この記事でわかること
- 離婚の前に準備しておきたいことがわかる
- 離婚が決まってからすることがわかる
- 離婚の話し合いの大事なポイントがわかる
離婚には準備と時期が大切
離婚は衝動的にするべきではなく、しっかりと段取りを立てて準備を行い、適切なタイミングですることが大切です。
離婚届を出す前に、準備が整っているのか冷静に考えましょう。
金銭面でのトラブル
準備をせずにすぐに離婚してしまうと、あとで金銭面でのトラブルが起こることがあります。
トラブルとしては、次のようなものがあります。
- ・相手に離婚原因(不貞行為、DVなど)があるのに、本来請求できるはずの慰謝料をもらうことができない。
- ・財産分与で本来分与してもらえるはずの財産をもらうことができない。
- ・離婚後に経済的な自立ができず、生活に困窮してしまう。
このような事態にならないためには、事前にしっかりと準備をすることが大切です。
子供に関するトラブル
未成熟の子がいる場合、子供に関するトラブルが起こることがあります。
たとえば、次のようなトラブルです。
- ・親権争いになり、子供の親権をあきらめざるを得なくなってしまう。
- ・子供の親権はとれたが、元配偶者が養育費を支払ってくれない。
- ・面会交流について取り決めていないため、離婚後も元配偶者と揉めてしまう。
このような事態は子供にとっても悪影響となりますので、しっかり準備をして子供の気持ちにも配慮しましょう。
離婚前にやることリスト~離婚を有利にするために~
自分の中で離婚の決心がついても、それを相手に切り出す前に、準備しておいた方がよいことがあります。
(1)相手に原因がある場合は証拠を集める
相手に離婚原因がある場合は、離婚を切り出す前に証拠を集めておくことが大切です。
離婚を切り出してから集めようとしても、相手が警戒して証拠を隠したり処分してしまう可能性があります。
また、証拠がなければ、慰謝料を請求することは難しくなり、相手が離婚を拒否した場合にも離婚が難しくなります。
具体的な証拠となるものには、次のようなものあります。
不貞行為をされた場合
不貞行為の証拠としては、肉体関係を確認、または推認できるものが必要です。
不貞行為の具体的な証拠となるもの
・写真や動画
写真や動画は、単にデート中のツーショット写真などでは証拠にならず、二人でラブホテルに出入りしているものや、二人で一緒に服を脱いでベッドにいるもの等であれば証拠となりえます。
ただし、直接的な証拠とはならない場合でも、交渉材料やほかの証拠の補足になる可能性があるので、二人で一緒に写っている写真などはすべて確保しておきましょう。
・メールやラインのやりとり
メールやラインは、親しいやりとりをしているだけでは足りず、肉体関係をほのめかすような、「ホテルにまた行こう」などの文面であれば証拠として認められる可能性があります。
こちらも、相手との交渉材料にするために、直接的な証拠とならないメールのやりとり等もできるだけ確保しておきましょう。
・相手が自白した記録
相手が不貞行為を認めている場合は、それを何らかの形で残しておく必要があります。
たとえば、メールのやりとりの中で不貞行為を認めていればメールを保存しましょう。
口頭で認めた場合、録音できる状況であればしておきましょう。本人の反省文なども証拠となりえます。
・その他の証拠となる可能性があるもの
・不貞相手と利用したホテルの領収書、不貞相手との関係で利用したクレジットカードの利用明細書、不貞相手からのプレゼントなど、不貞相手に関係する資料はできる限り確保しておきましょう。
不貞行為に気が付いたら、気が付いたことの一つ一つを日記などに記録しておくこともお勧めします。
DV被害を受けた場合
DV被害を受けた場合の証拠としては、次のようなものが考えられます。
DV被害の具体的な証拠となるもの
・医師の診断書
相手からの暴力によって負傷した場合には、医師の診断書を取っておきましょう。
ただし、診断書には負傷の原因が相手からのDVであることまでは記されていません。
相手から暴力を受けた日時や内容などはきちんと自分で記録を残しておきましょう。
・負傷した時の写真
暴力を受けて負傷した場合、負傷したことがわかる写真を残しておきましょう。
写真だけではDVが原因かどうかまではわからないので、DVを受けた内容や状況、日時などは記録しておきましょう。
・相手の言動がわかる動画、音声等のデータ
相手がDVをしているときの動画や音声のデータがあれば有力な証拠となりえます。
また、相手がDVを認める内容の発言をしている動画や音声も証拠となる可能性があります。
・日記などの記録
相手からDV被害を受けたら、その都度きちんと記録に残しておきましょう。
日時、場所、状況、被害の内容など、できる限り具体的に記録しておくことが大切です。
これだけで証拠になるかというと難しいですが、ほかの証拠を補強したり、被害を主張するときの記憶の助けになったりするという意味でも大切です。
(2)財産を確認する
離婚時には、財産分与をすることになります。
財産分与とは、「結婚期間中に夫婦で協力して作った財産を、離婚時に分け合う制度」です。
財産の名義が夫婦のどちらのものであっても、結婚期間中にできた財産であれば基本的に共有財産となり、分与の対象となります。
離婚を切り出すと、相手は財産分与に備えて、財産隠しをしたり、勝手に財産を処分しようとする可能性がありますので、夫婦の財産は事前にきちんと確認しておきましょう。
確認しておくべき財産
・自宅
家の名義がどうなっているのか、住宅ローンの返済中の場合は残債がいくらあるのか、ローンの債務者はどうなっているのかなどを確認しておきましょう。
また、毎年届く固定資産税の課税明細書などを確認し、自宅の評価額がどれくらいなのかも確認しておきましょう。
・預貯金
配偶者名義の預貯金、自分名義の預貯金がいくらあるのか確認しておきましょう。
・株式、生命保険など
株式や生命保険などがあれば、保険証券や証券会社からの残高明細書などでその内容を確認しておきましょう。
・年金
厚生年金に加入している場合、年金分割の対象となります。
年金事務所に請求することで、年金分割した場合の年金受給の見込み額などを調べることができますので、事前に調べておきましょう。
離婚を切り出した後にやることリスト~親権や慰謝料など~
相手に離婚を切り出したら、話し合って取り決めるべきことがあります。
(1)親権について話し合う
未成年の子供がいる場合、親権者を父か母のどちらかに決める必要があります。
親権者は離婚届に記載する必要があるので、決めなければ離婚はできません。
話し合いをするときには、以下のようなことをポイントとして、総合的に判断するとよいでしょう。
お互いの都合よりも子供にとっての利益を優先して考えることが大切です。
親権について話し合いをするときのポイント
・離婚後の家庭環境
父親が親権を取る場合と、母親が親権を取る場合で、それぞれ子供の家庭環境がどのようになるかをシミュレーションしてみましょう。
たとえば、住む場所はどうなるのか、朝ごはんや夕ごはんはどうするのか、仕事からの帰宅時間は何時ごろになるのか、父や母が不在でも他に手助けしてくれる親族等がいるかなども考えましょう。
子供が一人で過ごす時間が長すぎる状況は、できるだけ避けたいところです。
・子供と父母との関係性
子供と父親の関係、子供と母親との関係はそれぞれ異なり、双方と良好な関係性であることもあれば、そうでないこともあります。
子供に対する愛情の深さや、子供と親密な関係性を築けているかどうかも親権者を選ぶポイントとなるでしょう。
・子供の養育能力
子供を養育する能力を持っているかどうかも大切です。
愛情はあっても、子供の食事を作ったり、洗濯をしたり、学習のサポートをしたりといった身の回りの世話ができなければ、現実問題として養育はできません。
それらの能力があり、これまでの実績があるかも大切なポイントです。
・子供に悪影響を与えるリスクがないか
たとえば、離婚原因が不貞行為やDV、借金癖などの場合、それらの原因を作った人が親権を取ると子供にとって悪影響となるリスクが高いでしょう。
子供が安心できる環境で生活させてあげることが大切なので、このような人が親権を持つことは避ける方がよいと考えられます。
(2)慰謝料の請求
どちらか一方に離婚原因がある場合、精神的苦痛に対して慰謝料を請求することができます。
慰謝料は自分から請求しない限り、相手が自主的に払ってくれることはほとんどありません。
慰謝料は、具体的には不貞行為、DV、悪意の遺棄の場合に請求できます。
「悪意の遺棄」とは、夫婦の義務である「同居・扶助・協力」を守らないことで、一方的に家を出て行ってしまったり、生活費を負担しないなどが考えられます。
慰謝料は、自分がどれだけ精神的な苦痛を受けたのかを主張して請求するものなので、金額は個別のケースによってまちまちで、数十万円から数百万円位まで考えられます。
内容の悪質性や相手の経済力などもかんがみて、自分の納得できる金額を請求しましょう。
相手が慰謝料の支払いに応じない場合は、弁護士に依頼するのもおすすめです。
(3)養育費を決める
未成熟の子供がいる場合、子供と離れて暮らすことになる親(通常、親権者でない方の親)は、子供を養育する親(通常親権者)に対して養育費を支払うことになります。
養育費は子供のためのお金ですので、安易にあきらめずにしっかりと適正な額を請求しましょう。
養育費について自分たちで適正額が決められない、折り合いがつかない場合には、家庭裁判所でも採用している「算定表」を使って算出するのがよいでしょう。
「養育費を支払う側の収入・受け取る側の収入」と「子供の人数・年齢」を基に簡単に算出できるようになっています。
参考:裁判所ホームページ「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
離婚が決まった後にやることリスト~離婚協議書の作成など~
相手も離婚に同意して離婚することが決まったら、やるべきことがあります。
(1)離婚協議書を作成
離婚条件が決まったら、離婚協議書を作成します。
協議書を作成しておかないと、後から約束が守られないなどでトラブルになることが多くなります。協議書があることで、相手が約束を守らない場合に証拠となり、法的手続きを取ることができます。
協議書は、できる限り公正証書で作成することをお勧めします。公正証書は、公証役場という公的機関で作成、保管してくれる文書で、自分たちで作った私文書の協議書よりも安全性が高いものです。
公正証書に「強制執行認諾文言」を記載することにより、相手が養育費の不払いなど約束を破った際に、裁判の手続きをすることなく強制執行の手続きができるようになります。
離婚協議書には、次のような内容を記します。
離婚協議書の内容
・財産分与 …どの財産を誰が取得するのかを明らかにします。後日揉めないためにも、記載漏れがないようにしましょう。
・親権者 …未成年の子供が複数いる場合には、すべての子供について定めておきましょう。
・養育費 …金額だけでなく、支払い方法やいつまでに払うかについても定めておきましょう。
・面会交流 …子供と別居した親にも面会の機会を与えることで、養育費の不払いを防ぐという意味合いもあります。
・慰謝料 …慰謝料は独立して定めることもできますが、慰謝料を含めて財産分与を決める場合もあります。
・年金分割 …厚生年金に加入している場合には、年金分割をするのか、案文割合をどうするのかを定めておきましょう。
(2)離婚後の姓を決める
結婚時に相手の姓に変えた場合、離婚後の姓を結婚前のものに戻すか、結婚時のままにするかを決める必要があります。
離婚後も結婚時の姓のままにする場合には、離婚後3カ月以内に「離婚の際に称していた氏を称する届」という書類を役所に提出する必要があります。
また、子供がいる場合には子供の姓をどうするかも決める必要があります。
たとえば母親が離婚して結婚前の姓に戻った場合、子供の姓をそのままにすると母親と違う姓になってしまいます。
子供の姓を母親の姓と同じにするためには、「この氏の変更」の申し立てを家庭裁判所にする必要があります。
自分や子供の生活の利便性なども考慮の上、姓をどうするのか決めておきましょう。
(3)離婚後の住居を決める
離婚後は、現在の住居からどちらかが出ていくか、双方が出ていくことになるでしょう。
住居をどうするかは、離婚前にきちんと決めておきましょう。
子供の通学の利便性や、生活環境なども考慮して住居を考える必要があります。
(4)離婚の時期を決める
すぐに離婚をするのか、時期を見て離婚するのか、しばらく別居してから離婚するのかを決めましょう。
たとえば、夫婦どちらかの退職を待って離婚する、子供の卒業を待って離婚する、子供の結婚を待って離婚するなど、状況によってタイミングを図る場合もあります。
当面別居することになった場合には、その間の生活費などについても話し合う必要があります。
(5)子供への説明
子供がいる場合には、年齢にもよりますが子供に離婚について説明する必要があるでしょう。
離婚は子供に大きなショックを与えてしまう場合も多いため、子供の気持ちに配慮して、誠心誠意事情を説明しましょう。
子供にどのように話すかについても、夫婦で足並みをそろえておいた方がよいでしょう。
離婚後にやることリスト~手続きも各種~
離婚後にやらなければならない手続きも各種あります。
離婚後にやらなければならない手続き
(1)住民票の変更 …住所が変わった場合には異動の手続きをし、世帯主が変わった場合には変更手続きをします。
(2)姓の変更 …結婚中の姓を使い続ける場合には、3カ月以内の届け出が必要です。
子供の姓を変えるには、家庭裁判所に変更許可の申し立てが必要です。
(3)健康保険の手続き …扶養家族だった人が離婚した場合は、新たに国民健康保険に加入する手続きをします。
(4)各種の住所、氏名変更手続き …クレジットカード、運転免許証等の住所、氏名に変更があれば変更届が必要です。
(5)財産の名義変更手続き …財産分与で得た財産の名義が元配偶者になっている場合、名義変更の手続きが必要です。
自動車の名義変更は運輸支局での手続きとなり、不動産の名義変更は法務局での手続きが必要となります。
不動産の名義変更は、司法書士に依頼するのが安心です。
(6)子供の助成金等の手続き …児童手当の振込先口座の変更、児童扶養手当の申請などが必要となります。
詳しくは自治体の窓口で確認しましょう。
まとめ
離婚をするためには様々な準備、手続きが必要です。
早く離婚したいばかりにこれらを疎かにしてしまうと、後々トラブルとなる可能性が高いため、しっかりと着実に準備を進めていきましょう。
準備を進める中で、自分の気持ちを整理していくこともできるでしょう。