土地の境界立会を依頼されたときの注意点【断っても良い?】
この記事でわかること
- 土地の測量時に隣人の境界立会が必要なケースがわかる
- 境界立会を求められたときの注意点がわかる
- 境界確定の立会を拒否されたときの対処法がわかる
土地の所有者が建物を建てるときや土地を売却するとき「土地の境界確定をするから立ち会いをしてほしい」と隣地の所有者に要望することがあります。
境界確定をするための立ち会いというと、「境界で揉めるかも?」「立ち会いは必要なの?」といった疑問がわきますよね。
特に、隣地の所有者と仲が良くなかったり疎遠だったりする場合はなおさらです。
今回は、土地の境界線を決めるための立会いの注意点や、土地の境界確定において起こりがちな隣人とのトラブルについてその対処方法を詳しくまとめました。
目次
土地の測量時に隣人の境界立会が必要なケース
土地に新たに建物を建てるときや土地を売却するときには、その土地の境界をはっきりさせるために測量をしなければなりません。
この測量を境界確定測量といい、隣地の所有者に対して立ち会いの要請をするのは、後々境界についてのもめごとを避けるためです。
境界確定測量は、以下のようなときに必要となります。
- 土地を売却するとき
- 土地に新しく建物を建てるとき
- 土地を相続するとき
境界確定測量の手順・流れ
境界確定測量をする場合、土地家屋調査士に依頼します。
土地家屋調査士とは、土地や建物を調査、測量し、図面の作成や不動産登記を行う専門家のことです。
境界確定測量を依頼された土地家屋調査士は、隣地の所有者に連絡をとり、隣地所有者の立ち会いのもと境界確定をします。
立会にかかる時間は10分〜15分程度です。
確定した境界に境界杭を設置し、図面と境界確認書を作成して、不動産登記を行います。
隣家に土地の測量の立会いを求められたときの注意点
逆に、隣地の所有者から土地の確定測量の立ち会いを求められることもあります。
「その土地に住んでいないからわざわざ行くのが面倒だ」とか「自分の利益にならないから立ち会いたくない」とか思う方もいるかもしれません。
しかし、立ち会うことを拒否すると、利益にならないどころか不利益になってしまうことがあるので注意が必要です。
立会い拒否は訴訟などトラブルに発展する場合がある
境界確定の立ち会いを依頼されたということは、隣地の所有者は、売却や新築・相続といった境界確定をする必要があるということです。
もし依頼された側が断れば、相続税の納税に支障が出たり売却ができなかったりと隣地の所有者に迷惑がかかってしまうでしょう。
場合によっては訴訟に発展してしまうかもしれません。
また、自分が境界確定をしたいと思ったときには、隣地の所有者の協力は望めなくなってしまいます。
境界確定の立ち会いは法律で決まっているものではありませんが、土地を所有している人の義務だと思って快く協力してあげるべきです。
家族の同席や専門家への依頼も検討する
測量の立ち会いが不安に感じるのであれば、家族や専門家に同席してもらいましょう。
測量に立ち会わないと境界が確定できず、測量依頼者や近隣に迷惑をかけます。
しかし、立ち会いでどのようなことをすればよいのか、どのような書類にサインすればよいのか分からず、不安に思う方もいることでしょう。
そのような場合は、測量の立ち会い経験のある親族や専門家に同席してもらうことが大切です。
測量について経験のある人が同席してくれれば、立ち会い時に何をすればいいのかアドバイスをくれるため安心して進められます。
土地の測量時の立会いを隣人が拒否するときの対処法
相続や売却などで境界確定測量の必要があるのに、隣地の所有者と仲が悪く立ち会いに応じてもらえない場合や境界の位置について折り合いがつかない場合は、どうすればよいのでしょうか。
そういった場合には、段階的にいくつかの方法をとることになります。
土地家屋調査士に調整してもらう
境界確定測量は、専門家である土地家屋調査士に依頼します。
土地家屋調査士は、測量・立ち会い・境界杭の設置・図面の作成・境界確認書の作成まで一連の業務を行います。
もし依頼者が隣地の所有者と仲が悪かったり話ができなかったりしても、境界確認の立ち会いについては土地家屋調査士が直接連絡をして、説明・交渉をします。
土地家屋調査士が間に入ることによって、問題なく確認ができる場合も少なくありません。
筆界特定制度を利用する
もともと隣人が境界に不満をもっているケースなど、土地家屋調査士が間に入っても境界確定で合意できないような場合もあります。
そういった場合、筆界特定制度を利用する方法があります。
筆界とは、法務局に登記されている土地の範囲のことをいいます。
筆界特定制度とは、土地の所有者や相続人が筆界特定登記官に対して、土地の境界の位置を特定してもらうよう申し出をする制度です。
筆界特定登記官は、土地の所有者や相続人、隣地の所有者が提出した資料や筆界調査委員の意見を参考にして、最終的に境界を確定します。
土地の所有者と隣地の所有者のどちらか一方でもこの結果に納得できなければ、裁判によって争うことになります。
境界確定訴訟で争う
筆界特定制度で境界確定ができない場合は、調停や裁判によって争うことになります。
土地の境界確定をする裁判のことを「境界確定訴訟」と言います。
境界確定訴訟は古くから行われており、裁判所によって境界線が決定されますが、境界確定に関する法律的な規定がないため特殊な訴訟となります。
所有者、隣地の所有者がそれぞれ原告、被告となりますが、どちらかの言い分が認められるとは限らず、両者の主張とは全く異なった境界線が確定されることもあります。
訴訟になれば和解での決着はできず、判決によって出た境界線が確定となり、それ以降不服申立などはできなくなります。
時間と費用がかかるうえに、土地所有者にとって有利な判決になるとは限らないのが境界確定訴訟です。
測量を入れずに公募面積を使用して売却する方法も
「隣地の所有者の協力が得られないが訴訟まではしたくない」という場合には、公募面積を使用して売却する「公募売買」という方法があります。
登記されている土地は登記簿に表示面積が記載されていますが、この記載されている面積を使うことを前提として売買することを公募売買と言います。
対して、実際に測量した面積を使って売買することを実測売買と言います。
公募売買を行う場合は、トラブルなどのリスクがあるので注意が必要です。
【公募売買のリスク1】買主の認識不足
公募売買を行う場合、契約書には「公簿面積を使用すること」と「実測面積との間に差異が生じても売買代金増減の請求をしないこと」という条項を明記します。
しかし、買主側が公募面積についてあまり理解していないような場合や、また実測面積が公募面積に比べて著しく小さい場合では、トラブルに発展してしまうことがあります。
【公募売買のリスク2】実測面積との差
土地によって公募面積と実測面積に大きな差があることもあります。
公募面積より実測面積が大きい場合、売主側にとっては土地を安い価格で売らざるを得ないので損であるといえます。
また、境界確定測量をしていない土地は、隣地所有者ともめることを予想させるため、買主側に敬遠されがちです。
そうなると売主は土地の価格を下げなければならなくなり、最終的にかなり損をしてしまうことになります。
まとめ
土地の境界確定の立ち会いというと、人によっては拒否反応を示すこともあります。
隣地の所有者とあまり関係がよくない場合には、これ幸いとばかりに拒絶するケースも少なくありません。
多くの場合は土地家屋調査士が間に入ることで隣人も協力してくれるようになりますが、万が一拒絶を続ける場合には、境界確定訴訟や公募売買などの対応策を知っておくと良いでしょう。
ただ、訴訟となると費用も時間もかかりますし、公募売買も損をするリスクがあります。
そういったことを避けるためには、日頃から隣地の所有者と良好な関係を保っておくことが大切です。