不動産売却でよくあるトラブル事例と対処法【発生時に頼れる相談先は?】
この記事でわかること
- 不動産売却のトラブル事例や対処法がわかる
- 不動産売却時に起きたトラブルの調査方法がわかる
- 不動産売却のトラブルを避ける方法がわかる
- 不動産売却でトラブルが起きたときの相談先がわかる
「不要な土地を相続したので早めに売りたい」「老後はマンションで過ごしたいので一戸建てを売りたい」など、不動産売却に関するニーズは様々です。
理想的な不動産売却は「早く売れる」「高く売れる」の2点に絞られますが、売り主と買い主それぞれの事情があるため、なかなか思うようにはきません。
そこで頼りにしたいのが不動産会社です。
適正価格の査定はもちろん買い主も探してくれるため、土地・建物の売却もスムーズになるでしょう。
ただし、売買契約を巡ったトラブルは後を絶たないため、売り主側もある程度の知識を身に着けておかなければなりません。
特に不動産会社の選択は重要になるので、今回はよくあるトラブル事例や対処法をわかりやすく解説します。
目次
不動産売却でよくあるトラブル事例と対処法
不動産売却の契約は複雑であり、高額な資金も動くことからトラブルが発生しやすくなっています。
特に契約内容の行き違いや手数料関連のトラブルが多く、所有不動産が原因となるケースも少なくはありません。
よくあるトラブルには次のような事例があるため、何が原因になりやすいか事前に掴んでおくとよいでしょう。
仲介手数料のトラブル
不動産売却の仲介手数料は宅建業法によって定められており、取引金額に応じた上限額もありますが、法外な手数料を請求してくる不動産会社もあるので要注意です。
- 200万円以下:取引額の5%以内
- 200万円以上400万円以下:取引額の4%以内
- 400万円超: 取引額の3%以内
仮に300万円の不動産を売却する場合、仲介手数料の上限額は以下のようになります。
- 200万円以下の部分:200万円×5%=10万円
- 200万円以上の部分:100万円×4%=4万円
- 仲介手数料:10万円+4万円×10%(消費税)=15万4,000円
簡単な計算なので、法外な仲介手数料になっていないかセルフチェックしてみましょう。
また、支払いタイミングは売買契約の成立後ですが、買い主が確定していない段階で請求してくる不動産会社もあるので気を付けてください。
広告料金のトラブル
不動産売却の手続きは複雑で、売り主にとっては不透明な部分も多くあります。
特に広告料金は悪用されやすく「土地の売却に必要」と言われ、うっかり支払ってしまうケースがあるので要注意です。
広告料については売り主から依頼があり、実際に広告した実費分だけを請求できるため、売り主が依頼してもいない広告料を請求された場合は支払いを拒否してください。
よくわからない料金の請求があれば書面に記録し、何を根拠とした請求なのか必ず問い合わせるようにしておきましょう。
専属専任媒介契約のトラブル
不動産を売却する際、不動産会社は売り主と買い主双方に仲介手数料を請求(両手仲介)できます。
両手仲介には何ら問題はありませんが、専属専任媒介契約では意図的に「囲い込み」されてしまう可能性もあるので気を付けてください。
専属専任媒介契約では自分で買い主を探すことができず、不動産会社が探してきた買い主にしか売却できません。
この仕組みを悪用して他の不動産会社からの購入依頼を断り、自社で見つけた買い主にしか売らないようにするケースがあります。
このような行為が囲い込みであり、自社だけで買い主を探すため購入希望者は少なくなり、売れるまでの期間も長くなってしまいます。
内覧希望が極端に少なく、レインズ(不動産流通機構)にも登録されていない場合は、更新時の契約解除も検討しましょう。
登記情報に関するトラブル
土地の謄本(登記事項証明書)と現地の状況が異なる場合、そのままの状態では売却できません。
特に一戸建ては隣地との境界が不明確になっているケースが多いため、法務局で謄本や地積測量図を取り寄せ、現況と一致しているか確認しておきましょう。
使用状況に越境がある場合は隣地オーナーと話し合って解決しますが、すんなり決着しないケースも多いため、売出しまでに相当な期間がかかることもあります。
まずは現況と謄本を確認し、食い違いがあれば確定測量も検討するようにしましょう。
買い主の支払いに関するトラブル
売買契約を結び、手付金も支払われたので一安心と思っていたところ、買い主がローン審査に落ちてしまい契約解消となるケースもあります。
最終段階で発覚すると不動産売却もやり直しになるため、ローン審査の状況は必ず買い主に確認しておきましょう。
また、買い主の信用力(与信力)は売り主からはわかりづらいため、契約解除になった場合のキャンセル料についても事前に取り決めておく必要があります。
契約キャンセルに関するトラブル
家族から反対された、転勤が決まったため不動産を購入する必要がなくなったなど、何らかの事情で直前に売買契約がキャンセルとなる場合もあります。
このようなケースでは違約金を請求できますが、買い主が拒否する可能性もあるため、キャンセル時の違約金についても事前に話し合っておく必要があります。
後で「言った・言わない」の水掛け論にならないよう、取り決めた内容は必ず書面に残しておきましょう。
不動産売却時に起きたトラブルを調べる方法
不動産売却のトラブルについては、過去の事例や判例を国土交通省のデータベースから検索できるようになっています。
参考:
不動産トラブル事例データベース(国土交通省)
ネガティブ情報等検索サイト(国土交通省)
不動産トラブル事例データベースでは契約成立や解除に関するトラブル、媒介契約と報酬請求に関するものなど、カテゴリ別に過去事例を検索できます。
ネガティブ情報検索サイトでは都道府県別や事業者別に検索できるため、実際に処分された不動産会社やトラブルの内容もわかります。
不動産売却では高額な資金が動くため、過去事例や不動産会社は事前に調査し、損害を被らないようにしておきましょう。
不動産売却のトラブルを避ける方法
不動産売却でトラブルが発生すると「売りたいものが売れない」状況になってしまい、金銭的な損害が出る可能性も高くなります。
ただし、トラブルが起きてからの対処では満足な結果を得にくいため、次に解説する回避策や予防策も実践しましょう。
ある程度の知識を身に付ける
不動産売却に係るトラブルは、ある程度の知識があれば回避できます。
仲介手数料の上限額や過去のトラブルなど、ネットや書籍で公開されている情報も多いので、売却の検討段階から基礎知識は身に付けておきましょう。
不動産会社に丸投げしない
チェック機能が働けばトラブルも未然防止できるため、契約のすべてを不動産会社に丸投げせず、自分自身も積極的に関わる姿勢が大切です。
「わからないから業者に任せる」という考え方はリスクが高いため、契約関連の書類にはすべて目を通し、不審な個所があれば必ず問い合わせるようにしましょう。
トラブルに対してアンテナを張っておく
不動産売却では何がトラブルの原因になるかわからないため、常にアンテナを張って、不安要素を見逃さないようにしましょう。
そうしてアンテナを張っておけば「本来あるはずの重要事項説明がなかった」など、色々と気付く点も多いはずです。
また、所有不動産がトラブルの原因になる可能性もあるので、土地の素性や建物の状態もできる限り詳しく調べておきましょう。
書面に記録を残す
言った・言わないのやりとりが発生しないよう、契約書など定型の書面に残らない情報はなるべくメモするように心がけましょう。
後で効力を発揮する場合もありますが、こまめに記録しているとわかれば不動産会社も曖昧な対応はできません。
また、契約書についても無資格者による作成やチェックがされないよう、宅地建物取引士が関わっているかどうかを確認することも大切です。
買い主への対策も考えておく
売却予定の不動産に問題があった場合、売り主は瑕疵担保責任を問われることになります。
売却完了後に瑕疵担保責任を負うケースもありますが、売り主・買い主のどちらにもデメリットしかありません。
問題が発生した場合の対応を書面化し、買い主にも渡しておけば、実際にトラブルが発生しても解決はスムーズになります。
信頼できる不動産会社を選ぶ
土地や建物の売却には不動産会社の仲介が欠かせないため、信頼できる業者選びが重要となります。
地域事情に詳しい地場の不動産会社、全国的に有名な不動産会社など様々ですが、信頼できるかどうかの見極めには次のようなチェックポイントがあります。
トラブルが起きにくい不動産会社の選び方
不動産会社の選び方は様々で、ホームページや口コミから信頼度をチェックすることもできますが、直接話して対応を見極める方が確実です。
次のような対応であればトラブルの起きにくい不動産会社といえますが、1社ずつ確認するのは大変な作業なので、一括査定サイトから探す方法もあります。
清掃や整理整頓が行き届いている
不動産会社では担当社員の対応も重要ですが、まずは事務所の整理整頓状況をチェックしましょう。
クリンリネスの徹底していない会社は書類の在り処がわからなくなる、または紛失が発生しやすく、大事な不動産を任せるには少々不安があります。
掃除や整理整頓が行き届いていれば、お客様対応はもちろん丁寧な物件管理も期待できます。
親身に話を聞いてくれる
売り主のほとんどは不動産売却の知識に乏しく、思うように不安や要望を伝えられませんが、最後まで話を聞いてくれる不動産会社であれば信頼度は高いでしょう。
売り主の話を遮らずに聞き取り、質問にも丁寧に答えてくれる不動産会社は、伝達不足から発生するトラブルも起きにくくなっています。
買い主の立場にも配慮している
不動産会社にとっては売り主も買い主もお客様であり、どちらか一方に偏った対応は後々トラブルに発展する可能性もあります。
電話だけでもかまわないので「土地を買いたい」と連絡し、買い主への配慮を確かめてみてもよいでしょう。
一括査定サイトで電話応対を確認する
一括査定サイトは不動産売却によく利用されており、複数の不動産会社が一度にわかるため、どのような電話対応になるか短時間で確かめることができます。
話を聞く姿勢は電話のやりとりでもある程度わかるので、信頼度を確かめる判断材料になるでしょう。
不動産売却でトラブルが起きたときの相談先
慎重に契約を進めてもトラブルになるケースはあるため、もしもの場合に備えて相談先も知っておくとよいでしょう。
不動産売却のトラブルは次の相談先に連絡してください。
不動産会社の営業責任者
担当者レベルでは解決しないトラブルの場合、営業責任者へ直接相談してください。
悪意や怠慢によるトラブルはすぐに対処してくれるので、不必要に問題が大きくならず、短期間の解決も期待できます。
不動産会社のお客様窓口
事業規模が大きな不動産会社であれば、お客様窓口や相談窓口などを設置しています。
基本的にはサービスの品質向上を目的としているため、問い合わせの内容は慎重かつ丁寧に扱われます。
担当者やその上司に直接聞きにくい事情がある場合は、お客様窓口を積極的に利用しましょう。
宅建協会などの相談窓口
各都道府県には宅建協会の相談窓口があり、無料で利用できます。
宅建業者だけではなく一般消費者の相談にも対応しているので、不動産売却でトラブルが発生した場合は連絡してみましょう。
また、不動産売却に関する相談は消費者センターや国民生活センターでも受け付けています。
参考:
宅建協会相談窓口(宅建協会)
消費者センター等(国民生活センター)
行政機関への相談
国土交通省では全国に地方整備局を設置しており、宅地建物のトラブルにも対応しています。
また、各都道府県にも不動産に関するトラブルの相談窓口があるため、総合窓口で連絡先を確認しておくとよいでしょう。
弁護士や司法書士などの専門家へ相談
不動産売却のトラブルは士業にも相談できるので、専門分野に応じた相談相手を知っておくとよいでしょう。
売り主と買い主の個人的なトラブルには弁護士、不動産登記に関わる問題は司法書士、土地や建物には測量士や土地家屋調査士など、各分野の専門家がいます。
税金に関する問題は税理士も対応してくれるので、各士業が在籍する法律事務所であれば、複雑な問題も1ヶ所で解決できます。
まとめ
不動産売却には専門的な知識が必要であり、いわゆる業界用語や専門用語も飛び交うため、不慣れな方には何のやりとりかわからない場合もあります。
聞いたことがない法的根拠を持ち出される場合もありますが、「法律だから仕方ない」と無理に納得せず、わからないことは必ず聞いて回答を得るようにしてください。
ほとんどの不動産会社は売り主や買主と真摯に付き合い、希望に沿った売買の実現に努力していますが、不幸にして一部の「例外」に遭遇するケースもあります。
取引金額の大きい不動産売却はトラブル発生時の損害額も大きくなるため、信頼できる不動産会社や困ったときの相談相手を見つけることが重要なポイントになります。