離婚とお金VOL4 離婚の財産分与と慰謝料の要求は時効に注意!約束を守らせる秘訣とは? | 離婚弁護士マップ
  • tel-button
  • mail-button
top center bottom

離婚とお金VOL4 離婚の財産分与と慰謝料の要求は時効に注意!約束を守らせる秘訣とは?

離婚するにあたっては慰謝料や財産分与が重要になりますが、離婚の際には話がまとまらないことがあります。

その場合には離婚後に請求することになりますが、請求できる期間には限りがあることに注意が必要です。

そこで今回は、慰謝料と財産分与それぞれについて、請求できる期間を解説していきます。

離婚の慰謝料請求の時効

慰謝料については、離婚後であっても相手に請求することができます。

もっとも、慰謝料を請求できる期間については限りがあります。

離婚の際に生じる慰謝料については、民法709条の不法行為によるものと解されています。

そして、不法行為による損害賠償の請求権については、民法724条に規定されています。

民法724条は、「不法行為による損害賠償の請求権は、被害者が損害及び加害者を知った時から3年間行使しないときは、時効によって消滅する。

不法行為の時から20年を経過したときも同様とする」旨を定めています。

同条により、慰謝料を請求することができるのは、原則として被害者が損害(配偶者の不貞行為など)及び加害者(不貞行為の相手方)を知った時から3年以内に限られることになります。

例えば、妻が夫の浮気と浮気相手の両方を知ったのが2015年4月である場合、2019年4月に夫の浮気について慰謝料を請求したとしても、3年の時効によって請求が認められないことになります。

一方、夫の浮気を知ったのが2015年4月で、浮気相手を知ったのが2018年4月である場合は、時効が開始するのは2018年4月であることから、2019年4月に夫の浮気について慰謝料を請求することは時効が完成していないので認められます。

時効と除斥期間

民法724条は不法行為による損害賠償の請求権について3年間の時効にかかることを定めていますが、それだけではなく、不法行為の時から20年を経過したときも請求権が消滅する旨を後段で規定しています。

例えば、夫の浮気があったのが2015年4月である場合に、2036年4月に夫の浮気について慰謝料を請求しようとしても、不法行為の時から20年が経過していることから、慰謝料を請求することはできなくなります。

次に、民法724条に規定されている3年間と20年間の2種類の期間の法的性質については、3年間が時効(消滅時効)、20年間が除斥期間であると解されています。

時効と除斥期間の違いは、中断があるかどうかです。

中断とは、期間が完成する前に一定の事由によって中断となった場合、それまでの期間がリセットされて中断の時点から期間が進行することです。

例えば、3年の時効が完成するのが2019年4月のケースにおいて2018年4月に中断となった場合、2018年4月から改めて時効がスタートするため、時効が完成するのはそこから3年後の2021年4月になります。

時効には中断がありますが、除斥期間には中断はありません。

そのため、離婚の慰謝料については、3年間の時効は中断によって期間が長くなる場合がありますが、20年間の除斥期間については中断によって期間が長くなることはありません。

慰謝料の時効を止める方法

離婚の慰謝料について時効を止める方法は、大きく分けて2つあります。

1つ目の方法は裁判を起こすことです。

裁判を起こすことで慰謝料の請求を行った場合、その時点で消滅時効の期間は一旦リセットされます。

2つ目の方法は内容証明郵便を送付して慰謝料を請求することです。

内容証明郵便を送付して慰謝料を請求することは、法律における催告という行為に該当します。

催告が行われると時効が一旦停止し、催告をしたときから6ヵ月の間時効の完成を阻止することができます。

その間に交渉によって解決をする、裁判を起こして時効を中断させる、などの措置を図ることができます。

財産分与を請求できる期間

離婚時に相手が財産を持っている状態であれば、相手に対して財産分与を請求することができます。

財産分与の請求は離婚後にも可能ですが、注意点は、いつまでも財産分与の請求ができるわけではないことです。

民法768条は、「財産分与について当事者間に協議が調わないときは、家庭裁判所に対して協議に代わる処分を請求することができる。

ただし、離婚の時から2年を経過したときはこの限りでない」旨を定めています。

この規定を受けて、財産分与を請求できる期間については、原則として離婚後から2年以内とされています。

財産分与の2年は除斥期間

財産分与を請求できる期間である2年間については、実務においては時効ではなく除斥期間であるとされています。

そのため、財産分与については慰謝料の3年間の時効とは異なり、中断を図ることはできません。

そのため、財産分与を請求する場合には必ず離婚から2年以内に行うことが重要です。

おわりに

慰謝料と財産分与は離婚後にも請求することができますが、請求できる期間が法律で定められています。

慰謝料については原則として損害及び加害者を知ってから3年間の時効で、財産分与については離婚後2年間の除斥期間となります。

慰謝料の3年間については時効中断の措置をとることができますが、財産分与の除斥期間については時効中断できないので注意しましょう。

▼離婚とお金 シリーズ

  1. 離婚とお金VOL1_あとで慌てない!離婚の前に必ず決めておくべき3つのこと
  2. 離婚とお金VOL2_要チェック!離婚したら相手から受け取れる4種類のお金と注意点
  3. 離婚とお金VOL3_どこまで認められる?離婚前の別居期間中の生活費で請求できる項目とは
  4. 離婚とお金VOL4_離婚の財産分与と慰謝料の要求は時効に注意!約束を守らせる秘訣とは?
  5. 離婚とお金VOL5_親権者でなくても離婚後に子どもを引き取れる「監護者」とは?
  6. 離婚とお金VOL6_「離婚後は子どもを会わせたくない」は認められない?まずは面会のルールを決めよう
  7. 離婚とお金VOL7_離婚時に決めた財産分与や養育費が支払われない場合にとれる差押えなどの解決方法
  8. 離婚とお金VOL8_内縁など事実婚状態でも財産分与や慰謝料、養育費の要求は可能?
  9. 離婚とお金VOL9_家事労働分がカギ!専業主婦と共働き2つのケースでの離婚における財産分与はどう違う?
  10. 離婚とお金VOL10_離婚を急いで請求権を放棄すると取り返しがつかない!あとから請求する方法はある?
  11. 離婚とお金VOL11_親の遺産は?離婚時の財産分与でもらえるものと、もらえないもの
  12. 離婚とお金VOL12_財産分与を現物でもらうのはアリ?離婚で不動産をもらうときの注意点
  13. 離婚とお金VOL13_財産分与と慰謝料を受け取ると税金がかかる?離婚と税金の関係について解説
  14. 離婚とお金VOL14_マンション頭金や結婚式費用は離婚時の財産分与でどうなる?
  15. 離婚とお金VOL15_相手の事業を手伝っていたが離婚した場合の財産分与について
  16. 離婚とお金VOL16_借金のある事業や夫の浪費癖により喪失した事業資産がある場合、離婚したら財産分与はどうなる?
  17. 離婚とお金VOL17_浮気した本人は離婚時に財産分与を受け取れる?慰謝料との関係も解説
  18. 離婚とお金VOL18_夫の借金の保証人になっていた場合、離婚時にやるべきことと財産分与について
  19. 離婚とお金VOL19_離婚による財産分与を分割でもらう際に必ずやるべきことと、ローンが残っている不動産のもらい方
  20. 離婚とお金VOL20_姑からのイジメも?離婚で慰謝料を受け取れるケースとその相場について解説
  21. 離婚とお金VOL21_慰謝料も財産分与も請求できる期限がある!不払いを防ぐ方法とは?
  22. 離婚とお金VOL22_事実婚で生まれた子は?養育費をもらえるケースとその期間について解説
  23. 離婚とお金VOL23_諦めたら損!養育費が決まらない場合にとるべき手段
  24. 離婚とお金VOL24_養育費の相場はいくら?年収で計算する方法を解説!
  25. 離婚とお金VOL25_養育費で損しないための対策!毎月払いと一括払いの利点欠点と、不払いを防ぐ方法
  26. 離婚とお金VOL26_養育費はあとから増額や減額ができる?具体的なケースを解説!
  27. 離婚とお金VOL27_失業や借金で養育費を払えないと言われた場合、今までどおり要求できるケースと諦めたほうがいいケース
  28. 離婚とお金VOL28_再婚したら養育費はどうなる?養子縁組との関係について解説
  29. 離婚とお金VOL29_財産分与や養育費の話し合いがうまくいかない場合に、まずやるべきこと
  30. 離婚とお金VOL30_DVが離婚原因の場合、直接会わずに慰謝料や養育費などの話し合いを進める方法を解説
  31. 離婚とお金VOL31_養育費の過剰な取り立ては訴えられるかも?やってはいけない催促とは
  32. 離婚とお金VOL32_養育費が支払われない場合は祖父母に払ってもらえる?法律上の支払義務とは
  33. 離婚とお金VOL33_養育費の支払いを内容証明で催促する方法を解説!
  34. 離婚とお金VOL34_養育費など離婚給付の話し合いがまとまらない場合に裁判を考えるタイミング3つ!
  35. 離婚とお金VOL35_養育費を要求するための少額訴訟のやり方
  36. 離婚とお金VOL36_財産分与が支払われない!借金取立てにも利用される「支払督促」について知っておこう
  37. 離婚とお金VOL37_いきなり裁判はできない!養育費が支払われないときに踏むべき手順について解説
  38. 離婚とお金VOL38_財産分与や養育費の取り決めを無視された場合に財産を差し押さえる手続き方法
  39. 離婚とお金VOL39_財産分与や養育費が支払われない場合、いくら差押えができる?
  40. 離婚とお金VOL40_離婚して子どもを夫に会わせたくないときに考えるべきこと
  41. 離婚とお金VOL41_夫と子どもとの面会は制限していい?祖父母に面会交流権はある?
  42. 離婚とお金VOL42_親権でもめて子どもを連れ去られたときに返してもらう方法を解説
  43. 離婚とお金VOL43_離婚後、子どもに会わせてくれなくなった場合に面会を求める方法とは
  44. 離婚とお金VOL44_離婚後も結婚中の姓を名乗るための手続き
  45. 離婚とお金VOL45_離婚して旧姓に戻っても子どもは夫の姓のまま?妻の戸籍に入り妻の姓にする方法
  46. 離婚とお金VOL46_子どもの姓を親権者ではない方の姓に変える手続き
  47. 離婚とお金VOL47_戸籍からバツイチを消す裏ワザ!注意点も解説
  48. 離婚とお金VOL48_子どもの親権者が虐待をしていたときに親権を変更する方法
監修弁護士
中野 和馬

東京弁護士会

中野 和馬
石木 貴治

東京弁護士会

石木 貴治
山谷 千洋

東京弁護士会

山谷 千洋
堀 翔志

第二東京弁護士会

堀 翔志
水流 恭平

東京弁護士会

水流 恭平
福西 信文

東京弁護士会

福西 信文
川﨑 公司

東京弁護士会

川﨑 公司
大橋 正崇

弁護士法人AO

大橋 正崇
鵜飼 大

ウカイ&パートナーズ法律事務所

鵜飼 大
監修弁護士一覧
弊社が選ばれる3つの理由
離婚について知る