・会社における役員や取締役の違いや役割が理解できる
・会社を設立する際に必要な役員の人数がわかる
・役員になれない人の条件がわかる
この記事の監修/取材協力
森健太郎 税理士
起業家支援を専門にしている税理士。起業時のサポートの経験が豊富で、会社設立、創業融資、助成金の案内に長けている。大学卒業後に、電機メーカーでの営業を2年間経験の後、大阪の個人会計事務所で2年の勤務をした後、ベンチャーサポートへ入社。(関与した参考リンク:ベンチャーサポート税理士法人 会社設立完全ガイド)
皆さんが自分で会社を創業した場合、多くの人が「代表取締役」や「取締役」などという肩書を使うでしょう。
この「取締役」と「監査役」「会計参与」という3つの役職を会社法では「役員」と呼びます。
なんとなく聞いたことがある言葉でしょうが、そもそも「役員」というのはどういった役割で、何人必要なのでしょうか。
また、なれる人、なれない人などはいるのでしょうか。
この記事では、会社の役員の意味や役割、決め方などについてご紹介します。
会社設立時に必要な役員とは
会社法では、「取締役」「会計参与」「監査役」という3つの役職を「役員」と定義しています。
このうち、「会計参与」と「監査役」は取締役会を設置しない会社の場合は選任の義務はありません。
取締役は選任しなくてはなりませんが、何人選任するか、監査を置くかということは会社が自由に決めてよいこととされており、その設置数については自由度が高いといえるでしょう。
会社設立の際には「発起人」がいることが多いですが、この発起人は「こういう会社を作る」と提案して出資をする人のこと(株式会社の場合は株主)を指し、役員は実際に会社運営に携わる人のことを指します。
では、役員と会社の関係が具体的にどうなっているのかを見ていきましょう。
会社と役員は「委任契約関係」にある
役員は、会社に雇われているわけではありません。
会社から業務の執行を「委任」されている関係にあります。
ご存知のように、会社と雇用契約を結ぶことは会社に守ってもらえる点も多いもの。
しかし、役員は会社に雇われているわけではないので、通常の従業員と比べると多くのリスクがあります。
具体的には、以下のようなことが挙げられます。
任期があり、任期満了とともに解任される場合もある
会社員は、一度正社員になればそう簡単に解雇されることはありませんが、役員には任期があり、任期満了とともに株主の意向で解任される可能性があります。
具体的には取締役、会計参与は2年、監査役は4年、執行役は1年の任期となります(公開会社ではない会社は最長で10年まで延長可能)。
もちろん留任という場合もありますが、一般社員よりも離脱の可能性は高いと言えます。
そのまま一般の社員として雇用契約を結ぶ場合もありますが、実際にはさほど多いケースではないでしょう。
労働基準法に守ってもらえない
役員は労働者ではないので、労働基準法の制限を受けません。
そのため、24時間365日働いていたとしても労働基準監督署から指摘されることはありません。また、その労働に対して会社が残業代を払う必要もありません。
雇用保険や労災保険に入れない
役員は、従業員なら当然加入できる雇用保険や労災保険に入ることもできません。
業務中に怪我をしても、労災保険から給付を受けることはできずに自身の健康保険が適用されます。
また、仮に取締役を解任され無職になってしまった場合にも、失業手当を受給することもできません。
会社設立における役員と取締役・役職の違い
それぞれの役員は、会社の中核を担う役割を持っています。
各役職でどのような役割があるかを解説いたします。
取締役の特徴
会社を設立する際に1人以上の取締役を置くことが義務となっています。
取締役は、業務を執行するための意思決定を行うことが役割です。
取締役と会計参与の違い
会計参与は、会社の会計書類を作成する専門家です。
取締役になるために資格は不要ですが、会計参与になるためには税理士や公認会計士の資格が必要です。
取締役と監査役の違い
監査役は、取締役と会計参与の業務執行を監査する役割を持っています。
取締役が会社の定款に沿って会社を運営しているか、法令に違反するような業務を行っていないか、会計参与が不正な帳簿を作成していないかなどをチェックします。
つまる、監査役は会社全体が健全に運営されているかをチェックする機能を果たしているといえます。
会社設立時に必要な役員の人数
株式会社設立時には、必ず取締役の選任と代表取締役の選定が必要となります。
代表取締役とは、会社の最高責任者のことで、取締役会の中から選ばれます。
ただし、1人である必要はなく、複数人が代表取締役となっても問題ありません。
株式会社や合同会社を設立する際に、役員は何人必要なのか解説します。
株式会社の場合
株式会社を設立するのに必要な役割は「発起人」「株主」「取締役」の3つです。
結論から言うと、この3つの役割をすべて1人で兼任することができます。
そのため、株式会社は1人で設立することが可能です。
この3役を1人で担っている会社を「一人会社」と呼ぶことがあります。
合同会社の場合
合同会社を設立するのに必要な役割は、「出資者」のみです。
また、人数についても定めはありません。
株式会社と違い、株主や役員という概念がないのが合同会社です。
社員全員が役員(≒執行役)であり、出資者(≒株主)でもあるといえます。
そのため、合同会社は株式会社よりも気軽に設立することが可能となります。
会社設立するときの役員の人数や構成の決め方
株式会社は原則1人以上の役員がいれば設立することができますが、取締役会を設置する場合には条件が大きく異なります。
どのような場合に取締役会の設置が必要か、どのような構成になるか、また「役員」になれない人についても解説いたします。
取締役会の設置が義務付けられている会社
会社法327条1項で、公開会社には取締役会は設置することが義務付けられています。
公開会社とは、定款に株式の譲渡制限がない株式会社のことで、会社の承認なく株式を譲渡できることが特徴です。
いわゆる「上場企業」といわれる会社は、すべて公開会社となります。
取締役会を設置する会社の役員の構成
取締役会を設置する会社では、最低でも3人以上の取締役と、1人以上の監査役(または会計参与)を設置することが義務付けられています。
つまり、将来的に上場を目指す場合は、最低でも合計4人の役員を選任する必要があるということです。
取締役になれる条件
株式会社の取締役には、誰でもなれるわけではありません。
取締役になることができる人と、できない人について解説いたします。
取締役になれない人
取締役になることができない人は、以下の通りです。
- 法人(株式会社など):個人ではなく、法人として取締役になることはできません
- 特定の法律に違反し、2年を経過していない人:会社法や金融商品取引法などに定められた特定の罪を犯し、刑の執行を終えてから(または執行を受けることがなくなってから)2年を経過していない人は取締役になることができません
- 禁錮以上の刑に処せられ、その執行を終えてない人:執行猶予中の場合は可能です
取締役になれる人
上記に該当しない人は、取締役になることが可能です。
ただし、下記のような条件に当てはまる場合、少し注意が必要となります。
- 未成年者:未成年者の場合は法定代理人の同意が必要です
- 外国人:日本国内に住所がない場合は、印鑑証明書の代わりにその国の官庁や役所で、サインについて証明書を出してもらう必要があり、手続きが煩雑になります
- 成年被後見人・被保佐人:これまでは成年被後見人・被保佐人は取締役になることができませんでしたが、2021年の会社法の改正によりそれぞれ成年後見人・保佐人の同意を得ていれば、成年被後見人・被保佐人も取締役に就任できることになりました(ただし、成年被後見人等による取締役等の資格に基づく行為は、行為能力の制限によっては取り消すことができないこととされています)
取締役の選任方法
取締役の選任は、あらかじめ取締役会で候補者を選定しておき、株主総会の普通決議で決定してもらう流れが一般的です。
合同会社の場合は、出資者と社員および経営者は同じであり、出資し、かつ勤務する人は自動的に役員となります。
会社設立時の役員決めの注意点
会社設立時の役員決定の際、注意することを3つ取り上げます。
役員の構成によって許認可がおりない場合がある
許認可が必要な業種においては、役員に関しての規定を設けている会社があります。
たとえば、建設業では役員のうち1人以上は、建設業法施行規則に定める経営業務の管理責任者等の要件に合致していなくてはならない、などといった形です。
自分が取得したい許認可の役員に関する規定について、事前に調べておく必要があります。
取締役会がない場合、取引先からの信用が低下する可能性がある
前述したように、上場企業はすべて取締役会が設置されています。
取締役が1名の会社と比べて、取締役会が設置されている場合、最低でも3名の取締役と1人の監査役(または会計参与)がいることになります。
この組織体制をとると、複数人が相互にチェックしながら経営を行っている証明ともできます。
そのため、取締役会がある会社のほうが、会社としての信用度が高くなると言えるでしょう。
役員就任には損害賠償請求を受けるリスクがある
会社法には「取締役は、法令及び定款並びに株主総会の決議を遵守し、株式会社のため忠実にその職務を行わなければならない。」とする義務が定められています。
この義務違反した場合は、会社に対して損害賠償責任がある旨も記載されており、取締役就任には一定のリスクがあります。
近年では、社外取締役(会社には属さず、外部の人間が取締役となること)を採用する会社が増えていますが、安易に就任すると損害賠償請求を受ける可能性があることを留意する必要があります。
まとめ
基本的には最低1名の取締役を選任すれば、株式会社を設立することが可能です。
ただし、それぞれの会社の状況によって、会社の役員構成は慎重に検討することをおすすめします。
また、会社の規模をあまり大きくしない場合には、合同会社を選択すれば事務的な手続きを減らすことが可能です。
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