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離婚で財産分与する前に確認しよう!対象財産と分け方について

夫婦が婚姻中に築いた財産は、例えば自宅も車もテレビも冷蔵庫も預金も保険も、原則として双方の共有財産です。

離婚時にこれらの共有財産を分配することを財産分与と言います。

結婚してまだ間がないうちに離婚する場合には、分配する財産もそれほど多くないでしょう。

しかし、何十年も夫婦として生活した後の離婚となると、共有財産も相当な量や金額になっていることが考えられます。

財産分与において、一方的に不利益を被ることがないよう、十分に理解を深めておくことが必要です。

ここでは、財産分与を行う前に知っておきたい情報をいろいろな角度からご紹介します。

なお、財産分与は離婚の際に行うものですが、入籍をしていない内縁関係についても解消の際には財産分与の規定が適用されます。

財産分与の対象財産と分与の方法

まず財産分与の法的な性質について簡単に触れ、財産分与の対象となる財産や方法、税金などについて順にご説明します。

財産分与の種類

財産分与は、その意味合いによって次の3種類に分けられます。

清算的財産分与

通常、財産分与と言えばこの清算的財産分与を指します。

結婚期間中に夫婦が共同で築いた財産については、公平に分配するため、原則として2分の1ずつ分けます。

なお、財産分与請求権があるからといって慰謝料請求を妨げるものではないという判例があります。

要するに、慰謝料のことは考慮せず、財産分与は財産分与として処理しようというのがこの場合の考え方です。

扶養的財産分与

清算的財産分与のように事務的に処理するのではなく、離婚後に扶養が必要な配偶者に対し、扶養料を含めて多めに分配するというものです。

例えば、配偶者の一方が専業主婦である場合や、病気のため経済面で不安がある場合、離婚後の生活に困らないよう、離婚時の財産分与に加え毎月一定額を支払っていくといった取り決めをします。

慰謝料的財産分与

清算的財産分与では慰謝料を考慮しないとご説明しましたが、慰謝料的財産分与は全く逆で、慰謝料を含んだ財産分与です。

一方の配偶者の不貞によって離婚に至ったケースなどでは、他方の配偶者は慰謝料を請求できるわけですが、慰謝料単独での支払に応じてくれない場合に、慰謝料を財産分与に上乗せする形で支払ってもらうということです。

財産分与の対象となる財産とならない財産

では、具体的に財産分与の手続きについてお話ししますが、まずは分与の対象となる財産を確定させる必要があります。

そのためには、財産分与の対象となる財産・対象とならない財産を区別しなければなりません。

対象となるのは共有財産

財産分与の対象となるのは、婚姻期間中に夫婦が協力し合って築いた全ての財産です。

例えば以下のようなものですが、実質的に判断をしますのでどちらの名義であるかは関係ありません。

  • ・自宅や投資物件などの不動産
  • ・宝飾品や電化製品などの動産
  • ・銀行などの預貯金
  • ・株式などの有価証券
  • ・自動車やバイク
  • ・生命保険や学資保険
  • ・公的年金や個人年金
  • ・退職金
  • ・住宅ローンやオートローンなどの負債

対象とならないのは特有財産

財産分与の対象とならない財産については、民法の規定があります。

第762条第1項
夫婦の一方が婚姻前から有する財産及び婚姻中自己の名で得た財産は、その特有財産(夫婦の一方が単独で有する財産をいう)とする。

具体的には以下のようなものが該当します。

  • ・結婚前に貯めていた預金
  • ・結婚指輪
  • ・花嫁道具として持ってきた家具
  • ・結婚期間中に相続した不動産
  • ・相続された不動産

なお、夫婦の共有財産なのかどちらかの特有財産なのかわからないものについては、第762条第2項で「共有に属するものと推定する」旨が定められています。

繰り返しになりますが、財産分与の対象となる資産は「婚姻中に共同して形成した財産」です。

なので親から相続した資産は、夫婦共有の財産としは扱わず、財産分与の対象になりません。

マイナス財産も対象になり得る

財産は何もプラスのものだけではありません。

日常生活を送るうえでは負債を負うことも考えられますし、それが夫婦の生活上必要な負債であれば共有財産と考えられますので、財産分与の対象となります。

主なものとしては、住宅ローンや自動車のローン、クレジットカードのキャッシングなどです。

お互いの預金額が不明の場合

夫婦双方が、お互いの個人名義口座に預けられている預貯金の額を知らないということはよくあります。

そもそも口座の存在自体を把握していないというケースも珍しくありません。

例えば、夫が妻に対して「絶対にどこかの口座にへそくりがあるはずだから、それも財産分与の対象にすべきだ」と主張し、妻に「そんなものはない」と否定された場合、夫が妻の隠し預金を証明する必要があります。

その場合は妻の預金通帳などを探し出し、銀行と支店、預金額を調査しなければならないのですが、財産分与の話をしているような段階で、妻の預金通帳を見つけることはほぼ不可能でしょう。

離婚調停などの際、預金している銀行と支店がわかっていれば、裁判所に対してその銀行の支店を調査するよう嘱託することができます。

財産分与で損をしたくなければ、財産分与の前の段階において、相手の財産について情報を集めておきましょう。

財産の評価と分配の仕方

公平な財産分与のためには、不動産や動産などの物品、保険などの価値を正しく評価し、適切に分配する必要があります。

不動産・動産・有価証券

通常、これらについては離婚時の価値として計算します。

物品自体を分割することができない場合、または分割しない方が良い場合、分配の方法としては次のようなものがあります。

  • 1.物品を売却して売却代金から経費を差し引き、残った利益を分ける
  • 2.どちらかが物品を引き取り、相手には持分に応じた金銭を支払う
  • 3.どちらかが物品を引き取り、相手には別の物品を譲渡する

保険

保険を解約する場合は、解約返戻金を2分の1ずつ分けます。

解約せずにどちらか一方が加入し続ける場合は、解約返戻金相当額の2分の1をもう一方に支払います。

なお、財産分与の対処になるのは婚姻期間中に支払った保険料だけですから、相手に支払うべき解約返戻金(相当額)を計算する場合もその範囲内に限られます。

年金

年金については年金分割制度が確立していますので、相手方の合意を得る必要はなく、婚姻期間に応じて計算された金額を受け取ることができます。

退職金

退職金が既に支払われている場合、共有財産として財産分与の対象となりますが、これは保険と同じように婚姻期間に相当する金額に限られます。

問題は、まだ退職金が支払われていない場合です。

原則として、将来の退職金についても財産分与の対象となりますが、退職までまだ10年以上あるなど、退職金支払いまでの期間が長いときは財産分与の対象とならないこともあります。

しかし公務員など、退職金が支払われる蓋然性が高い場合には、退職までの期間が長くても財産分与の対象になりやすい傾向にあります。

将来の退職金について考える場合、実務的には現実に退職金が支払われることを条件として、一定額または一定割合を分与するという取り決めをし、書面に残しておくといった方法が考えられます。

財産分与の方法

財産分与は、夫婦双方が誠実に、自分名義の財産を包み隠さず開示したうえで話し合うというのが基本です。

ただ、現実にはこういった話し合いが難しいケースも多々ありますし、話し合ったものの合意まで至らないというケースもあります。

このような場合には、調停を申し立てることができます。

離婚調停の中で財産分与について話し合うことでもできますし、離婚後に財産分与調停だけを申し立てることもできます。

もし、調停でも合意できなかった場合は審判に移行し、裁判所が財産分与の内容を決定することになります。

なお、離婚時に協議すべき金銭に関する事項としては、他にも養育費や慰謝料などがあり、財産分与もあわせて話し合いをすることがあります。

その際、他の事項との兼ね合いで、財産分与請求権については放棄するという取り決めすることがありますが、一旦放棄してしまうと原則として撤回することはできませんので、十分に注意してください。

財産分与の割合

財産分与の割合は、妻が専業主婦であったとしても基本的には2分の1ずつです。

例えば妻が専業主婦で一切の収入がなかった場合でも、婚姻中に夫婦で築いた財産の半分が与えられます。

これは「内助の功」といって、一方が働きに出てお金を稼げるのは、他方が家庭を支えてくれているからと認識されるためです。

ただし、どちらかが一方的に資産形成に貢献した、あるいは全く何もしなかったというような特別な場合には、割合を決める際に考慮する必要があります。

財産分与の割合は、法律で減額に決まっているわけではなく、夫婦の話し合いによって決まると覚えておきましょう。

財産分与の協議は離婚までに終わらせる

財産分与の協議は離婚後でも可能ですが、できれば離婚までに済ませておくのが理想です。

なぜなら、離婚後に時間が経過するほど相手の財産を把握しづらくなるうえ、処分されてしまう可能性もあるからです。

なお、財産分与を請求する権利は離婚後2年で消滅します。

ただし、2年以内に財産分与請求の調停などを申し立てれば、調停期間中は権利が消滅しません。

審判前の保全処分

夫婦間に対立がある場合、財産分与の協議が終わる前に一方の配偶者が自分名義の共有財産を処分してしまうことがあります。

このようなおそれがあるときには、財産分与請求調停または審判の申し立てを行い、同時に財産処分禁止の審判前保全処分を申し立てることによって、財産の処分を防ぐことができます。

財産分与時に問題となる税金

財産分与の際、対象となる財産によっては税金がかかることがありますので、余計な税金を支払わなくて良いよう、この点も押さえておきましょう。

財産を分与される側

財産を分与される側は、贈与税と不動産取得税について問題となりますが、原則は非課税でいずれの税金もかかりません。

贈与税と不動産取得税というのは、新たに財産を取得した場合に課税される税金ですので、もともと持っていた財産の清算にすぎない財産分与のケースでは、課税対象となりません。

ただし、不相当に高額なものを財産分与という名目で譲られた場合には、本来の金額を上回る部分について課税される可能性があります。

なお、不動産を分与された場合は、不動産の名義を変更する際の登録免許税や固定資産税を支払う必要があります。

財産を分与する側

財産を分与する側で問題になることが多いのは、譲渡所得税です。

現金で分与した場合、税金がかかることはありませんが、不動産などを分与した場合は課税される可能性があります。

不動産を取得した時の価額よりも、財産分与時の価額が高額である場合に課税の対象となり得るのです。

ただしこの譲渡所得税については、不動産が居住用の場合、特別控除が適用され、最高3,000万円までは非課税になります。

注意しないといけないのは、この特別控除は夫婦間での譲渡の場合には適用されないという点です。

離婚後、夫婦関係がなくなってから譲渡するようにしましょう。

財産分与の手順について

ここからは財産分与の具体的な手順について説明します。

対象財産のリストアップ・評価額の算定

財産分与で最初にやるべきことは、対象となる資産のリストアップです。

不動産だと、類似物件の取引価格・国税庁の路線価を元に評価額を調べます。

「自分だと具体的な金額が分からない」という人は、不動産会社に問い合わせてみましょう。

株など金額が変動しているものは、離婚成立時・別居開始時の評価額が基準になります。

自動車を持っている場合は、中古車価格と調べるか中古車販売店に査定を依頼して、評価額を確認しましょう。

もし不動産・自動車の購入でローンを組んでいる場合は、評価額からローン残高を差し引きします。

まとめると、財産分与の対象になるものに対して、すべて評価額を明確にして、合計金額を算出します。

夫婦間で「どう分配するか?」と話し合う

財産分与の対象となる資産の合計金額が分かったら、次は財産の分配について話し合います。

財産分与は基本的に半分ずつの割合ですが、慰謝料に支払いや離婚後の生活を考慮して、割合を決めます。

財産分与の話し合いはお互いに「1円でも多く資産が欲しい」と思うため、交渉が難航するかもしれません。

「なるべくスムーズに終わらせたい」という人は、弁護士への依頼がおすすめです。

二人の間に入って、冷静に落とし所を提案してくれます。

また自分が弁護士を雇っている場合は、有利に交渉を進められるため、もらえる財産が増える可能性もあります。

離婚調停・裁判に進む

もし話し合いで財産分与が決まらなければ、離婚調停・裁判に進みます。

離婚調停とは、調停委員が間に入って、離婚の成立を目指す作業です。

離婚裁判は、裁判官の判決によって、離婚が決まります。

ただ日本の離婚はほぼ話し合いで決まるため、調停・裁判まで進むケースはそこまでありません。

調停・裁判まで進んだ場合は、法的な知識が必要になるため、弁護士への依頼がおすすめです。

相手に離婚の原因があっても財産分与は必須

財産分与をする際に「相手に離婚の原因があるけど、財産を共有するの?」と疑問に思うかもしれません。

離婚の原因と財産分与は別なので、相手のせいで離婚した場合でも、財産分与は必須です。

もし相手が不倫をして離婚をした場合でも、夫婦共有の財産は分配しなければいけません。

ただし相手に離婚の原因がある場合は、慰謝料の請求ができます。

不倫の場合は50~300万円の慰謝料請求ができますが、その慰謝料分を差し引いて財産分与するケースもあります。

財産分与の割合を少しでも増やす2つの方法

離婚する際の財産分与は基本的に2分の1になります。

しかし慰謝料請求が求めれれば、相手よりも少しでも多くの財産をもらえるかもしれません。

そこでここからは「財産分与の割合を少しでも増やしたい」という人に向けて、役立つ方法を紹介します。

証拠を集めて相手に慰謝料請求する

離婚時に慰謝料請求が認めれれば、多くの財産が分配される可能性があります。

相手の慰謝料の支払いをさせるためには、離婚の原因が相手にあることを証明しなければいけません。

そのために離婚前に証拠を集めて、有利な交渉ができるようにしましょう。

例えば不倫の場合は、下記のような証拠が有効になります。

証拠内容
写真性行為・ラブホテルに入っている様子など
音声・映像データ不倫相手との電話・旅行に行っている動画など
クレジットカードの利用明細・レシートホテル・旅館などの利用明細
Suica・PASMOの利用履歴他の証拠が必要になる
メール・LINE・手紙肉体関係があったことが分かる内容であること
SNS・ブログ不倫している様子が分かる投稿
手帳・日記・メモ不倫相手と会う記録
GPSラブホテル・旅館などに行っている記録
住民票の写し配偶者が不倫相手と同棲している記録
妊娠・堕胎を証明できるもの女性の配偶者が不倫している場合の証拠
興信所・探偵の調査報告書不倫している様子が分かるもの

証拠がないと相手に「自分は不倫をしてない」と嘘をつかれる可能性もあるため、しっかり集めておきましょう。

ただし相手のプライバシーを損害するような証拠集めは違法になるかもしれないので、探偵事務所への依頼が安全です。

しっかりした証拠が集まっていれば、慰謝料請求を有利に進められ財産分与も多くもらえる可能性が高くなります。

弁護士に依頼する

弁護士に依頼をすれば、慰謝料の増額が期待でき、結果的に財産分与の割合が増えるかもしれません。

慰謝料請求・財産分与は法律に基づいた作業になるため、法律のプロである弁護士のアドバイスに従うのは大切です。

弁護士には依頼費用もかかりますが、かかった依頼費用よりも財産分与の割合が高くなるかもしれません。

また多くの弁護士事務所では初回の相談を無料で行っているため、気軽に相談できるのもメリットです。

まとめ

離婚調停の際、なかなか合意できない原因のひとつに財産分与の問題があります。

離婚という点では互いに合致しているのに、財産をどのように分けるか、特に自宅をどう処分するかでまとまらないというケースが多く見られます。

例えば、妻は夫が自宅を出て、自分は離婚後も子どもと一緒に夫名義の自宅に住み続けたいと望み、夫は自宅を出て行くことは認めるが、住宅ローンの支払いが負担になるため、売却して清算してしまいたいと考えます。

この相容れない要望に折り合いを付けていくのが、財産分与という作業です。

夫婦間の話し合いで決めることができればそれが最善ですが、難しい場合は専門家の手を借りたり、裁判所を利用したりすることも検討しましょう。

監修弁護士
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