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離婚裁判の流れ|裁判のメリット・デメリットを知ってから検討しよう

厚生労働省が行った2017年の人口動態調査によると、離婚総数212,262件のうち、協議離婚が184,996件で全体の87.2%を占めています。

調停離婚が9.8%で、裁判にまで至るケースはわずか2.6%に過ぎません。

裁判という、どちらかと言えばネガティブなイメージの手続ですが、ここまで利用率が低いのには、当然、それなりの理由があります。

離婚裁判には一体どのような問題があるのか?今回は、離婚裁判の流れをわかりやすくご説明し、そこから見えてくる離婚裁判のメリットとデメリットについてまとめてみます。

離婚裁判の流れから見るメリットとデメリット

まず、離婚裁判の概要について簡単にご説明したうえで、離婚裁判がどのように進んでいくのかを流れに沿って解説します。

その後、離婚裁判のメリットとデメリットをおさらいし、最後に、離婚裁判に要する費用についても、まとめてご紹介します。

離婚裁判とは

刑事事件を扱う裁判を刑事訴訟、民事事件を扱う裁判を民事訴訟と言いますが、離婚裁判は人の身分関係を扱う裁判なので、人事訴訟と呼ばれます。

基本的には民事訴訟と同じような手続で行われますが、参与員が和解に立ち会ったり、調査官が子どもに直接会って調査をしたりする点で、異なります。

離婚裁判ができる場合

どのような場合に離婚裁判を提起できるのかは、民法に規定があります。

第770条

夫婦の一方は、次に掲げる場合に限り、離婚の訴えを提起することができる。

  • 1.配偶者に不貞な行為があったとき。
  • 2.配偶者から悪意で遺棄されたとき。
  • 3.配偶者の生死が三年以上明らかでないとき。
  • 4.配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき。
  • 5.その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき。

第2号の「悪意で遺棄されたとき」というのは、生活費を渡さないなど、配偶者を見捨てるような行動です。

第1号から第4号までに該当しない原因は、全て第5号の婚姻を継続し難い重大な事由であることになります。

具体的には、暴力やセックスレス、配偶者の親族との不和などです。

性格の不一致とかギャンブルは、それだけで離婚原因とはなりませんが、それによって婚姻関係が破綻していれば、離婚は認められる可能性があります。

裁判手続における離婚の種類

離婚裁判になったからと言って、全ての場合、判決によって離婚が決まるわけではありません。

冒頭でご紹介した厚生労働省のデータでは、離婚裁判になった5,592件のうち、判決による離婚は2,204件で全体の39%しかなく、60%以上は、裁判の中での和解による離婚で終了しています。

また、ごく僅かではありますが、認諾による離婚というものがあります。

これは、訴えられた方が、訴えを全て認めて離婚に応じ、裁判が終了するというものです。

調停前置主義

離婚の裁判を起こす前には、必ず離婚調停をする必要があると、法律で定められています。

これを調停前置主義と言います。

離婚などの問題は、その後の人間関係もあるため、裁判所が一方的に判断するのではなく、できれば話し合いで解決すべきであるという考え方によるものです。

離婚裁判の流れ

それでは離婚裁判がどのような流れで進行していくのかを見ていきましょう。

訴状の作成

訴状には、特に決まった書式はありませんが、裁判所には、訴状の雛形が備え置かれています。

一般の方が、一から訴状を作るのはなかなか骨が折れると思いますので、こういったテンプレートを利用することをおすすめします。

ネットからダウンロードすることもできますし、記載例も用意されています。

■資料:裁判所 「離婚裁判の訴状書式」
■資料:裁判所 「離婚裁判の訴状記載例」

また、提訴の際には、訴状の他に、証拠、当事者の戸籍謄本、それに離婚調停が不成立になったことを証明する書面が必要になりますので、準備をしておきましょう。

提訴

訴状と証拠の準備ができたら、いよいよ提訴です。

提訴する裁判所は、夫または妻の住所地を管轄する家庭裁判所ですが、離婚調停を行った家庭裁判所でも扱うことは可能です。

提訴すると、裁判所から、第1回目の期日をいつにするかを調整するための連絡があります。

これによって期日が決まると、訴状が相手方に送達されます。

通常、1回目の期日は、1か月から1か月半後ぐらいに設定されます。

答弁書

相手方から訴状に対する答弁書が提出されます。

答弁書は、相手方から直接送付されることもあれば、裁判所から送られてくることもあります。

答弁書を提出した場合、相手方は1回目の期日に欠席しても、答弁書の記載内容を陳述したものとみなされ、不利な取扱を受けることはありません。

これを擬制陳述と言います。

口頭弁論

第1回目の口頭弁論期日は、誰でも傍聴することができる、通常の公開法廷で行われます。

双方が提出した書類の内容を陳述することになっていますが、実際には裁判官が、「原告は訴状のとおり陳述しますか?」と尋ね、それに対して、「陳述します」と答えるだけです。

その他は、次回期日の決定と、次回期日までに用意する書面や証拠の確認が行われる程度で、開始から数分程度で終わることも多々あります。

弁論準備手続

第1回期日の後は、弁論準備手続を行うケースがよくあります。

弁論準備手続というのは、口頭弁論とは別に、この裁判はどこが争点なのか、どのような証拠を提出するのかなど、重要なポイントを整理することによって、裁判をスムーズに進めようという手続です。

法廷ではなく、比較的こぢんまりとした一室で行われ、原則として傍聴人はいません。

口頭弁論や弁論準備手続は、通常、1か月から1か月半に1度のペースで開かれます。

ただし、年末年始や夏期休暇の時期、また、担当裁判官の異動がある場合は年度初めにも少し間隔があくことがあります

和解期日

弁論準備手続で双方が主張や証拠を出し合い、話し合いを行った結果、和解が可能となれば、裁判所が和解期日を設定します。

和解期日では、改めて和解の内容を確認したうえで、和解調書が作成されます。

証拠調べ

和解できない場合には、証拠調べということになります。

証拠調べでは、書類や写真などの書証だけではなく、当事者双方に対する尋問や証人への尋問が行われます。

証拠は裁判をするうえで、判決を左右する重要なものになります。

実際に証拠として、有効なものは下記の通りです。

  • ・メールやLINEの履歴
  • ・SNSやブログ
  • ・写真や動画
  • ・録音データ
  • ・Suica・PASMOの利用履歴
  • ・日記や手帳
  • ・探偵事務所の調査報告書

裁判が始まる前に、少しでも有効な証拠を集めておきましょう。

口頭弁論の終結

双方が主張と証拠を出し合い、判決を下すのに必要な情報が揃うと、口頭弁論が終了し、結審します。

ちなみに、最高裁判所事務総局家庭局作成の「人事訴訟事件の概況」によると、平成30年の離婚裁判の平均審理期間は13.2か月と、余裕で1年を超えています。

しかも、そのうち、被告が出席して判決までもつれこんだケースに限ると、平均は17.8か月となり、1年半もの長きに及んでいます。

審理が終結すると、裁判官が判決を言い渡す日時を指定し、同日時に判決が言い渡されますが、この日は、出席する必要はありません。

判決の言い渡し後、判決正本が送達されてきます。

判決に不服がある場合には、判決正本が送達された日の翌日から数えて2週間以内に控訴する必要があり、双方が控訴しないままこの期日を経過すると、判決は確定します。

離婚届出

協議離婚の場合、離婚の届出が受理されることによって離婚が成立しますが、裁判離婚の場合には、判決が確定した日、または、和解の成立日が離婚日となります。

ただし、裁判による離婚の場合にも、自動的に戸籍が書き換えられるわけではありませんので、役所への届出は必要です。

届け出る期間は、離婚日から10日以内と定められており、判決正本や和解調書を添付しなければなりません。

離婚裁判のメリットとデメリット

これまでは離婚裁判の流れをご紹介してきました。

裁判で離婚をすることの問題点がいくつか見えてきたのではないでしょうか。

では、離婚裁判のメリットとデメリットを、改めてまとめてみます。

離婚裁判のメリット

・勝訴すれば必ず離婚できる
相手方がどんなに抵抗しても、勝訴すれば相手方の意向に関係なく離婚できるというのが最大のメリットです。

・判決書または和解調書が作成される
離婚以外の養育費や財産分与、慰謝料などの請求についても、認められれば判決書や和解調書に記載されます。

金銭の給付について記載がある判決書や和解調書が作成されるということは、それらが履行されなかった場合、強制執行が可能だということですので、この点も大きなメリットと言えます。

いずれにしても、勝訴できるのであれば、離婚裁判には十分なメリットがあると言えます。

離婚裁判のデメリット

・経済的な負担
まず、裁判の場合には調停と異なり、弁護士に依頼せずに手続を行うのは困難です。

そうなると、弁護士の費用が発生しますので、経済的な負担が大きくなります。

・精神的な負担
何らかの訴訟を経験した方はおわかりだと思いますが、裁判というのは精神的な負担が大きいものです。

特に、離婚裁判ともなると、相手方が提出する書面には、当事者にとっては誹謗中傷とも思えるような内容が記載されていることもありますので、それを目の当たりにすることは、大変なストレスになります。

・時間がかかる
離婚裁判は、早くて半年、長ければ数年に及ぶこともあります。

それだけ時間がかかるということは、当然、なかなか離婚できないということでもありますが、上述の経済的な負担と精神的な負担が、長期間継続するということでもあります。

・強制力がある
これは、メリットの裏返しでもありますが、敗訴した場合には抵抗する余地がなくなり、どれほど不条理だと感じる判決でも、従わなくてはなりません。

・プライベートが明るみに出る
前述のとおり、離婚裁判は公開の法廷で行われますので、当事者の友人や近所の住民など、誰でも傍聴することができます。

書面のやり取りが基本なので、あからさまに事実関係がおおっぴらになるわけではありませんが、特に、不貞などがあった場合には恥ずかしい思いをすることになりかねません。

・証拠が必要
裁判に証拠が必要なのは当たり前だと思われるかもしれませんが、実務では、みなさんが思っている以上に証拠は重要です。

したがって、勝てるだけの証拠がないと、裁判をしたくてもできないというケースもあり得ますので、この点もデメリットと言えるかもしれません。

以上のように、離婚裁判にははっきりとしたデメリットがあります。

離婚裁判の利用率が3%にも満たないのは、やはりこういったいくつものデメリットが敬遠されているからだと考えることができます。

離婚裁判に要する費用

最後に、離婚裁判を提訴するにあたって、必要な費用をまとめておきます。

裁判所の手数料

裁判所に納付する手数料は、次のとおりです。

離婚のみを求める場合(親権者の指定を含む)13,000円
離婚に加えて慰謝料も請求する場合離婚のみを求める場合の手数料と、下記の慰謝料請求の手数料のいずれか高額の方
財産分与も請求する場合1,200円
養育費も請求する場合(子ども1人につき)1,200円

【慰謝料の手数料】

慰謝料額手数料慰謝料額手数料
10万まで1,000320万21,000
20万2,000340万22,000
30万3,000360万23,000
40万4,000380万24,000
50万5,000400万25,000
60万6,000420万26,000
70万7,000440万27,000
80万8,000460万28,000
90万9,000480万29,000
100万1,0000500万3,0000
120万11,000550万32,000
140万12,000600万34,000
160万13,000650万36,000
180万14,000700万38,000
200万15,000750万4,0000
220万16,000800万42,000
240万17,000850万44,000
260万18,000900万46,000
280万19,000950万48,000
300万2,00001,000万5,0000

・例1 離婚と慰謝料100万円を請求する場合
→ 離婚のみを求める手数料の方が高いので、13,000円

・例2 離婚と慰謝料300万円を請求する場合
→ 慰謝料請求の手数料の方が高いので、20,000円

・例3 離婚、慰謝料400万円、財産分与、養育費(子ども2人)を請求する場合
→ 25,000円+1,200円+1,200円×2人=28,600円

裁判所の手数料は、訴状に収入印紙を貼付する方法によって納付します。

裁判所に予納する郵便切手

離婚裁判を提起する際には、手数料の収入印紙の他に、6,000円前後の郵便切手を予納する必要があります。

予納郵便切手の金額と枚数は、各裁判所によって異なりますので、管轄の裁判所に確認してください。

ちなみに、東京家庭裁判所と秋田家庭裁判所の予納郵便切手は、下記のとおり、金額と必要な切手の種類に違いがあります。

東京家庭裁判所秋田家庭裁判所
500円8枚500円7枚
100円10枚100円7枚
84円5枚84円6枚
50円4枚10円23枚
20円10枚5円10枚
10円10枚1円16枚
5円10枚
2円10枚
1円10枚
合計6,000円合計5,000円

なお、予納郵便切手は、不足した場合には追加で提出する必要がありますし、余った場合には返却してもらえます。

戸籍謄本発行手数料

訴状の添付書類として、当事者が記載されている戸籍謄本1通が必要です。

戸籍謄本は1通450円ですが、本籍地が遠方にあるなどの理由により、郵送で取り寄せる場合には、往復の郵便切手代が必要です。

また、戸籍を郵送請求する場合には、料金を定額小為替で支払う必要があり、定額小為替の発行には1枚100円の手数料が必要です。

証人の日当や鑑定人の手数料等

離婚訴訟では、証人を呼んだり、不動産の価値などを鑑定してもらったりすることがありますが、その際の日当や交通費、鑑定手数料などを負担する必要があります。

離婚裁判をするなら弁護士に依頼しよう

離婚裁判は自分だけでも可能ですが、なるべく弁護士への依頼がおすすめです。

下記では弁護士に依頼するメリットについて紹介します。

離婚裁判が有利に進む

離婚裁判は法的な交渉・手続きになるため、法的な知識のない素人だけで挑むのは危険です。

もし自分だけ弁護士を雇わずに、相手が凄腕弁護士を雇った場合、不利な裁判を進めてしまうかもしれません。

離婚問題が得意な弁護士に依頼すれば、裁判を有利に進められるでしょう。

裁判の期間が短くなる

離婚裁判は早くても半年、長ければ数年かかります。

離婚問題に慣れている弁護士を雇うことで、裁判終了までの期間が短くなる可能性があります。

裁判が一番早く終わるためには、1回目の判決「第一審」での終了が必要です。

自分の主張が正しいことを弁護士が論理的に説明することで、第一審で裁判が終了する可能性が高くなります。

面倒な書類作成を代行してくれる

離婚裁判では書類の作成など、面倒な事務作業があります。

人生で裁判の経験が豊富な人は少ないと思うので、書類作成に時間がかかると思います。

普段の仕事をこなしながら、離婚裁判の書類を作成するのは大変でしょう。

そこで弁護士を雇っていれば、面倒な書類作成を代行してくれます。

離婚問題に得意な弁護士なら、書類作成も慣れているので、安心して任せれるでしょう。

慰謝料の獲得・増額が期待できる

離婚裁判をするときに、気になるのが「どれぐらい慰謝料をもらえるのか?」だと思います。

離婚による慰謝料の相場は50~300万円程度です。

離婚する原因を相手が作ったのか、どれぐらい悪質だったのかによって慰謝料の金額は決定します。

弁護士は法律のプロなので、どのように証拠を集めて説明すれば慰謝料がアップするかのアドバイスもくれます。

自分だけ裁判を進めるよりも、慰謝料の増額が期待できるので、少しでも慰謝料を多く欲しいなら弁護士依頼がおすすめ。

親権や財産分与の獲得が期待できる

慰謝料に続き、親権の取得や財産分与も離婚時に問題になるポイントです。

子供がいるなら「親権は自分が取りたい」とか、夫婦の財産をしっかり分配して欲しいなどの思いがあるでしょう。

例えば親権を取るなら、今までの養育記録・経済状況・子供の意見といった要素で「自分の方が親権を取った方がいい」と思われなければいけません。

離婚問題に精通している弁護士なら、「どうすれば親権が取れるのか?」というアドバイスをくれるため、親権獲得も期待できます。

まとめ

離婚裁判についてご説明してきました。

だいたいの流れはご理解いただけたと思います。

離婚調停までは本人が行うということはよくありますが、裁判になると、高額な費用を支払ってでも弁護士に依頼される方が多いのは、やはり離婚裁判がそれだけ難しいということです。

相手方が離婚に応じないため調停が不成立になったというのであれば、裁判を起こすしかありません。

しかし、離婚裁判にはいくつものデメリットがありますので、離婚の合意はできるが条件面で折り合わないというような場合には、離婚裁判を回避するという選択肢も検討してみることをおすすめします。

監修弁護士
中野 和馬

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