離婚するときにお互いが納得して養育費を取り決めていても、後から自分や相手の状況が変わり、養育費を不公平だと感じることもあります。
特に、自分や相手が再婚した場合、それまでとは生活や経済状況などが大きく変わることも多いでしょう。
そのような場合の養育費の変更について、説明していきます。
養育費の計算方法と変更できるケース
養育費の計算方法
養育費はどのように決めるのがよいでしょうか。
基本的には、当事者双方の話し合いで、子供の養育に必要となる金額を、父と母が公平に分担するような内容で取り決めるべきものです。
ただし、養育費は、支払う側はできるだけ低い金額にしたい、受け取る側はできるだけ高い金額にしたいという思いがあり、利害が対立するのが普通です。
そのため、話し合いで妥当な金額を取り決めるのは難しいことがあります。
養育費の算定表
双方が納得する養育費を決めるため、家庭裁判所でも採用している養育費の「算定表」を利用することが効率的です。
参考:裁判所ホームページ「平成30年度司法研究(養育費,婚姻費用の算定に関する実証的研究)の報告について」
この算定表は、「養育費を支払う側、受け取る側それぞれの年収」、「子の人数、年齢」を基に、養育費の月額を簡単に算出できるようになっています。
もし養育費について裁判所で争ったとしても、結局この算定表どおりの金額に決まることがほとんどです。
それであれば、最初からこの金額を目安にしておく方が、無駄な手間を省くことができてお互いにとってよいでしょう。
任意の金額で折り合いがつかない場合には、算定表を参考するのが双方にとって公平で納得感のあるものになるでしょう。
養育費が変更できるケース
離婚時にはお互いが納得した養育費であっても、その後の状況が変わることで、どちらか一方が養育費の変更を望む場合もあります。
そうなったとき、養育費の変更をすることはできるのでしょうか。
もちろん、元配偶者との話し合いで、お互いが合意すれば変更することはできます。
その場合は、どのような理由であっても構いません。
ただ、自分が変更を望んでも、相手にとって不利になる変更であれば、相手が簡単に納得してくれないケースも多いでしょう。
養育費の変更の条件
相手が任意に応じてくれなければ、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てることになります。
裁判所の手続きで減額を認めてもらうことができるには、条件があります。
決して簡単に減額の請求が認められるものではありません。
それは、養育費の減額の根拠となる「事情の変更」があったことです。
そして、その事情の変更が離婚時には想定されていなかったものであり、金額を変更する必要性があるほどのものであることが求められます。
再婚時の養育費の減額請求方法と手続きの流れ
自分や相手が再婚した場合には、「事情の変更」があったといえるでしょう。
このようなときに、養育費を減額してもらうにはどうすればよいでしょうか。
まずは相手に頼んでみる
まず初めにすべきことは、元配偶者に、離婚後に状況が変わったことを説明し、それに伴い養育費を減額してほしいということを頼んでみることです。
元配偶者とのやりとりには抵抗がある人も多いとは思いますが、自分の要望を通したいのであれば、まずは自分の言葉で誠心誠意お願いしてみることが最善です。
いきなり代理人を立てて代理人から連絡するケースもありますが、その方法を取ると相手も身構えてしまい事を荒立ててしまうことも多いです。
応じてもらえるかは別として、一度は自分から手紙や電話等で相手に低姿勢で打診してみることをお勧めします。
もし相手が応じてくれた場合には、取り決めた内容をきちんと文書に残し、当事者双方の署名捺印をしておきましょう。
できれば公正証書を作成するとより安心です。
相手が応じてくれなければ、調停を申し立てる
相手が減額に応じてくれない場合には、家庭裁判所に養育費減額調停を申し立てます。
調停等の裁判所の手続きにおいては、養育費の減額請求の根拠となる資料が必要です。
調停では、当事者が出頭し、調停委員を交えて話し合いをして解決策や妥協点を見つけていくこととなります。
お互い納得のいく落としどころが見つかれば、調停成立となります。
調停の場でも話し合いがまとまらないと調停不成立となり、審判の手続きに移行します。
審判ではたとえ一方が納得しなくても、裁判所が決定を下すことができます。
なお、養育費の減額請求をしているときでも、減額が正式に認められるまではこれまで通りの養育費をきちんと支払う必要があります。
再婚のケース別の養育費
離婚後の再婚には、3つのパターンが考えられます。
父が再婚した場合、母が再婚した場合、双方が再婚した場合です。
それぞれ、養育費にどのような影響があるかを説明します。
ここでは、養育費を支払う側が父、受け取る側が母としています。
親権者である母が再婚した場合の養育費
子の親権者である母が再婚した場合、どうなるでしょうか。
母が再婚すると、再婚相手に収入があり世帯収入が増えることが多いため、養育費を減額したいと感じるかもしれません。
このとき重要なのが、再婚相手が子供と養子縁組をしたかどうかです。
再婚相手が子供と養子縁組すると、再婚相手は子供の親権者となります。
そうなると、再婚相手は子を扶養する義務を負います。
養子縁組した再婚相手は、離婚して親権者ではなくなった実父よりも、優先順位の高い扶養義務を負います。
このため、子にとっては扶養してくれる人が増えたこととなり、養育費の減額または免除が認められる事情の変更となりえます。
ただし、再婚相手の収入が低いなどで十分に子供を扶養できる能力がなければ、養育費の減額や免除は認められません。
逆に、再婚相手が子と養子縁組していない場合には、子の扶養義務を負う人は増えませんので、基本的に養育費の減免は認められません。
事実上、再婚相手が子供を養っていると考えられる場合でも、養子縁組していない子供の立場は不安定なので、養育費の減額はなかなか認められないでしょう。
父が再婚した場合の養育費
父である自分が再婚して家族が増えると、養育費をこれまで通り払うことが難しいと感じるかもしれません。
このような場合にも、事情の変更があったとして減額請求が認められる場合もあります。
単に再婚しただけでは難しいですが、
- ・再婚相手との間に子供が生まれた
- ・再婚相手の子供と養子縁組した
- ・再婚相手が無収入で、働くことができない事情がある
という場合には、扶養する対象が増えたこととなり、減額が認められる可能性があります。
単に再婚相手が現在専業主婦というだけであれば、働いて収入を得ることも可能であると考えられるので、減額請求は難しいでしょう。
双方が再婚した場合の養育費
双方が再婚した場合には、それぞれの事情を考慮して適切な養育費を算定することになるでしょう。
それぞれの配偶者の収入や子供の有無、養子縁組の有無などの事情を総合的に判断していくこととなります。
まとめ
離婚後に再婚した場合、養育費の変更が認められる場合があります。
ただし、養育費はあくまで子供のためのものであることを心に留め、大人たちの都合だけでなく子供の立場を配慮した話し合いが大切です。
養育費の減額請求が、子供の面会交流に影響する可能性もあります。
それらを考慮したうえで、養育費の変更が必要な場合には、きちんと根拠を示して手続きを進めていくとよいでしょう。