この記事でわかること
- 離婚するまでにやるべきことリストで準備ができる
- 離婚する時に決めること
- 離婚前に準備すべき5つのこと
- 子どもへの影響で考えるべきこと
離婚するには準備が大切!離婚までにやるべきこと
離婚に向けてやっておくべきことはいくつかありますが、まずは、なぜ離婚する前に準備が必要なのかを理解するために、離婚時に決めるべきことを簡単にご説明します。
離婚する時に決めること
離婚時には、決めておかないといけない事項がたくさんあります。
親権者以外は離婚後に決めることも可能ですが、離婚後は話し合いをする機会を持つこと自体が難しくなるため、なるべく離婚前にしっかり決めておきましょう。
離婚する時に決めること
- ・親権者
- ・養育費
- ・面会交流
- ・財産分与
- ・慰謝料
- ・婚姻費用
親権者
親権者は、離婚届に必要な記載事項ですので、未成年の子どもがいる場合には必ず決めなければなりません。
親権の内容は、財産管理権と身上監護権の2つに分けられます。
財産管理権というのは、子どもの財産を管理する他、子どもが何らかの契約をする場合に同意を与えたり、子どもを代理したりするなど、子どものために法律行為を行うものです。
一方、身上監護権とは、直接的に子どもの世話をしたり、教育したりするものです。
通常、親権者は、財産管理権と身上監護権の両方を行使しますが、身上監護権だけを切り離すこともできます。
例えば、離婚時に親権者を父親と指定しながら、母親を監護権者として、母親が子どもの養育を行うというようなケースです。
もちろん、複数の子どもがいる場合、子ども毎に親権者を指定することも可能です。
養育費
養育費は、子どもを養育・監護しない方の親が、子どもが成人するまで養育・監護する方の親に対して支払う、養育に必要な費用のことです。
離婚をする際に親権者を決めると同時に、1か月に支払う金額、支払方法、いつまで支払うのかといったことも決める必要があります。
金額については、話し合いによって自由に決めることができますが、裁判所では、原則として両親の収入及び子どもの人数と年齢によって決定し、個々の事情によってその金額を修正します。
なお、16歳以上23歳未満の子どもについて養育費を支払っていれば、子どもを扶養親族とすることによって扶養控除を受けることができますので、どちらの親が子どもを扶養親族とするかについても、決めておきましょう。
面会交流
面会交流とは、子どもと、子どもを養育・監護していない方の親が面会、交流するというもので、2011年の民法改正で明文化された制度です。
決めるべき事項は、面会の頻度と方法などで、実務上はかなり詳細に決めることがあります。
子どもを養育・監護している方の親が、面会交流を実行しない場合には、金銭的なペナルティーを科すことによって実行を促すという強制執行が可能ですが、そのためには、面会の方法について具体的に決めている必要があります。
財産分与
財産分与とは、婚姻期間中に夫婦が築いた財産を、公平に分配するという制度です。
財産分与の対象となる最も高額な財産は、自宅の土地と建物だということはよくありますが、不動産の処分は、夫婦間での合意が難しい問題の1つです。
特に、住宅ローンを払い終えていないケースでは、住宅ローンもマイナスの財産として分与の対象となるため、分配方法が複雑になり、一筋縄ではいきません。
また、財産には保険も含まれます。
解約したうえで返戻金を分配するのが一般的ですが、解約せずに契約を継続する場合には、どのような形で財産分与に反映させるのか検討が必要です。
慰謝料
不倫や暴力などによって、夫婦のどちらか一方に精神的な損害が発生している場合には、慰謝料についても決める必要があります。
ただ、金銭的な問題ですので、財産分与に上乗せしたり、養育費の支払額を増額したりといった形で取り決めがされることもよくあります。
婚姻費用
婚姻費用というのは、日常生活を送る上で必要になる費用のことで、別居をした際によく問題になります。
例えば、諸事情により離婚はもう少し先になるが、それまでは別居をするというような場合、法律上は夫婦のままですから、その間の生活費を分担する義務があります。
こういう時は、別居前に、収入の多い方が少ない方に対し、1か月の生活費としていくら支払うのかを決めておきます。
なお、夫婦間の扶養義務は、子どもに対する扶養義務と同じで、義務者に余裕があるか否かにかかわらず、権利者が義務者と同程度の生活を維持できるようにする必要があります。
公正証書を作成
以上の事項について合意ができた場合は、必ず書面を作成しておきましょう。
特に、養育費などの金銭の給付に関する事項がある場合には、強制執行認諾約款付公正証書を作成すべきです。
強制執行認諾約款とは、「取り決めのとおりにお金を支払わなかった場合には、強制執行されても異議はない」という文言が記載された公正証書です。
この書面があると、例えば養育費の支払が滞った際には、いきなり給料を差し押さえることができます。
離婚前に準備すべき5つのこと
離婚前に準備すべき5つのこと
- ・離婚後の生活費を確保する
- ・離婚のための証拠を揃える
- ・財産分与の資料を揃える
- ・離婚後の居所を確保
- ・離婚後も配偶者と連絡を取れる手段を講じる
それでは、離婚前には具体的にどのような準備をすべきか、1つずつ順にご説明していきます。
離婚後の生活費を確保する
母親が子どもを引き取った場合、離婚前に比べて経済的に苦しくなるというケースが多くあります。
専業主婦の場合はもちろんですが、定職に就いていたとしても、ある一定以上の収入がなければ、婚姻期間中の生活レベルを下回ることが予想されます。
特に、離婚によって転居した場合などは支出が増えますので、ある程度の蓄えが必要になります。
したがって、離婚時にどれぐらいの蓄えが必要かをしっかりと検討し、その分の現金を確保するようにしましょう。
なお、離婚に備えて現金を蓄えていることを配偶者に知られると、財産分与の対象とされてしまいますので、この点は注意が必要です。
離婚のための証拠を揃える
不倫や暴力などといった、相手に大きな原因のある理由で離婚を切り出す場合、相手がすぐ同意してくれるのであれば問題ありません。
しかし、そうでない場合は、調停や裁判になることも考えられますので、事前に証拠を準備しておきましょう。
調停では、証拠があれば話し合いが有利に進むでしょうし、裁判においては、証拠がなければ離婚が認められません。
民法では、離婚できる事由が以下の5つに特定されています。
離婚できる事由5つ
1.配偶者に不貞があったとき
2.配偶者から悪意で遺棄されたとき
3.配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
4.配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
5.その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
したがって、この中のどれかに該当するとはっきりわかる証拠を用意しなければなりません。
不貞行為を離婚理由とする場合は、配偶者のLINEやメールの記録、ラブホテルのポイントカードなどがあれば比較的わかりやすいですが、モラハラなどの場合には、明確な証拠がないことも珍しくありません。
そういうケースでは、配偶者との会話を録音したものや、配偶者の言動を記録した日記など、自ら証拠を作ることも考えましょう。
また、性格の不一致といった理由だけでは、なかなか離婚は認められませんので、できるだけ早い段階で別居をし、婚姻関係が破綻しているのだという外形を作っておくという方法もあります。
財産分与の資料を揃える
財産分与で重要なのは、分与すべき財産を全て洗い出すということです。
不動産や動産、給料振込や光熱費の支払などに利用している銀行口座など、夫婦双方が認識している財産の他に、どちらか一方だけしか知らない財産が存在することは、珍しくありません。
例えば、預金口座などは、秘匿する意図ではなくても、配偶者が知らない口座を作ることはよくあります。
離婚の準備段階であれば、そのような口座の預金通帳を探し出すことはそれほど難しくありませんが、離婚を切り出した後だと、配偶者に隠されてしまう可能性もあります。
したがって、預金通帳に限らず、配偶者が持っている可能性がある財産については、日頃から意識して調べておくことをおすすめします。
そういった資料を用意できれば、協議でも調停でも、公平な財産分与が行えるでしょう。
離婚後の居所を確保する
離婚した場合、通常、少なくともどちらか一方は、自宅を出ることになりますので、離婚後の住居を確保しておかなければなりません。
特に、子どもの親権者となる場合は、子どもの通園や通学、住環境などにも配慮したうえで新たな住居を決めることになりますので、事前に十分な調査が必要です。
離婚後も配偶者と連絡を取れる手段を講じる
養育費の支払や慰謝料の分割払いなど、離婚後も金銭の支払を受ける取り決めをしている場合は、相手の転居や電話番号の変更などがあったとしても、連絡を取れるようにしておくことが重要です。
具体的には、配偶者の家族や友人と直接連絡が取れるよう、電話番号やLINEを交換しておきます。
そうすれば、配偶者と連絡が取れなくなって、養育費が支払われなくなった場合にも請求をすることができ、転職していた場合でも、新しい職場を見つけて給料を差し押さえることができます。
子どもへの影響で考えるべきこと
離婚前にすべきこととして5つご紹介しましたが、子どもへの影響についても、十分に考慮しておく必要があります。
子どもへの影響で考えるべきこと
- ・子どもの学校をどうするか
- ・子どもの氏をどうするか
- ・子どもの進学をどうするのか
- ・面会交流をどうするか
既に述べたことと重なる部分もありますが、非常に大事なことなので、改めてまとめておきます。
子どもの学校をどうするか
親権者となった親が離婚にともなって転居する場合、子どもの通園、通学をどうするのかという問題があります。
子どもへの影響を極力小さくするならば、転校せずに今までどおりの学校等へ通える範囲内で転居するのがおすすめです。
もちろん、転居先を決定するに際し、他にも考慮すべき要素は多々あるでしょうが、学校が変わるということは友達とも別れるということですので、子どもへの影響が大きいという点は、心にとめておきましょう。
離婚の時期を、子どもの進級や進学にあわせるだけでも、子どもへの影響を軽減できることもあります。
子どもの氏をどうするか
離婚にともなって母親が旧姓に戻った場合、母親が親権者となり子どもを引き取ったとしても、子どもは父親の戸籍に残った状態で父親の氏のままです。
子どもの氏を母親と同じにするには、子の氏の変更という手続を家庭裁判所に申し立てて、子どもを母親の戸籍に移す必要があります。
手続自体は難しいものではありませんが、通園または通学している幼い子どもにとって、自分の氏が変わるということは相当なショックだと考えられます。
したがって、母親は離婚時に、旧姓に戻るのかどうかを、慎重に検討する必要があります。
子どもの進学をどうするのか
離婚によって、経済的な問題を抱えるケースは多くあり、特に、母親が親権者となった場合には、その傾向は顕著です。
金銭面での事情によって、子どもに十分な教育を受けさせてあげられないといった状況を回避するためには、離婚の際に、夫婦間で子どもの進学についてよく話し合い、対応策を講じておくべきです。
養育費の取り決め時に、子どもに関して、将来特別な出費が必要な場合には改めて協議するといった内容を盛り込むことがありますが、可能であれば、進学することを前提として、養育費の金額を決めることをおすすめします。
離婚後、何年も経過してから、子どもが進学するから費用を負担して欲しいと要請するよりも、離婚時に子どもの将来のことを話し合い、進学費用の負担をどうするかを決めておく方が、支払の可能性は高まるはずです。
面会交流をどうするか
2011年の民法改正によって、面会交流について明文化されたというお話をしましたが、同時に、民法の条文には、面会交流を行う場合には、子の利益を最も優先して考慮しなければならないという文言が付け加えられました。
母親が親権者である場合、「母親が子どもに会わせてくれない」と、父親が不満を述べるケースがあります。
もちろん、子どもを養育・監護していない親は、子どもに面会する権利を有しているわけですが、そもそも面会交流というのは、子どもの成育に必要であるというのが大前提です。
ですから、子どもが面会を望まず、むしろ悪影響が懸念されるのであれば、無理に面会交流を行うべきではないということを理解してください。
まとめ
いかがだったでしょうか。
離婚するには準備がどれほど重要か、お分かりいただけたと思います。
特に、財産分与や慰謝料請求の場面では、十分な証拠さえ用意できれば、それだけで有利な立場で話し合いを進めることができます。
離婚を切り出すその前に、ぬかりなく周到な用意をすることが、上手く離婚するための秘訣です。