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遺された不動産を売却できる相続財産管理人とは?選任までの流れや必要書類・予納金の相場について

この記事でわかること

  • 相続財産管理人の役割と仕事について理解できる
  • 相続放棄後も続く相続不動産の管理責任から免れる方法
  • この制度で相続不動産を売却、債権の回収、縁故者へ分与ができる
  • 選任までの流れと必要書類、費用、予納金相場が分かる
  • 相続財産管理人が自分に必要?不必要?か分かる

「向かいの家やっと売れたか?草刈りに来てた息子さん助かるわ」「うちはどうなるのだろう?」

こんな思いを持つ人は多いのではないでしょうか。

苦労して建てた家と愛着ある土地でも、相続人の事情により『不動産』が『負動産』に変わる可能性もあります。

【相続人がいない】【管理が出来ないので相続放棄】【借金がある】【遠縁の親戚で身寄りがない人が不動産を遺した】等々といった特殊な相続の完結には、想像以上の難題があり心労もかかります。

この記事では、このような場合に遺された不動産を売却する方法『相続財産管理人』制度について、メリットと利用の仕方を詳しく解説しています。

財産管理する相続財産管理人とは

相続財産管理人とは相続人がいない、いても相続放棄した場合に、家庭裁判所から選任されて相続財産を管理・清算する役目を担う人です。

被相続人に法定相続人がいないあるいは法定相続人が相続放棄した場合は、相続財産が行き先を失い、挙げ句の果てには【朽ちた長期空き家】などの社会問題も引き起こします。

そこで、検察官や利害関係人などが相続財産管理人の選任を申し立て、財産の管理を任せます。

管理人は管理を続けながら不動産の売却などを行い、相続財産を清算して役目を終了させます。

相続財産管理人の仕事について

相続財産管理人が行う仕事は、次の4つです。

1.相続財産の調査と清算手続きを行う

相続人捜索公告にて、戸籍上の相続人を探しながら相続財産の内容を精査し、財産目録を作成します。

民法は「相続人のあることが明らかでないときは、相続財産は法人とする」(民法951条)としており、法人名義へ登記変更します。

清算の為、裁判所が認めれば相続財産の不動産を売却します

2.相続債権者へ債権回収を、受遺者に遺贈を行う

相続財産管理人は相続債権者や受遺者に対して、一定の期間を定めて請求の申し出をするよう公告します。

期間満了後に、届け出た相続債権者へ相続財産から弁済支払いを行い、受遺者へ遺贈を行います。

3.特別縁故者へ財産分与を行う

特別縁故者とは【長い間生計を共にした内縁の妻】【療養看護に努めた人】など、被相続人と特別な縁故関係にあった人です。

相続財産管理人からの申し立てを家庭裁判所が認めれば、余った財産の全部または一部が特別縁故者へ分与されます。

4.残余財産の国庫帰属の手続きと終了報告を行う

1~3までの手続を経て相続財産を清算終了後、残った財産があれば国庫に帰属させる手続きを行います。

最後に、家庭裁判所へ管理終了の報告をして業務完了となります。

相続財産管理人が必要なケースと選任され易い3つのパターン

【法定相続人がいない】【相続人全員が放棄した】すると相続財産管理人が自動的に選任される訳ではありません。

相続財産も借金も無い場合は、誰にも迷惑がかからないので認められません

選任され易い3つのパターン

実際に相続財産管理人が選任され易いのは、次の3つの状況です。

1.相続放棄したが相続財産の管理に手を焼いている

【遠方の古い実家で持ち出しもある】【田舎の山林】そんな理由で相続放棄した。

これで防犯対策や草刈りなどの管理から放免だ!なんて思っていませんか?

相続放棄しても次の相続人に引き継ぐまで、管理責任は免れません。(民法940条)

相続放棄後も続く管理責任から、放免・解放されるのは相続財産管理人を選任して管理・清算を引き継いだ時点となります。

物件の管理に手を焼く状況なら、是非検討しましょう。

2.被相続人に債務(借金)があり債権者がいる

相続人に相続放棄されると、被相続人の債務請求は不可能となります。

債権者は利害関係人として、相続財産管理人の申し立てが可能ですから、被相続人の相続財産から債券回収の手段として利用します。

3.特別縁故者がいる

法定相続人が不在となると、特別縁故者は財産を請求することができます。

生計を共にしていた内縁の妻や療養看護に尽くした人、事実上の養子などは高い確率で選任が認められます。

家庭裁判所で受理された場合のみ相続放棄と見なす

【相続人の全員に相続放棄すると宣言している】や【分割協議書へ相続放棄と自筆署名してある】ので「相続放棄は成立している」、こんな言い方をする人もいます。

これでは相続放棄の効果はありませんし、特に被相続人の債権者に対しては全くのゼロです。

被相続人に借金は無くとも、知らぬ間に連帯保証人になっていたら大変な事態を招きます。

必ず、家庭裁判所へ相続財産の全てを放棄すると申し立て、受理される手続きを踏みましょう。

相続財産管理人が選任されるまでの流れ

相続財産管理人の選任を申し立てられるのは【相続債権者】【遺言での受遺者】【特別縁故者】、そして【検察官】です。

管理責任がある相続放棄人は、選任まで見守るしかありません。

相続財産管理人の申し立てと審判までの流れ

1.家庭裁判所へ相続財産管理人選任の申し立てを行う
被相続人の【最後の住所地を管轄する家庭裁判所】へ申し立てを行います。
この時、相続財産管理人を推薦することも認められていますが、一般的には弁護士や司法書士が選任されています。

2.家庭裁判所の審理
申し立てが受理されると、被相続人との関係や財産内容を考慮した人選を行います。

3. 選任の審判
家庭裁判所が、この事案は相続財産管理人の選任が妥当との審判が下れば完了となります。

相続財産管理人を推薦する場合の必要書類

通常、申し立ての必要書類は次のとおりです。

相続財産管理人選任申立書(家事審判申立書)書式や記載例は裁判所ホームページで参照できます。
相続財産が分かる資料不動産なら登記事項証明書を、預貯金なら残高証明種書を添付します。
利害関係を証明する資料申立人が債権者なら、被相続人と交わした金銭貸借契約書の写しを添付。
希望する人を推薦する場合の必要書類上記に加えて、推薦する候補者の住民票または戸籍附票を提出します。

選任申し立てをする場合の予納金相場について

相続財産管理人の選任には、次の手続きと費用がかかります。

  • ・申立手数料800円
  • ・郵便切手代(数千円程度)
  • ・官報広告費用3,775円
  • ・予納金(よのうきん)

ここで心配になるのが予納金、その金額は、事案の作業量によって家庭裁判所が決定します。

予納金は相続財産管理人が行う管理業務の経費や報酬に使われ、その相場は地方20万円~東京100万と言われています。

清算後、残余財産が予納金相場を下回ると、新たに持ち出しが発生することもあります。

生前に相続財産管理人の選任を不要とする方法

相続財産管理人を選任する相続財産の管理・清算には、煩雑な手続きと少なくない費用が必要です。

そして長い期間がかかること、不動産の売却で清算となると数年を要すこともままあります。

そんな事態は困ると思う人は、生前から避ける2つの方法を知っておきましょう。

1.遺言書を作成する
遺言書を作成し遺言執行者を指定します。
これなら法定相続人がいなくとも、世話になった人へ遺贈されます。

2.養子縁組をする
養子は法定相続人となるので、相続財産の管理が可能です。

この様に「生前に選任を不要とする措置」を専門家に頼むことにより、相続財産管理人の選任を生前から避けられます。

まとめ

冒頭にご紹介した【やっと売れた家】は相続人の息子さんが相続財産管理人の制度を利用して、遠く古い実家の不動産を売却し、つらい管理責任から解放された実例です。

「相続財産の不動産を売却したい」「被相続人の債権を少しでも回収したい」そして、「内縁の妻」などは相続財産管理人を選任することで救われるかもしれません。

もしあなたに相続人がいない場合や「相続人が放棄しそう」、また「世話になった大切な人に財産を残したい」、そして「債務は残したくない」と思うなら行動に移して下さい

突然の相続もあり得ます。

後の代にまで残さないため、弁護士・司法書士、得意とする法人などへ、早めの相談をおすすめします。

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