この記事でわかること
- DVが原因の慰謝料の相場がわかる
- 慰謝料の金額を決める要素がわかる
- 慰謝料の請求に必要な証拠の種類がわかる
- 慰謝料を請求する手続の流れがわかる
婚姻関係にある夫婦の間で殴る蹴る、あるいは繰り返される暴言などのDVが行われた場合、夫婦の双方が合意して離婚する協議離婚の大きなきっかけになることがあります。
また、悪質なDVが行われたことで、婚姻関係を継続することができない重大な事由があるとして裁判における離婚が認められることもあります。
DVが原因で離婚することになった場合、DVを行った相手に対して慰謝料を請求できる場合がありますが、全てのDVの事例で慰謝料が認められるとは限りません。
慰謝料が認められるか、認められるとして金額がいくらになるかは、様々な要素が関係してくる問題です。
そこで今回は、DVで離婚する場合の慰謝料の相場や、慰謝料の金額が高く認定される考慮要素などをご紹介します。
DVの慰謝料相場は50〜300万円程度になります。
DVを原因とする慰謝料の請求
DVとはドメスティック・バイオレンスの略称で、婚姻関係にある配偶者や事実婚におけるパートナーなど、親密な関係において暴力が振るわれることを指します。
DVにおける暴力の代表は、殴る蹴るなどの肉体的な暴力ですが、人前で激しく貶すなどの精神的な暴力や、夫婦関係を強要するなどの性的な暴力もDVにおける暴力に含まれます。
DVを原因として離婚した場合、DVを受けた側は相手に対して慰謝料を請求できる場合があります。
DVを理由に慰謝料を請求できるのは、一般に相手(配偶者)の行動や言動などによって、肉体的または精神的な苦痛を被った場合です。
身体的な暴力ではなく、言葉によって相手を傷つけることをモラハラ(モラルハラスメント)と言います。
モラハラは精神的な暴力ですが、深夜に何時間もの説教を定期的に繰り返すなど、態様が悪質な場合にはモラハラも慰謝料請求の対象になることがあります。
DVを原因とする慰謝料の金額の相場
DVを原因とする慰謝料の相場は一般に50〜300万円程度です。
DVの慰謝料について当事者同士の話し合いで決める場合、双方が同意すれば上記の相場に拘束されることなく自由に金額を決めることができます。
お互いに同意しているので、金額は低くても高くても基本的に問題ありません。
あくまで例ですが、お互いに同意すればDVを理由とする慰謝料は1万円でも良いですし、1億円でも構いません。
DVを原因とする慰謝料の相場が重要になるのは、主に裁判で慰謝料について争う場合です。
裁判で慰謝料の有無や金額を決める場合、当事者の収入や過去の判例とともに、次にご紹介する6つの要素が考慮されます。
慰謝料請求の時効は3年
慰謝料請求には、3年が時効になります。
たとえばDVが原因で離婚した場合は、離婚から3年以内に慰謝料請求しないと、請求権利が消滅してしまいます。
ただし多くの離婚では、離婚時に慰謝料の請求・清算も行うため、離婚後に慰謝料請求することは少ないでしょう。
DVの慰謝料を決める6つの要素
DVを原因とする慰謝料の金額が裁判で決まる場合、その額は主に以下の6つのポイントが考慮されて決まります。
- ・DVが行われた頻度
- ・DVが行われた期間の長さ
- ・DVを原因とする負傷や障害などがどの程度か
- ・DVを受けた被害者の側に何らかの落ち度があるか
- ・夫婦が結婚していた期間はどのくらい長いか
- ・養育費を支払う必要がある子の有無と人数
以下、6つのポイントごとに解説していきます。
DVが行われた頻度
DVが行われた回数については、基本的に回数が多ければ多いほど慰謝料の金額は高く考慮されます。
DVが行われる度に被害者が傷つくので、それだけ慰謝料を高額する必要性が認められるからです。
DVが行われた期間の長さ
DVの期間については、期間が長いほど慰謝料の金額は高く考慮されます。
DVの期間が長ければ長いほど、被害者は長期間苦痛を受けてきたことが認められます。
DVを原因とする負傷や障害がどの程度か
主に躯体的な暴力によるDVの場合、受けた被害者は負傷する危険性があります。
また、負傷によっては何らかの障害が発生する場合もあります。
負傷や障害の程度が重いほど、慰謝料の金額は高く考慮されます。
傷が重いほど被害者の受けたダメージや苦痛は大きいと判断できるからです。
また、長期的にDVを受け続けた場合など、ケースによってはDVが原因で被害者がうつ病になってしまうことがあります。
その場合、うつ病による苦痛が考慮されて慰謝料が高額になることがあります。
DVの受けた被害者の側に何らかの落ち度があるか
常に相手の挑発を繰り返すなど、DVを受けた被害者に何らかの落ち度がある場合、その落ち度に応じて慰謝料の金額は低めに考慮されます。
被害者に落ち度がある場合はその分だけ責任があると判断できるからです。
夫婦が結婚していた期間はどのくらい長いか
夫婦の婚姻期間については、一般に長ければ長いほど慰謝料の金額は高く考慮されます。
夫婦が結婚していた期間が長いほど、被害者はそれだけDVを伴う生活に耐えてきたと言えるからです。
また、DVを行っていた加害者の年齢については、高いほど一般に慰謝料が高額になる可能性があります。
養育費を支払う必要がある子の有無と人数
DVによって離婚した夫婦に養育すべき子どもがいる場合、慰謝料は一般に高く判断されます。
子どもを養育する必要があるにもかかわらず、離婚によって養育が困難になり苦痛を受けたと判断できるからです。
子どもの人数は多いほど慰謝料は一般に高額になります。
DVの慰謝料の請求には証拠が必要
DVを原因として慰謝料を請求するには、DVが行われたという事実を客観的に証明するための証拠が重要です。
裁判官に対してDVを証明することになる裁判では特に重要です。
DVを受けたことについて第三者に客観的に証明できる証拠がある場合、DVを受けていたことを認めてもらいやすくなります。
また、慰謝料の認定や請求も行いやすくなります。
DVの存在を客観的に証明する証拠
DVの事実を客観的に証明するために役立つ証拠としては以下のものがあります。
- ・DVを受けた際に生じた傷やアザなどの写真
- ・DVが行われた場面についての録音や録画
- ・DVを原因とする負傷や障害の診断書
- ・DVについての日時、場所、期間、内容などを詳しく記録した日記やメモ
- ・DVについて相談した親や友人などの証言や録音
- ・警察や公的機関でDVについて相談したことを示す履歴
DVの証拠を集める際の注意点
DVを受けたことを証明する証拠については、基本的に自分で意識して収集することが大切です。
例えば、DVによって怪我をした場合、その怪我が存在するうちに医師の診断を受ける、傷の写真を撮るなどの対処をするのが大切です。
怪我が治ること自体は喜ばしいことですが、DVを受けたことを怪我が治ったあとに主張しても、客観的な証拠になるものが残っていなければ証明するのが難しくなります。
また、証拠を集める際には相手に気づかれないように慎重に行動する必要があります。
もし相手に証拠を集めていることを気づかれてしまうと、態度の悪化や証拠の破壊などにつながるおそれがあるからです。
DVを原因とする負傷の医療記録は特に有効
DVの事実を証明する証拠の中でも、特に重要なのが怪我や障害に関する診断書などの医療記録です。
診断書は病院で診察を受けて、医者にお願いすれば、数千円の費用だけで作成してくれます。
簡単に作れるので、DV被害に遭っているなら、必ず診断書を作成しておきましょう。
医療記録があれば、怪我をした日時、事実、程度、治療にかかった期間、医師の診断内容など様々なことを証明できるからです。
そのため、DVを受けて負傷してしまったら、できるだけ早く医師や病院を受診することが大切です。
受信した場合は、負傷した理由を曖昧にせずに、相手から暴力を受けたことをきちんと伝えておくことが重要です。
警察や公共機関などに相談した履歴も重要
DVを受けたことを証明するために重要なものの1つに、警察や公共機関に相談したことの履歴があります。
警察や公共機関は当事者との間に利害関係のない第三者的な機関なので、相談の履歴があることはDVの有力な証拠になりうるからです。
特に、被害者がDVによるこれ以上の被害を防ぐために保護してもらいたい時には、警察や公共機関に相談してサポートや保護を求めていた、という事実が重要になってきます。
これらの機関に相談した場合、自分や関係者の氏名、相談内容、機関による判断や措置などを記載した相談カードを作成するのが一般的で、証拠の中心になります。
証拠がなくても、相手にDVを認めさせれば証拠になる
もし現時点で証拠がなかったとしても、相手に「DVをした」と発言させ録音をすれば、それが証拠になります。
ただしDVをしている相手がDVを認める発言をするのは難しいため、どうしても証拠がない場合の最終手段として使いましょう。
相手に対して「DVをしているよね?」と聞いたときに、逆上して暴力をふるわれる危険性もあるため注意してください。
DVを理由とする離婚と慰謝料請求に必要な手続
DVが原因で離婚をしたい場合は、慰謝料の請求もあわせていくつかの手続をする必要があります。
以下、DVを原因として離婚を成立させて慰謝料を請求する場合の一般的な流れを解説していきます。
話し合って協議離婚をする
DVが原因で離婚をする一番手軽な方法は、夫婦の双方が同意して協議離婚をすることです。
離婚届を作成して役所に提出すれば離婚が成立します。
同居している場合はお互いに話し合って慰謝料などを決めます。
別居している場合は話し合いの内容が言った言わないになりがちなので、メールやSNSなどやり取りが履歴として残る方法で話し合うのがおすすめです。
協議離婚は成立すれば裁判などを経る必要がありませんが、DVの加害者と話し合いで離婚をするのは難しい場合が少なくありません。
激高などによってトラブルが発生するおそれもあるので、話し合いが成立しない場合は無理をせず次のステップに進みましょう。
DVの加害者に離婚を切り出す効果的な方法は、1人だけで行動せずに第三者に協力してもらうことです。
被害者だけが行動していると思うと相手は強気になりがちですが、第三者が存在することで危機感を抱き、話に応じる可能性が高くなるからです。
離婚に同意するが慰謝料で揉めている場合
離婚については双方が同意しているものの、慰謝料について揉めている場合は、民事訴訟を起こして慰謝料の有無や金額を裁判所に判断してもらう方法があります。
通常は相手の住所地にある裁判所に対して申し立てます。
DVを理由とする慰謝料が認められるためには、DVの事実を証明する客観的な証拠が重要です。
なお、以上は離婚についてお互いに同意している場合の手続です。
離婚するかどうかを争っている場合には、次にご説明する離婚調停を申し立てることになります。
離婚調停を申し立てる
離婚調停とは、夫婦がお互いに話し合う協議離婚では決着がつかない場合に、裁判所に選任された調停委員の仲介のもとで離婚や慰謝料について解決の道を探っていく方法です。
正式名称は夫婦関係調整調停です。
離婚調停は離婚裁判とは異なり、お互いが納得して合意できるような解決方法を探すためのものです。
そのため、裁判よりも自由に取り決めができるのが特徴です。
離婚調停では離婚するかどうかを決めるほか、子供の親権や面会交流、養育費の金額と支払い方法、財産分与の内容、DVなどを原因とする慰謝料などを決めることもできます。
裁判ではある事実の有無を証明するためには証拠が重要ですが、離婚調停ではお互いが同意すればよいので、必ずしも厳密な証拠は必要ありません。
もっとも、DVに関する証拠の存在は調停案を有利な方向に進めることにつながります。
調停の内容が成立するには当事者双方の合意が必要です。
調停がまとまらなかった場合は離婚訴訟を提起して裁判で決着をつけることになります。
離婚訴訟で決着をつける
離婚をすることに相手が合意しない場合は、離婚を成立させるために最終的に裁判で決着をつけることになります。
裁判所に離婚訴訟を提起し、離婚と慰謝料について判断することを求める手続です。
裁判で勝訴すれば相手の同意なしで離婚することができますが、そのためには法律に規定されている離婚の要件を満たす事実が存在する必要があります。
DVを離婚の原因とする場合、民法770条第1項第5号に規定されている「婚姻を継続しがたい重大な事由」に該当するかがポイントになります。
つまり、裁判でDVを理由に離婚を成立させるためには、悪質なDVによって夫婦生活が破綻しており、それが婚姻を継続しがたい重大な事由に該当することを裁判官が納得する必要があります。
そのためには、DVの存在を証明する適切な証拠を用意して、裁判に提出することが重要なポイントになります。
これはDVを理由として慰謝料を請求するための証拠にもなります。
相手が慰謝料を支払わない場合の対策法
調停の成立や裁判の勝訴によって慰謝料の請求が認められた場合、相手には慰謝料を支払う義務が発生します。
しかしながら、相手が慰謝料をきちんと支払わなくなる場合もあります。
決められた慰謝料が支払われなくなった場合の解決手段を解説していきます。
履行勧告と履行命令
調停や判決など、裁判所を介した手続の結果として慰謝料の支払いが決まった場合、相手が慰謝料をきちんと支払わなければ裁判所に催促をしてもらう方法があります。
これを履行勧告といいます。
履行勧告とは、慰謝料の支払いが滞っていることを裁判所が相手に報告して支払いを促すものです。
履行勧告がされたにもかかわらず相手が支払わない場合は、裁判所は履行命令を発することができます。
履行命令は慰謝料の支払いを文字通り命令するものです。
十分な資力がないなどの正当な理由がなく命令を無視していると、いわゆる罰金として10万円以下の過料を科されることがあります。
慰謝料を実現するための強制執行
履行勧告と履行命令はあくまで本人からの支払いを促すものであり、強制的に実現するものではありません。
その点、本人の意志に反してでも支払いを実現するのが強制執行です。
離婚に伴って定められた慰謝料の支払いがきちんと守られない場合に、相手の財産を差し押さえて処分し、そこから慰謝料の金額を回収するのが強制執行の手続になります。
例えば、300万円の慰謝料が支払われない場合に、相手が所有している不動産を差し押さえて競売にかけ、売却代金の500万円のうち慰謝料の金額にあたる300万円を回収するのが強制執行の簡単な例です。
強制執行の対象となる財産の種類は様々です。
勤めによる給与や賞与、預貯金、自営業の売上、土地や家屋などの不動産、自動車や貴金属などがあります。
強制執行を行う場合は、処分の対象となる財産について把握しておく必要があります。
例えば、慰謝料の金額を回収するために相手の預貯金を差し押さえたい場合は、預貯金の銀行や口座番号などが必要です。
強制執行は相手の意志に反してでも財産を強制的に処分するため、手続としては非常に強力です。
そのため、強制執行を実現するには裁判所の判決書や調停調書など、債務名義と呼ばれる書類が必要になります。
裁判中のトラブルを防止するための保護命令
DVを理由に離婚する場合、離婚の意志を知って激怒した相手の報復によって、何らかのトラブルに巻き込まれる危険性があります。
そんな時のために、裁判中のトラブルを防止する制度として保護命令があります。
保護命令とは、暴力や脅迫を受けた人が裁判所に申立てることで、相手が自分に接近しないようにする制度です。
保護命令によって相手が近づけなくなることで、恐怖から解放されます。
保護命令の種類には、身辺や住所などに近づけない接近禁止命令、相手を家から退去させる退去命令、電話などを禁止する電話等禁止命令などがあります。
保護命令は被害者からの申立によって裁判所が実施するかを判断します。
保護命令に違反した場合、1年以下の懲役または100万円以下の罰金の対象になります。
DVが原因で慰謝料が認められた判例
DVを原因として被害者が慰謝料を請求した結果、慰謝料の支払いが認められた裁判例をご紹介します。
慰謝料として50万円が認められた判例
東京地裁平成18年8月28日のケースです。
夫が妻に暴言を吐く、妻のいる方向にアイロンを投げる、妻を突き飛ばす、妻の物を破壊するなどが認定されました。
夫の行為に対して妻が暴力的に応じる場合があったことから、妻にも責任の一端はあるものの、暴力的な行動が多かった夫の側に重大な責任があるとして、50万円の慰謝料が認められました。
慰謝料として100万円が認められた判例
東京地裁平成18年1月17日のケースです。
暴力とモラハラの複合的な事例になっているのが特徴です。
暴言の程度が酷いものの、息を吹きかける、ベッドから落とす、顔を足で踏むなど、負傷しない程度の重くない暴力であると認定されました。
1年2ヶ月という短い婚姻期間、DVの期間が短いこと、夫婦関係が良好な時期があったことなどが考慮され、100万円の慰謝料が認められました。
慰謝料として200万円が認められた判例
東京地裁平成18年7月27日のケースです。
婚姻期間が10年以上の夫婦において、夫から妻に対して激しい暴力が行われていた事例です。
腰の骨にヒビが入った、肋骨不全骨折になったなどが医師の診断書によって認定されています。
このケースの特徴は、激しい暴力によって負傷したことが医師の診断書によって証明されていることです。
慰謝料として200万円が認定されました。
慰謝料として300万円が認められた判例
東京地裁平成18年11月29日のケースです。
婚姻期間が10年以上の夫婦の事例で、夫からの度重なる暴力の結果、妻が後遺障害と診断されたのが特徴です。
夫からの暴力によって妻は後遺障害併合8級に認定されました。
併合とは、2つ以上の後遺障害が併合されてより重い等級に認定されるものです。
300万円の慰謝料が認められたほか、入通院にかかる費用の支払いも夫に命じられました。
DV被害者が離婚を切り出すときの注意点
DVで離婚を切り出す場合は、通常の離婚よりも注意が必要です。
なぜなら離婚を切り出すことで、相手が逆上して、暴力をふるわれる危険性が高いから。
下記では、DV被害者が離婚を切り出すときの注意点を説明します。
必ず第三者に入ってもらう
DV被害者が離婚を切り出すときには、必ず第三者を立てましょう。
ふたりだけで離婚の話をすると、相手から暴力をふるわれる危険性があります。
普段からDVをしているような人だと、離婚の話で逆上して、より感情的になるかもしれません。
「周りに相談できる人がいない」という場合は、弁護士への相談がおすすめです。
弁護士に相談して、間に入ってもらうことで、自分の安全を確保しつつ有利に離婚交渉が進められます。
離婚調停に進む
離婚調停とは、調停委員が間に入り、離婚成立に向けて動いているやり方です。
日本の離婚は多くは話し合いで解決する「協議離婚」ですが、普段からDVしている人が話し合いに応じてくれるとは思えません。
調停は家庭裁判所に申し立てをして、調停委員と話すことで、離婚成立に向けて動きます。
メリットは相手を直接顔を合わせなくていいことです。
お互いに調停委員に対して話すことで、相手を顔を合わせずに、安全な状態で離婚手続きができます。
保護命令を申し立てる
保護命令とは、接触禁止・退去といった命令を裁判所経由を行うことです。
裁判所に申し立てれば、「6ヶ月接触禁止」といった命令を出せます。
子供がいる場合は子への接触禁止、そのほかにも電話の禁止・親族への接近禁止なども加納です。
命令に違反した場合は、1年以下の懲役・100万円以下の罰金に科せられます。
自分の身の安全を確保するためにも、DVが深刻な場合は保護命令を出しておきましょう。
DV被害を受けているなら身の安全を確保しよう
DV被害を受けている人が最優先でやるべきことは、身の安全を確保することです。
証拠を集めて慰謝料請求する前に、自分の心身を守りましょう。
下記では、DV被害から身を守るために役立つことを紹介します。
公的機関に無料相談してみる
DV被害を受けたら、公的機関への相談がおすすめです。
日本政府が運営しているDV相談ナビ・配偶者暴力センターなど、無料で相談できる公的機関があります。
電話・メールで気軽に相談でき、カウンセリング・一時保護まで行ってくれます。
今後どうすればいいか?のアドバイスをもらえます。
下記のリンクでは、政府を運営しているDV相談機関を紹介しているので、ぜひ参考にしてみてください。
参考:DV相談について|内閣府
別居して婚姻費用を請求する
DVから自分の身を守るためには、物理的な距離を取る方法も有効です。
同居しているなら、実家に帰ったり、ホテルに泊まったりと別居も視野に入れてください。
そのときにDV加害者に居場所が知られるかもしれませんが、なるべく第三者と一緒に過ごすようにしましょう。
自分以外のだれかがいれば、加害者がきても、守ってくれるかもしれません。
さらに別居をしていれば「婚姻費用」の請求ができます。
婚姻費用とは、夫婦で収入が多い方に対して少ない方が請求できる生活費のことです。
たとえば自分が専業主婦で収入がない場合でも、別居すれば相手に対して「生活するために婚姻費用が必要」と請求ができます。
婚姻費用の相場は月6万円程度で、別居中の生活を支えてくれるため、別居するなら必ず請求しましょう。
DV離婚の慰謝料を増やすなら弁護士依頼がおすすめ
「DV離婚で慰謝料を取りたい」と思っているなら、弁護士への依頼がおすすめです。
なぜなら離婚問題に精通している弁護士だと、慰謝料を増額させる方法を知っているからです。
法律のプロである弁護士からアドバイスをもらうことで、有利な離婚交渉ができます。
またDV離婚の場合は、離婚を切り出した際に暴力をふるわれるかもしれません。
身の安全を確保するためにも、弁護士を間に入れて、話を進めましょう。
慰謝料以外に請求できるもの
DV離婚した場合、慰謝料以外にも請求できるものがあります。
- ・財産分与
- ・年金分割
- ・婚姻費用(別居している場合)
- ・養育費(子供がいる場合)
では詳しく紹介します。
財産分与
財産分与とは、結婚中に築いた財産を離婚時に分配することです。
もし妻が専業主婦で働いてない場合でも、半額をもらう権利があります。
財産分与の対象となるのは、下記のようなものです。
- ・預貯金
- ・有価証券
- ・保険解約返戻金
- ・退職金
- ・家具・家財
- ・不動産 など
財産分与の対象となる財産は、婚姻中のみなので注意しましょう。
婚姻前からある貯金、親戚から贈与されたお金は対象外になります。
また別居をしている場合は、別居期間に築いた財産も対象外です。
婚姻関係が継続して、同居している間に築いた資産が財産分与の対象になるので、覚えておきましょう。
財産分与は均等に分割するのが一般的ですが、慰謝料支払いの意味も含めて、多めに分与するケースもあります。
協議離婚の場合は、お互いの合意さえあれば、どのような割合でも問題ありません。
年金分割
年金分割とは、夫婦で受給できる年金を分配するものです。
例えばサラリーマンと専業主婦の組み合わせだった場合、夫は国民年金と厚生年金がもらえて、妻は国民年金しかもらえません。
この夫婦が熟年離婚した場合は、夫と妻の生活格差が生まれてしまうため、妻は夫に差額の年金を請求できます。
意外と知られていませんが、年金も分割対象なので、離婚時にはしっかり請求しましょう。
婚姻費用
婚姻費用とは、別居中に請求できる生活費です。
夫婦は同じ水準の生活を送る義務があるため、別居での生活格差が生まれてはいけません。
例えば高収入の夫とパートタイムの妻がいて別居した場合、妻の生活水準は夫に比べて低くなります。
この時には、妻は夫に対しては「生活格差を生まないぐらいの生活費」を請求できます。
具体的には、住居費・生活費・子供がいる場合は養育費・学費などが含まれます。
金額は夫婦の収入によって異なりますが、月額6~15万ぐらいで多いです。
婚姻費用の支払いは、請求した時点で発生するため、なるべく早めの請求をしましょう。
過去の請求をさかのぼって請求するのは難しくなります。
養育費
養育費とは、子供いる場合に親権を取った側が請求できる費用です。
子供が成人するまで、毎月支払うお金になります。
養育費も家庭の状況によって金額が変わりますが、相場は4万前後になっています。
養育費は支払いが止まってしまうことも多いため、決まったら必ず公正証書に残しておきましょう。
口約束だと相手に逃げられる可能性があるので、書面に残して法的拘束力を作っておくのが大切です。
まとめ
DVを原因として離婚する場合、DVの被害に対して慰謝料を請求できることがあります。
DVの慰謝料の相場は一般に50〜300万円程度ですが、DVが行われた頻度、期間の長さ、負傷や障害の程度などの要素が金額に影響を与えます。
DVの事実を主張して慰謝料を請求するのは、DVが発生したことを客観的に証明できるような証拠が重要になります。
傷やアザなどの写真、DVの録音や録画、負傷や障害の診断書などが証拠になります。
特に、DVが原因の負傷についての医師による診断書は証拠としての重要性が高いため、DVによって負傷した場合はすぐに診察を受けることが大切です。