・会社を設立するために必ずかかる費用があることがわかる
・株式会社と合同会社では設立費用に違いがあることがわかる
・会社設立にかかる費用に関する疑問や注意点を知ることができる
この記事の監修/取材協力
森健太郎 税理士
起業家支援を専門にしている税理士。起業時のサポートの経験が豊富で、会社設立、創業融資、助成金の案内に長けている。大学卒業後に、電機メーカーでの営業を2年間経験の後、大阪の個人会計事務所で2年の勤務をした後、ベンチャーサポートへ入社。(関与した参考リンク:ベンチャーサポート税理士法人 会社設立完全ガイド)
新規に事業を始めようとする場合や、個人事業主の方が法人化する場合、会社の設立を検討することとなります。
会社を設立する際には、様々な手続きが必要となるため、費用がかかります。
その費用の中には、自分ですべての手続きを行ったとしても発生する法定費用があるので、注意が必要です。
また、会社の種類によってかかる費用に違いがあるため、それらの内容についても知っておきましょう。
会社設立にかかる費用
会社を設立する際には、大きく分けて3種類の費用が必要になります。
会社設立にかかる費用を節約しようとした場合、どの費用を削ることができるのか、その内容から確認しておきましょう。
法定費用
会社を設立するためには、会社の種類や規模に関係なく、必ずしなければならない手続きがあります。
それは、法務局で会社の設立登記を行うことです。
法務局で設立登記を行うことは、会社の存在が公的に証明されるためには必要不可欠な手続きです。
この設立登記を行う際に、法務局に登録免許税を納めなければなりません。
会社を設立するために必要な書類がいくつかありますが、中でも重要なものに定款があります。
定款は、会社の基本事項などを記載した書類で、必ずすべての会社が作成することとされています。
この定款を作成したら、収入印紙を貼付しなければなりません。
また、株式会社を設立する際には、作成した定款を公証役場に持ち込み、公証人の認証を受けなければなりません。
定款の認証を受けるためには、公証役場に認証手数料を支払う必要があります。
資本金
会社を設立する際には、必ず資本金を準備しなければなりません。
資本金は、会社の出資者となった人が個人的に支払うものです。
設立された会社が自社の利益から出資するわけではないため、注意しなければなりません。
なお、出資者から出資された現金は、会社設立時には現金や預金として、会社の資産に計上されています。
また、資本金として出資したお金は、会社から出資者に返済する必要はありません。
しかし、資本金として出資された金額は、そのまま会社に残り続けるわけではありません。
会社で費用を支払い、あるいは銀行に融資の返済を行った際などにそのお金を使うので、残高が減ってしまうこともあります。
会社印の費用
個人の実印と同じように、会社にも公的に認められた印鑑があります。
そして、会社印はすべての会社が必ず準備すべきものとなっています。
会社の印鑑を法務局で登録しておき、必要に応じて印鑑証明書などの書類を発行してもらうこととなります。
会社の実印は、個人の印鑑証明とは違い、自治体で登録するわけではありません。
会社の印鑑登録の手続きを行うために、前もって会社印を準備しておく必要があります。
会社印の作成には、材質によるばらつきは出るものの100円から10,000円がかかり、登録料には1,000円程度が必要となります。
「株式会社」「合同会社」設立にかかる費用の違い
会社を設立する際には、どのような場合でも必要になる費用があることがわかりました。
基本的には、そのすべてを負担する必要がありますが、会社の種類によっては、実際に発生する費用の額には違いがあります。
そこで、会社の種類ごとに分類して、それぞれ会社設立にかかる費用を確認しておきましょう。
株式会社の場合
株式会社の設立にかかる費用を、項目別に確認していきます。
定款の収入印紙代
会社の定款を作成した場合、その定款に収入印紙を貼付しなければなりません。
定款に貼付する収入印紙の金額は、一律4万円と定められています。
なお、定款を作成する際に、書面で作成するのではなく、オンラインを利用した電子定款とすることもできます。
電子定款の場合、書面で作成した場合とは異なり、収入印紙は不要とされています。
そのため、定款を作成する際に電子定款とすることで、設立費用を軽減することができます。
定款認証手数料
株式会社は、定款を作成したら、公証役場でその定款の認証を受けなければなりません。
定款の認証とは、定款の内容について正当であることを、公証人に証明してもらうことです。
株式会社は、必ず定款の認証を受けなければならないため、公証役場で日程を確保しておく必要があります。
なお、定款の認証にかかる手数料の額は、資本金の額により3万円~5万円となります。
このうち、定款認証手数料が5万円となるのは、株式会社の資本金の額が300万円以上の場合です。
また、資本金の額が100万円未満である場合は、定款認証手数料は3万円となります。
登録免許税
株式会社が法務局で会社設立登記を行う場合、登録免許税という税金を納めなければなりません。
株式会社の場合、登録免許税の額は15万円と資本金の額×0.7%のいずれか高い方となります。
たとえば、資本金の額が1,000万円だった場合、1,000万円×0.7%=7万円<15万円となるため、登録免許税の額は15万円となります。
資本金の額×0.7%の額が15万円を超えるのは、資本金の額が約2,143万円以上の場合です。
そのため登録免許税の額は、ほとんどのケースで15万円となります。
合同会社
合同会社の場合、定款の認証を行う必要はありません。
そのため、公証役場に対する定款認証手数料は発生しません。
また、その他の費用も株式会社とは金額が異なるものがあります。
定款の収入印紙代
定款の認証は必要のない合同会社でも、定款自体を作成する必要はあります。
定款を作成した場合、その定款には4万円の収入印紙を貼付しなければなりません。
定款を書面でなく、オンライン上の電子定款を作成した場合は、収入印紙は必要ありません。
ただし、電子定款を作成することができる環境を整える必要があるため、専門家などに相談して進めるようにしましょう。
専門家に依頼する場合には、その専門家が定める手数料を支払うことになります。
登録免許税
合同会社が法務局で会社設立の登記を行う場合も、株式会社と同じように登録免許税を納めなければなりません。
ただし、登録免許税の金額の計算式は、合同会社と株式会社では異なります。
合同会社の場合、登録免許税の額は6万円と資本金の額×0.7%のいずれか高い方の金額となります。
資本金の額が1,000万円だった場合、1,000万円×0.7%=7万円>6万円となるため、登録免許税の額は7万円となります。
資本金の額×0.7%の額が6万円を超えるのは、資本金の額が約858万円以上の場合です。
そのため登録免許税の額は、ほとんどのケースで6万円となります。
会社設立時の費用に関するよくある質問
会社の設立を初めてするという方も多く、どのように手続きを進めればいいかわからないケースもあるでしょう。
ここでは、会社の設立に関してよくある質問をまとめました。
株式会社と合同会社のどちらがいい?
会社を設立する際に、株式会社と合同会社の2つの選択肢があります。
いずれを選択するといいのか、迷っている方もいることでしょう。
株式会社の大きな特徴は、将来的に株式公開を行い、上場することができる点です。
将来的に上場を考えている場合は、はじめから株式会社にしておくのがおすすめです。
一方、合同会社のメリットは、会社の設立にかかる費用を最小限に抑えられる点です。
手軽に会社を設立するには、合同会社として設立する方が断然有利です。
専門家に会社設立を依頼するといくらかかる?
会社設立には多くの手続きがあり、事業の立ち上げと並行して進めるのは大変です。
そこで、専門家に会社の設立を依頼することができますが、その場合費用が発生します。
会社の設立を依頼する場合、真っ先に候補となるのは、登記に関する専門家である司法書士です。
その他、税理士や行政書士などに依頼することもできますが、一部の業務についてはできないという制約があります。
司法書士に依頼した場合、その費用はおおむね10万円~20万円となります。
ただし、この金額は一律に定められているわけではないため、見積もりをもらってより条件の良い専門家を探すこともできます。
資本金の額をどのように決めたらいいのか?
資本金の額は、以前は株式会社の場合1,000万円以上という法律の規定がありました。
しかし、現在ではそのような規定はなく、資本金の額は1円以上であればよいこととされています。
そこで問題となるのは、資本金の額をいくらにするかです。
資本金の額が少なすぎると、銀行からの信用を得られず、融資を受けにくくなってしまいます。
また、資本金として払い込まれた金額は、会社の開業資金や運転資金として必要になります。
会社が円滑に開業・運営できるだけの資金を、資本金として準備しておくようにしましょう。
まとめ
会社を設立するためには、数百万円もの費用がかかると思っている方もいるかもしれません。
しかし、会社を設立するためにかかる費用は、株式会社の場合22万円~、合同会社の場合10万円~となります。
ただし、会社の設立費用とは別に、開業資金や運転資金が必要となるため、これらの額もあらかじめ準備しておきましょう。
会社の設立に不安がある方は、はじめから専門家に相談して進めると、効率的で確実に会社を設立することができます。
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