住宅の耐用年数とは?実際の寿命との違い・長く住むコツを紹介
この記事でわかること
- 住宅の耐用年数がわかる
- 住宅の耐用年数がわかる
- 住宅の減価償却方法がわかる
- 耐用年数を超えた住宅に長く住み続けるコツがわかる
住宅には、法律で耐用年数が定められています。
耐用年数とは、建物の価値がゼロになるまで何年かかるのかを示した数字です。
耐用年数は寿命を表した数字ではないため、実際に住み続けられる年数は異なります。
それでは、建物の寿命とはどのくらいなのでしょうか。
本記事では、耐用年数と実際の寿命、長く住むコツなどを解説していますので、いつまで住宅に住み続けられるか気になる方は最後までご覧ください。
住宅の耐用年数とは
住宅には、次の4種類の耐用年数があります。
- 物理的耐用年数
- 法定耐用年数
- 経済的残存耐用年数
- 期待耐用年数
それぞれの耐用年数は、内容が異なります。
耐用年数のことを理解するには、すべての耐用年数の内容を把握しておかなければいけません。
ここからは、4種類の耐用年数について解説します。
物理的耐用年数
物理的耐用年数とは、現在の技術で建築された建物が、いつまで建築物としての状態を保てるのか表した年数です。
建物は、立地や使い方により耐用年数が変わります。
しかし、物理的耐用年数は立地や使い方を考慮せず、一般的な使い方をしたときにどのくらい建物が保つかを示しています。
現在の木造の物理的耐用年数は60年、鉄筋コンクリート造は120年とされるケースがほとんどです。
物理的耐用年数は建物が壊れるまでの年数を表しているため、寿命と似たような耐用年数といえます。
法定耐用年数
法定耐用年数とは、建物などの固定資産の価値が何年経過するとなくなるのかを国が定めた年数です。
法定耐用年数は建物の構造により決まっており、建物の使い方や立地は考慮していません。
法定耐用年数を基に計算した減価償却費は所得を抑える効果があり、よく節税の計算に使われます。
ただし、不動産売却して発生した譲渡所得の計算時には、減価償却費が大きいほど譲渡所得税が増えてしまいます。
あくまで資産にかかる税金を計算する基になる耐用年数であり、実際に住める期間との差がある年数です。
経済的残存耐用年数
経済的残存耐用年数とは、不動産の資産価値がいつまであるのかを表した年数です。
経済的残存耐用年数は建物の立地や設備の性能などにより、不動産の売買価格は変動します。
よい立地の不動産や、高性能な住宅の場合は高値が付きやすく、価格が落ちにくい傾向があります。
このような不動産は年数が経過しても売却ができるため、経済的残存耐用年数が長い不動産です。
一方、使い方が悪く新しいにも関わらず、建物の性能が落ちてきている住宅であれば、経済的残存耐用年数が少ない建物です。
期待耐用年数
期待耐用年数とは、通常の使い方や維持修繕を行い設備の部品交換などが発生せず、通常の使い方ができる年数です。
建物の機能がいつまで続くかを表した耐用年数であるため、建物が壊れるまで何年かを表した物理的耐用年数とは違う年数になります。
期待耐用年数は、不便さを感じない生活ができるまでの年数ともいえます。
住宅構造・種類別の耐用年数
耐用年数で多く利用されるのは、税金計算に必要な法定耐用年数です。
ここからは、法定耐用年数の住宅構造・種類別の年数について解説します。
住宅構造別の耐用年数
住宅構造別の耐用年数は、次の構造ごとに年数が設定されています。
- 木造・合成樹脂造
- 木骨モルタル造
- 鉄骨造
- 鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造
各構造による耐用年数の違いを理解し、減価償却費を計算できるようにしておきましょう。
木造・合成樹脂造
住宅用の木造・合成樹脂造の法定耐用年数は、22年です。
木造とは、木でできた建物構造であり、在来工法や2×4工法などがあります。
どの工法で建築されていても、法定耐用年数はすべて22年です。
そして、合成樹脂造とは、石油から人工的につくられたプラスチックでできた建物構造です。
木骨モルタル造
住宅用の木骨モルタル造の法定耐用年数は、20年です。
木骨モルタル造とは、木の骨組みにモルタルで壁を造った建物構造です。
現在の建物ではほとんど見られず、一部の歴史的建造物に採用されています。
鉄骨造
住宅用の鉄骨造の法定耐用年数は、次のとおり鉄骨の厚さにより異なります。
- 骨格材肉厚3mm超:19年
- 骨格材肉厚3mm超4mm以下:27年
- 骨格材肉厚4mm超:34年
鉄骨造には、軽量鉄骨造と重量鉄骨造があります。
軽量鉄骨造は骨格材肉厚6mm未満の鋼材を利用しており、重量鉄骨造は6mm以上の鋼材を利用している建物です。
そのため、重量鉄骨造の場合の法定耐用年数は、34年です。
反面、軽量鉄骨造は3.2mm~4.5mmで建築されていることが多く、骨格材肉厚によっては耐用年数が変わることに注意しなければいけません。
軽量鉄骨造の減価償却費を計算するときには、骨格材肉厚を調べておくようにしましょう。
鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造
住宅用の鉄骨鉄筋コンクリート造・鉄筋コンクリート造の法定耐用年数は、47年です。
鉄骨鉄筋コンクリート造とはSRC造とも呼ばれ、鉄骨でできた骨組みを鉄筋とコンクリートで補強した建物構造です。
そして、鉄筋コンクリート造とはRC造とも呼ばれ、鉄骨でできた骨組をコンクリートで補強した建物構造のことをいいます。
鉄骨鉄筋コンクリート造と鉄筋コンクリート造は違う構造ですが、法定耐用年数は同じ47年です。
住宅の種類別の耐用年数
法定耐用年数がどのように適用されるのか、次の例を挙げて紹介していきます。
- 木造一戸建ての耐用年数
- 軽量鉄骨造一戸建ての耐用年数
- 木造アパートの耐用年数
- 鉄筋コンクリート造マンションの耐用年数
上記に住んでいる人は多く、どのような住宅に住んでいると法定耐用年数がどのように変わるのかみていきましょう。
木造一戸建ての耐用年数
木造一戸建ての法定耐用年数は、22年です。
木造の場合は、どのような工法を利用して建築されていても、法定耐用年数に変動はありません。
ただし、期待耐用年数として考えると、適切な使い方や適正な修繕をすることで耐用年数が延びていきます。
木造の物理的耐用年数は60年程度とされているため、きちんと利用していれば木造でも相当長く住み続けられます。
軽量鉄骨造一戸建ての耐用年数
軽量鉄骨造の法定耐用年数は、骨格材肉厚により異なります。
一般的に3.2mm~4.5mmで建築されているため、骨格材肉厚3mm超4mm以下であれば27年、mm以上なら34年が法定耐用年数です。
軽量鉄骨造は木造と比べると法定耐用年数が長めに設定されていますが、物理的耐用年数で見ると60年程度と木造と同じ年数です。
そのため、木造と同じく建物の使い方によっては、寿命が延びて法定耐用年数以上の期間、住み続けられます。
木造アパートの耐用年数
木造アパートの法定耐用年数は、22年です。
賃貸用でも自己居住用でも法定耐用年数には変わりありません。
また、物理的耐用年数も賃貸用・自己居住用の違いがないため、60年となります。
しかし、賃貸物件は自己居住用の建物に比べて定期的にメンテナンスをすることが多く、期待耐用年数は自己居住用よりも長くなるケースがあります。
ただし、結局はきちんと修繕しているかどうかによるため、一戸建てと集合住宅の耐用年数にはほとんど差がありません。
鉄筋コンクリート造マンションの耐用年数
鉄筋コンクリート造のマンションの法定耐用年数は、47年です。
鉄筋コンクリート造は強度が高く、法定耐用年数が長く設定されています。
物理的耐用年数も120年です。
ただし、法定耐用年数や物理的耐用年数が長いからといって、メンテナンスを怠ると期待耐用年数は下がってしまいます。
鉄筋コンクリート造だとしてもメンテナンスをしっかり行わなければ、建物の寿命が短くなるため注意しましょう。
住宅の減価償却方法
税法上の住宅の価値がどこまで落ちているかは、減価償却を計算すればわかります。
ここからは、減価償却とは何か、どのように計算したらよいかなど減価償却について解説します。
減価償却のシミュレーション計算も行いますので、ぜひ参考にしてください。
減価償却とは
減価償却とは、償却資産の購入金額に一定割合を掛け、毎年の経費として計上する会計処理です。
10万円以上、耐用年数1年以上の固定資産を購入したときには、原則減価償却をしなければいけません。
たとえば、新築アパートを5,000万円で取得した場合、経費として1年で会計処理をすることはできず、償却率に応じて毎年減価償却を行っていく必要があります。
住宅の減価償却方法
住宅を購入したときの減価償却がいくらか計算するには、次の手順を踏みます。
2)償却率を計算する(中古住宅を取得した場合)
3)減価償却を計算する
減価償却を計算するには、まず償却率を確認・計算しなければいけません。
償却率がわかれば、簡単に減価償却を計算できます。
それでは、どのような方法で減価償却を計算するのかみていきましょう。
償却率を確認する(新築住宅を取得した場合)
新築住宅を取得した場合は、次の表を見て償却率を確認します。
建物構造 | 法定耐用年数 | 償却率 |
---|---|---|
木造 | 22年 | 0.046 |
木造モルタル | 20年 | 0.05 |
鉄骨造 (骨格材肉厚3mm以下) | 19年 | 0.037 |
鉄骨造 (骨格材肉厚3mm超4mm以下) | 27年 | 0.052 |
鉄骨造 (骨格材肉厚4mm超) | 34年 | 0.03 |
鉄筋コンクリート造 | 47年 | 0.022 |
たとえば、木造の新築一戸建てを購入したときの償却率は0.046です。
表で確認した償却率を乗じて減価償却費を計算します。
償却率を計算する(中古住宅を取得した場合)
中古住宅を取得したときには、償却率を自分で計算しなければいけません。
中古住宅を取得したときの償却率の計算方法は、法定耐用年数の途中で住宅を取得したときと、法定耐用年数を超えた年数で取得したときとは異なります。
それぞれの計算方法を紹介していきます。
【法定耐用年数がまだ残っている建物を取得した場合の償却率】
- 耐用年数 =(法定耐用年数 – 築年数)+(築年数 × 0.2)※端数は切り捨て
- 償却率 = 1 ÷ 上記の計算で算出した耐用年数 ※端数は切り上げ
たとえば、軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm超4mm以下)の築10年の中古住宅の償却率は、次のとおりです。
(27年 – 10年)+(10年 × 0.2)= 22年(耐用年数)
1 ÷ 22年 = 0.046(償却率)※端数は切り上げ
となります。
【法定耐用年数を超えた建物を取得した場合の償却率】
- 耐用年数 = 法定耐用年数×0.2
- 償却率 = 1 ÷ 上記の計算で算出した耐用年数
軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm超4mm以下)の築30年の中古住宅の償却率は、次のとおりです。
27年(法定耐用年数)× 0.2 = 5年(耐用年数)※端数切り下げ
1 ÷ 5年 = 0.2(償却率)
となります。
減価償却を計算する
減価償却を計算するときには、次の計算式を利用します。
※定額法の計算式
新築住宅を取得した場合は、法定耐用年数の表を見ながら当てはまる償却率を用いて計算します。
中古住宅を取得した場合は、償却率を計算して減価償却を計算します。
なお、新築の軽量鉄骨造(骨格材肉厚3mm超4mm以下)を4,000万円で取得したときの減価償却費は、次のとおりです。
4,000万円 × 0.052 = 208万円(減価償却費)
このケースだと毎年208万円を減価償却していくことになります。
減価償却のシミュレーション計算
減価償却の計算を一通り解説してきましたので、ここからは減価償却のシミュレーション計算を行っていきます。
減価償却の計算シミュレーション【シミュレーション条件】
- 木造住宅
- 建物購入金額3,000万円
- 築5年
- 法定耐用年数22年
【耐用年数の計算】
(22年 – 5年)+(5年 × 0.2)= 18年(耐用年数)
【償却率の計算】
1 ÷ 18年 = 0.056(償却率)※端数切り上げ
【減価償却費の計算】
3,000万円 × 0.056 = 168万円(減価償却費)
このシミュレーション条件の場合は、減価償却費は168万円となります。
住宅の耐用年数と住み続けられる寿命の違い
先述したように、住宅には、次のような耐用年数があります。
- 物理的耐用年数
- 法定耐用年数
- 経済的残存耐用年数
- 期待耐用年数
各耐用年数は税金の計算を目的に設定されている、または不動産の価値を基準として決められているため、寿命との年数とは違います。
たとえば、木造住宅の法定耐用年数は22年ですが、物理的耐用年数は60年程度です。
しかし、現実には100年を超えても住宅として使える建物も多く存在しています。
住宅の寿命は使い方や維持修繕をしているか、災害にあっていないかなど様々な条件が揃った上で決まるということです。
耐用年数を超えた住宅に長く住み続けるコツ
耐用年数を超えた住宅に長く住み続けるコツは、次のとおりです。
長く住み続けるコツ
- 定期的に修繕を行う
- 住宅の定期点検を行う
- 災害に強い建物を建築する
ここまで述べてきたように、耐用年数を超えても、住宅に住み続けられます。
しかし、住宅の利用方法や手入れ、点検は欠かせません。
ここからは、耐用年数を超えた住宅に長く住み続けるコツについて解説します。
定期的に修繕を行う
定期的に住宅の修繕を行うと、耐用年数を超えても住宅の機能が失われにくくなります。
定期的に修繕するには、建物の各場所のメンテナンス時期を把握しておかなければいけません。
たとえば、築10年を経過するごとに行う修繕が必要な場所と、築20年で行う修繕の場所は違います。
築10年・築20年を経過したときに行う主な修繕は、次のとおりです。
築10年経過したときに行う主な修繕
- 外壁の塗装
- 屋根の塗装
- シーリングの打ち替え
- 内装のクロス張り替え
築20年経過したときに行う主な修繕
- 外壁の増し張りや張り替え
- 屋根の張り替え
- 給排水器具の交換
- 給湯器の交換
- キッチン本体の交換
- トイレ便器の交換
上記のように、年数経過によって行う修繕工事は異なります。
築年数によってどのような工事をしなければいけないか把握しておき、定期的に修繕工事を行うようにしましょう。
住宅の定期点検を行う
住宅の定期点検を行えば建物の傷みを発見でき、修繕工事をすぐに行えます。
修繕工事は定期的に行うだけでなく、突発的に発生する不具合にも対応していかなければなりません。
突発的に発生する不具合は、被害が大きくなってからでは工事費用が高額になるケースもあります。
修繕費用が高額になる前に、定期点検で建物の傷み具合を確認しなければなりません。
住宅の定期点検を行っていれば適切な修繕が行えるため、住宅の寿命が延びていきます。
災害に強い建物を建築する
日本は災害の多い国であるため、災害に強い家を建築するとよいでしょう。
災害が起きると、見えない場所にダメージが蓄積されてしまいます。
2016年、熊本にて起きた大震災では1回目の震度7で建物が倒壊しなくても、2度目の震度7の地震で多くの住宅が倒壊しました。
これは1回目の地震で損傷を受けた住宅が、2度目の地震に耐えきれなくなって起きたといわれています。
地震や台風、大雨など、様々な災害が予測されるため、災害に強い家を建築することが大切です。
多少の被害は防いでくれる住宅であれば、長く住み続けることも可能です。
まとめ
住宅の耐用年数は4種類あり、それぞれで年数が違います。
耐用年数は寿命のことを指しているのではなく、税金の計算や不動産の価値がどれくらい続くのかを測るために利用されています。
そのため、耐用年数を超えた住宅でも住み続けることが可能です。
ただし、耐用年数を超えた住宅に住み続けるには、メンテナンスを定期的に行うことが重要です。
定期的メンテナンスを行うことで、住宅としての機能が維持され続けます。
長い間、同じ住宅に住み続けたいのであれば、定期点検と定期メンテナンスを怠らないように気を付けましょう。