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土地売却時の仕訳方法とは?仕訳の事例と売却に計上できる費用や税金について解説

土地売却時の仕訳方法

この記事でわかること

  • 土地売却の仕訳方法について個人の場合と法人の場合の違いがわかる
  • 土地・建物を売却したときの具体的な仕訳方法がわかる
  • 土地・建物売却時の諸費用の支払いについて仕訳方法がわかる
  • 投資用物件の売却を行ったときの仕訳の注意点がわかる

個人が今まで居住していた住宅を売却したときには、税務上譲渡所得を確定申告しなければならない場合がありますが、会計帳簿をわざわざつける必要はありません。

しかし、個人事業主が事業用の土地建物を売却した場合や、法人が不動産を売却した場合には、決まったルールに従って会計帳簿に計上する必要があります。

あまり頻繁に生じることではないために、どのように仕訳したらいいのか迷う方も多いのではないでしょうか。

今回は、土地・建物売却時の会計上の仕訳方法について、諸費用を支払った場合の仕訳方法と合わせて詳細を説明します。

事業用の所有不動産を売却するときには、ぜひ参考にしてみてください。

土地売却時の仕訳方法とは?

土地売却の会計上の仕訳方法は、居住用の土地・建物か、事業用の建物か、個人なのか法人なのかによって異なります

個人が自ら住んでいる土地・建物を売却したときには、そもそも会計帳簿自体を作成・保存しておく必要性に乏しいために、特に仕訳の問題は生じません。

個人・法人が、事業用の不動産を売却した場合は、会計帳簿に計上する必要があるために、仕訳の方法が問題となります。

土地・建物は、会計帳簿上は一般的には貸借対照表上の固定資産に該当するために、購入時に資産計上し、売却時には固定資産の売却として会計処理をします。

土地・建物の資産計上や売却時の会計処理のタイミングについては、売買契約時と決済・引渡し時の2種類があります。

どちらを選択することも認められますが、個人の場合は譲渡所得税の短期譲渡所得・長期譲渡所得の税率の違い、法人の場合には、譲渡収益の計上時期にも関わってきますので、慎重に検討する必要があります。

土地・建物の仕入れ、販売を事業として行っている不動産会社にとっては、土地・建物は商品にあたります。

したがって、不動産会社の場合には、土地・建物の購入時・売却時には棚卸資産(商品)の増加、もしくは減少として会計処理をします。

仕訳における固定資産売却損益勘定と簿価について

不動産売却時において利益計上するか損失計上するかは、不動産の売却価額が購入金額を上回ったかどうかではなく、「簿価」を基準として判断します。

「簿価」とは帳簿に計上された価額のことです。

この土地・建物の簿価は、単に不動産の購入価格と同じ金額ではありません。

付随費用の取り扱い

土地・建物を購入したときに支出した費用の中で、以下のように売買に付随して支払った費用については、土地・建物の購入価額に含めて、あわせて固定資産計上する必要があります

例えば、仲介手数料の場合、土地・建物の価格の割合に応じて按分し、各資産項目に含めて計上されます。

  • ・仲介手数料
  • ・未経過分の固定資産税の精算金
  • ・購入に際して支払った土地造成費用・土地改良費用
  • ・賃貸物件等の購入に際して支払った立退料
  • ・建物を取り壊して利用するために購入した土地・建物における建物解体・撤去費用

土地の購入に際して、支払った借入金の利子(つなぎ融資など)、不動産取得税、登録免許税や司法書士報酬などの登記費用などについては、付随費用であっても資産計上せず、個別に費用計上することができます。

減価償却費の計上

また、建物の場合には、使用することによって少しずつ劣化・消耗していくことから、建物の種類に応じて定められた耐用年数に従って「減価償却」を行わなければなりません。

減価償却の方法には、耐用年数に応じて毎年均等額を償却していく「定額法」と毎年同じ償却率を乗じた額を償却していく「定率法」がありますが、建物の場合には定額法によって減価償却費を計上します。

例えば、木造アパートの場合、耐用年数が22年、定額法における償却率が0.046%と定められているために、仮に1億円で購入した新築アパートの場合には、年間4,600千円の減価償却費を計上します。

結果、建物の簿価は、年間4,600千円ずつ減少していくことになります。

一方、土地については、価値の減価という概念がないために、減価償却は行いません。

したがって、付随費用として土地に含めて計上された部分についても、減価償却を行うことはありません。

土地売却に関する費用

土地売却を行うときには、仲介手数料、固定資産税の精算金、印紙税などさまざまな諸費用が発生します。

売主が支払う諸費用についてほとんどは費用計上しますが、具体的に見ていきましょう。

売却時の仲介手数料

不動産売却時には、売買の仲介を依頼した不動産会社に仲介手数料を支払います。

購入時には、付随費用として固定資産に含めて資産計上しましたが、売却時には支払手数料として計上します。

(例)不動産売却時に3,000千円の仲介手数料を銀行振込にて支払った

(単位:千円)

借方貸方
支払手数料3,000普通預金3,000

固定資産税・都市計画税の精算金

固定資産税・都市計画税は、1月1日時点の土地・建物の所有者について、資産の評価額に応じて課税される税金です。

不動産の売買を行うときは、年の途中で所有者が変更されます。

そうであるにも関わらず、一年分の固定資産税・都市計画税 の全額について売主が負担するのは不公平であるとされるため、一年分の固定資産・都市計画税を日割り計算して精算することが通例となっています。

この時売主側の仕訳は、一旦は預り金として計上し、実際に固定資産税を支払った時に預り金を取り崩します。

(例)不動産売却時に固定資産税・都市計画税の精算金として500千円を受け取った。

(単位:千円)

借方貸方
普通預金500預り金500

(例)固定資産税・都市計画税2,000千円を納税した。

(単位:千円)

借方貸方
租税公課1,500普通預金2,000
預り金500

借入の繰上返済手数料

不動産売却の売買代金を、金融機関からの借入の一括弁済に当てた場合、金融機関繰上弁済(一括弁済)手数料を支払う必要があります。

この費用についても、支払手数料として費用計上します。

(例)不動産売却時に150千円の繰上弁済手数料を銀行振替にて支払った

(単位:千円)

借方貸方
支払手数料150普通預金150

抵当権抹消費用

不動産売却の売買代金を、金融機関からの借入の一括弁済に当てた場合、抵当権の抹消費用が発生します。

具体的には、 登録免許税、司法書士報酬 、不動産登記簿謄本の取得費用がかかります。

これらの費用についても、各項目に分けて費用計上します。

司法書士報酬については、源泉所得税が発生するために注意が必要です。

(例)不動産売却時に抵当権抹消費用23,600円(登録免許税2,000円、司法書士報酬20,000円、消費税2,000円、源泉所得税1,000円、謄本費用600円)を支払った。

(単位:円)

借方貸方
租税公課2,600普通預金23,600
支払手数料22,000預り金(源泉所得税)1,000

※消費税は税込経理としています。

その他の諸費用

その他、場合によっては、測量費用、クリーニング費用、建物や残置物の撤去費用がかかることがありますが、費用項目の性質に応じて、支払手数料、業務委託費などの項目で費用計上します。

建物や償却資産の撤去を行った場合において、簿価が残存している場合には除却損を計上しますが、このときに注意しなければならないことは、除却日までの減価償却費を計上することを忘れないことです。

(例)簿価10,000千円の建物を6月30日に撤去した。半年間の減価償却費は230千円だった。

(単位:千円)

借方貸方
減価償却費230建物10,000
建物除却損9,770

※減価償却費の計上方法について直接法による。

土地だけでなく建物がある場合は消費税も加味

土地・建物を同時に売却した場合には、建物の売却価格について消費税が課税されますので、消費税分を考慮して仕訳処理を行います。

税込処理の場合には消費税を含めて計上しますが、税抜処理の場合には、消費税分について受取消費税を計上します。

土地・建物を合わせて売却するときには、土地建物を一括して売出価格を定める場合が多く、土地・建物の価格の割合が決まっていないこともあります。

しかしこのような場合でも、建物部分については消費税がかかってきますので、最終的には土地建物の価格の按分方法を決定する必要があります。

一般的には、固定資産税評価額に従って按分した金額を土地・建物の金額にしたり、土地の実勢価格を算出して全体の金額から差し引いたりすることで価格を決定します。

消費税の計算方法について簡易課税方式を採用している場合はもちろん、原則課税方式を採用する場合でも、金額が高額になってくると消費税だけで相当な額を支払うことになりますので、慎重に決定する必要があります。

不動産を売却した場合の仕訳事例

それでは今まで説明してきた情報を基に、具体的な事例について仕訳処理を考えてみましょう。

仕訳のときに使う勘定科目は、個人事業主の場合と法人の場合とで異なりますので、分けて考えます。

個人が土地を売却したときの仕訳例

個人が事業用の土地を売却したときには、売却した土地の簿価を貸方、受け取った代金の価額を受け取った方法に従って借方に計上します。

土地の場合減価償却の計上はありません。

売買代金と簿価に差額(売却益、または売却損)がある場合には、事業主借、もしくは事業主貸の勘定科目で計上します。

(例)個人事業主が簿価10,000千円の土地を12,000千円で売却した。

(単位:千円)

借方貸方
普通預金12,000土地10,000
事業主借2,000

法人が土地を売却したときの仕訳例

法人についてもう少し複雑な例を見てみましょう。

法人の場合に、売買代金と簿価に差額がある場合には、事業主貸・事業主借ではなく、固定資産売却益もしくは固定資産売却損を計上します。

(例)法人(不動産業者ではない)が簿価10,000千円の土地を8,000千円で売却した。このとき、契約時に手付金として800千円を受け取っており、仲介手数料は240千円であった。

(単位:千円)

借方貸方
普通預金6,960土地10,000
前受金800
支払手数料240
固定資産売却損2,000

契約時に受け取った手付金は、まだ土地の引き渡しがない段階で受け取った金銭であることから、前受け金として計上します。

支払手数料については、貸方に普通預金の減少を計上してもよいですが、上記の通り、まとめて普通預金と相殺して計上しても構いません。

法人が土地・建物を売却したときの仕訳例

次は、土地・建物を同時に売却して、建物について消費税を受け取った場合を考えてみましょう。

下記の事例では、土地については売却益、建物については売却損が発生しているために、固定資産税売却益と固定資産税売却損が同時に計上されます。

(例)法人(不動産業者ではない)が簿価10,000千円の土地を12,000千円で、簿価10,000千円の建物を8,000千円で売却した(消費税800千円)。このとき、契約時に手付金として2,000千円を受け取っており、仲介手数料は600千円であった。

(単位:千円)

借方貸方
普通預金18,200土地10,000
前受金2,000固定資産税売却益2,000
支払手数料600建物10,000
固定資産売却損2,000仮受消費税800

※消費税については税抜処理、建物の減価償却については直接法の場合

投資用物件を売却した仕訳の注意点

投資用の収益物件を売却するときには、固定資産税・都市計画税のほかにも日割り精算する項目がたくさんあります。

例えば、 前払賃料や駐車場利用代金、 携帯電話や BS アンテナの屋上利用料、 自動販売機の土地利用料、広告看板を設置しているときの広告料、などです。

これらについても、日割り精算が必要なものについては精算をし、精算した費用について会計計上する必要があります。

また、特に個人が投資用物件を売却するときには、譲渡所得税を考慮して計上時期を考える必要があります。

個人の場合、売却をした年の1月1日時点において所有期間が5年以内(短期譲渡所得)か、5年を超えているか(長期譲渡所得)によって譲渡所得税の税率が大きく変わってきます。

長期譲渡所得の場合には20.315%(住民税・復興所得税含む)、短期譲渡所得の税率は39.63%(住民税・復興所得税含む)と2倍近くの開きがあります。

売却したときがいつかということは、契約時、引渡し・決済時の2通りの考え方があり、どちらを採用するかは個人に任せられています。

そのため、契約日を含む1月1日時点において5年間を超えるかどうかが微妙であるときには、引渡しを翌年に引き延ばすなどの対策が必要になる場合があります。

投資用不動産の場合、居住用不動産の場合と異なり、特例の適用が少なく、また要件が厳格であるために、譲渡所得の計上については最新の注意を払うべきです。

まとめ

土地・建物を売却したときの会計処理についてはなじみが少ないものですが、処理方法を一度学習すれば、それほど難しいことはありません。

むしろ、確定申告や税務上の処理については、複雑な解釈、評価方法があります。

不明な点については、会計士、税理士などの専門家に相談しながら対応していくことをお勧めします。

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