この記事でわかること
- コロナウイルスの影響による外出規制などをきっかけとした家庭内不和が増えている。
- コロナ関係の離婚の理由としては、一人の時間がないこと、危機意識の相違などがある。
- 夫婦間で合意すれば、どのような理由でも離婚は可能
- 裁判による離婚では、価値観の違いによる離婚は難しく、コロナ関係で離婚できるのは重度のDVがあるようなケースに限られる。
このところ「コロナ離婚」という言葉を耳にするようになりました。
一見関係なさそうな新型コロナウイルスと離婚ですが、一体どのような理由から離婚を考える人が増えているのでしょうか。
コロナショックで離婚を考え始めた人が増えてきた
新型コロナウイルスの感染拡大が続き、政府による様々な感染拡大防止対策が打ち出されています。
そんな中、政府の要請する「外出自粛」「学校休校」「テレワークによる勤務」が家庭生活に思わぬ悪影響を及ぼしていることにも注意が必要です。
これらの要請により、家族全員が終日家に閉じこもる生活を余儀なくされ、家庭内不和を引き起こしているのです。
普段であれば円満に過ごしていた夫婦ですら、新型コロナウイルス感染拡大の恐れから派生するトラブルが発生し、離婚を考えているケースが増えています。
離婚を考える理由7つ
新型コロナウイルスに関連した離婚を考える理由とは、いったいどのようなことがあるのでしょうか。
主な理由として7つ紹介します。
常に一緒にいることでストレスを感じる
気心の知れた相手であっても、常に一緒に過ごして自分一人の時間がなくなると、誰もがストレスを感じます。
定年退職後の熟年離婚にも通じますが、一日中一緒に過ごすことが夫婦関係を悪化させるケースは多いのです。
このところ、外出自粛やテレワーク推進、学校の休校による影響で、これまでになく家族全員が一日中在宅する状況になっており、多くの人がストレスを溜めています。
長時間一緒に過ごすと、今まで気にならなかった相手の欠点や癖などが目に付くようになります。
また、相手から自分の行動を監視されているような気持ちになり、息が詰まることもあるでしょう。
そのようなことにより、とにかく一人になりたいという気持ちが強くなり、離婚を考えるまでに至ってしまうケースがあります。
危機意識の相違
新型コロナウイルスに対する危機意識は、人によって大きく異なります。
未知のウイルスに対するとらえ方の違いが、今まで気づかなかった身近な人との価値観の違いを浮き彫りにしています。
一般的に、女性は保守的で危機意識が高いことが多く、男性は女性よりも危機意識が低い傾向があります。
妻が必死に感染防止対策を徹底しているのに対し、夫がそれらに対して真剣に取り組んでいないケースも見受けられます。
それにより、妻は夫のいい加減さ、家族への配慮のなさに憤りを感じることがあります。
また、夫は慣れないテレワークなどで四苦八苦する中、妻から過度なコロナ対策を要求されることを口うるさいと感じ、ストレスになることがあります。
このような経験を通じて、配偶者との価値観の違いが鮮明となり、もう一緒に生活していけないと感じるケースもあります。
神経質が加速する
連日新型コロナウイルスに関するネガティブな情報が入ってくる中、多くの人の心は疲弊し、神経質になっています。
いつ自分や家族が得体の知れないウイルスに感染するかわからない状況では、神経質が加速してしまうのも自然なことです。
手洗いうがい、除菌などについて神経をとがらせている人も多いでしょう。
神経が過敏になった状態だと、少しのことでも気に障り、大きな不安や苛立ちを感じてしまうものです。
そのため、普段なら気にならない配偶者の言動が目について、大きなストレスを感じたり、相手に攻撃的な物言いをしてしまったりすることがあります。
一人が神経質になると、一緒に過ごす家族にも影響を与え、家庭内の雰囲気がピリピリとしたものになってしまいます。
ただでさえストレスが溜まる状況の中、神経質な人と暮らすことを苦痛に感じ、離れたいと思う場合もあるでしょう。
育児のストレスが増える
子供が休園・休校になることで、一日中家にいて今までになかった育児に関することが増え、生活のペースが乱れます。
自分の子供でも、一日中一緒に過ごして息抜きする時間がないのは大きなストレスとなります。
家事や仕事をしながら、育児の負担が加わるのは、並大抵のことではありません。
そのうえ、配偶者が育児に協力的でない場合には、より強い不満を感じるでしょう。
テレワーク中も子供に邪魔されてしまい、仕事に集中できない場合もあります。
特に、夫婦どちらもテレワークをしている場合は、家事や育児も公平に分担すればよいのですが、それができていないと負担の多い側は不公平感からストレスを感じます。
緊急事態でさえ非協力な配偶者なら別れたい、という気持ちになる人が増えることは容易に想像できます。
生活に対する不安
いつまで続くのかわからないコロナウイルスの影響で、生活に不安を感じる人も多いでしょう。
特に、自分や配偶者が影響を受けやすい業種に就いている場合には、失業や減給などの不安が大きくなります。
また、単純に家族が三食必要になることで食費が増加するなどして、家計に影響を与えることもあるでしょう。
経済的な不安を感じ、配偶者と家計の話をしようとしても相手がまともに取り合ってくれずに悩んでいるケースもあります。
自分も不安な状況の中、配偶者から家計の話をされると、自分が責められているように感じて憤りを感じる人もいるでしょう。
そのようなことから、配偶者との喧嘩につながることも多くなります。
普段の夫婦間のコミュニケーション不足
普段から夫婦間のコミュニケーションがうまくいっていない場合、非常事態にうまく協力体制をとることができず、一緒に過ごすことがストレスとなります。
夫婦関係が多少冷え込んでいても、普段の生活であればお互いに自由に過ごすことで気分転換しながらバランスを取り、それなりに家庭が上手くいっているという夫婦も意外と多いものです。
そのような夫婦の場合、気分転換ができず一日中同じ空間で過ごすことで、強いストレスを感じます。
これまでうまく保っていた気持ちのバランスが崩れて、別居や離婚をするしかないと考える可能性があります。
DVやモラハラの被害に遭うようになった
新型コロナウイルスの影響で外出規制を実施している国では、DVやモラハラの相談が急増しています。
自由に出歩くことができない状況が続くと、人は想像以上に強いストレスを感じます。
ストレスを溜め込むと、普段は温厚な人でも暴力的、攻撃的になることがあります。
その標的が身近な存在である配偶者になるケースが多く、DVやモラハラが増加していると考えられます。
ただでさえ不安な状況の中、DVやモラハラの被害を受けるのは非常につらいものです。
身の危険を感じるようなDVを受けている場合には、自分の心身を守ることを最優先し、すぐに専用窓口に相談しましょう。
コロナが理由で離婚ができるのか
新型コロナウイルスの感染拡大を発端として離婚を考える人が増えていますが、そもそも離婚は認められるのでしょうか。
夫婦間で合意すれば理由は問われない
夫婦間で合意して協議離婚する場合には、離婚理由は問われません。
たとえば、コロナウイルスに対する危機意識が違いすぎる、お互いテレワークをしているのに家事分担が不公平、単に長時間一緒にいるのが苦痛など、どんなことでも構いません。
実際、離婚理由の一位は、「価値観の違い」です。
ただし、相手が同意してくれなければ協議離婚はできません。
その場合、離婚調停、訴訟へと進めていくことになります。
離婚調停は家庭裁判所に申し立てを行い、調停委員を交えて夫婦間の意見の調整を行っていくものです。
その結果、夫婦の意見が離婚ということで一致すれば離婚が成立しますが、どちらかが離婚に合意しなければ調停は不成立となります。
調停不成立後に裁判に進んだ場合、調停とは異なり裁判官が最終的に離婚の可否を判断することになります。
たとえどちらかが離婚に合意しなくても、裁判官が離婚を認めれば離婚が成立します。
裁判になると法定離婚事由が必要
離婚裁判まで進んだ場合、裁判官が離婚の可否を判断することになりますが、どのような場合に離婚が認められるのでしょうか。
裁判で離婚が認められるためには、「法定離婚事由」があることが必要です。
法定離婚事由には、次のものがあります。
- ①不貞行為
- ②悪意の遺棄
- ③3年以上の生死不明
- ④回復の見込みのない強度の精神病
- ⑤その他婚姻を継続しがたい重大な事由
この中でコロナ関連の離婚が認められるとすると、5つ目の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当する場合になるでしょう。
これに該当するかどうかは、①から④までの離婚事由と同じくらい深刻なものであり、夫婦関係が破綻していると認められることが必要です。
具体的にどのような場合に認められるかというと、重度のDVやモラハラが行われているようなケースです。
また、コロナ以前から長期間の別居をしており、実質的に夫婦関係がすでに破綻していた場合にも認められることがあるでしょう。
コロナウイルスに対する危機感の違いや、テレワーク中の家事分担の不公平感、長時間一緒に過ごすのが苦痛というだけの理由では、裁判による離婚は認められる可能性が低いのが実情です。
いわゆる「価値観の違い」による離婚は、裁判では難しいのです。
まとめ
コロナに関連して離婚を考える理由にも様々なものがあります。
共通するのは、非常事態による日常生活の変化で心に余裕のない人が増え、相手に対し不寛容になってしまっていることがあるでしょう。
コロナ危機をきっかけに、夫婦関係を今一度見直すことも大切です。
価値観の違いがコロナの影響による一時的なものなのか、根本的なものなのかを見極めたうえで、離婚を望む場合には準備を進めていきましょう。