この記事でわかること
- 離婚を成立させるための3種類の方法がわかる
- 裁判で離婚が認められるための要件がわかる
- 離婚裁判手続きの流れがわかる
- 離婚裁判を有利に進めるためのコツがわかる
夫婦の双方が合意すれば協議や調停によって離婚することができますが、どちらかが同意していない場合、そのままでは離婚を成立させることができません。
合意なしで最終的に離婚するための方法は、離婚裁判を起こして裁判所の判決を求めることです。
一方、離婚裁判は当事者の合意がなくても離婚を成立させることができるため、離婚のためには法律で規定された要件を満たす必要があります。
そこで今回は、離婚裁判を有利かつ早く進めるためのコツを紹介します。
離婚を成立させる3種類の方法
離婚を成立させるには主に3種類の方法があります。
それは、協議離婚、離婚調停、離婚裁判です。
それぞれについて解説していきます。
協議離婚とは
協議離婚とは、夫婦が互いに同意して離婚する手続きです。
双方の同意のもとに離婚届を作成し、役所に提出すれば離婚が成立するので、離婚手続きの中では容易な手続きになっています。
離婚を成立させる手続きが簡単で成立までの期間が短く、費用もかからないのがメリットです。
一方、どちらかが離婚に同意していない場合は成立することができないのが特徴です。
また、慰謝料、財産分与、親権など離婚に関連する事柄について取り決めをせずに離婚することもできるので、これらの事柄について後で争いが生じる可能性もあります。
日本の離婚はほぼ協議離婚です。話し合いがこじれて、調停・裁判まで進むケースはかなり少数です。
離婚調停とは
離婚するかどうかについて話し合いではまとまらなかった場合に、離婚調停の手続きがあります。
離婚調停は利害関係のない調停委員とともに離婚の有無や方法を探る方法で、正式名称は夫婦関係調整調停といいます。
離婚調停では離婚をするかどうか以外にも、慰謝料、財産分与、親権、養育費、面接交流などの離婚に関連する事柄について取り決めをすることができます。
離婚調停は、離婚裁判よりも当事者の意志に応じて比較的自由に取り決めをすることができますが、当事者の双方の同意がないと離婚が成立しない点では協議離婚と同様です。
調停離婚を選ぶ夫婦は、全体の10%程度と少数です。時間・手間がかかるため、協議離婚を選ぶケースがが全体の90%程度です。
離婚裁判とは
離婚調停で当事者の双方が離婚に合意しなかった場合に、離婚をするための方法が離婚裁判です。
離婚裁判は訴えを起こして裁判所の判断を求めるものです。
離婚裁判は文字通り裁判という形で決着をつけようとするもので、一般に公開される方法で行われます。
離婚裁判では訴えた側を原告、訴えられた側を被告と呼びます。
相手と離婚したい場合、調停をせずにすぐに離婚裁判を起こすことはできません。
離婚裁判を起こす前に離婚調停の手続きをしなければならないことが法律で規定されています。
これを調停前置主義といいます。
離婚裁判の特徴について
離婚裁判にはいくつかの特徴があります。
それぞれの特徴を解説していきます。
離婚裁判は同意がなくても離婚が成立しうる
協議離婚と離婚調停は当事者の双方の同意がなければ離婚は成立しませんでしたが、離婚裁判では裁判所が離婚するのが相当と認めれば、同意がなくても離婚が成立します。
これが離婚裁判の大きな特徴です。
同意がなくても離婚できるという大きな効果がある分、離婚裁判では離婚できる要件が法律で厳密に定められています。
これを法定離婚原因といいます。
法定離婚原因を満たしていると裁判所が判断した場合に限り、離婚裁判による離婚が認められます。
また、原則として有責配偶者から離婚を請求することは認められません。
有責配偶者とは、不倫をしたなど離婚の原因について主な責任のある当事者のことです。
また、離婚裁判では離婚すること自体だけでなく、慰謝料や財産分与などの金銭に関する問題や、養育すべき未成年の子どもがいる場合の親権や養育費なども争うことができます。
離婚裁判には法定離婚原因が必要
離婚裁判によって離婚することが認められる法定離婚原因は、全部で5種類あります。
不貞行為、悪意の遺棄、一定期間の生死不明、強度で回復の見込みのない精神病、婚姻を継続し難い重大な事由の5つです。
不貞行為
夫婦関係にある2人のどちらかが、配偶者以外と自由意志に基づいて、肉体的な関係を持つことです。
いわゆる不倫や浮気のことで、夫婦がお互いに貞操を守らなければならないとする、貞操義務に違反する行為です。
悪意の遺棄
生活費を渡さない、正当な理由なく別居する(家を出ていく)、健康でありながら働かないなどの行為です。
夫婦は相互に同居、協力、扶助の義務を負っているところ、これらの義務を正当な理由なく怠るものです。
一定期間の生死不明:夫婦のうちどちらかが音信不通の状態にあり、生きているのか死んでいるのか不明な状況が3年以上続いていることを意味します。
具体的には、最後の音信または消息があった時から3年以上経過している、生死不明について客観的な証拠がある(警察への捜索願、勤務先や知人への連絡など、捜索方法を試みても見つからなかったなど)の2点を満たす必要があります。
強度で回復の見込みのない精神病:相手の精神的な疾患が著しく強く、かつ回復の見込みがないことを意味します。
精神的な疾患の程度と回復の見込みの有無については、専門医の診断に基づいて判断されます。
婚姻を継続し難い重大な事由:上記の4つの法定離婚原因以外にも、婚姻関係を続けることが難しいと判断できる重大な事由がある場合に離婚を認めるものです。
抽象的で幅広い解釈ができることから、法定離婚原因の中でも主張されることが多い項目です。
重大とは、その事実が原因となって夫婦関係が破綻しており、かつ修復できる可能性が見込めないことを意味します。
必ずしも全てのケースで認められるとは限りませんが、状況が重大な場合に認められる可能性があるものとして、性格の不一致、暴力や侮辱、虐待、親族との不和、犯罪行為による服役、金銭問題などがあります。
離婚裁判のメリット・デメリットについて
そもそも離婚裁判をするメリットやデメリットには、どのようなものがあるでしょうか。
ここからは離婚裁判のメリット・デメリットについて説明します。
離婚裁判のメリット
法的な拘束力がある
離婚裁判の最大のメリットは、判決に法的な拘束力があることです。
協議離婚の場合は、お互いの合意がないと離婚成立しません。
ただ裁判の場合は判決で「離婚」と出れば、法的な強制力が働くため必ず離婚できます。
「自分は離婚したいけど、相手がなかなか応じてくれない」というケースに役立ちます。
証拠を持っているを有利に進めれる
協議離婚の場合は、夫婦で話し合って、お互いの合意で離婚が成立します。
話し合いが基本となるため、お互いの感情面での交渉も必要です。
交渉とは論理で進めるものですが、感情を優先させてしまうと、なかなか合意もできません。
離婚裁判の場合は、証拠さえ揃っていれば、自分が有利なように進められます。
他の離婚方法のように感情が優先されることもないため、証拠をしっかり抑えている場合は、離婚裁判がいいでしょう。
離婚裁判のデメリット
時間がかかる
離婚裁判は手続きが終わるまでに、1~2年ほどの期間がかかります。
内容によって期間は変わりますが、判決に納得できず控訴があった場合は、もっと長くなります。
「すぐにでも別れたい」という場合は、和解離婚の方がいいかもしれません。
心理的負担がある
慣れてない人にとって、裁判に出席して、相手と交渉するのは心理的な負担があります。
裁判自体が1~2年と長期化するため、辛い時間も長くなります。
ただ弁護士に依頼をすれば、心理的な負担も軽くなるでしょう。
法律のプロが味方にいれば安心でき、裁判自体も有利に進められます。
判決には従う必要がある
離婚裁判の判決には法的な拘束力があります。
つまり、どんな判決が出たとしても必ず従わなければいけません。
「判決に法的な拘束力がある」ことはデメリットのように感じますが、話し合いで離婚が成立しない場合は、裁判した方がいいです。
「自分は離婚をしたいけど、相手がなかなか応じてくれない」というケースなら、証拠を集めて、裁判した方が結果的に早く離婚できる可能性もあります。
協議離婚が成立しない場合の、最終手段として離婚裁判を利用しましょう。
離婚裁判の必要書類
離婚裁判に必要な主な書類は以下の通りです。
- ・離婚裁判の訴状
- ・離婚調停不成立調書(離婚調停をしたものの不成立に終わったことを証明するための書類)
- ・当事者双方の戸籍謄本
- ・その他事案によって必要な書類(年金分割のための情報通知書、源泉徴収票、預金通帳のコピーなど)
離婚裁判の訴状は、裁判所のホームページから無料でダウンロードできます。
書式が異なっていると裁判所に受け取ってもらえない可能性もあるため、ダウンロードしたままの書類を使いましょう。
離婚裁判の手続きの流れ
ここからは離婚裁判の流れについて説明します。
裁判所に離婚訴訟の訴えを提訴する
離婚裁判で一番最初にやることは、家庭裁判所に訴状を出すことです。
相手配偶者の住所地を管轄する家庭裁判所が対象になります。
上記で説明した書類を不備なく揃えて、提出しましょう。
第1回口頭弁論期日の通知
離婚裁判の訴えを起こすことが管轄の裁判所に認められた場合、裁判所から第1回口答弁論期日について指定する通知が届きます。
口頭弁論とは裁判官の前で当事者がお互いの主張を展開することで、裁判の中心的な手続きになります。
第1回口頭弁論期日が決まると、離婚裁判で訴えられた相手である被告にも裁判の呼出状が送付されます。
裁判所から訴状を受け取った被告は、原告の主張に対する反論が記載された答弁書を作成し、裁判所に提出します。
第1回口頭弁論の開始
裁判の準備が整うと第1回の口頭弁論が始まります。
第1回口頭弁論は訴状が提出されてから約1ヶ月後に行われるのが一般的で、その後は審理の必要に応じて月に1回程度の頻度で第2回、第3回と進んでいきます。
離婚裁判の終了
数回の口頭弁論を経て当事者がお互いの主張や証拠を出し尽くした後は、裁判所による最終的な判断が判決として下されます。
離婚裁判における判決の中心となる事柄は、離婚を認めるかどうかです。
裁判所の判決は判決書という書類に文章として記載されます。
判決書には原告の請求を認めるか、認めないかの結論が記載されます。
また、その結論に至った判断の理由も記載されます。
和解と訴えの取り下げ
離婚裁判は最終的な判決に至る前に途中で終了する場合があります。
主な理由として、和解と訴えの取り下げがあります。
和解とは、裁判の途中で当事者の双方が和解の条件に同意して争いを終了することです。
裁判の中で裁判官から和解を勧められる場合もあります。
和解が成立するには当事者双方の同意が必要であり、和解に応じるかは任意です。
和解が成立すると和解調書が作成され、後は和解の内容に応じて処理をすることになります。
和解した内容は判決と同様の拘束力があります。
訴えの取り下げとは、離婚裁判を起こした原告が訴えを取り下げることです。
この場合は判決などの結果を待つことなく裁判は終了します。
判決で離婚が確定した場合の手続き
離婚裁判の判決で離婚することが確定した場合、判決が確定してから10日以内に離婚の手続きをする必要があります。
具体的には、判決の謄本と判決確定証明書とともに、本籍地または住所のある市区町村役場に離婚届を出します。
協議離婚の場合、離婚届には当事者や証人の著名押印が必要ですが、判決に基づいて離婚する場合は不要です。
離婚届は原告と被告のどちらでも提出できます。
注意点として、判決が確定してから10日以内に届け出なかった場合はペナルティーとして過料が科されることがあります。
離婚裁判が終了するまでの期間
離婚裁判は1つの裁判が終了するまでに1〜2年程度かかるのが一般的です。
内容が複雑だったり、証拠などの準備に時間がかかったりする場合は、さらに期間が長引くこともあります。
また、判決に不服がある場合は上級の裁判所に対して控訴や上告をすることができますが、そうなると解決までに3年以上かかることもあります。
離婚までに長い期間をかけたくない場合には、裁判の中で和解できるような道を探る方法もあります。
途中で和解することができれば、1年以内に手続きが終了する場合もあります。
離婚裁判には証拠が重要
離婚裁判を自分に有利な条件で早期に解決するには、自分の主張を裏付ける証拠があることが重要です。
一般に証拠として役立つ事柄について、事件のケースごとに紹介します。
不貞行為の事実の証明に役立つ証拠
相手が不倫や浮気をしている事実を証明するために一般に役立つ証拠として、以下のものがあります。
- ・ホテルなどの不倫の現場に出入りしていることを示す写真
- ・相手との関係を間接的に示すようなメール、SNS、手紙などのやり取り
- ・本人や不倫相手が浮気をしていることを認めている念書、手紙、録音など
証拠 | 内容 |
---|---|
写真 | 性行為・ラブホテルに入っている様子など |
音声・映像データ | 不倫相手との電話・旅行に行っている動画など |
クレジットカードの利用明細・レシート | ホテル・旅館などの利用明細 |
Suica・PASMOの利用履歴 | 他の証拠が必要になる |
メール・LINE・手紙 | 肉体関係があったことが分かる内容であること |
SNS・ブログ | 不倫している様子が分かる投稿 |
手帳・日記・メモ | 不倫相手と会う記録 |
GPS | ラブホテル・旅館などに行っている記録 |
住民票の写し | 配偶者が不倫相手と同棲している記録 |
妊娠・堕胎を証明できるもの | 女性の配偶者が不倫している場合の証拠 |
興信所・探偵の調査報告書 | 不倫している様子が分かるもの |
DVやモラハラの事実の証明に役立つ証拠
DV(ドメスティック・バイオレンス)やモラハラ(モラル・ハラスメント)など、肉体的・精神的暴力を証明するのに一般に役立つ証拠として、以下のものがあります。
- ・身体的暴力によって受けた負傷や障害の診断書
- ・相手の暴力による傷を撮影した写真や動画
- ・暴力やモラハラを受けた日時、場所、様子などを詳しく記載したメモや日記
- ・モラハラなどによる精神的苦痛を原因とする、心療内科などの受診記録や診断書
悪意の遺棄の事実証明に役立つ証拠
勝手に家を出て行って相手に生活費を支払わないなど、夫婦が互いに協力して生活していく義務を果たさない行為を、悪意の遺棄といいます。
悪意の遺棄の事実を証明するのに一般に役立つ証拠として、以下のものがあります。
- ・生活費の振り込みがなくなったことが把握できる預金通帳などの履歴
- ・別居が始まった期間や、別居に至った理由などを示す記録
- ・別居後に相手がどこに居住していたかがわかる資料(アパートの契約書など)
離婚に伴って決めておくべき事柄
離婚裁判では離婚するかどうかだけでなく、離婚に関連する様々な事柄についても裁判所の判断を仰ぐことができます。
離婚に関連する重要な事柄として、財産分与と親権について解説していきます。
財産分与について
財産分与とは、夫婦として生活している間に共同で築き上げてきた財産について、離婚後にどちらが取得するかを決める手続きです。
財産分与については裁判の中で争うこともできますが、そうなるとその分解決までに時間がかかります。
財産分与の方法について事前に話し合いなどで決めておけば、裁判の早期終了に役立ちます。
一般に財産分与の対象になるものとして、現金、預貯金、土地や建物などの不動産、美術品、宝飾品、家具、大型家電、年金、退職金などがあります。
一方、一般に財産分与の対象にならないのは以下のものです。
- ・結婚する前からどちらかが所有していたもの
- ・結婚後に相続や贈与を原因として取得したもの
- ・結婚する前に負っていた借金などの債務
- ・別居後にどちらかが取得したもの
- ・日常的にそれぞれの当事者が使用するもの
子どもの親権について
成年に達していない養育すべき子どもがいる場合、夫婦が離婚するにあたってどちらが子どもの親権を取得するかを決める必要があります。
離婚に関連する事柄のうち、財産分与や慰謝料については離婚後に条件を決めることもできますが、子どもの親権については子どもの成長に関わる事柄なので、必ず親権者を決めることになります。
離婚裁判をするうえで知っておくべきポイント
離婚裁判を実施するにあたって、あらかじめ知っておくと裁判を有利に進めやすいポイントを紹介します。
相手が行方不明でも裁判ができる
裁判をするには相手方が存在する必要がありますが、相手が行方不明で連絡が取れない場合はどうすればよいのでしょうか。
そんな時のための方法として、公示送達という制度があります。
公示送達とは、裁判の相手が行方不明の場合に、裁判への呼び出し状を相手に送付したとみなせる制度です。
裁判のためには相手に呼び出し状を送付する必要があるところ、相手が行方不明で送付できないときのための制度です。
公示送達が認められた場合、送付から2週間が経過すれば申立書を送付したのと同様の効果を得ることができます。
その場合、相手から反論がないと見なされるので、裁判を有利に進められる可能性が高くなります。
法テラスの弁護士費用の立替制度を利用する
離婚裁判で弁護士を立てるには多額の費用がかかりますが、経済的に余裕がないケースでは、法テラスの立替制度を利用できる場合があります。
法テラスでは一定の要件を満たしている場合に、弁護士費用を立て替える制度があります。
立替の対象になるのは着手金、報酬金、実費などです。
立替が認められるための要件は、収入が一定額以下であること、裁判に勝つ見込みがないとは言えないこと、民事法律扶助の趣旨に適することの3点です。
子どもの親権を得るためのポイント
離婚に伴って子どもの親権を争う場合、一般に以下のポイントが重要になります。
- ・現に子どもと同居していること
- ・経済的に安定していること
- ・肉体的にも精神的にも健康であること
- ・子どもと一緒に過ごせる時間が多いこと
なお、上記はあくまで親権を獲得する可能性を高めるための目安であり、要件を満たせば必ず親権が得られるわけではありません。
特に、まだ子どもの年齢が幼い(0〜10歳程度)ケースでは、母親に親権が認められる場合が多い傾向があります。
離婚に伴って借金がある場合
離婚をする場合、夫婦で築き上げた財産について財産分与をすることになりますが、借金やローンなどのマイナスの財産も財産分与によって分ける必要があります。
もっとも、全ての借金が財産分与の対象になるわけではなく、財産分与の対象になるものとならないものがあります。
一般に財産分与の対象になる債務としては、生活費を補うための借金、医療費、子どもの教育費、自宅の住宅ローン、自家用車のローンなどがあります。
一方、夫婦のどちらかが一方的に支出した債務は基本的に財産分与の対象にならず、本人が負担することになります。
収入や生活レベルよりも明らかに高い買い物や浪費のための借金、ギャンブルに消費した借金などです。
なお、単に配偶者が多額の借金をしただけでは法定離婚原因にはなりませんが、一定の場合には婚姻を継続しがたい重大な事由に該当するとして、法定離婚原因になる場合があります。
法定離婚原因として認められる可能性がある場合としては、多額の借金が原因で日常生活に支障をきたしているケースや、浪費について改善の余地がなく、今後も生活が苦しくなる可能性が高いケースなどです。
婚姻費用分担請求を利用する
離婚裁判の期間が長くなると、普段の生活における経済的な負担も大きくなりがちです。
そのための対策として婚姻費用分担請求という制度があります。
婚姻費用分担請求とは、文字通り婚姻費用の分担を相手に請求する制度のことです。
婚姻費用とは、夫婦で生活を送るために必要な生活費を意味し、家賃、生活費、子どもの学費などがあります。
婚姻費用については当事者同士の話し合いで決めることもできますが、折り合いがつかない場合は家庭裁判所に対して調停や審判を求めることができます。
再婚禁止期間を把握しておく
男性は離婚後にすぐにでも再婚することができますが、女性は原則として民法において再婚禁止期間が設けられている点に注意が必要です。
女性が再婚する場合、原則として離婚が成立してから100日が経過する必要があります。
これは子どもの親が誰であるかを特定するために規定されたものです。
親の特定に問題が生じないときは、例外として100日の禁止期間が除外されます。
禁止期間が除外されるのは以下のような場合です。
- ・離婚のときに女性が妊娠していた場合
- ・離婚する女性について出産が不可能な場合(子宮の全摘出や高齢で明らかに出産できないなど)
- ・離婚後に前の夫と再婚する場合
- ・配偶者が3年以上の生死不明で離婚する場合
離婚裁判を早く終わらせるための4つの方法
離婚裁判は一般的に1~2年ほどかかります。
裁判中は精神的な負担もあったり、手続きの時間もかかったりするので、なるべく早く終わらせたいですよね。
そこで、離婚裁判を早く終わらせるための方法を4つ紹介します。
証拠をしっかり集めておく
裁判では、主張が正しいかどうかを証拠によって判断します。
自分の主張を通すためには、しっかりと証拠を揃えておくべきです。
事前に証拠を集めておけば、裁判官もすぐに判断が降せるため、裁判が長期化しません。
また証拠を集めるなら、裁判が始まる前にしましょう。
裁判が始まってしまうと、相手も証拠集めを警戒してしまうので、証拠が集まりきらない可能性もあります。
財産分与について詳しく提示する
裁判が長期化する原因の1つは財産分与です。
財産分与とは、夫婦の持つ財産をどのように分配するか決めること。
裁判の中で財産分与の割合を決めていくと、お互いに「少しでも多くお金が欲しい」と思い、なかなか決定しません。
お互いの財産(家電・車・不動産など)について、評価額を出して、財産分与の割合を決めておきましょう。
親権についてどちらが持つか決めておく
親権は離婚裁判が長期化してしまう理由の1つ。
親権者を決めるときは「子供にとって、どちらと過ごすのが適しているのか?」がポイントです。
一般的に「子供の育成は母親が一緒にいた方がいい」という考え方が強く、母親が親権を取ることが多いです。
もし「自分は父親だけど、親権を取りたい」と思っているなら、子供と接していた態度や経済状況など、自分の方が子育てに適しているという判断材料を揃えておきましょう。
和解提案を受け入れる
離婚裁判を早期に終わらせるには、和解提案を受け入れることも大切です。
和解とは裁判の判決を待たずに、お互いに条件の落とし所を作って、合意すること。
一般的に「和解」と聞けば、相手のことを許して仲直りするイメージがありますが、裁判の和解は違います。
裁判官から和解提案されることもあれば、相手側から提案されるケースもあります。
和解提案を受け入れることで、長い裁判を早めに終わらせれるというメリットもあります。
判決を待った場合は、判決に対して控訴・上告が認めれており、裁判が長期化するかもしれません。
さらに和解の場合は、裁判で請求している慰謝料以外の条件面での合意形成もできます。
裁判の判決を待って泥沼化するよりも、和解提案を受け入れて早期に終わらせる方が賢明かもしれません。
弁護士に依頼する
自分が裁判の知識を持っておらず、素人の場合は弁護士に依頼しましょう。
なぜなら弁護士は法律のプロなので、有利に裁判を進められ、無駄に長期化してしまうのを防げるからです。
弁護士には得意分野があるので「離婚裁判が得意」という弁護士に依頼するのがおすすめ。
気軽に無料相談できる弁護士事務所も多いので、まずは相談から始めてみましょう。
離婚裁判でよくある疑問と回答
離婚裁判を遂行するうえでよくある疑問について、その回答を紹介します。
裁判には当事者が出席しなければならないのか?
民事裁判は基本的に弁護士に手続きを依頼する場合が多いですが、弁護士が代理人の場合、当事者は原則として裁判に出席する必要はありません。
当事者が尋問の対象になる、当事者尋問の日に出席しなければならない程度です。
なお、民事裁判の遂行を弁護士に依頼しない場合は、原則として当事者が裁判に出席する必要があります。
もっとも、実際には弁護士に依頼せずに民事裁判を遂行することは至難の業なので、あくまで制度上の話と言えます。
離婚裁判をすると他人に傍聴されてしまうのか?
裁判をスムーズに行うための準備である争点整理の期日については、一般的に傍聴されません。
一方、裁判自体は公開の法廷で行われなければならないことが法によって定められているため、傍聴されることになります。
具体的には、証人尋問や当事者尋問などが公開されて傍聴の対象になります。
離婚裁判の判決は公開される可能性があるのか?
法的に重要な判断が下された判決については、重要な判例として裁判に関する雑誌や書籍などで紹介される可能性があります。
無数にある裁判の事例の中では非常にまれですが、可能性は存在します。
また、判例を紹介した雑誌や書籍などを参考に、インターネットにも判例に関する情報や解説が掲載される可能性もあります。
いずれにせよ、公開される情報は事件の概要や、どのような判断がされたかが中心で、個人情報は記載されません。
裁判にかかった費用は当事者のどちらが支払うのか?
裁判をするためには、訴訟費用や弁護士費用がかかります。
訴訟費用とは、印紙代や証人の日当など裁判自体にかかる費用のことで、裁判の判決に応じて当事者の負担割合が決まります。
基本的には裁判に負けた側が訴訟費用を多く支払うことになります。
弁護士費用とは、その名の通り訴訟を依頼した弁護士に支払う費用のことです。
弁護士費用については裁判の判決に関わりなく、各当事者は自分が依頼した弁護士の費用を自分で負担します。
離婚裁判は親族や友人などに証人になってもらうと有利か?
離婚裁判で証人になってもらう場合、当事者の親などの親族の証言は基本的に重視されません。
親族は当事者の味方をするのが一般的なので、証拠としては客観性に欠ける場合が少なくないからです。
友人についても、当時者のどちらかのみと親しい場合には同様に証拠としては重要視されません。
例外として、夫婦の双方の友人などは、ある程度の客観性が期待できる場合もあります。
裁判中にも関わらず相手と交際していると不利になるのか?
事案にもよりますが、離婚裁判中に相手(いわゆる不倫相手)と交際していると不利になる場合があります。
具体的には、不貞行為の証明になる、慰謝料の金額が高くなる可能性がある、子どもの親権の獲得で不利になるなどです。
もっとも、不貞行為の存在を既に認めていて、それを前提に裁判が進んでいる場合には、具体的な不利益は生じないこともあります。
とはいえ、基本的に裁判官に良い印象は与えない行為です。
裁判中に子どもと面会できるのか?
離婚裁判が進行している間は、どちらが親権を持つかは決まっていないので、基本的に子どもと面会する面会交流の権利は認められます。
そのため、子どもが離婚裁判中の親のどちらと住んでいるとしても、一緒に住んでいない側の当事者は原則として相手に対して子どもとの面会を要求できます。
子どもとの面会について当事者の話し合いではまとまらない場合は、家庭裁判所に面会交流調停を申し立てることもできます。
離婚裁判を弁護士に依頼した場合の費用
弁護士に手続きを依頼して離婚裁判を行う場合、かなりの費用が発生します。
裁判で勝訴した場合も弁護士費用は自己負担になるので、弁護士費用としてどの程度の金額がかかるか把握しておくのは重要です。
弁護士に依頼しなくてもかかる費用
まず、弁護士に依頼しなくても裁判自体にかかる費用の目安についてです。
- ・離婚の成立を請求するのに1万3,000円程度
- ・慰謝料の請求、財産分与の請求、子どもの養育費の請求にそれぞれ1,200円程度
- ・慰謝料を請求する場合、その金額に応じて1,000〜5万円程度(請求する慰謝料の金額の1%程度)
- ・切手代として6,000〜7,000円程度
弁護士に依頼するかどうかに関係なく裁判自体にかかる費用の目安は、多くの場合は数万円程度です。
弁護士に依頼するとかかる費用
次に、離婚裁判の遂行を弁護士に依頼した場合に発生する費用の目安を見ていきます。
- ・離婚裁判について法律相談をする費用:0〜1万円程度
- ・離婚裁判を依頼した場合の着手金:20〜40万円程度
- ・離婚裁判を遂行した場合の基本料金(裁判に勝ったか負けたかに関わらず支払うもの):30〜60万円程度と出張費などの実費
- ・離婚に関する問題を無事に解決した場合の成功報酬:10〜20万円程度
- ・離婚裁判で慰謝料や財産分与を獲得した場合の報酬:慰謝料や財産分与の1〜2割程度
離婚裁判について弁護士に依頼する場合、一般に60万円程度の費用がかかることになります。
判決内容に納得できない場合は?
離婚裁判は判決に法的拘束力があるため、基本的には従うしかありません。
ただし「控訴」も認められており、判決内容に納得できなければ、高等裁判所に控訴審を行ってもらうこともできます。
控訴をするためには、判決書が送達された日から2週間いないに高等裁判所への控訴が必要です。
もし高等裁判所での判決も不服だった場合は、最高裁判所への上告ができます。
和解離婚となる場合もある
離婚裁判をしていると、裁判官から和解離婚を勧められるケースもあります。
和解離婚とはお互いの合意によって、離婚を成立させる方法です。
なぜ和解離婚を勧めるかというと、離婚裁判は長期化して、お互いに疲弊してしまうから。
長期の裁判を続けて離婚を成立させるよりも、お互いの落とし所を作って、早期解決した方が楽だという判断です。
実際に離婚裁判から、和解離婚に切り替わったケースが半数近くあります。
離婚裁判を弁護士に依頼するメリット
先ほど紹介したように、離婚裁判の手続きを弁護士に依頼するとかなりの費用が発生します。
その分、弁護士に離婚裁判を依頼することには様々なメリットがあります。
裁判を有利に進めやすくなる
裁判を自分が有利になるように進めるためには、様々な法的知識が必要になります。
また、法的な知識をいかに有効に活用するかの技術や経験も重要です。
離婚問題を得意とする弁護士に依頼することで、法廷での展開を有利に進めることにつながります。
また、相手に弁護士が付いている場合は、自分も弁護士に依頼する必要性が非常に高くなります。
専門家を相手に素人だけで戦うのは非常に困難だからです。
弁護士には弁護士ということです。
事件の解決までの期間の短縮につながる
裁判には様々な書類を提出する必要がありますが、自分で全てを揃えるのは大変です。
弁護士に依頼すれば、書類の入手や作成を代行してくれます。
また、離婚裁判が始まれば主張が受け入れられるためのポイントを押さえて適格に主張してくれるので、裁判が混乱せずに解決までの期間を短縮することにつながります。
適切な証拠を収集しやすい
裁判では適切な主張をするとともに、その主張を客観的に証明するための証拠を集めて提出することが重要になります。
例えば、不倫した事実を証明するための証拠などです。
裁判官を納得させるための証拠を素人が自力で集めることは困難ですが、どのような場合にどのような証拠が必要になるかを把握している弁護士であれば、適切な証拠を集めて裁判を有利に進めることができます。
慰謝料や親権などを獲得しやすくなる
離婚裁判では離婚を成立させるだけでなく、慰謝料、財産分与、親権などを獲得することが重要になってきます。
これらを獲得するためには適切な主張と立証が必要です。
離婚事件の経験が豊富な弁護士であれば、慰謝料を多く獲得できるケース、財産分与を得やすい方法、親権を得るためのポイントなどを知っているので、離婚に付随するこれらの要素を獲得しやすくなります。
まとめ
協議離婚と調停離婚は成立のために夫婦の双方の同意が必要ですが、離婚裁判の場合は反対する側の同意がなくても、裁判所が離婚することが相当だと認めれば離婚が成立します。
そのため、離婚裁判で離婚が認められるには、法律で規定された要件を満たす必要があります。
要件を満たしていることを証明して裁判を有利に早く進めるためには、適切な立証活動と証拠の提出が重要になります。