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【実例解説】離婚調停で父親が親権を取った事例と勝訴につながる5つのポイント

【実例解説】離婚調停で父親が親権を取った事例と勝訴につながる5つのポイント

この記事でわかること

  • 親権争いについての現状がわかる
  • 父親が親権を勝ち取るためのポイントがわかる
  • 父親が実際に親権を獲得できた例がわかる

日本での親権争いは、圧倒的に母親が有利だと言われています。

しかし、父親が親権を持つのも不可能ではなく、実際に父親が親権を獲得した事例も増えてきています。

この記事では、父親が親権を勝ち取るためのポイントと、父親が親権を勝ち取った事例について紹介します。

客観的に見て自分の方が親権者として適していると考えるのであれば、できる限りの対策をして親権争いに臨みましょう。

父親が親権を取るのは困難?

離婚するときに未成年の子供がいる場合は、親権者を決める必要があります。

親権者は離婚届に記入が必要で、戸籍にも記載されるものなので、これを決めない限り離婚はできません。

日本では、親権者が母親になるケースが8割を越えていると言われています。

夫婦で納得して母親を親権者にするケースも多いですが、父親が親権者になることを望んだとしてもなかなか勝ち取ることができないという現実があります。

それは一体なぜでしょうか。

親権者はどうやって決めるのか

父親が親権者争いで不利になる理由を知るために、親権者を決めるときの要因と合わせて説明します。

監護についての意欲や能力

監護というのは、子供などの世話が必要な人に対して、そばにいて実際に世話をすることです。

この監護についての意欲や能力のレベルが、親権者を決めるときのポイントになります。

意欲や愛情があるのは当然のこととして、実際に監護できる能力があることも求められます。

能力というのは、単に家事能力等のことを指しているだけではなく、監護できる環境が整っているかどうかも大切です。

父親が不利になるのは、監護できる環境でない場合が多いことも理由にあります。

父親は通常、母親よりも長時間仕事で外出していることが多く、物理的に子供を監護できる時間がないと判断されるためです。

継続性の重視

子供の養育環境をできるだけ現状のまま継続させることを優先するという原則があります。

現状の子供の養育環境に問題がなければ、子供の環境をできるだけ変化させないために、これまで子供を主として監護してきた親を優先させます。

日本の多くの家庭では、母親が主となって子育てをしているため、この原則を理由に父親が不利になるケースが多くみられます。

子供の気持ちや事情

子供の年齢や性別、心身の状態といった事情が親権に影響を与えます。

「幼い子供には母親が必要」という考え方が日本ではいまだに浸透しており、子供の年齢が低ければ低いほど、母親が有利になる傾向があります。

子供が女の子で思春期に近い場合などは、子供の心身のケアを考慮して母親が必要と判断され、母親有利となる傾向もあります。

また、子供が父親と母親のどちらに懐いているか、どちらと精神的な結びつきが強いかなども考慮されます。

この点でも、一般的に母親の方が子供と過ごす時間が多いことなどから母親への愛着が強くなる傾向があり、父親が不利になることが多くなります。

子供がある程度の年齢(15歳位以上)であれば、子供の意見も尊重されます。

子供が父親との生活を望めば、父親が親権を得られる可能性が高くなります。

きょうだい不分離の原則

子供が複数人いる場合には、分離させずに親権者を同一にして一緒に養育するという原則があります。

これは子供の情緒面を考慮しているといえます。

両親の離婚だけでも子供を傷つけることになるため、さらにきょうだいと離れ離れにしてしまうのは酷なことです。

複数の子供を一人で監護できる環境の父親は限られていることや、複数の子供のうち低年齢の子供がいると母親が優先になることなどから、この点でも父親は不利と言えるでしょう。

先例の影響

裁判所の判断は、先例を踏襲することが多くなります。

これまでの裁判所における親権争いでは、母親が親権を勝ち取ったケースが父親に比べて圧倒的に多いです。

母親に決定的な問題がある場合は別として、多少の問題があったとしても母親が親権を取るケースがほとんどでした。

そのため、先例の影響で母親が有利であることは否定できないでしょう。

経済力はそれほど重視されない

子供の養育にはお金がかかるため、親権者の決定に経済力が大切だと考える人もいますが、実際にはそれほど重視されていません。

これは、親権者であろうがなかろうが、子供の養育費は分担する義務があるため、経済力がない親が親権者になった場合でも養育費を得ることで不足分を補うことができると考えられるからです。

そのため、経済力を理由に父親が優位に立てるというケースは思いのほか少ないです

ただし、子供が経済的に安定した環境で生活できるかどうかは大切なことです。

例えば、母親に借金癖があったり、ギャンブル依存症である場合などは、養育費を適切に管理する能力もないと考えられ、経済的に問題のない父親が有利になる可能性が高いでしょう。

父親が親権を勝ち取った3つの事例

それでは、実際に親権を勝ち取ることができた事例を見ていきましょう。

父親が親権を勝ち取った3つの事例

  • ・手のひらでひっぱたく
  • ・母親が育児放棄していた事例
  • ・子供自身が父親との生活を強く望んだ事例
  • ・母親が一人で家出して別居した事例

母親が育児放棄していた事例

母親が育児放棄していたことにより、父親が親権を勝ち取った事例です。

母親の不貞行為が原因で夫婦は離婚することになりました。

母親は不貞相手と会うために、未就学児の子供を一人で留守番させるなど、育児放棄の状態が起きていました。

子供が一人で部屋で泣いており、近所の人から児童相談所に通報されることもありました。

このような状態についての証拠を揃え、母親との交渉をした結果、不貞行為や育児放棄について口外しないことと引き換えに親権は父親に譲るという条件で合意し、父親が親権を勝ち取ることができました。

父親は親権の獲得を重視したため、不貞行為についての慰謝料請求も放棄しました。

子供自身が父親との生活を強く望んだ事例

子供の強い希望により、父親が親権者になったケースです。

中学生の子供と小学校低学年の子供がおり、母親が勝手に子供を連れて実家に引っ越してしまいました。

母親が離婚と親権を求めて調停を申し立てましたが、不成立となりました。

協議を続けるなかで、上の子は、以前から父親に勉強を教わっているなど父親との関係が良好であったことや、母親と暮らすと今の学校に通学を続けるのが難しくなることなどから、父親との生活を選びました。

ある程度の判断能力がある中学生の子供の意思なので、母親も上の子の親権については諦め、父親が親権を取ることができました。

ただし、小学校低学年の下の子供については母親が譲らなかったため、下の子供の親権者は母親となりました。

面会交流についてはきちんと取り決め、兄弟での交流も続けられるようにしました。

母親が一人で家出して別居した事例

母親がある日勝手に家を出てしまい、父親が子供を監護していたケースです。

母親は家族を残して勝手に家を出てしまいました。

数日後に連絡はとれたものの、帰ってくるように説得するも戻ってくることはありませんでした。

父親は自分の両親の協力を得ながら子供の養育を続けました。

そのまま数か月が経ち、父親が離婚と親権を求めて調停を申し立てました。

調停では、現状父親が子供の監護者となっており、問題なく生活できていることを主張し、調停委員の心証も父親優位であるように見受けられました。

結局調停は不成立となりましたが、自分が不利なことを察した母親は親権を諦め、協議離婚により父親が親権を勝ち取ることができました。

父親が親権を勝ち取るための5つのポイント

それでは、親権争いで不利な父親が親権を勝ち取るにはどのようにすればよいのでしょうか。

それには、いくつかのポイントがあります。

父親が親権を勝ち取るための5つのポイント

  • ・父親が子供の監護の実績を作る
  • ・父親の養育環境を整える
  • ・できるだけ別居は避け、別居の場合でも子供との面会を続ける
  • ・母親に問題がある場合、証拠を揃える
  • ・父親が子供から親権者に選ばれる努力をする

それぞれのポイントについてみていきましょう。

ポイント1:父親が子供の監護の実績を作る

離婚までに子供の監護をしている親は、親権争いで有利になります。

上述した通り、親権争いにおいては「継続性」が重視されるために、それまで監護していた親がそのまま親権者になることが認められやすいからです。

監護した実績を主張するために、育児日記などをつけ、毎日具体的にどのような育児を行ったかを記録しておきましょう。

また、できるだけ子供と接する時間を長く続く作り、子供に対して愛情をもって接し、信頼関係を築く努力をしましょう。

子供の日々の成長も記録しておくのがおすすめです。

ポイント2:父親の養育環境を整える

子供を養育できる環境を整えることが大切です。

父親が親権を取りにくい理由の一つに、母親よりも仕事で外出する時間が長く子供の世話をできる環境でないと判断されることがあります。

そのような場合、保育施設に預けることに加え、自分の両親などに子育てのサポートをしてもらえるようにすることで、不足が補えることをアピールすることができます。

自分の両親などにサポートを依頼できるかどうかは事前に確認し、子供と積極的に関わりを持っておいてもらいましょう。

最近では、職場内に保育施設が整備されている企業もあり、そのような企業に勤めている場合もアピールできるでしょう。

周囲のサポート体制が整っていることは親権争いに有利に働きます。

ポイント3:できるだけ別居は避け、別居の場合でも子供との面会を続ける

離婚前に別居をする夫婦は多く、その場合、多くが子供は母親のもとにいることとなります。

そうなると、「継続性」が重視されるためにそのまま母親が親権を取れる可能性がとても高くなります。

親権を望む場合、できる限り子供と別居になることは避けましょう。

ただし、子供と別居にならないために、子供を勝手に連れていくことはおすすめできません。

違法な連れ去りとみなされる可能性や、子供の気持ちや生活を混乱させてしまうこととなり、かえって不利になることがありますので注意してください、

夫婦できちんと話し合い、父親が子供と暮らすことに夫婦で合意したうえで、子供を連れて別居するようにしましょう。

ただし、母親が暴力をする恐れがあるなど、子供を残していくのが危険な場合には合意がなくても子供を連れていきましょう。

逆に、母親が勝手に子供を連れて出ていく場合も考えられますが、それを無理に連れ戻すことは難しくなります。

理不尽ではありますが、母親が勝手に子供を連れ出す行為が問題視されることは少なく、それを父親が無理やり連れ戻す行為は問題視されることが多いのです。

母親が勝手に子供を連れだそうとしたら、できるかぎり阻止し、強行されたときはすぐに調停を申し立てて、監護者をどちらにするかを争うなどの対応をしましょう。

そして、やむを得ず子供と別居になった場合でも、子供との面会や交流は継続しましょう。

別居になったとしても、子供の監護に対する意欲があること、面会を希望していることはアピールし続ける必要があります。

面会した時は、日時や内容、子供の様子などを記録しておきましょう。

ポイント4:母親に問題がある場合、証拠を揃える

母親に問題があり、子供の養育を任せられないと感じるために親権を望む場合もあるでしょう。

たとえば、母親が不貞行為をしており子供の世話そっちのけで育児放棄になっているケースや、母親がDV加害者であるといったケースがあります。

そのような場合、母親に問題があり、親権者として不適格であることの証拠をできるだけ揃えておきましょう。

ただし、たとえ母親が不貞行為をしていても、子供の世話はしっかり行っているような場合では、親権争いにおいてはそれほど父親が有利になるとは言えません。

親権者として不適格なことと、配偶者として不適格なことは別問題だからです。

DVに関しては、たとえ子供に直接暴力を奮っていない場合でも、子供の養育者としての適性に問題があると判断されることがあります。

ギャンブル依存症やアルコール依存症なども親権者として不適格と判断される可能性が高いでしょう。

精神的な問題を抱えており、育児できる心身の状態ではない場合にも、親権者として不適格と判断されることが多いです。

ポイント5:父親が子供から親権者に選ばれる努力をする

子供が両親のどちらに懐いているのか、どちらとの暮らしを望んでいるかもポイントになります。

特に、子供がある程度分別のある15歳以上に達している場合には、子供の意思が重視されます。

そのため、子供とは日頃からしっかりとコミュニケーションを取り、信頼関係を築いていく努力が必要です。

ただし、子供に対してだけ優しく振る舞っていても、母親とののしり合っている姿などを見せてしまうと、子供に恐怖心を与えてしまう可能性があります。

子供はとても敏感なので、そのような姿を子供に見せることは避け、自分自身の心身の安定を保つように心がけてください。

たとえ長時間一緒に過ごすことができない場合でも、子供から信頼され、一緒に暮らしたいと思ってもらえるような存在になるように努めましょう。

父親が親権争いに負けてしまった場合に取るべき行動

親権を取るために努力をしても、残念ながら希望がかなわないケースも多々あります。

そのような場合には、どうすればよいでしょうか。

面会交流について取り決める

離婚して親権を取れなかった場合でも、子供と面会交流する権利があります。

これは親にとっての権利ですが、子供にとっての権利でもあります。

また、面会交流を続けることは、子供の健全な育成にとっても大切なことです。

面会交流することができれば、親権者になることができなくても子供と関わり続けることができます。

面会交流については、面会交流の回数、場所、方法などを具体的に決めて、書面に残しておくことが大切です。

母親に問題があれば、親権者変更の申し立てもできる

親権者が一度決まるとそれを変更するのはハードルが高くなります。

それでも、母親に親権者として不適格と判断されるような問題や事情がある場合には、親権者変更の申し立てをすることもできます。

離婚後であっても、親権者を変更できる可能性があることは覚えておきましょう。

養育費はきちんと支払う

母親が親権者となり子供を養育することになった場合、父親は養育費を支払う必要があります。

養育費の支払いをしなくなる父親も多いですが、これは子供のためのお金ですのできちんと支払うようにしましょう。

養育費を支払わなくなると、面会交流させてもらえなくなるケースが多くなりますので、その意味でもしっかりと支払いを続けましょう。

まとめ

父親が親権を勝ち取ることは容易なことではありませんが、可能性はありますので、ポイントを理解したうえでできる限りの努力をしましょう。

そして、常に子供にとってどちらが親権者として適切か、という視点は忘れないようにしましょう。

父親たちの努力が積み重なることで、父親が親権を勝ち取る前例が増えていき、母親が親権を取るのが当たり前という世の中は少しずつ変わってくるのではないでしょうか。

監修弁護士
中野 和馬

東京弁護士会

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石木 貴治

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