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相続不動産の売却にかかる税金と節税のための特例まとめ

この記事でわかること

  • 相続した不動産を売却するまでには、3種類の税金がかかることがわかる
  • 売却時の税金計算で、取得費や取得の開始日に注意しないと損することがわかる
  • 相続不動産の売却には、大きく節税できる可能性がある特例などを利用できることがわかる
  • 売却するのが自宅なら、さらに節税できる5種類の特例を利用できる可能性があることがわかる

不動産を相続したものの使う予定がなく売却するときや、売却した資金で買替えるときは、一般的な不動産売却とは違い、3種類の税金がかかります。

また、税金を計算するときに、取得費や取得日に注意しないと、思わぬ損をすることもあります。

一方、相続不動産を対象とする特別な控除などがあり、大きく節税できる可能性があります。

さらに、自宅として利用していた場合に節税できる特例も用意されています。

知らなければ、多額な税金を支払うことになりかねません。

まとめて紹介しますので、利用できる特例がないか確認して、賢く節税しましょう。

相続不動産を売却するまでにかかる税金は3種類

かかる税金は3種類です。

故人の遺産を譲り受けるときは、相続税の対象です。

譲り受けた不動産は登記が必要ですが、このときは登録免許税がかかります。

また、登記した不動産を売却する際は、譲渡所得税と住民税がかかります。

譲り受けるときに相続税

故人の財産は、通常、遺言や遺産分割協議によって、相続人などが譲り受けることになります。

譲り受けた財産は相続税の対象で、譲り受けた方が税金を支払わなければなりません。

ただし、課税の対象になる金額次第で、必ず課税されるわけではありません。

税金がかかるかどうかの判断基準

譲り受けた財産の全てが課税の対象になるわけではありません。

・対象の財産

遺産も、相続税の対象になるものとならないものがあります。

対象となる財産は、3種類です。

故人が保有していた本来の財産に加え、故人が亡くなる以前の3年間に贈与した財産も対象です。

なお、これらには、預貯金や不動産などのほか、営業権や特許権、著作権などの権利も含まれます。

さらに、生命保険金の受取や退職手当金など、故人の死によって発生する受取も財産とみなされます。

・課税の基準額

対象になる財産からは、死亡によって発生する財産についての非課税分、負債、さらに葬式費用を差し引き、「課税の基準額」が決まります。

・基礎控除

課税の基準額には一定の控除枠があり、その額を超えるかどうかで申告と納税が必要か不要かを判断することができます。

この枠は、「基礎控除」と呼ばれます。

控除額は、定額分と相続人の員数に応じて増額される分を合計して計算します。

計算式で表すと「一律3千万円+一人当たり600万円×相続人の数」です。

なお、相続放棄した人がいる場合でも数に含めて計算します。

この基礎控除は、「課税の基準額」から差し引かれるため、実際に課税されるかどうかは残りの額次第ということになります。

課税の基準額 - 基礎控除 < 0 

基礎控除よりも少なければ、税金はなく申告も必要ありません。

課税の基準額 - 基礎控除 > 0

基礎控除より多い場合は、相続する一人一人について利用可能な控除を差し引きます。

このため、最終的に税金がかかるかどうかは、個人個人で異なります。

税金が発生する場合は、申告して税金を納めなければなりません。

税率

相続税は、相続する額に応じて累進的に高くなります。

なお、税額を計算する際にも控除が設けられています。

税率は、財産を譲り受ける一人一人の課税額によって決まります。

それぞれ利用できる特別な控除もありますから、それらを全て加味した上で、税率を当てはめます。

個人個人の課税額に対する税率を確認しておきましょう。

特別な控除が利用できない場合は、当てはめて計算することができます。

課税価格税率控除額
1,000万円以下10%
3,000万円以下15%50万円
5,000万円以下20%200万円
1億円以下30%700万円
2億円以下40%1,700万円
3億円以下45%2,700万円
6億円以下0%4,200万円
6億円超55%7,200万円

申告と納税

税金が発生する場合は、相続開始から10カ月以内に申告と納税をしなければなりません。

申告書には、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍謄本や相続人の戸籍謄本、遺言書あるいは遺産分割協議書などの必要書類を添付する必要もあります。

名義を変更するときに登録免許税

遺産の分割が終われば、譲り受けた財産の権利を確保するために、名義変更を行います。

不動産の名義変更は、相続登記を法務局に申請しなければなりません。

この登記手続きの際に、不動産の価値に応じた登録免許税がかかります。

税率

不動産の名義変更にかかる登録免許税は、不動産の価値に応じて変わってきます。

・不動産の価値

不動産の価値は、市区町村から通知される「固定資産税評価額」が基準です。

この評価額は、納税通知書の中に記載されています。

市区町村役場で、「固定資産税評価証明書」として有料で発行してもらうこともできますが、故人の戸籍謄本や、申請者と故人との関係が分かる戸籍謄本などの提出を求められます。

・税率

評価額の0.4%が税率です。

税額は、「固定資産税評価額 × 0.4%」で計算します。

登記を依頼すれば別途費用

相続登記を自分で行うことも可能ですが、必要書類をそろえるのにかなり手間暇がかかります。

申請手続きには、亡くなった方の出生から死亡までの戸籍、遺言書あるいは遺産分割協議書が必要です。

協議書は、相続人すべてが実印を押し、それぞれの印鑑登録証明書も必要です。

また、相続人全員の戸籍謄本などの必要書類も準備しなければなりません。

これらの書類を不慣れな方が行う場合は、かなり手間がかかります。

自分で始めても途中で断念される方が多く、司法書士など専門家に依頼することがおすすめです。

この場合は、手数料が別途かかります。

司法書士に依頼する場合の手数料は、証明書などの取得や交通費などの実費も含め、5万円~10万円程度が相場です。

売却した翌年に譲渡所得税と住民税

相続した不動産を売却するためには、相続税の申告と納税、名義変更を完了していなければなりません。

不動産を売却したときは、翌年の確定申告で「譲渡所得税・住民税」がかかります。

税額の計算

売却して出た利益は、譲渡所得に該当します。

このため、翌年に確定申告を行う必要があり、所得に応じて譲渡所得税と住民税が課されます。

譲渡所得税・住民税は、取得時から売却時までの値上がり分に対して得られる利益を対象としています。

売却収入から、不動産を取得した費用や、売却までにかかった費用を差し引いた譲渡所得が、利益としての課税対象です。

計算式では次のように表すことができます。

「譲渡所得」=「 【収入として】譲渡価格 -( 【必要経費として】取得費 + 譲渡費用 ) 」

取得費

必要経費のうち取得費は、不動産の購入代金や購入時の仲介手数料、相続登記費用などの合計です。

建物の場合は老朽化していきますので、一定の方法で計算した「償却費相当額」を差し引きます。

なお、先祖代々の土地などの場合は、購入した代金が分からないことが通常です。

このように取得費が不明な場合には、便宜上、譲渡価格の5%分を充てることができます。

譲渡費用

必要経費のうち譲渡費用は、売却の際の仲介手数料や測量費など、売却するために要した費用の合計です。

税率

譲渡所得税と住民税の税率は、2種類あります。

所有していた期間が5年より長いか、5年以下かで使い分けられます。

基準になるのは、売却した年の1月1日時点です。

所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、5年以下の場合は「短期譲渡所得」として区別され、長期の税率が低く設定されています。

  • ・所有期間5年超の長期譲渡所得の税率:20.315%(所得税15.315%、住民税5%)
  • ・所有期間5年以下の短期譲渡所得の税率:39.63% (所得税30.63%、住民税9%)

売却時の税額を計算する際の注意点

譲渡所得税の計算では、取得時の価格が不明な場合に5%として当てはめることができますが、この場合は高い税額になりがちです。

また、所有期間に応じた2種類の税率のうち、どちらかを乗じて計算しますが、この際には所有がいつから始まるかを押さえておく必要があります

取得費5%なら95%に税金がかかる

売却した不動産の購入価格が不明な場合、売った価格の5%を充てることができます。

ただし、この場合、故人が取得した時期が10年前でも50年前でも、リノベーションなどを施してあったとしても、購入費用は売った額の5%扱いです。

また、相続した方の登記費用を加算することはできません。

つまり、逆の捉え方をすれば、売った価格の95%に税金がかかることになります。

例えば、売れた価格が3,000万円で、売却の仲介手数料や測量費などで200万円かかったとします。

取得費は、取得時の価格が不明な場合の5%を当てはめ150万円です。

譲渡所得は、計算式に当てはめると2,650万円です。

譲渡所得 = 譲渡価格  -(取得費  + 譲渡費用)
= 3,000万円 -(150万円 + 200万円)
= 2,650万円

5年超の税率を当てはめると、約538万円です。

譲渡所得税 = 譲渡所得  × 20.315%
= 2,650万円 × 0.20315
= 約538万円

つまり、3,000万円で売れた相続不動産には、約538万円もの高額な税金がかかります。

なお、昭和28(1953)年1月1日以後に取得した不動産については、不明な取得費に5%を当てはめることが強制ではありません。

この内容については、次の「相続不動産の売却には特例を使って賢く節税を」で紹介します。

取得日は相続した日ではなく、故人が取得した日

2種類の税率のうち、どちらを適用するかの判断基準になるのは取得日です。

売った年の1月1日時点で、5年以下か5年超過を判断します。

通常の不動産取得であれば、所有者が取得した日となりますが、相続不動産の場合は、故人が取得した日になるため注意してください。

通常であれば、5年超の長期譲渡所得税率に該当すると考えられます。

相続不動産の売却には特例を使って賢く節税を

相続した不動産の売却までには3種類の税金がかかります。

特に、故人が手に入れた当時の取得費が分からない場合は、高額な譲渡所得税がかかる傾向にあります。

しかしながら、相続不動産の売却では、大きな節税が可能な特例などが用意されています。

当てはまるかどうか確認して、賢く節税しましょう。

相続してから3年10カ月以内の特例

故人がなくなった日から一定期間内に売却した場合に、要件に当てはまれば、不動産の相続税相当分を差し引ける特例と、3,000万円まで税金がかからない控除の特例が使えます。

3年10カ月までに売却すれば、「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」と「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」が利用できます。

それぞれ、「取得費の加算特例」、「空き家売却特例」と、略して呼ばれることが一般的です。

取得費の加算特例

要件は、①不動産を取得して相続税を支払った方が、②故人が死亡した日から3年10か月以内に、③取得した不動産を売却することの3点です

要件に該当する場合は、納めた相続税のうち、売却不動産に関する金額分を、譲渡所得を計算する際の取得費に加算できます。

つまり、譲渡所得を少なくすることができるわけです。

「譲渡所得 = 譲渡価格  -( 取得費  + 譲渡費用 ) - 不動産分の相続税」

なお、不動産分の相続税は、譲り受けた財産総額に対する不動産の割合として計算します。

「不動産分の相続税 = 相続税 × 不動産の相続税評価額 ÷ 譲り受けた財産の総額」

空き家売却の特例

要件は、家屋の建築時期、居住者、売却時期、売却金額、購入者の5点に設けられています。

空き家に該当するのは、①昭和56(1981)年5月31日以前に建築された戸建住宅で、②死亡直前の居住者が故人だけで、③死亡後3年目の12月31日までに売却し、④売却額が1億円以下の家屋です。

また、購入者が親子や夫婦、生計が同じ親族など、特別の関係にないことも要件です。

なお、区分所有建築物、つまり分譲マンションは対象外です。

要件に該当する場合は、譲渡所得から最大3,000万円の特別控除を差し引くことができます。

「譲渡所得 = 譲渡価格  -( 取得費 + 譲渡費用 ) - 最大3,000万円の特別控除」

不明な取得費に売却価格の5%を使わない合理的な計算

購入価格が不明な不動産の場合、取得費として売った価格の5%を充てることができますが、税金が高くなりがちです。

ただし、昭和28(1953)年1月1日以後に取得した不動産については、不明な取得費に5%を当てはめることが強制ではありません。

したがって、取得した時の契約書などが見つからずに実額が不明な場合でも、代替する方法があります。

証拠資料や根拠となる資料に基づく価格、または、合理的な算出方法によって求めた価格であれば、取得費として認められます。

例えば、故人の通帳の出金履歴や取得時のパンフレットといった、価格を証明できる、あるいは計算の根拠となる資料があれば、利用できます。

また、建物の場合は国税庁の「建物の標準的な建築価格表」を、土地の場合は(一財)日本不動産研究所の「市街地価格指数」を利用して、取得費を計算する方法も認められます。

相続不動産が自宅なら、売却時にさらに節税できる

先に紹介した3つの特例は、相続後の居住者について特別な要件がありません。

しかしながら、売却時に自宅として使っていた場合は、要件さえ合えば、さらに別の特例を利用することが可能です。

自宅としての要件

相続した不動産が「自宅の売却」として認められるためには、一定の要件があります。

税務上、自宅は、「居住用不動産」または「マイホーム」と表現されます。

自宅は、主として居住している、または、居住しなくなった日から3年目の年末までの家屋が対象です。

自宅建物を取り壊した場合は、自宅に該当する住宅を取り壊した日から1年以内に、敷地の売却契約を結んだ場合が対象です。

また、所有者が転勤など単身赴任で居住していないものの、配偶者などが居住している自宅も対象になります。

自宅を売ったときの特例

自宅を売却した場合、譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。

相続した方が故人と同居していた場合や、相続後に居住した場合などが該当します。

自宅を売ったときの軽減税率の特例

相続後に10年以上居住した自宅を売却する際に、譲渡所得が3,000万円より大きい場合は、6,000万円を限度として、超えた部分にかかる税率が軽減されます。

通常は長期の所得率20.315%ですが、14.21%に軽減されます。

また、「自宅を売ったときの特例」の3,000万円特別控除と、併せて利用できます。

特定の自宅を買い換えたときの特例

特定の自宅、つまり、相続後の所有期間が10年を超えている自宅を売却し、新たに自宅を買い替えると、売却から得られた利益にかかる税金を先延ばしにすることができます。

なお、買い替えた自宅を将来売却したときに、先延ばしにした税金がかかることになります。

自宅を買換えた場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例

相続後に居住している自宅を買い替え、自宅の売却で損が出た場合には、3年間にわたって、同じ年の給与所得や事業所得などと相殺できます。

会社員を例にとれば、給料から源泉徴収されている税金の還付を受けることができます。

また、住宅ローンが残っている「特定の自宅」の売却によって損が出た場合も、自宅の売却で損が出た時と同様、ほかの所得と相殺できます。

この「特定の自宅」の場合は、買換えである必要はありません。

まとめ

相続した不動産を売却するときは、譲渡所得がかかります。

譲渡所得は、売却代金から必要経費を差し引いて、控除があればさらに差し引いて求めます。

したがって、必要経費と控除が大きければ、その分大きく節税することができるわけです。

そのためには、必要経費のなかの取得費と、控除できる特例をどれだけ多く利用できるかがカギになります。

見逃しても、税務署が節税できる方法を積極的に教えてくれるわけではありません。

記事中で照会したそれぞれの特例を詳しく知るには、国税庁のタックスアンサーで確認することをおすすめします。

自分が利用できるか判断が難しい場合は、税務署や税理士に相談することも検討しましょう。

なお、税理士の報酬は、売却価額に応じて10万円~30万円、さらに高額になるケースもあります。

依頼したい場合は、見積りをとってから決めるようにしましょう。

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