不動産売却時の分離課税とは?計算方法・節税方法について
この記事でわかること
- 分離課税とは何かがわかる
- 分離課税の計算が自分でできる
- 不動産売却時にかかる税金のメリットがわかる
不動産売却時に発生した売却益については、利益に応じて所得税が課税されます。
所得税には総合課税と分離課税とがあり、不動産売却益に対する課税方法は分離課税で計算されます。
総合課税は様々な所得を合計して所得税を計算するのが難しく、なかなか一般人では計算できません。
しかし、分離課税は比較的所得税計算がしやすい課税方法です。
そのため、不動産売却時にはどのくらいの所得税が課税されるのか、自分自身で計算することが可能です。
本記事では分離課税とは何か、分離課税である不動産売却時に課税される所得税などについて解説します。
記事を最後まで読み進めていただければ、分離課税である不動産売却時に課税される所得税についての知識が得られ、自分自身で譲渡所得税を計算できるようになります。
目次
不動産売却で得た所得は分離課税になる
不動産売却で得た所得は、給与など他の所得と分けて計算されます。
この計算のことを分離課税と呼びます。
本章では、分離課税について解説します。
そもそも分離課税とは
税金の課税方法には2つの種類があり、分離課税はそのうちの1つです。
具体的な課税方法は次のとおりです。
- 総合課税
- 分離課税
分離課税は、確定申告で申告された所得を他の所得と分け、分離された所得に独自の税率を掛ける課税方式です。
一方、総合課税は給与や株などの所得を合計し、合計した所得に税率を掛ける課税方式です。
分離課税がある理由
総合課税と分離課税に分けられている理由は、金額が大きい種類の所得まですべて合算してしまうと、翌年の所得税額がとてつもなく高額になってしまうからです。
総合課税の場合、所得税率は所得が増えるごとに税率が上がるという累進課税制度を取っています。
そして、累進課税制度により、税率は最大で45%課税されます。
そのため、金額が大きくなりやすい所得の種類に関しては、別の計算方法で所得税を計算することになっています。
不動産売却で得た所得は分離課税
不動産売却で得る所得は金額が大きくなりやすいため、分離課税として所得税が課税されます。
不動産売却で分離課税される所得税は、譲渡所得税です。
もし不動産売却で得た所得が総合課税だった場合、所得税の最大税率である45%に到達してしまう可能性が高くなります。
このようなことにならないよう、不動産売却で得た所得は分離課税として扱われます。
分離課税の計算方法
不動産売却で得た所得は分離課税となります。
分離されて計算できるため、比較的計算が楽にでき、計算方法が分かれば不動産売却をして課税される譲渡所得税が計算できます。
本章では、分離課税される譲渡所得税の計算方法について解説します。
譲渡所得の計算
譲渡所得税の金額を計算するには、まず譲渡所得がどのくらい発生したのか計算しなければなりません。
譲渡所得の計算方法は、次のとおりです。
譲渡所得 = 収入金額 -(譲渡費用 + 取得費)
なお、各単語の意味は次の表のとおりです。
項目 | 内容 | 具体例 |
---|---|---|
収入金額 | 不動産を売却して手に入れた金額 | 不動産売却代金 |
譲渡費用 | 不動産売却代金 | 仲介手数料、登記費用、解体費用、印紙代など |
取得費 | 売却した不動産を購入したときにかかった費用 | 不動産購入代金、仲介手数料、登記費用など |
譲渡所得税の計算
譲渡所得が計算できたら、次に譲渡所得税を計算します。
譲渡所得税の計算方法は次のとおりです。
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
譲渡所得税の税率は次の表のとおりです。
所有期間 | ||
---|---|---|
長短区分 | 短期譲渡所得 | 長期長期譲渡 |
所有期間 | 5年以下 | 5年超 |
税率 | 39.63% (内訳 所得:30.63%、住民税:9%) | 20.315% (内訳 所得:15.315%、住民税:5%) |
(参照元:国税庁)
なお、所有期間の計算方法が特殊な算定方法のため、注意が必要です。
具体的には次のような考え方で、所有期間を算定します。
不動産を売却した年の1月1日現在で所有期間5年以下なら短期譲渡所得、5年超えなら長期譲渡所得として判定されます。
不動産売却時にかかる税金のメリット
不動産売却時に課税される譲渡所得税は金額が大きくなりやすいため、各種控除や特例が用意されています。
また、控除や特例以外にも所得税を抑える方法もあります。
本章では、不動産売却時に課税される譲渡所得税を抑える方法について解説します。
長期譲渡所得になるまで売却を待つ
前述したように、譲渡所得税の税率は、短期譲渡所得と長期譲渡所得とでは大きく異なります。
そのため、不動産売却を少し待てば短期から長期になるという場合には、長期になるまで不動産売却を控えたほうがよいでしょう。
短期譲渡所得は税率が39.63%と高く、長期譲渡所得の税率は20.315%です。
短期と長期では税率の差が約19%もあります。
もし譲渡所得が1,000万円なら、短期と長期の譲渡所得税は約190万円の差が出てしまうということです。
居住用財産の3,000万円控除を利用する
居住用財産の3,000万円控除とは、一定条件を満たしたときに譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。
居住用財産の3,000万円控除を利用できる条件は次のとおりです。
- 下記(1)~(4)のいずれかを満たす自宅であること
- 売却物件の買主が親族や夫婦などの特殊な関係ではないこと
- 自宅を売却した年の前年もしくは前々年に3,000万円の特別控除か、マイホームの譲渡損失が出た場合の損益通算、損失の繰越控除の特例などの特例の適用を受けていないこと
- 売った年やその前年、前々年にマイホームの買換えや交換の特例を受けていないこと
- 売却した自宅に関連し収用等の特別控除など特定の特例の適用を受けていないこと
- 災害によって売却する場合には、災害により空き家にした日から3年目の年の12月31日までに売却すること
(1)現在主に住んでいる自宅であること
(2)転居済みの場合には転居した後3年目の12月31日までに売却すること
(3)(2)の条件を満たした上で、土地売買契約締結が解体してから1年以内で、その土地を引き渡しまで賃貸などにしていないこと
(4)単身赴任をしている場合は配偶者が住んでいる住宅を売却すること
居住用財産の3,000万円控除が利用できれば、譲渡所得3,000万円までは無条件で譲渡所得税が課税されなくなります。
そのため、居住用財産の3,000万円控除の利用要件を満たす場合は、必ず確定申告で利用を申請しておきましょう。
10年超えの軽減税率の特例を利用する
10年超えの軽減税率の特例とは、一定条件を満たしたときに譲渡所得税率が14.21%まで下がる特例制度です。
10年超えの軽減税率の特例を利用できる条件は次のとおりです。
- 所有年数が10年を超える自宅とその自宅の敷地を売却すること
- 転居して空き家になっている場合には空き家になってから3年目の12月31日までに売却すること
- 家屋解体後の売却の場合には以下の(1)~(3)の条件をすべて満たす必要があります。
- 売却した年の前年、前々年に10年超所有軽減税率の特例の適用を受けていないこと
- 売却物件の買主が親族や夫婦などの特殊な関係ではないこと
- マイホームの買い換えやマイホームの交換の特例やマイホームの譲渡損失についての損益通算、繰越控除の特例などの特例を利用していないこと
(1)土地売買契約日から自宅を解体した日まで1年以内に締結されること
(2)自宅に住まなくなった日から3年目の12月31日までに売却すること
(3)自宅を解体してから土地を貸す、事業用として使用していないこと
10年超えの軽減税率の特例が利用できる所有期間10年の算定方法は、短期譲渡所得・長期譲渡所得の所有期間算定と同じ方法であることには注意が必要しなければなりません。
なお、居住用財産の3,000万円控除と10超えの軽減税率の特例とは併用して利用可能です。
そのため、どちらの制度も利用できるのであれば、確定申告で両制度の利用を申請しましょう。
まとめ
不動産を売却したときに課税される譲渡所得税は分離課税で計算される税金です。
分離課税方式で課税される税金は、総合課税される税金よりも計算しやすく、計算方法がわかれば自分自身で計算できます。
不動産売却時に課税される譲渡所得税も計算方法を知っていれば、自分自身で計算できる税金です。
不動産売却時にどのくらい手元にお金が残るのか確認するときには、譲渡所得税額も計算しなければならないため、譲渡所得税の計算方法を理解しておくとよいでしょう。
どのくらいの税金が課税されるのか、あらかじめ把握しておくことで手残り金額がわかり、不動産売却後に必要な支払いなどに対応できます。