土地売却時の測量費用はいくら?どちらが負担する?費用の内訳と相場も解説
この記事でわかること
- 土地売買で測量が必要になるケースがわかる
- 売主と買主のどちらが測量費用を支払うかがわかる
- 土地の測量費用の相場や料金の内訳がわかる
- 土地の測量費用を節約する5つの方法がわかる
土地を売る予定がある場合、売値がいくらになるのか誰もが気になるところです。
土地の値段を決める要素は様々ですが、地積(面積)や形状は特に重要であり、いずれも測量によって明らかになります。
測量では地積や形状、隣地との境界線も明確になるため、買い手も安心して購入できるようになります。
しかし測量にはそれなりの費用がかかるため、ある程度の相場感は持っておくべきでしょう。
今回は土地売却する際の測量についてわかりやすく解説します。
どのような場合に必要になるのか、費用は売主と買主のどちらが支払うのかなど測量の基礎知識を理解できるので、土地売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
目次
土地売却時に測量が必要になるケース
土地の測量には「現況測量」と「確定測量」の2種類があり、隣地オーナー立ち合いのもと、境界(筆界)すべてを明確にするのが確定測量です。
期間は3~4ヶ月程度かかりますが、現況測量よりも精度が高く、隣地オーナーの同意も得ているためトラブルが起きにくい正確な測量図が作成されます。
確定測量がなければ土地を売却できないわけではありませんが、以下のようなケースでは必要になるので覚えておいてください。
確定測量が必要なケース
- 隣地境界が不明確な土地を売却する場合
- 土地を分筆して売却する場合
- 相続によって取得した土地を売却する場合
では上記の土地に測量が必要になる理由や、測量しなかった場合のリスクなどを解説します。
隣地境界が不明確な土地を売却する場合
土地の境界には杭や金属鋲など、眼に見える形で「境界票」が表示されています。
しかし年月の経過によってずれが生じたり、境界票そのものが無くなっているケースも珍しくありません。
このような状態では隣地との境目がわからなくなり、他人が自分の土地を使っていたり、逆に自分が他人の土地を使用しているケースも出てきます。
隣の家のブロック塀が自分の敷地内に建てられていたという例もあり、このままの状態ではまず買い手が付かないでしょう。
現在の所有者はもちろん、買い手としても土地面積や境界線は正確に把握しておきたいので、境界が不明確な土地であれば売却前の測量は欠かせません。
土地を分筆して売却する場合
一定の広さがある土地を分筆(分割)して売却するケースがあり、分筆した土地はそれぞれ登記が必要になります。
従って確定測量を行うことになりますが、大まかな分筆案は所有者側で作成し、その後で土地家屋調査士によって本格的な測量案や分筆案が提示されます。
確定測量にも隣地オーナーや役所の立ち合いが必要ですが、立会人の都合もあるため、期間は3~4ヶ月または1年程度かかる場合もあります。
それなりの費用もかかりますが、どう分筆するかで土地の評価も変わってくるため、売却用に分筆する際にも確定測量は欠かせません。
また、土地家屋調査士は登記手続きも代行できるので、測量から登記申請まで一連の作業を依頼することもできます。
相続した土地を売却する場合
相続によって取得した土地の測量図が古い、または測量図そのものがない場合は、確定測量を行います。
特に相続の場合は、相続税申告の添付書類として測量図が必要であり、現金納付できない場合の物納についても確定測量図が必要になってきます。
また、相続した土地を早めに売却すると、相続財産譲渡の取得費の特例が使えるため、譲渡所得税が軽減されます。
固定資産税の納税額も有利になるので、相続後に売却する予定があれば、確定測量も早めに済ませておくとよいでしょう。
土地売却時の測量費用は基本的に売主が負担
土地を売るために確定測量する際、売主と買主のどちらが費用を支払うのか、法律上に明確なルールはありません。
ただし、測量費用は基本的に売主が負担します。
測量を必要とし、土地家屋調査士へ依頼した人が費用の負担者になると解釈してもよいでしょう。
交渉などによって買主が費用を負担するケースもありますが、売りに出した土地は商品でもあるため、売主負担としたほうが買う側としても安心して購入できます。
また、確定測量図には地積や境界を確定した保証書や仕様書のような意味合いもあるため、測量費用の売主負担は慣例とはいえ合理的といえるでしょう。
土地の測量費用の内訳・相場
個人で測量を依頼する機会はそれほど多くないため、測量費の相場はあまり知られておらず「高い」という先入観だけが先行している場合もあるようです。
また、隣地が官有地なのか民有地なのかによって、測量費の相場は以下のように変わります。
隣地が官有地の場合 | 隣地が民有地の場合 |
---|---|
60~80万円 | 35~45万円 |
参考:法務局
2倍近い費用の差ですが、理由は次のようになっています。
官民境界の測量費の相場
自分の土地に隣接する土地が国や自治体の所有地(官有地)の場合、その状況から隣地境界を「官民境界」と呼んでいます。
身近な例には道路や水路があり、個人の隣地と比べて測量規模が大きくなりやすいため、官民境界の測量費は60~80万円と少々高めの相場です。
また、官有地との境界確定を「官民査定」といいますが、所有者と行政サイドが立ち会って境界確定するため、一般的な測量よりも時間がかかりやすくなっています。
民民境界の測量費の相場
隣接する土地が個人の所有地、つまり民間所有地との境界を「民民境界」と呼んでいます。
官民査定と比べて小規模になりやすいため、確定測量の相場は35~45万円となっていますが、土地の面積や形状によっては高額になるケースもあります。
確定測量の際には隣地オーナーの立ち合いも必要なので、早めに連絡を取り、双方の都合を合わせながら測量することになります。
確定測量したときの費用内訳
官有地と民有地の測量費用は以下のような内訳になっています。
作業工程 | 作業内容 | 費用内訳例 |
---|---|---|
事前調査 | 各種図面調査 所有権調査 事前現地調査 | 62,000円~100,000円程度 |
測量業務 | 現地測量 境界点検証 復元境界標や分筆境界標の設置 | 120,000円~140,000円程度 |
書類作成 | 申請書添付書類作成 不動産調査報告書作成 測量図作成 | 19,600円~49,200円程度 |
官有地境界確定 | 官民地境界協議と確定申請 官民地境界立会い 官民地境界確認書発行 | 61,000円~99,000円程度 |
民有地境界確定 | 民有地境界立会い 民有地境界確認書発行 | 17,400円程度 |
官有地との境界確定には行政サイドとの協議があり、民有地との境界確定に比べて工程数が多いため、測量費用も高めになっています。
土地の測量費用を節約する方法5つ
不動産売却の利益を譲渡所得といい、測量費用が安いほど利益も大きくなります。
測量費用を節約する方法は5つあるので、それぞれ詳しく解説します。
複数の業者を比較検討する
確定測量は土地家屋調査士へ依頼しますが、1社だけの見積もりで判断せずに複数業者の相見積もりを取るようにしてください。
見積りの段階で数千円~数万円の違いが出ることも珍しくはないので、4~5社程度の比較検討は必要になります。
また、売却前提であれば不動産会社から土地家屋調査士を紹介してもらえるケースもあります。
実績や信頼度など、ある程度の予備知識も収集できるので、自分で直接探すのが不安な場合は不動産会社も利用してみましょう。
隣地オーナーとの関係を築いておく
土地の立地条件によっては、複数の隣地オーナーへ立ち合いを依頼する場合もあります。
確定測量は時間がかかるほど費用もかさむので、測量に協力してもらえるよう、隣地オーナーと良好な関係を築くようにしてください。
すでに越境している状態であれば、境界を巡って争いになるケースもあり、最悪の場合は裁判にも発展してしまいます。
正確な境界確定は将来のトラブルを防止する意味もあるため、隣地オーナーにとってもメリットがあることを伝えておくといいでしょう。
買主に測量費負担を交渉する
前半で解説したとおり、売主と買主のどちらが測量費用を支払うかについては法律上の決まりがないため、買主が負担しても何ら問題はありません。
売主負担が世間一般には浸透していますが、売出し前に買主が現れた場合は、測量費を買主が支払うよう交渉してもよいでしょう。
「買いたい」とのニーズが先行しているため、測量費の一部負担は無理なく提案できますが、交渉次第では買主の全額負担も可能になります。
買主の合意を得て確定測量なしで売却する
土地の条件によっては確定測量をしないまま売却するケースもあります。
田舎の土地は面積が広いため測量費も高額になりがちですが、地価が低いことから確定測量すると割に合わなくなります。
そこで、隣接地も自分の土地であったり、住宅とも離れているためトラブルが想定されにくい場合は、買主との合意によって確定測量なしで売却することもあります。
なお、このような場合は登記簿上の公募面積を使って売買します。
確定申告の際には費用に計上する
土地を売った利益には譲渡所得税(所得税+住民税)が課税されますが、測量費は以下のように譲渡費用として控除できるため、税金を抑えることもできます。
測量費そのものを安くする方法ではありませんが、トータルの出費を抑えられるため、申告の際には必ず譲渡価額から測量費を差し引くようにしてください。
まとめ
土地の売却は金額も大きくなるため、些細なことでも後日のトラブルに発展する恐れがあります。
面積や形状が不明確な土地には買い手が付かず、さらに境界を曖昧にしているといずれ隣地オーナーと揉めてしまう可能性もあります。
いずれも確定測量によって回避できるリスクですが、日数もかかり、金額も決して安くはありません。
また、個人レベルでは土地家屋調査士と付き合いがある人も少ないため、どのような事務所に頼めばよいのかわからないというケースがほとんどでしょう。
測量や測量費で悩んだ場合は、まず信頼のおける不動産会社を頼ってみるのがおすすめです。
土地売買のプロですから、十分な実績のある土地家屋調査士を紹介してくれるでしょう。