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【法人の不動産売却は消費税に注意】個人との違いから税金や経費の仕分け・処理方法のまとめ

この記事でわかること

  • 不動産売却時における個人と法人の違いがわかる
  • 法人の不動産売却にかかる税金がわかる
  • 不動産売却時の消費税は法人特有であることがわかる
  • 法人が不動産売却するときの経費の仕訳・処理方法がわかる

法人が不動産を売却する場合、個人の場合とはかかる税金が異なるため、会計処理も異なります。

法人の利益や税金を知るには、売却利益にはどんな税金がかかるか、売却日がいつか、土地と建物それぞれの価値がいくらかなどを把握しなければなりません。

また、個人の不動産売却では気にすることのない、消費税の扱いにも注意しなければなりません。

法人の場合、課税事業者なら消費税を納付する義務があるため、消費税の対象になる不動産を判断して、適切に仕分ける必要があります。

以下では、不動産の売却における個人と法人の違いや、法人が不動産を売却する際の税金とその特徴、また、消費税の扱いについて紹介します。

さらに、法人が不動産を売却した際の仕分けや処理方法も、まとめて紹介します。

不動産売却時における個人と法人の違い

不動産売買において、個人と法人とでは、税金の課税方法や会計処理の仕方が異なります。

個人では、それらの方法が固定されて選択肢がないのに対し、法人の場合は、節税も可能な選択肢があることが特徴です。

個人は分離課税、法人は一括して会計処理

個人の場合は、収入の内容によって10種類の所得に分けて計算します。

不動産売却で得た個人の利益は譲渡所得に分類され、他の所得と合算されない「分離課税」によって税が課されることになります。

一方、法人の場合は、不動産売却で得た利益も、事業から得た利益などと共に会計処理を行い、一括して法人税の課税対象になります。

法人が不動産売却を行った場合、売却に関する収入や費用は、他の収支と合算して利益を計算することになる点が、個人と最も異なる特徴です。

法人の場合、売却日は引渡し日のほか売買契約締結日でも可

不動産売却では、売却代金の全額支払いと同時に、不動産の引き渡しを行うことが一般的です。

個人の場合は、通常、この引渡日を売却日と考えます。

一方、法人の場合も、個人と場合と同様、原則として引渡日を売却日とするものの、売買契約の締結日を売却日としてもよいことになっています。

したがって、売買契約日と引渡日が複数の事業年度にまたがっている場合には、売却をどちらの年度にするかによって会計処理や所得、結果的は税額が異なることになります。

他部門における収支の状況などを考慮して、有利な年を選択して申告できるわけですから、法人にとっては大きな魅力です。

法人の不動産売却にかかる税金

法人の場合、不動産の売却で得た利益は、他の事業所得と合算したうえで法人税の課税対象となります。

不動産売却の収支は、法人税を計算する際にどのように税額に関わっていくのか、確認していきましょう。

他の利益と合算して課税

個人の場合、不動産売却で得た利益は、譲渡所得として他の所得とは分離して課税されます。

譲渡所得に対しては、所有していた期間により2種類の税率が設定されています。

税率は、5年の所有期間で区分され、売却した年の1月1日時点で5年以下なら、短期譲渡所得として税率39.63%が、5年超なら長期譲渡所得として税率20.315%が課されます。

これに対して、法人の場合、不動産売却で得た利益は、法人全体の利益と合算した総利益額に対して、法人税が課されることになります。

このため、不動産売却以外の利益に損失が出ているような場合は、不動産売却による利益を相殺することができることにもつながります。

ちなみに、法人税率は、資本金1億円以下の法人の場合、課税所得が年800万円以下部分に15%、課税所得が年800万円を超える部分に23.2%かかります。

単純に比較すると、法人税率の方が、個人の短期譲渡所得税率よりも低いことがわかります。

ただし、個人と法人のどちらが有利かについては、税率だけで比較することはできませんのでご注意ください。

法人の不動産売却にかかる税金の特徴

法人の場合は、法人税の対象として、不動産売却の収支もまとめて会計処理することから、個人と場合とは異なる特徴が生まれます。

売却益を圧縮できる特別な控除なし

個人がマイホームを売却した場合は、譲渡所得の課税対象額から、最大3,000万円の控除を受けることができる特例があります。

法人の場合、このような特別な控除はありません。

ただし、これから紹介するように、不動産売却以外のマイナス利益と相殺することや、売却損を他の利益によって補填することができます。

売却益は損益通算できる

個人の場合、不動産の売却利益は、他の事業所得や給与所得などと分離して税金が課されます。

したがって、事業所得が赤字の場合でも、不動産の売却で得た利益があれば、譲渡所得税は事業所得の額とは無関係に課されます。

一方、法人の場合は、不動産の売却利益以外の所得と相殺して、課税対象となる所得の総額を減らすことが可能です。

これを、損失と利益について全体を通して計算する、つまり、通算するとの意味で、「損益通算」と呼びます。

法人では、ある部門の所得が赤字であれば、不動産の売却利益によって穴埋めし、不動産の売却利益に対する課税額を減らすことができるのです。

個人でも、特別な不動産売却に該当する場合にだけ認められる税務処理の方法ですが、法人では一般的な会計処理の方法です。

売却損は「固定資産売却損」として計上

採算の低い不動産を売却するような場合は、必ずしも売却益が得られるとは限らず、むしろ売却経費がかさんで赤字になる場合もあります。

個人の場合では、分離課税ですから、ほかの所得で穴埋めして課税額を減らす会計処理はできません。

一方、法人の場合は、不動産を売却したら「固定資産売却損」として計上できるため、他の課税所得額を減らすことにつながります。

不動産売却時の消費税は法人特有?!

不動産の売却でも、建物については消費税が発生しますが、個人の場合は、売却で消費税分を受け取っても非課税です。

一方、消費税の課税事業者となっている法人の場合は、売却で受け取った消費税についても納付義務が生じます。

消費税が発生するのは建物だけ

不動産の売買でも消費税が発生しますが、土地の取引は非課税です。

このため、不動産の売却では、建物についてだけ消費税がかかることになります。

土地と建物を同時に売買する場合に、別々に金額を提示することは少なく、合計金額だけが契約書に記載されるケースも珍しくありません。

このような場合でも、消費税額が記載されていれば、それは建物についての消費税ですから、建物価格を逆算することができます。

合計金額から、逆算して求めた建物価格を差し引けば、土地の価格が判明します。

たとえば、合計額が5,000万円で、消費税額が150万円の場合を考えてみましょう。

消費税率10%で消費税額が150万円であれば、逆算すると建物価格は1,500万円です。

建物価格 = 消費税額  ÷ 消費税率
=  150万円 ÷  10%
=  1,500万円

したがって、土地価格は、合計金額5,000万円から建物価格1,500万円を差し引いた、3,500万円であることがわかります。

法人が不動産売却するときの経費の仕訳・処理方法

法人の場合、不動産の売却に関する収支は、他の収支と合算して処理します。

不動産の売却に関する経費には何があって、どう仕訳して処理するのか確認していきましょう。

経費の仕訳

個人の場合、不動産売却の経費としては、取得費と譲渡費用が認められます。

取得費は、売却した土地や建物を購入した時の代金や仲介手数料などの合計額で、建物は経年劣化するため、経過年数に応じて減価償却費相当額を控除します。

譲渡費用は、不動産を売却するための費用で、仲介手数料や測量費など直接要した費用の他、立退料、更地として売却するための建物除却費用などがあります。

これらの経費の中で、通常、最も高額なものは取得費ですが、法人の場合、取得費は固定資産として仕訳を行います。

仕訳された取得費は「帳簿価額」と呼ばれ、土地の帳簿価額は、減価償却がないため取得時価額のまま計上されます。

一方、建物の帳簿価額は、毎年減価償却を行い、経過年数に応じた価額として仕訳されます。

また、不動産を売却する際の仕訳では、土地の帳簿価額はそのまま経費として計上できますが、建物については、売却日までの減価償却が必要になります。

売却価格の仕訳

不動産売却では、建物についてだけ消費税が発生することは、すでに確認したとおりです。

このため、消費税の課税事業者なら、土地と建物を一括して売却する場合でも、土地と建物の売却価格を分けて仕訳し、消費税額と一致させておく必要があります。

売却価格が土地と建物一括で分離されていない場合、内訳を仕訳ける方法として固定資産税評価額を利用するのが一般的です。

この仕訳は、売却価格の内訳を、固定資産税評価額の割合で按分する方法です。

たとえば、売却価格が1憶円、それぞれの固定資産税評価額が、土地3,250万円、建物1,750万円の場合を確認しましょう。

固定資産税評価額の土地と建物の割合を計算すると、土地が65%、建物が35%です。

土地と建物の割合 = 土地の固定資産税評価額  : 建物の固定資産税評価額
=   3,250万円      :    1,750万円
=    65%        :     35%

土地の売却価格は、売却価格の65%であることから6,500万円と計算でき、建物の売却価格は残りの3,500万円となります。

土地の売却価格  =  1億円 ×  65%
=  6,500万円

この結果、消費税額は、建物の売却価格の10%で、350万円と計算できます。

なお、内訳の算出方法は、固定資産税評価額以外にも、地価公示価格によって土地の評価額を計算する方法などもあります。

売却価格の仕訳

法人が不動産を売却したときの売却価格について、具体的な仕訳処理の仕方を確認しましょう。

具体例として、法人Aが所有する不動産を、5,000万円で売却したケースを考えてみます。

契約時に、手付金として、買主から現金により500万円を受領。

残金4,500万円を、買主からの振込みにより普通預金で受領し、同時に不動産を引渡し。

土地の帳簿価額は3,000万円、建物の期首帳簿価額は1,800万円。

建物の、期首から売却日までの減価償却費は50万円。

売却日は、不動産の引渡日とする。

契約時の処理

売却日は、残金支払いと引渡しの日としたため、契約時は手付金の仕訳処理を行います。

受け取った手付金は「前受金」で処理します。

借方借方金額貸方貸方金額備考
現金500万円前受金500万円手付金受取

売却時の処理

売却時には、建物の減価償却を行います。

借方借方金額貸方貸方金額備考
減価償却費50万円建物50万円売却日までの償却額

普通預金への振込で受領した残金は借方へ、土地と建物の帳簿価格は貸方へ記入します。

なお、建物の帳簿価額は、売却日までの減価償却後の1,750万円となります。

貸方を固定資産売却益として、前受金を精算します。

借方借方金額貸方貸方金額備考
前受金500万円土地3,000万円
普通預金4,500万円建物1,750万円
固定資産売却益250万円

なお、不動産会社であれば、購入した不動産は仕入れ、売却した不動産は売上などと仕訳処理することになります。

法人が不動産売却で得た利益を節税する方法


個人のマイホームであれば、3,000万円の特別控除の利用や、所有期間5年超の低い税率の適用などの節税策があります。

一方、法人については、個人のような節税策は利用できないものの、法人ならではの節税策があります。

課税所得の分散

法人の会計処理では、不動産の売却利益を損益通算して、利益を圧縮することが可能です。

たとえば、不動産の売却益を、役員退職金の支給により圧縮する方法です。

創業者の引退などにあわせて不動産を売却し、退職金として支払えば、法人の節税になります。

20年以上勤務した後の退職金なら、受取る側も退職所得控除が利用できることになり、多額の所得税を避けることができます。

新規物件の購入

新規に建物を購入すれば、その減価償却費を計上して利益を減らすことが可能です。

木造や軽量鉄骨など耐用年数の短いものなら、同じ金額の鉄骨鉄筋コンクリート造などに比べ、1年あたりの償却額が大きいため、節税効果は高くなります。

まとめ

法人の不動産売却が個人と最も異なる点は、損益通算にあります。

個人の場合は、所有期間の長短による税率の差異はあっても、通常、他の所得と相殺することができません。

また、売却日も、契約日か引渡日かを選べるなど、不動産売却のタイミングの決め方次第で、売却利益を圧縮することもできます。

さらに、売却損がでるような不動産売却であれば、他の部門の利益が好調な時に売却すれば、他の部門の利益を圧縮できることになります。

このように、法人の不動産売却においては、他部門の収益状況を見極めながら売却のタイミングを決めれば、大きな節税効果が期待できます。

ただし、建物については、減価償却が必要であることや、消費税の対象であることから、仕訳に注意が必要です。

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