接道義務とセットバックの関係とは?必要なケースや費用相場について
この記事でわかること
- 接道義務について理解できる
- 接道義務を果たしていない場合の対策の一つがセットバックであることが理解できる
- セットバックに掛かる費用がわかる
実家の土地を相続して新たな建物を建築しようとすると、セットバックが必要なケースがあります。
セットバックが必要となるのは、実家の土地が接道義務を果たしていないからです。
また、セットバックを行うと敷地面積が減り、従前のような規模感の建物ができないデメリットもあります。
では、接道義務とセットバックにはどのような関係があるのでしょうか?
本記事では、接道義務とセットバックの関係について紹介し、さらに具体的にセットバックが必要な状況についても解説します。
他にも、セットバックの費用相場やセットバックが必要な不動産を取得したときの注意点についてもご紹介していきます。
この記事を最後までお読みいただくことで、接道義務とセットバックの関係、セットバックに掛かる具体的な費用などを理解できます。
目次
接道義務とは
建物を建てる土地について「幅員4mの道路に間口2m以上接する必要がある」という取り決めが接道義務です。
これは、建築基準法で定められています。
接道義務を定めている理由は、以下の通りです。
- 幅員を4m以上取ることで地域内の移動をしやすくする、避難経路の確保、消防車などの緊急車両を入りやすくしている
- 間口を2m以上取ることで、敷地内への出入りのしやすさを確保している
接道義務を果たしていない土地に建物を建てることはできません。
このため、接道義務を果たしていない土地を購入した場合には、接道義務を満たすための是正工事が必要です。
2項道路とは
2項道路とは、建築基準法第42条2項において定めているもので、接道義務を果たしていない例外的な道路のことです。
現在、都市部の住宅街で全ての土地が接道義務を果たしているわけではありません。
たとえば、建築基準法が施行された当時、接道義務を果たしていない土地は多くありました。
これら全てを違法建築物とすると経済的損失が甚大であるため、一定要件を満たせば幅員4m未満でもよいという例外を設けました。
これが、2項道路(みなし道路)と言われるものです。
2項道路沿いの既存建築物については、基準に沿っていないという理由で取り壊すなどの措置は必要ありません。
一方、その後建物を解体して改築する際には、道路中心線から水平距離2mの道路境界線までセットバックが必要となります。
セットバックとは
幅員4m以下の道路を4m以上に広げることをセットバックと言います。
具体的には、道路中心線から水平距離2mのところの道路境界線に重なっている敷地については、道路として提供することです。
セットバックを行うことで建築基準法第42条2項を満たし、間口が2m以上確保できれば接道義務を果たせます。
このように第42条2項では、幅員4m未満でもみなし道路としていますが、新たに建物を建てるときにはセットバックが必要です。
つまり、現状幅員が4m未満の道路でも建物の建て替えが進めば、最終的に幅員4m以上の道路を造れるというのがこの制度の趣旨です。
なお、道路の両サイドが住宅であれば2mずつの拡幅は可能ですが、片方が川や崖などの場合は敷地を最大4m下げることもあります。
(参照元:国土交通省 狭あい道路整備等促進事業)
セットバックで提供した土地はどうなる?
セットバックで道路(公道の場合)として提供した土地は、原則自治体に寄付するケースが大半です。
このため、セットバックで土地を提供すると敷地面積が減少します。
なお、セントバック部分の固定資産税は非課税です。
セットバック部分を非課税とするには、土地の分筆登記を行い(セットバック部分を敷地と切り離すため)、その後役所へ申請します。
ちなみに、以下のような状況では非課税が認められないケースがあります。
- セットバック部分に花壇や車を停めるなど私的に利用しているとき
- 行き止まりの私道などで利用者が特定の人に限られるとき
セットバックが必要なケース
では、改めてセットバックが必要なケースとはどのようなときになるのでしょうか?
以下にご紹介していきましょう。
幅員が4m未満の道路に面して建て替えを行うとき
まずは、幅員が4m未満の道路に面して建て替えを行うときです。
先にお伝えしたとおりに、接道義務を満たしていない土地に新たな建物の建築はできません。
そのため、建て替えを行う際にセットバックを行い、新たな建蔽率と容積率に納まる建物を建築します。
狭い道路を拡幅するため
セットバックには、狭い道路を拡幅するための目的もあります。
たとえば、住宅が面している道路が幅員2m未満であれば車が通るのも難しいでしょう。
また、自転車と歩行者などの往来やすれ違いも危なく、また道路に死角が多いことで事故が起きる可能性も高くなります。
このように、狭い道路を広げるために自治体主導のもとセットバックが行われるケースもあります。
セットバックの費用は所有者負担
セットバックの工事で要する費用は、敷地の所有者が負担します。
主な費用は、以下に挙げたとおりです。
- 土地の測量費(境界確定測量か現況測量)
- 敷地と道路用地の分筆登記費用
- 道路用地部分の整備費用
これらを合わせた費用の相場は、30万円~80万円です。
なお、測量で隣地境界が定まっていない場合の確定測量では、隣地所有者との話し合いや測量に掛かる手間などで高額となります。
費用は、確定測量のみで50万円~100万円程度掛かることもあります。
一方で、境界が確定していれば現況測量のみとなり、10万円~20万円程度で済みます。
また、道路部分の整備費用はセットバックした面積により異なります。
アスファルト舗装の相場は、5,000円/㎡です。
さらに、壁や門など工作物の解体があれば、費用はさらにプラスとなります。
このように、土地の広さ、境界確定が済んでいるか、工作物の有無等により費用は大きく異なります。
セットバックを行うときには、あらかじめ見積もりを取ることをおすすめします。
自治体によっては助成金もある
セットバックを行うには、多額の自己負担が生じます。
セットバックが容易にできなければ、今後の街づくりに大きな影響があるでしょう。
そこで、自治体によってはセットバックに掛かる費用に助成金を出しているところもあります。
自治体により助成金の範囲や金額は異なるので、事前に管轄の役所に確認しておきましょう。
セットバックが必要な不動産を購入・相続したときの注意点
セットバックが必要な不動産を購入や相続した場合、どのようなことを注意すればよいのでしょうか?
以下に、セットバックが必要な不動産を所有したときの注意点をまとめます。
建物建設時にセットバックが必要
セットバックが必要な土地を購入したら、建物の建設時には必ずセットバックが必要です。
また、セットバックが必要な土地の上に建つ不動産を購入したら、建て替え時にセットバックが必要となります。
なお、その不動産をスケルトンリフォームやリノベーションした場合、セットバックは必要ありません。
セットバック部分は敷地面積から除外
セットバック部分は、敷地面積から除外されます。
このため、既存建物を取り壊しセットバックする場合、同規模のものが建設できないおそれがあります。
これは、建蔽率と容積率の対象となる敷地面積の減少により、建設可能な面積の上限が変わるからです。
セットバック部分は私的の利用は不可
セットバック部分は、不特定多数の人が使う道路となるため、私的利用はできません。
花壇の設置、自転車や自動車の駐車などは不可となります。
資産価値が落ちることがある
敷地が減少した分、資産価値の下落も考えられます。
なお、敷地が減少しているため、固定資産税や相続税も評価額が変わらなければ下がります。
年間の維持費や相続時の相続税が、セットバックを行う前より安くなることもあるでしょう。
まとめ
幅員4m未満の道路に面する不動産に新たな建物を建設時には、接道義務を満たすためにセットバックが必要です。
また、既存建物を活かす場合にはセットバックは必要ありませんが、将来的な建て替え時にはセットバックは必要となります。
セットバックに掛かる費用は多額となるおそれがあるので、あらかじめ見積もりを取得しておきましょう。
さらに、自治体で助成金制度がある場合もあるので、確認することをおすすめします。