雑種地を農地転用する方法まとめ【必要書類や手順について】
この記事でわかること
- 雑種地とは何かがわかる
- 農地転用が必要な雑種地なのか判断できる
- 農地転用の仕方がわかる
不動産には多くの地目がありますが、どの地目にも該当しない地目のことを雑種地といいます。
雑種地とされる土地の状態は何種類かあり、土がむき出しの駐車場・資材置場・耕作放棄地などが該当します。
しかし、まれに地目が雑種地であるにもかかわらず、現況が宅地や農地という場合もあります。
このような地目と現況が違う場合には、現況が優先されます。
そのため、地目が雑種地でも農地転用が必要な場合もあります。
本記事では、雑種地とは何か、雑種地を農地転用する場合の方法などを解説していきます。
目次
雑種地とは
雑種地とは、不動産登記簿に記載する地目の1つです。
不動産登記簿に記載できる地目は、雑種地以外に22種類ありますが、この22種類に該当しない地目を雑種地として登記します。
法律で決められた22種類の地目は、次のとおりです。
- 田
- 畑
- 宅地
- 学校用地
- 鉄道用地
- 塩田
- 鉱泉地
- 池沼
- 山林
- 牧場
- 原野
- 墓地
- 境内地
- 運河用地
- 水道用地
- 用悪水路
- ため池
- 堤
- 井溝
- 保安林
- 公衆用道路
- 公園
これ以外の土地が雑種地となります。
なお、地目と現況が合っていない場合は、現況を優先することが多くあります。
たとえば、地目は山林だったとしても、現況は住宅が建築されていたとします。
この場合、登記簿の地目を変更登記しなければ地目は山林のままですが、現況は住宅が建築されているということで宅地として扱われます。
この場合、地目が山林でも現況宅地として、宅地の評価を受けた固定資産税が課税されます。
また、これと同様に地目が雑種地だとしても、現況が農地や、以前農地で現在は耕作放棄地となっているものの農地として届けたままになっている場合は、地目は雑種地でも取り扱い自体は農地として扱われます。
そのため、書類上は雑種地だが、現実の取り扱いは農地であるということが起きてしまいます。
現況が変わったとしても地目を変更するには、地目が変更された不動産の所有者が手続きをしなければなりません。
しかし、この手続きをしないことの罰則がないため、地目変更があっても地目変更登記をしない方がほとんどです。
このようなこともあり、書類上の地目と現況が合致していないことがよく見受けられます。
この他にも、舗装されてる駐車場の地目は宅地ですが、土がむき出しになっている青空駐車場の地目は雑種地であるなど、地目自体も曖昧なところがあるため、勘違いを引き起こす要因となっています。
雑種地を農地転用する流れ・必要書類
農地と判断される雑種地を農地転用するときの流れは、まず雑種地が市街化区域にあるのか、市街化調整区域にあるのかによって手続き内容が大きく変わります。
そもそも市街化区域内での農地転用は届出であるのに対して、市街化調整区域内での農地転用は許可であり、内容がまったく異なります。
そのため、農地と判断される雑種地の農地転用の方法を、市街化区域にある場合と市街化調整区域にある場合に分けて説明していきます。
農地と判断される雑種地が市街化区域内にある場合
農地と判断される雑種地が市街化区域内にある場合、当該地域を管轄する農業委員会への届出だけで農地転用が可能です。
農地転用の届出は、自己所有地の転用と転用を目的とした農地の売買・賃借の2種類に分かれます。
この2種類の差はあまりなく、提出書類の記載内容が少し変わるだけです。
なおかつ、農地転用の届出は提出物が少なく、内容も簡易なため一般個人でも提出が可能な手続きです。
ここからは、農地転用の届出をするための流れを紹介します。
農地転用の届出が必要になる工事の予定が発生
農地と判断される雑種地に住宅を建築する予定がある、あるいは駐車場として利用することになった場合、その計画を農業委員会へ報告しなければなりません。
農地転用の届出を出す前に工事を開始すると、是正命令や工事差止請求などをされるため注意しましょう。
農業委員会へ提出する書類の準備
農地転用の届出は、次の書類を準備します。
農地転用の届出に必要な書類
- 農地転用届出書(2部):各自治体や農業委員会HPよりダウンロードできる場合もあります
- 届出する土地の登記事項証明書(原本1部):法務局で入手します
- 住民票や戸籍附票(原本1部):所有者の現住所などが登記事項証明書の住所などと違う場合に必要です
- 案内図(2部):住宅地図やグーグルマップの写しなど転用する土地周辺の地図を貼付します
- 公図(2部、写しでも可):法務局で入手します
これらの書類を準備し、届出をする土地を管轄する農業委員会へ提出します。
農業委員会から農地転用の受理通知がきたら工事開始可能
農地転用の届出の内容に不備がなかった場合、1〜2週間ほど(提出した農業委員会による)で農地転用の届出の受理通知書が発行されます。
この受理通知書が発行されたら、農地と判断される雑種地に対して行うと申告していた工事を開始できます。
農地と判断される雑種地が市街化調整区域内にある場合
農地と判断される雑種地が市街化調整区域内にある場合、都道府県知事もしくは都道府県知事から権限を委譲された農業委員会の許可が必要です。
まず、前提としてこの許可はプロの行政書士などでも手続きが難しく、一般個人でできるようなものではありません。
このことを前提に、手続き方法を解説していきます。
農業委員会で農地転用の許可が出る地域なのか確認
農地と判断される雑種地が市街化調整区域内にある場合で、なおかつ農用地区域内や甲種農地など農業を発展させたい地域などが指定されている場所にある土地の場合は、原則農地転用の許可はおりません。
市街化調整区域内で農地転用の許可が下りるのは、第3種農地の場合です。
第2種農地の場合も、手続きは困難ですが許可が下りることもあります。
このような地区設定により、農地転用の許可が下りやすいのか変わるため、農地転用の許可をした土地がどのような地区に該当しているのか、当該土地を管轄する農業委員会へ確認しておく必要があります。
農地転用許可のプロに相談
農地転用の許可は各都道府県や特定の各農業委員会によって異なりますが、農地転用の届出に必要な書類以外に、次のような書類を用意しなければなりません。
農地転用の届出以外で必要な書類
- 申請地の現況写真
- 事業計画書
- 土地利用計画図
- 建物等施設の平面図及び立面図
- 排水計画図
- 資金計画書
- 資力を証する書類
- 工事見積書
- 水利権者などの同意書
- 土地改良区の意見書
- 地積測量図
- 委任状
- 確認書
書類の一覧を見て頂ければわかるとおり、一般個人で作成できるような書類はありません。
そのため、市街化調整区域内で農地転用の届出を検討している場合は、農地転用許可のプロに相談をしなければ話が進まないといえます。
また、農地転用許可の費用は高額になるため、あらかじめ農地転用の許可を相談するときに見積もりも取得しておきましょう。
書類を提出し審査
許可申請の書類が完成したら、都道府県または特定の農業委員会へ書類を提出します。
許可が下りる期間は各自治体により異なりますが、6週間ほどで回答が来る場合もあれば、3ヶ月以上かかる場合もあるため、期間についてもプロに確認しておきましょう。
許可決定
書類を提出し、内容に不備がなければ農池転用の許可が下ります。
農地転用の許可が下りると、農地転用許可証が発行されます。
まとめ
不動産の登記簿には22種類もの地目が記載されています。
この22種類の地目のどれにも該当しない場合は、雑種地となります。
この雑種地はあくまで書類上の話であり、現況が農地の場合は農地として取り扱われます。
農地として取り扱われる雑種地を宅地に変更する場合には、農地転用の届出か許可が必要になります。
農地転用は届出であれば一般個人でも可能な手続きのため簡単に宅地にできますが、農地転用の許可を必要とする雑種地の場合は農地転用許可のプロに相談しなければなりません。
許可のために用意する書類が行政書士・建築士・土地家屋調査士など専門家でないと作成できない書類ばかりのためです。
もし農地転用の許可が必要な土地で事業計画を立てるというのであれば、早めにプロに相談して農地転用の許可が受けられそうか、判断してもらうとよいでしょう。