婚原因は本来まったく別の問題です。
離婚して非親権者となったとしても、子供にとって法律上の親であることには変わりありません。
つまり有責配偶者だろうがなかろうが、子供の親である以上、お金を支払う必要があるのです。

とはいえ、養育費の支払い率は非常に低いです。
また、今回の場合不貞行為によって、相手方の信頼を裏切っている立場です。
「養育費をちゃんと支払うし、子供には苦労させない」と約束したとして、相手方の心情的にその言葉を信じられるでしょうか。
養育費の支払いを取り決める場合には、自分で率先して、「強制執行のできる公正証書」で養育費の約束をとりまとめようと提案することもひとつの手段かと思います。
信用がゼロの状態であっても、将来的に強制執行のできる状態であれば、相手方も納得して離婚を了承してくれるかもしれません。
また、強制執行認諾文言付きの公正証書をまとめる際には、自身の給与口座の情報や、勤めている会社の情報を伝えておくとよいと思います。
「しっかり払う」ということを、法律的に有効な方法で示すことで、失われた信用がある程度回復する可能性もありますので、ご検討ください。

子供との面会交流

非親権者は、離婚後に離れて暮らす子供と定期的に会ったり、連絡を取ったりして交流する権利があります。このことを面会交流権といいます。
面会交流は会う頻度や時間、場所、方法等は夫婦の話し合いで自由に取り決めることができます。
子供との面会交流は、子供の権利であり、非親権者の権利でもあるので、不貞行為を理由に相手方が制限することは、基本的に許されません。
しかし、心情的に割り切れず相手方が「不貞行為した」ことを理由に面会交流を断ってくるケースは少なくありません。
そのような場合に、相手方と争うと離婚までの期間が長くなってしまう可能性が高くなります。
そのため面会交流を取り決める場合でも、相手方の心情に配慮し、子供を引き渡しする際にはなるべく双方が顔を合わせる時間を短くなるよう便宜を図ったりする等、面会交流する場合についてのルールを決めることが大切です。

不貞行為した側が弁護士に依頼する際の注意点

自身が不貞行為をして有責配偶者となり、離婚を希望する場合、相手方の心情に配慮しながら離婚条件を提示することが大切です。
しかし、金銭的に相手方の要求をすべて受け入れるわけにもいかないケースもあるでしょう。
また、当事者同士で話し合う場合、どうしても感情が先行し、離婚条件を提示する以前に話し合いにならない場合もありえます。
そんなときには、法の専門家であり、交渉術にたけている弁護士に依頼することを検討しましょう。
協議離婚はもちろん、調停や裁判で離婚するにあたり、自身の望む結果を得ようと思うのであれば相応の準備が必要です。
しかし、離婚の準備には専門的な知識が必要で、自力では困難なケースもあります。
そんなときに弁護士に依頼すれば、適切なアドバイスをくれたり、自分の主張を代弁する代理人になってもらったりすることができます。

ただし、弁護士に依頼したからといって、「不貞行為をした」有責配偶者である立場は変わりませんので、必ずしも自分の思い通りの結果を得られるというわけではありません。
ここでは、不貞行為をした有責配偶者が離婚について弁護士に依頼する際に注意すべきポイントをご説明します。

不貞行為の証拠の有無を探る

弁護士に依頼する場合、相手方が不貞行為の証拠となるものを持っているのかどうかを確認し、伝える必要があります。
不貞行為の証拠の有無は、弁護士が弁護の方針を決めるにあたりとても重要です。
相手方が不貞行為の証拠を持っていない場合、立証が乏しいとして、相手方の慰謝料請求に応じなくてもよいケースがあります。
また、慰謝料の請求に応じたとしても、低い金額に抑えられることもあるのです。

一方で、相手方が不貞行為の有力な証拠を掴んでいる場合、「あくまで認めない」というスタンスをとるよりも、不貞行為を認めたうえで離婚条件の交渉を行うこともあります。
弁護の方針については依頼者の希望が反映されますが、弁護士が状況を正確に把握することによって、依頼者の希望とする結果を得るための選択肢が増える可能性があります。
相手方も手の内をすべてみせてくるとは限りませんが、正確な情報を伝えることで、より状況にあった弁護方法を提示してもらえる可能性が高くなります。

結婚から現在までに至る流れがわかるようなメモを準備しておく

弁護士に相談する際には、結婚から現在、離婚を検討するに至る流れを準備しておくと良いでしょう。
有責配偶者であっても、夫婦の状況や関係性によって慰謝料の減額が望めたり、離婚交渉がしやすくなったりする可能性があります。
また、弁護士に相談するにあたって大切なことは、言いにくいことでも事実をしっかり伝えることです。
隠しごとをしたまま弁護を依頼し、いざ相手方との交渉段階や、調停段階でその事実が発覚すると、その後の交渉が不利になる可能性もあります。
弁護士と依頼者のあいだには、信頼関係が必要です。
信頼関係というのは、一方的なものではなく双方が信じあわなければ成り立ちません。
そのため、言いにくいことを隠すのではなく、しっかり伝えられる弁護士に依頼した方が良いでしょう。

まとめ

不貞行為をした側からの離婚請求を認めてもらうためには、時間をかけるかお金をかけるかによって代償を支払うことがどうしても必要になります。
しかし、婚姻関係が破たんしたのに無理に夫婦であり続けることは、配偶者にとっても望ましいことではないでしょう。

そのことを相手に理解してもらえれば、裁判ではなく、協議や調停によって離婚が成立することもあります。
協議や調停で離婚を成立させるためには、相手方との交渉や法的知識が重要になりますので、お困りの際には弁護士によるサポートを検討しましょう。

監修弁護士
中野 和馬

東京弁護士会

中野 和馬
石木 貴治

東京弁護士会

石木 貴治
山谷 千洋

東京弁護士会

山谷 千洋
堀 翔志

第二東京弁護士会

堀 翔志
水流 恭平

東京弁護士会

水流 恭平
福西 信文

東京弁護士会

福西 信文
川﨑 公司

東京弁護士会

川﨑 公司
大橋 正崇

弁護士法人AO

大橋 正崇
鵜飼 大

ウカイ&パートナーズ法律事務所

鵜飼 大
監修弁護士一覧
弊社が選ばれる3つの理由
離婚について知る