不動産売却すると扶養控除から外れる?社会保険の取扱・譲渡所得の計算方法を解説
この記事でわかること
- 不動産売却をするときに外れる不要について理解できる
- 不動産売却で扶養が外れたときの影響がわかる
- 不動産売却時の譲渡所得の計算方法がわかる
- 扶養から外れずに不動産を売却する方法がわかる
不動産を売却すると、扶養から外れることをご存じの方は多くないのではないでしょうか。
しかも、扶養には2種類あり、不動産売却して扶養から外れるのは1種類だけです。
そのため、不動産売却に伴う扶養についてしっかりと理解しておかなければ、不動産売却時に扶養から外れ、損をしてしまう可能性があります。
本記事では、不動産売却したときに外れる扶養について解説します。
記事内ではその他にも不動産売却に伴う所得とは何か、不動産売却時の譲渡所得の計算方法、扶養から外れずに不動産を売却する方法なども紹介します。
目次
扶養には2種類ある
前提として、扶養には2種類の扶養があります。
「健康保険上の扶養」と「税金上の扶養」です。
健康保険上の扶養と税金上の扶養は、まったく違う制度です。
そのため、扱いもまったく違います。
健康保険上の扶養と税金上の扶養とどのように違うのかは、次章以降で解説していきます。
不動産売却後も社会保険の扶養から外れない
健康保険上の扶養を受けられる条件は次のとおりです。
- 扶養される人の年間収入が130万円未満であること
- 扶養される人の年間収入が被保険者の2分の1未満であること
不動産売却時に130万円以上の収入があると扶養を抜けてしまうように考える方も多いでしょう。
しかし、健康保険上の扶養は不動産売却のような一時的な収入については、年間収入に加味しません。
つまり一般的には、不動産売却による収入が健康保険上の扶養について影響がないということです。
ただし、健康保険の取り扱いについては、企業が加入している組合により異なります。
まれに不動産売却のような一時的な収入を年間収入に加味するケースがあるため、不動産売却するときには健康保険者に確認しておきましょう。
不動産売却後は税金の扶養から外れる可能性がある
税金上の扶養を受けられる条件は、次のとおりです。
- 民法に定める内容の配偶者であること
- 納税者と同じ生計で生活していること
- 年間の合計所得金額が38万円以下であること(給与所得のみの場合は給与所得が103万円以下)
- 青色申告者の事業専従者としてその年を通じて一度も給与の支払を受けていないこと、もしくは白色申告者の事業専従者でないこと
- 納税者の合計所得金額が年額1,000万円以下であること
しかし、不動産売却をすると「年間の合計所得金額が38万円以下であること」という条件を満たさなくなってしまうことがあります。
税務上の扶養は健康保険上の扶養と違い、年間の合計所得に不動産売却のような一時的な収入も含まれてしまうからです。
この条件を満たさなくなると、配偶者控除を利用できなくなります。
また、配偶者特別控除は、年間の合計所得金額が123万円を超えると適用されなくなります。
なお、不動産売却により扶養から外れるのは、不動産を売却した年です。
不動産売却で税金の扶養から外れることによる影響
不動産売却をして税金上の扶養から外れると、世帯主・配偶者ともに影響を受けます。
本章では、不動産売却をして税金上の扶養から外れたとき、世帯主と配偶者にどのような影響が出るのかについて解説します。
世帯主への影響
配偶者控除の控除額は、世帯主の年間合計所得により変動します。
世帯主の年間合計所得が控除額に与える影響は次の表のとおりです。
年間合計所得 | 控除額 |
---|---|
900万円以下 | 38万円 |
900万円超950万円以下 | 26万円 |
950万円超1,000万円以下 | 13万円 |
配偶者特別控除については、次の表のとおりの影響を受けます。
配偶者の合計所得 | 所得900万円以下 | 所得900万円超950万円以下 | 所得950万円超1,000万円以下 |
---|---|---|---|
130万円超133万円以下 | 3万円 | 2万円 | 1万円 |
125万円超130万円以下 | 6万円 | 4万円 | 2万円 |
120万円超125万円以下 | 11万円 | 8万円 | 4万円 |
115万円超120万円以下 | 16万円 | 11万円 | 6万円 |
110万円超115万円以下 | 21万円 | 14万円 | 7万円 |
105万円超110万円以下 | 26万円 | 18万円 | 9万円 |
100万円超105万円以下 | 31万円 | 21万円 | 11万円 |
95万円超100万円以下 | 36万円 | 24万円 | 12万円 |
48万円超95万円以下 | 38万円 | 26万円 | 13万円 |
(引用元:国税庁 No.1195 配偶者特別控除)
不動産売却をして扶養から外れてしまうと、上記の2つの表の所得控除が受けられなくなります。
世帯主の所得控除が受けられなくなると、世帯主に課税される所得税が上がってしまいます。
配偶者への影響
配偶者の場合は扶養から外れるかは関係なく、譲渡所得が発生すると譲渡所得税が課税されます。
課税される譲渡所得税は、売却した不動産の所有年数により税率が変わります。
課税される税率の変化は、次の表のとおりです。
所有期間 | ||
---|---|---|
長短区分 | 短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 |
所有期間 | 5年以下 | 5年超 |
税率 | 39.63% (所得税:30.63%、住民税 :9%) | 20.315% (所得税:15.315%、住民税 :5%) |
なお、所有期間の算定方法は、通常の考え方と異なります。
不動産売却した年の1月1日現在で、所有期間が5年以下なら短期譲渡所得、5年超えなら長期譲渡所得となります。
不動産売却に伴う所得とは
不動産売却に伴う所得とは、譲渡所得のことを言います。
譲渡所得とは、不動産だけでなく株や貴金属を譲渡(売却)して得た利益のことです。
不動産を売却したときに発生した譲渡所得は、分離課税で計算されて譲渡所得税が課税されます。
なお、不動産運用で得た不動産所得は、給与所得などと合算される総合課税で所得税が計算されます。
不動産売却時の譲渡所得の計算方法
不動産売却をして譲渡所得が発生したかどうかは、自分で計算することができます。
本章では不動産売却時の譲渡所得の計算方法を解説し、譲渡所得のシミュレーション計算を行っていきます。
譲渡所得は次のような計算式を用いて算出します。
譲渡所得 = 譲渡価格 -(譲渡費用 + 購入費用)
なお、各単語の意味は次のとおりです。
譲渡価格 = 不動産売却代金
譲渡費用 = 不動産売却諸費用
購入費用 = 売却する不動産の購入代金 + 売却する不動産の購入諸費用
【シミュレーション条件】
1 不動産売却代金5,000万円
2 不動産売却諸費用180万円
3 売却する不動産の購入代金2,000万円
4 売却する不動産の購入諸費用100万円
【譲渡所得計算】
5,000万円 -(②180万円 + ③2,000万円 + ④100万円)= 2,720万円(譲渡所得)
このシミュレーション条件の譲渡所得は2,720万円となります。
なお、この条件で売却した不動産が短期譲渡所得税の場合、以下のような計算式になります。
2,720万円 × 39.63% = 約1,077万円(譲渡所得税・住民税)
1,077万円もの税金が課税されることになります。
このように、所有期間によって譲渡所得税の金額は大きく異なることに注意しましょう。
扶養から外れずに不動産を売却する方法
被扶養者を扶養からどうしても外したくない場合には、扶養から外れないように不動産を売却しなければなりません。
本章では、扶養から外れずに不動産を売却する方法について解説します。
居住用3,000万円控除を利用する
居住用3,000万円控除とは、譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。
つまり、居住用3,000万円控除が利用できれば、譲渡所得3,000万円までは譲渡所得を0に抑えることができるわけです。
居住用財産の3,000万円控除を利用できる条件は次のとおりです。
1.下記(1)~(4)のいずれかを満たす自宅であること
(1)現在主に住んでいる自宅であること
(2)転居済みの場合には転居した後3年目の12月31日までに売却すること
(3)(2)の条件を満たした上で、家屋を解体してから土地売買契約締結が1年以内であって、その土地を引き渡しまで賃貸などにしていないこと
(4)単身赴任をしている場合は配偶者が住んでいる住宅を売却すること
2.売却物件の買主が親族や夫婦などの特殊な関係ではないこと
3.自宅を売却した年の前年もしくは前々年に3,000万円の特別控除か、マイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算、損失の繰越控除の特例などの特例の適用を受けていないこと
4.売った年やその前年、前々年にマイホームの買換えや交換の特例を受けていないこと
5.売却した自宅に関連し、収用等の特別控除などの特例の適用を受けていないこと
6.災害によって売却する場合には、災害により空き家にした日から3年目の年の12月31日までに売却すること
自宅を売却するときには、居住用3,000万円控除を利用できる可能性が高いため、控除が利用できるか必ず確認しておきましょう。
世帯主に不動産を贈与する
世帯主に不動産を贈与すれば、不動産売却しても配偶者の扶養から外れることはありません。
ただし、この方法を実行するときには、贈与税が課税される可能性を考慮しておく必要があります。
贈与税は、年間110万円以上の資産を贈与すると課税されます。
不動産は110万円の価値を超える可能性が高いため、贈与税が課税されると考えておいたほうがよいでしょう。
そして、贈与税は税率が高いことにも注意が必要です。
基礎控除後の課税価格 | 200万円 以下 | 300万円 以下 | 400万円 以下 | 600万円 以下 | 1,000万円 以下 | 1,500万円 以下 | 3,000万円 以下 | 3,000万円 超 |
税 率 | 10% | 15% | 20% | 30% | 40% | 45% | 50% | 55% |
控除額 | ‐ | 10万円 | 25万円 | 65万円 | 125万円 | 175万円 | 250万円 | 400万円 |
この表のように贈与税は税率が高いため、贈与を利用せずに1年だけ扶養を外れた方が損益を少なくできるケースもあります。
そのため、贈与を利用する場じゃ合、税理士など税金の専門家に確認することをおすすめします。
まとめ
不動産売却をしたときには、税金上の扶養から外れる可能性があります。
健康保険上の扶養は外れる可能性は低いものの、保険者の考え方によって外れる場合があることには注意しましょう。
不動産を売却して税金上の扶養が外れてしまうと、世帯主は配偶者控除(配偶者特別控除)が使えなくなってしまい、所得税も上がってしまいます。
また、不動産売却をした配偶者には譲渡所得税が課税される可能性もあります。
そのため、不動産売却するときには、扶養から外れないか、また譲渡所得税が課税されるか否かを確認してから売却するようにしましょう。