接道義務とは?例外になるケース・再建築不可の土地への対処法
この記事でわかること
- 接道義務とはなにか理解できる
- 接道義務が設定されている理由を理解できる
- 再建築不可物件の敷地に建築できる条件がわかる
- 接道義務に関して注意しなければいけないことがわかる
土地に建物を建築する際には、接道義務を満たさなければいけません。
接道義務を満たしていない土地は、再建築不可物件といいます。
接道義務には例外があり、仮に道に接していないとしても建築できるケースがあります。
例外を理解すれば、再建築不可物件を有効に活用できることでしょう。
本記事では接道義務とは何か、例外事項、再建築不可物件の対処法について解説します。
接道義務とは
接道義務とは、建物を建てるときに道路に接するように建築するという義務です。
接道義務は建築基準法に定められている義務で、建物を建築する敷地は幅員4m以上の道路に2m以上道路に接していないといけないと規定されています。
また、建築基準法上、道路と認められるには条件があるため、すべての道が道路というわけではありません。
接道義務を果たしていない土地に建っている建物を壊してしまうと、再度建築できなくなります。
接道義務を満たしておらず再建築できない土地を、再建築不可物件と呼びます。
なお、接道と幅員は違う言葉です。
接道とは道に接している敷地の幅であり、幅員は道路自体の幅です。
接道義務が設定されている理由
接道義務が法律で定められているのには理由があります。
具体的には、次のような理由により設定されています。
- 緊急車両の通行を確保するため
- 災害のときの避難路を確保するため
- 無秩序な開発を抑制するため
ここからは、接道義務が設定されている理由について解説します。
緊急車両の通行を確保するため
接道義務がある理由の1つは、緊急車両が通行できないと生活に支障をきたすからです。
緊急車両は車幅が広く、一般的な救急車は1.89m、消防車は2.5mあります。
緊急車両は現場で救護活動や消火活動を行いますが、道幅が4mないと対向車がすれ違えず、二次災害を引き起こしてしまうケースも考えられます。
そのため、道幅が4m以上ないと、活動に支障が出てしまいます。
災害のときの避難路を確保するため
道幅が広くないと災害時に被害が広がってしまうため、一定の幅がある道路に接していないと建築できません。
たとえば火災が起きた場合、道幅が狭いと隣家に延焼して被害が広がります。
また、地震が発生した場合、道路ががれきに埋まってしまい、通行できなくなってしまいます。
このような災害の被害を抑えなければいけないため、建物の建築基準に接道義務を設けているのが理由です。
無秩序な開発を抑制するため
接道義務を設けないと、道に接していない場所にも無秩序な開発が行われてしまい、土地を有効利用できなくなります。
無秩序な開発を繰り返すと道が行き止まりばかりになることや、狭小地が多くできてしまうこともあり得ます。
このような状態になってしまうと土地活用がうまくできなくなるため、建物の建築に接道義務を課しているわけです。
接道義務の例外が認められるケース
接道義務を果たしていないと建物は建築できませんが、例外が認められるケースもあります。
接道義務の例外が認められるケースは、次のとおりです。
- 建築基準法42条2項道路に該当する場合
- 建築基準法43条但し書き道路に該当する場合
- 都市計画区域・準都市計画区外で建築する場合
ここからは、接道義務の例外が認められるケースについて解説します。
建築基準法42条2項道路に該当する場合
建築基準法42条2項道路に該当する場合、接道義務の例外が認められます。
42条2項道路とは、道路としてみなされた道のことであり「みなし道路」といわれています。
みなし道路に該当する道は、次のとおりです。
- 幅が4m未満の道であること
- 建築基準法が適用された時にその道に建築物が立ち並んでいたこと
- 知事や市長の指定を受けた救済措置による道路のこと
上記の条件を満たすとみなし道路とされ、幅が4m未満の道に接していても建物を建築できるようになります。
ただし、みなし道路に接している土地に建物を建築する際には、セットバックをしなければいけません。
セットバックとは、道路後退とも呼ばれ、道路の中心線から2m離した場所からしか建築物が建てられない制限です。
道路中心線は必ず道の真ん中ということはなく、端にあるケースもあります。
道路中心線は道を管轄している自治体に聞けば、どの位置にあるのか教えてくれます。
セットバックにより敷地内のどこまで建物が建てられるのか気になる方は、自治体に確認しにいくとよいでしょう。
建築基準法43条但し書き物件に該当する場合
建築基準法43条但し書き物件とは、建築基準法上の道路に接していない土地で、特定行政庁が建築審査会の同意を得て建築を許可した土地です。
43条但し書き物件として認められる主な条件は、次のとおりです。
- 建築基準法上の道路に接していない
- 敷地と建築基準法上の道路との間に通路として確保できる4m以上の幅の空き地がある
- 通路となる空き地の所有者から通行の許可を取得している
- 建築するのは2階建て以下の専用住宅であること
上記は43条但し書き物件として認められる主な項目であり、許可を取得する特定行政庁や建築審査会によって基準が異なります。
また、43条但し書き物件の建築許可は永年続くわけではなく、1回の建物建築に限ります。
もし許可を得た建物を壊して再建築するときには、再度43条但し書き物件の許可を得なければいけないことには注意が必要です。
43条但し書き物件の許可が下りれば、接道義務を果たしていなくても建物が建てられるようになります。
都市計画区域・準都市計画区外で建築する場合
接道義務は、都市計画区域・準都市計画区域内でしか適用されません。
そのため、都市計画区域・準都市計画区域外で建築するときには、接道義務を果たさなくても建物の建築が可能です。
都市計画区域とは、都市計画法によって定められた区域で市街化を図る地域、抑制する地域などを線引きしたものをいいます。
また、準都市計画区域とは、都市計画区域外で人口が増加することが予測される地域に設定される区域です。
つまり、両区域とも人口を調整するために設けられている区域ということです。
そのため、両区域以外は人口を調整する必要がなく、ある程度自由に建築をすることを可能にしています。
たとえば、山奥の山村などがこれに該当します。
都市計画区域・準都市計画区域外であれば、道路に接していなくても建物を建築できてしまうわけです。
再建築不可の土地に建物を建てる方法
再建築不可の土地には建物を建築できませんが、建てられる方法もあります。
再建築不可物件の土地に建物を建築するための方法は、次のとおりです。
- 建築基準法43条但し書きを利用する
- 隣地を買い取る
- 位置指定申請をする
ここからは、再建築不可の土地に建物を建てる方法について解説します。
建築基準法43条但し書きを利用する
再建築不可物件の隣地が大きな空き地になっている場合は、建築基準法43条但し書きの許可を取る方法がよいでしょう。
43条但し書きは先述の条件を満たしていれば、許可申請できます。
ただし、次の項目には注意しましょう。
- 条件が整っていたとしても必ず43条但し書きの許可が取れるとは限らない
- 通路部分の通行許可を得るために通行料が必要になるケースがある
- 許可が取得できる建物には制限がある
43条但し書きの許可は再建築物件を有効活用する手段ではありますが、利用するにあたり注意点があることも理解して許可申請しましょう。
隣地を買い取る
再建築不可物件と建築基準法上の道路との間に、売地がある場合は隣地を買い取るのも方法の1つです。
接道義務を果たしている隣地を買い取れば、再建築不可物件の土地が接道義務を満たすことになります。
再建築不可物件の土地は建築制限があるため不動産相場では売れませんが、接道義務を満たす隣地を購入することで相場での売却も可能になります。
仮に再建築不可物件の土地を利用しない予定だとしても、不動産価値を上げるために隣地を購入するとうのもよいでしょう。
位置指定申請をする
再建築不可物件の土地と建築基準法上の道路との間に空き地があり、周りにも再建築不可物件がいくつかある場合は、位置指定申請をするのもよいでしょう。
位置指定申請が認められると、建築基準法上の道路と見なしてくれます。
ただし、位置指定申請をするには、次の条件を満たす必要があります。
- 計画道路の幅が4.0m以上あり道路との交差点にはすみ切りを両側に設けること
- 道路形状と境界が明確で排水設備が設けられていること
- 原則通り抜けられる道路であること(行き止まり道路の場合、道路の長さが35mより短いこと)
なお、位置指定申請をするには測量や専門家による書類作成が必要となり、道路の整備費用と合わせると相当な金額になります。
位置指定申請をするのは最後の手段と考え、他の方法から試すのがよいでしょう。
接道義務に関して特に注意が必要なケース
接道義務は不動産売買に大きな影響を及ぼすため、注意しなければいけないことが多くあります。
注意しなければいけないことの中で、特に気を付ける必要がある項目は次のとおりです。
- 土地の形状が旗竿地になっている
- 接道部分が私道で共有名義になっている
- 接道義務を果たしていない不動産はなかなか売却できない
ここからは、接道義務に関して特に注意が必要なケースについて解説します。
土地の形状が旗竿地になっている
土地の形状が旗竿地になっている場合は、接道義務に注意しなければいけません。
旗竿地とは旗のような形をしており、接道部分が通路のようになっている、かつ奥に広いスペースがある土地です。
旗竿地にも接道義務は課されており、通路部分と道路の接道部分が2m以上ないと建物は建築できません。
また、接道部分が2m以上あったとしても、通路部分に2m未満のくびれがあると接道義務を満たしていないと判断されます。
そのため、旗竿地の場合は土地の間口だけでなく、通路部分全体の幅が2mを切っていないか確認する必要があります。
接道部分が私道で共有名義になっている
敷地に接している道路が私道であり、なおかつその道が共有名義になっている場合は要注意です。
私道の管理者は個人であり、道路の状態が悪くなっても修繕してくれるかどうかはわかりません。
また、上下水やガスを引き込むためには、私道の所有者の許可を取る必要があります。
しかし、ライフラインを引き込むための工事は、共有名義人全員の許可を取得しなければいけません。
1人でも工事に反対した場合にはライフラインが引き込めず、家を建築できたとしても水や下水が使えないという状態になります。
接道義務を満たしているとしても前面道路が私道になっている場合、土地を有効利用できなくなるため、注意しなければいけません。
接道義務を果たしていない不動産はなかなか売却できない
接道義務を果たしていない不動産は、なかなか売却できません。
接道義務を果たしていないと建物が建築できず、購入する人が激減してしまうからです。
基本的に土地を購入する人の目的は、住宅を建築することです。
土地に建物が建築できない場合は住宅用地を探している人の検討範囲外になってしまいます。
購入検討者からの需要が少ない不動産は価格が落ちてしまうため、相当安い値段で売却しなければいけないと理解しておく必要があります。
購入者の絶対数が少ないため金額が下がる上に、値段を下げたとしてもなかなか売却できません。
まとめ
接道義務とは、建築基準法で定められた建物を建築するために満たすべき義務です。
原則、幅員4m以上ある道路に2m以上接していなければ建物を建築できません。
ただし、例外規定も多く、2項道路や43条但し書きを利用できれば建物を建築することも可能です。
たとえ、接道義務を満たしていないとしても、一定の条件を満たせば建築できる土地にすることもできます。
接道義務がない土地を購入・売却するときには、例外規定などを理解しておくとスムーズに購入・売却が進むことでしょう。