この記事を読んでくださっている皆様の中には、離婚をしようかしまいか日々悩みを抱えていらっしゃる方も多いでしょう。
永遠の愛を誓い合ったパートナーといえど、長年の事情の変化によって別々の道を選んだほうがお互いに幸せになれるということもあります。
離婚は大変なことではありますが、人生の新しいスタートでもありますので、前向きな気持ちで今後の道を考えていきたいものです。
この記事では、良い離婚をするために知っておきたい大切なポイントを解説します。
離婚するかどうか悩んでしまうのは自然なこと
離婚を一度も考えたことのないカップルは少ないのかもしれません。
他人同士が一緒に暮らし始めると、性格、価値観、お金、親族、生活リズムなどさまざまなすり合わせが必要になります。
まったく争いのない状態にすることは難しいですが、その食い違いを乗り越えらえるかどうかは、夫婦の状況によってさまざまな事情があることでしょう。
乗り越えられないと判断すれば、無理をして二人が一緒にいることは、お互いに幸せになれず苦しいだけかもしれません。
離婚をしようかどうか考えると悩んでしまうのは当然なことです。
離婚には引っ越し、経済的な状況の変化、子供の問題、財産分与など、解決しなければならない大きな問題がたくさん発生します。
結婚するよりも離婚するほうが何倍もエネルギーを使うということはある意味当然なのです。
一昔前は、日本の社会には一旦結婚したのであれば生涯添い遂げるのが美徳であるという価値観がありました。
また、女性の社会進出が今日のように盛んではなかった時代には、いくら問題のある夫でも、経済的な事情からぐっと我慢して結婚を続ける以外選択肢がなかったというケースも多くありました。
近年、そうした価値観はかなり変化しつつあるともいえます。
平成に入って離婚件数は2007年をピークに右肩上がりで増えてきました(図1)。
厚生労働省のデータによると、平成29年度には約21万組の夫婦が離婚しています。
引用元:厚生労働省
(「平成29年(2017)人口動態統計月報年計(概数)の概況 結果の概要」p.16)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/geppo/nengai17/dl/kekka29-190703.pdf
データをどう解釈するかにもよりますが、3組に1組は離婚する時代であるともいわれています。
バツイチ、バツニという軽やかな表現でよばれるようになってきたことも、時代の風潮の変化を表しているといえるでしょう。
また、離婚した男女がお互い別の人と幸せな再婚をする例もたくさんあります。
事実婚や同性同士のカップルとなることを選択する人々も増えてきており、日本社会全体として、個人の性や婚姻についての価値観の多様性が認められつつあるといえるでしょう。
離婚はいまや珍しいものではなく、お互いに幸せになることができ、子供の幸せもきちんと考えられるのであれば、非難されるものではなくなってきました。
もし、貴方がよく考えた末に離婚を決断するのであれば、だれに恥じることもなく、堂々と決断してよいのです。
また、会社員の夫と専業主婦の妻の場合などで、夫の厚生年金上乗せ部分について離婚後妻の分割請求権が法律で認められたことによって、これまで経済的事情で離婚をためらっていた妻が熟年離婚に踏み出すケースも増えているようです。
しかしながら、離婚をするかどうか、するとしてもどのように進め、いかにして良い未来につなげるかは慎重に考えるべきです。
この記事をはじめとして、たくさんの情報を集め咀嚼して、考えてみましょう。
専門家への相談
既に離婚を経験している方をのぞくと、多くの人にとって離婚は未知のエリアです。
離婚を考え始めた場合、早めの段階で専門家に相談することで、問題の早期解決が図れる可能性があります。
勇気を出して、専門家の門をたたいてみましょう。
一方、離婚を決意する前に、自分の両親、相手の両親、身内、友人などに相談することは、慎重になったほうがよいといえます。
相談相手との関係性にもよりますが、たとえば自分の親に配偶者との問題を話すと、大事な子供を傷つけられたと思い激怒し、そんな相手なら離婚しなさいと強く主張してくるかもしれません。
また、相手の親に相談しても、関係性がこじれてしまうことがあります。
そのため、利害関係がなく、客観的な目で見たうえでアドバイスができる専門家に相談するほうが無難であるといえます。
相談すべき専門家として、心理カウンセラーなどの心のケアをお願いできるカウンセラーなど専門家と、離婚にまつわる身分関係や経済的な問題を相談できる弁護士、ドメスティックバイオレンスの場合の女性センターやシェルター等があります。
それぞれ目的に応じた相談をしていくことが大切です。
心理カウンセラー
心理カウンセラーと相談することは、本当に自分は離婚したいのか、やり直す気持ちはないのかを整理することに役立ちます。
また、離婚を考えている原因が配偶者の暴力や浮気などの場合に、傷ついた心を癒し、立ち直っていくためにも助けになります。
夫婦関係が破綻していなくて配偶者の理解が得られるのであれば、カップルカウンセリングといって夫婦そろってカウンセリングを受けることも有効です。
欧米の映画などのシーンでご覧になったことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、日本でも夫婦単位で相談できるカウンセラーも増えてきました。
第三者であるカウンセラーを通してお互いや関係性を見つめなおすということも、夫婦関係修復や良い離婚につながります。
心理カウンセラーには、病院、市町村などの相談センター、民間などさまざまな種類があります。
選択肢が多く相談しやすい反面、心理カウンセラーごとの力量も相性もさまざまですので、ご自分と相性があい、しっかりと心を整えてくれる心理カウンセラーを見つける必要があります。
まずは、複数人のカウンセラーと面談してしっくりいくカウンセラーを見つけたり、書籍やインターネットなどで評判をリサーチしたりしてから相談するのがよいでしょう。
弁護士
心理カウンセラーが心のケアを主に担当するのに対して、弁護士は離婚にまつわる法的な問題のアドバイスをしてくれます。
離婚にまつわる重要な法的問題としては、片方が離婚を望んでいる場合であって片方が望んでいない場合にどうするのか、離婚慰謝料は発生するのか、財産分与はどうなるのか、離婚した場合に子供は夫婦のどちらが引き取り、離れて暮らす親は子供とどのように面会交流をしていくのか、養育費はどのくらい払うのか、という問題があります。
いずれも大きな問題になりますので、弁護士によく相談して、ご自身の状況を整理していきましょう。
弁護士と一口にいっても、専門分野は弁護士によって大きく異なります。
そのため、離婚案件を数多く手がけている弁護士を選ぶ必要があります。
たとえば、企業法務や交通事故、債務整理を専門にしている弁護士に離婚の件を相談しても、一般論は答えられたとしても、ほとんど実務は知らず的を射たアドバイスが得られない可能性が高いからです。
離婚案件に強い弁護士の探し方としては、知人に紹介してもらったり、インターネット等で離婚取扱件数の実績を標榜している弁護士事務所を調べたりし、実際に数人と会って相談してみることがおすすめです。
初回は無料で法律相談を受けている事務所も多いですし、依頼すると初回の相談料込みでアドバイスしてくれる事務所もあります。
現在、弁護士事務所に統一された費用の基準はありませんが、過去日弁連で定められた費用基準が統一的に利用されていたことの名残から、いまも同じ基準を採用している事務所がほとんどです。
そのため、どの事務所を選ぶかで弁護士費用に大きく差がでるか変わるという可能性はあまり高くありませんが、熟練したパートナー弁護士に依頼するか、若手だけれどしっかり時間をかけて向き合ってくれる弁護士を選ぶかなどによっても、弁護士費用は異なります。
弁護士費用は、着手金と成功報酬にわかれますが、もし初期費用が手元にあまりない場合は、離婚慰謝料や財産分与を勝ち取ったあとの成功報酬の比率を高めてもらえないか相談してみましょう。
また、たとえば、離婚調停と離婚慰謝料請求訴訟など複数の案件を同じ弁護士に依頼するとセット割引をしてくれる事務所も多いですので、あわせて相談してみましょう。
DVの場合は女性センターやシェルターの利用も
ドメスティックバイオレンスなどで、自分や子供に危害が加わる可能性がある場合は、一刻も早く逃げて身の安全を確保することが何よりも重要です。
女性センターやドメスティックバイオレンスから身を隠してくれるシェルターなどの専門機関に相談してみましょう。
離婚の種類
一口に離婚といっても、離婚はいくつかの種類に分けられることをご存知でしょうか。
離婚の種類には、大きくわけて、協議離婚、調停離婚、裁判上の離婚、審判離婚があります。
まずは、夫婦の話し合い、合意でのみ決まる協議離婚があります。
日本では、協議離婚がもっとも多く全離婚件数の9割は協議離婚といわれています。
引用元:厚生労働省
(平成21年度「離婚に関する統計」の概況:離婚の年次推移)
https://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/jinkou/tokusyu/rikon10/01.html
調和を好む国民性や、第三者に夫婦のプライベートな事情を公開したくないという心理もあるでしょう。
協議離婚のメリットとしては、裁判費用などもかからず、時間も短縮できるという点があります。
夫婦が納得して別々の道を歩めるのであれば、協議離婚がベストであるといえます。
ただし、夫婦で話し合って合意し離婚する場合でも、離婚条件を決め離婚協議書を作成する際には、弁護士等の法律家に相談することをおすすめします。
例えば、離婚した際には、養育費を払うと任意で約束したとしても、それが時の経過とともに不履行になるというケースがよくあるからです。
人間の状況や気持ちは日々刻刻と変化していくものです。
たとえば再婚して、新しい配偶者との間に子供ができた場合で、元の配偶者との子供にお金を割けなくなったなどというような状況の変化も考えられます。
そうしたことを防ぐためには、たとえば養育費の支払いをきちんと書面にして公正証書にした離婚協議書を作成しておくなど、約束が守られなかったときに対抗する手段を残しておく必要があるのです。
協議離婚以外の離婚の方法としては、離婚調停や裁判による離婚があり、これが全体の9%程度となっています。
離婚調停は、家庭裁判所で第三者である調停員を交えて夫婦が離婚について話し合った末に合意が成立した場合の離婚方法になります。
調停員は弁護士や有識者などから通常男女1名ずつ任命され、夫婦の主張を公平の観点から調整しながらすり合わせができるように調整をします。
通常、夫婦が片方ずつよばれて、顔を合わさないように調整されて話し合いが進められます。
離婚調停は裁判所で行われますが、基本的には当事者の話し合いの延長ですので、調停員や裁判官からジャッジされることはありません。
強制力がないので、当人同士が納得しなければ離婚は成立しません。
しかし、調停で離婚と離婚条件がまとまった場合は、その内容は調停調書にしたためられ、法的拘束力をもちます。
すなわち、あとから気が変わったとしても、離婚の意思を撤回することは基本的にはできませんし、調停調書に記載された支払い義務を怠った場合は、強制執行がかけられる可能性があります。
離婚をするかどうかという点については、夫婦関係調整調停がもたれますが、これに付随して婚姻費用請求調停や、面会交流調停など、お金や子供との面会交流についても別調停が開かれることも多いです。
上の離婚は、民事訴訟で争うことになりますので、法律上の離婚原因がある場合は、裁判所の判決で強制的な離婚が成立します。
確率としては非常にマイナーな離婚方法となりますが、全体の1%は審判離婚となります。
上述のように、家庭裁判所での調停手続きでは、基本的には裁判所側から当事者に命令をすることはないのですが、ごく例外的に裁判所が介入したほうがよいケースは、調停手続きの延長で裁判官が離婚を決定する審判手続きにより離婚が成立します。
離婚の理由
離婚の理由としては、どのようなものが多いのでしょうか。
まず圧倒的に多い離婚理由として、性格の不一致があり、大きな割合を占めています。
妻 | 夫 | 合計 | |
---|---|---|---|
性格が合わない | 40.5% | 61.3% | 46.1% |
精神的に虐待する | 25.6% | 18.7% | 23.8% |
生活費を渡さない | 28.3% | 4.40% | 21.8% |
暴力を振るう | 22.7% | 8.50% | 18.9% |
異性関係 | 18.0% | 14.8% | 17.2% |
浪費する | 11.3% | 12.4% | 11.6% |
家族親族と折り合いが悪い | 7.60% | 14.9% | 9.60% |
性的不調和 | 7.60% | 13.1% | 9.10% |
家族を捨てて省みない | 9.00% | 6.30% | 8.30% |
酒を飲みすぎる | 6.40% | 2.40% | 5.30% |
同居に応じない | 2.40% | 9.90% | 4.50% |
病気 | 2.80% | 5.10% | 3.40% |
引用元:最高裁判所「司法統計年報」
https://www.courts.go.jp/index.html
性格の不一致という離婚理由は非常にあいまいですが、やはり夫婦として毎日一緒に暮らす中で、価値観や趣味、意見の違いが甚だしくなると一緒に暮らしていくことが難しくなってくるといえます。
しかしながら、片方が性格の不一致で離婚したいと思っていても、相手は性格に不一致はないと考えていたり、離婚するほどの不一致ではないと判断して、結婚を継続したいと考えている場合は、基本的には離婚は認められません。
法定離婚原因といって、不貞行為、DV、悪意の遺棄、生死不明等の場合は、相手方が離婚に応じなかったとしても、裁判等を経れば強制的に離婚することができます。
しかし、性格の不一致は法定離婚原因ではないので、協議をして相手に離婚に応じてもらえるように説得をしなければ、離婚ができないということになります。
結婚は日本の家族制度の根幹をなすものですので、どちらか一方の単なるわがままによって、離婚を望んでいない配偶者が簡単に切り捨てられることがないように法律で守られているのです。
例えば、あなたが離婚を望んでいないのに、相手から急に性格が合わないから離婚したいと迫られても、納得がいかないのであれば応じる必要は全くありません。
もしあなたが性格の不一致で離婚をしたいと思っているほうの当事者であれば、もう一度歩み寄れる点はないのかをよく考えつつ、どうしても難しい場合は、別居をする等の方策をとることがよいでしょう。
別居することによって、一度冷静に相手と自分の関係性をみつめなおすことができますので、もしかしたらもう一度やり直そうという気持ちになるかもしれません。
もし、どうしても気持ちが変わらない場合、別居期間が相当長くなれば事実上婚姻関係は破綻しているとして、法定離婚原因の「その他婚姻を継続しがたい相当の理由」に該当するとして離婚が認められる可能性もあります。
性格の不一致をのぞいて多い離婚理由は、いわゆるモラハラといった精神的虐待、不貞、不倫など異性問題、義理両親を含む家族親族との折り合いが悪い、セックスレスなど性的不一致が挙げられます。
精神的・肉体的虐待や不倫の場合は、法定離婚理由となるとともに、離婚慰謝料の支払いの対象となる可能性もあります。
これらの場合は、調停でも訴訟でもご自身に有利に離婚をするためには、証拠集めを用意周到に進める必要があります。
離婚と子供
離婚にあたって、当事者をもっとも悩ませる問題の一つに子供をどうするかということがあります。
夫婦はもともと他人ですが、夫婦の間に生まれた子供は、離婚をしても父親とも母親とも親子であり続けることに変わりはないからです。
まずは、子供の親権を父親が持つのか母親が持つのかを決める必要があります。
日本では共同親権の制度はないので、必ずどちらか一方が親権者になる必要があります。
離婚届に親権者を指定する欄がありますので、協議離婚の場合は必ず、離婚届を提出する前にどちらが親権者になるかを決めておく必要があります。
親権者の記載がない場合は、離婚届は受理されません。
調停、審判、裁判上の離婚の場合は、手続きの中で親権者が定められていきますので、そうした指定をする必要はありません。
親権には、身上監護権といって子供と同居して日常の面倒をみる権利と財産管理権の二つがあり、1人の親権者があわせて持つこともできますし、別々に持つこともできます。
財産管理権とは、子供の預金の管理や、不動産の贈与を受ける等大きな財産上の変動を伴う法律行為をするときに、まだ未成熟な子供が間違った判断をしないように管理監督する権利です。
例えば、父親が財産管理権を持ち、日常の細かい衣食住の世話をする母親が身上監護権を持つというパターンもありえるでしょう。
なお、日本では多くの場合、母親が親権を持つことが多いです。
父親と母親どちらも親権を望んだ場合、特に幼少の子供については、母親に優先的に親権が認められる傾向があります。
また、兄弟不分離の原則といって、兄弟がいる場合はなるべく一緒の親が親権を持つように調整されます。
もちろんこれらは絶対的な判断要素ではなく、家庭によってさまざまな要素が考慮されます。
親権の帰属を決める判断ポイントは、どちらの親が親権者になったほうが子供の福祉に資するのかという点です。
実際に育児に時間と労力をさくことができるほうの親に親権が認められます。
親権者にならず子供と別居して住むほうの親は、面会交流権といって子供に定期的に面会をして交流を持つ権利が認められます。
面会交流の条件として、日時、頻度、時間、場所、第三者が立ち会うか否か、プレゼントや宿泊の有無などを取り決める必要があります。
のちのち父母の意見が食い違ってトラブルにならないように、離婚協議書に面会交流の条件は書面としてしたためておきましょう。
子供の福祉の観点から、一般的には面会交流は推奨されますが、子供が成長するにしたがって子供自身が会いたがるかどうかという意思の部分が大切になってきます。
親権者とならない非監護親は、子供が社会的に自立するまで養育費を、監護している側の親に支払う義務があります。
養育費の金額は、両親が合意すればその金額になりますので、夫婦で話し合ってわが子の教育や生活に必要となる金額を決められればそれがベストでしょう。
しかし、一般的には、養育費を支払う側としてはなるべく少なく支払いたい、受け取る側としてはなるべく多く受け取りたいというニーズの対立が生まれますので、協議でなかなか決まらない場合もあります。
そうした場合は、家庭裁判所で定められた養育費算定表のとおりに養育費が決定されます。
養育費算定表は、養育費を支払う義務者と養育費を受け取る権利者の年収と、子供の人数のマトリックスで自動的に養育費のレンジを算定できる表となり、東京家裁と大阪家裁の裁判官が話し合って、定めた表です。
近年では算定表の金額では足りないのではないかといわれており、見直される可能性もありますが、最低限でももらえる金額はいくらであるかを知るためにも一度確認しておきましょう。
養育費の支払いが合意されても、子供が成人するまできちんと支払われているケースは、残念ながら全体の2割程度だといわれています。
養育費は基本的に毎月払いで支払っていくことが多いのですが、義務者が支払を滞らせたり、支払わなくなったりしていくケースが多いのです。
督促しても支払われないという事態を避けておくために、養育費の支払い条件は離婚協議書に明記したうえで公正証書にしておきましょう。
公正証書とは、全国各所にある公証役場という役所で、公証人に書類の作成の事実を公に証明してもらった書面のことをいいます。
公正証書にするためには多少費用がかかりますし、公証役場に赴く手間はかかりますが、公正証書にしておくと、支払が滞った際に、相手の銀行口座や給与債権などに強制執行をかけることができるので、回収の確実性が高まります。
離婚と準備
良い離婚をして新しい生活を順調にスタートするためには、離婚のための準備を着実かつ慎重に進めていくことが必要です。
この準備をどれだけ徹底してできるかによって、良い離婚ができるかが決まるといってもよいでしょう。
離婚するにあたって決めなければならないことはたくさんありますし、意見の調整には時間がかかることも多いです。
訴訟になれば、半年から2年程度と手続きが長期化することもよくあります。
また、それぞれの家族や子供に及ぼす影響も大きい重要な問題ですので、じっくりと時間をかけて話し合うことがよいともいえます。
婚姻費用
離婚準備期間が長引いた場合、多くのカップルはまず別居を開始すると思いますが、この場合、婚姻費用をどのように分担するかが問題になります。
共稼ぎの場合はともかく、片方が専業主婦で収入がなく、これまで夫の収入のみで暮らしていた場合、生計が別になると片方の生活が追いつめられる可能性があります。
特に収入が少ない妻が子供と共に暮らしている場合などは、婚姻費用を支払ってもらえないと死活問題となってしまいます。
離婚準備期間中は、まだ夫婦ですので、相互に生活を支えあう扶養義務があります。
そのため、離婚準備中は婚姻費用の負担をして相手の生活が困らないようにする義務があります。
これを婚姻費用負担義務といいます。
支払義務者が任意で支払ってくれればよいのですが、もし支払ってくれず兵糧攻めにしてくるようでしたら、家庭裁判所に婚姻費用調停申し立てをしましょう。
養育費と同様に婚姻費用についても、算定表といって相互の年収などによって自動的に支払うべき最低限の婚姻費用が算定できる基準があります。
調停で合意が成立しなければ、審判によって算定表通りの婚姻費用を支払うように命令がくだります。
不法行為による離婚の場合は証拠集めをしよう
ドメスティックバイオレンスや不貞行為のために離婚を考えている場合、これらの行為は法定離婚原因になるとともに、民法上の不法行為として離婚慰謝料の請求原因にもなります。
離婚後に経済的な不安がある場合は、きちんと離婚慰謝料ももらいたいところですよね。
民法709条は故意過失により他人の生命・財産・身体に損害を与えた者は、その損害を賠償する責任があると定めています。
そして、その損害は財産的損害に限らないとされています。
ドメスティックバイオレンスの場合は、肉体や精神への暴力ですので、それらについての損害を賠償する必要があります。
不貞行為については、婚姻している男女は、配偶者以外と肉体関係をもつことが禁止されています。
この貞操義務に違反して、不倫をした場合は、裏切られた側の配偶者は大きな精神的ショックを受けます。
また、平和な家庭生活という法律上の利益もおかされたということになります。
これらの損害に対して、有責配偶者とその不倫相手は、連帯して損害賠償責任を負うこととなります。
離婚慰謝料の相場は50万円~300万円程度といわれています。
もちろん個別の事情が考慮されますので、この相場にあてはまらないこともありますし、夫婦が合意すればいくらの慰謝料でも問題ありません。
大富豪や有名人の離婚で慰謝料が数億円単位というニュースを目にすることもありますが、当事者が合意していればそのような金額でもよいですし、お互いに請求しあわないという選択肢を選ぶ夫婦もいるでしょう。
合意で決まらない場合は、裁判官が諸般の事情を考慮して、慰謝料の金額を決定します。
例えば、不倫慰謝料の場合は、夫婦の年齢、結婚年数、経済事情、子供の有無、不倫カップルの年齢、どちらが主導権をもっていたのか、不倫の回数、頻度などの事情が考慮されるといわれています。
調停や訴訟の場になると、多くの場合は加害者である配偶者(法的には有責配偶者といいます)は、虐待や不倫の事実を否定します。
自分に不利な事実は認めたくないからです。
そうしたときに、言った、言わないの論争をしても意味がありませんし、第三者である調停員や裁判官に納得してもらうためには、なんといっても客観的な証拠が必要です。
証拠を集めるには、別居前の同居期間中からこまめな対応をしておく必要があります。
ドメスティックバイオレンスの場合は、暴力を受けた日時、場所、内容、目撃者がいたかなどを日記などに記録しておきます。
相手に気づかれないように、スマホの録音録画アプリなどを利用するのもよいでしょう。
不倫の場合は、配偶者が不倫相手と肉体関係をもったことまで立証する必要があります。
どこからが浮気という線引きは、人によってさまざまな価値観があるので、二人だけでデートをしたり手をつなぐ、キスをするという行為から浮気だと思う人もいるかもしれません。
しかし、法的な不貞行為と評価されるためには、肉体関係をもっていることが必要なのです。
肉体関係は通常当事者でしか知り得ない空間でもたれるので、証拠を集めるのは難しい側面があります。
下手に尾行などをすると相手に気づかれて警戒され、証拠がつかみにくくなることも考えられますので、費用はかかりますが、探偵事務所に素行調査を依頼してしまうという方法もあります。
最後に
いかがでしたでしょうか。
離婚は大きなストレスがかかる人生の一大イベントですが、長い人生を考えると、愛情がもてなくなったパートナーと添い遂げるよりも、前向きな決断であるとも評価できます。
離婚で思い切り泣いたら、次の人生のステージは幸せなものとなるように、良い離婚をしましょう。
良い離婚のために知っておきたいポイントについてご参考になれば幸いです。
▼離婚の手続き シリーズ
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- 離婚の手続きVOL31 「 子のいる離婚では必ず発生?養育費の決定方法とは 」
- 離婚の手続きVOL32 「 養育費の算定方式は4つ!日本での平均金額は? 」
- 離婚の手続きVOL33 「 面会交流権の概要と行使の基準とは?勘違いしがちな親の視点 」
- 離婚の手続きVOL34 「 子に悪影響なケースでは面会交流権行使を制限することができる 」