不動産売却の専任媒介契約とは?専属専任媒介や一般媒介契約との違いや注意点をチェック
この記事でわかること
- 専任媒介契約について理解することができる
- 専任媒介契約と、一般媒介契約・専属専任媒介契約との違いについて理解できる
- 媒介契約における注意点についてわかる
不動産を売却する場合には、不動産仲介業者に仲介を依頼し、媒介契約を締結することが一般的です。
しかし媒介契約に3種類の契約内容があるため、どの種類の媒介契約を締結すべきかわからないというのは、不動産業界に関わりのない方であれば普通のことです。
そこで、どの契約が一番ご自身にとってメリットがあるかを判断していただけるよう解説いたします。
目次
媒介契約とは
媒介契約とは、不動産の取引に関して、取引をする当事者(売買であれば、売主と買主双方)の立場に立って、宅地建物取引業者が、お互いの希望を成立させるための活動内容に関する契約です。
不動産を売りたい人から、仲介の依頼を受けた不動産仲介業者は、宅地建物取引業法によって、売りたい人と媒介契約を締結することが義務付けられています。
不動産仲介業者は、お互いの希望を結びつける活動を行い、売りたい人や買いたい人から仲介手数料を受け取ることが事業の内容となります。
一方、直接、売りたい人と買いたい人が不動産の取引を行う場合は、媒介契約を締結する必要はなく、そのためお互い仲介手数料を支払う必要はありません。
しかし、不動産の取引は一般的には高額な取引となるため、売買成立後にトラブルが起こった場合、個人間取引でそのトラブルを解決するということはとても難しくなってしまいます。
そのため、特に個人間の取引では直接取引となる事例は多くはありません。
仲介手数料の仕組みについて
不動産業者がどのような考え方によって仲介手数料を得るのかについてご理解いただきたいと思います。
仲介手数料は大きく「両手仲介」と「片手仲介」の2種類に分類されます。
両手仲介とは
両手仲介とは、1社の不動産業者が売主・買主のそれぞれから仲介手数料を得ることができるため、不動産業者が最も望む方法です。
以下の図は、売却を依頼した不動産業者がA社、買主もA社の顧客だった場合を表しています。
また仲介手数料が100万円と仮定します。
図をご覧いただき、おわかりのように、一度の取引によって、A社は200万円を得ることができます。
片手仲介とは
片手仲介とは、1社の不動産業者が売主から、また別の不動産業者が買主から仲介手数料を得ることができます。
売却を依頼した不動産業者がA社、買主はB社の顧客だった場合です。
片手仲介の場合は、このように売主もしくは買主の一方からしか仲介手数料を得ることができません。
仲介手数料について
不動産業者に支払う手数料ですが、宅地建物取引業法によって、上限額が決められています。
取引価格によって異なりますが、400万円超の取引価格であれば、以下の式となりますので、参考にご覧いただければと思います。
例1:取引価格が5,000万円だった場合
5,000万円×3% → 150万円 +6万円 → 156万円×110% →仲介手数料は171.6万円
例2:取引価格が7,000万円だった場合
7,000万円×3% → 210万円 +6万円 → 216万円×110% →仲介手数料は237.6万円
ちなみに、
200万円以下の場合は、取引価格×5% ×消費税
200万円超400万以下の場合は、取引価格×4% +2万円 ×消費税
となります。
媒介契約は専任媒介・専属専任媒介・一般媒介の3種類
それでは3種類ある媒介契約の特徴について、以下の表で比較してみましたのでご覧ください。
3種類の媒介契約比較表
専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数の不動産業者と契約可能か | × 1社のみの契約 | × 1社のみの契約 | 〇 複数の業者と契約可能 |
自分で買主を見つけ、直接取引可能か | 〇 可能 | × 不可 | 〇 可能 |
不動産業者からの営業報告 | 2週間に1回以上 | 1週間に1回以上 | 法律上の定めなし |
指定流通機構(レインズ)※への登録義務 | 媒介契約締結日から 7日以内 | 媒介契約締結日から 5日以内 | 法律上の定めなし |
契約期間 | 3ヵ月以内 | 3カ月以内 | 法律上の定めはないが、行政指導によると3カ月以内 |
不動産業者のマインド | 〇 積極的 | 〇 積極的 | × 消極的 |
※指定流通機構(通称:レインズ)について
不動産流通機構が運営しているコンピューターネットワークシステムのことで、不動産情報を交換するためのシステムです。
日本全体を4つ(東日本、中部、近畿、西日本)に分けて、運営されています。
全国の不動産会社は、レインズに掲載されている不動産情報を検索し、買主や借主に物件を紹介しています。
売り物件情報をレインズに登録することによって、より多くの不動産業者の検索にヒットし、買主の希望条件にマッチする物件を見つけやすくなります。
上記の表を元に、各契約に関して詳しく解説します。
専任媒介契約について
売主にとっても、不動産業者にとっても、融通性があり、不動産業者も積極的に売却活動を行うのが専任媒介契約です。
もし、媒介契約の選択について、迷ったらこの専任媒介契約を選ぶのが無難だと思いますので、メリットやデメリットについては、細かく後述いたします。
仲介の依頼を受けた不動産仲介業者にとっては、売主自身で買主と直接取引をしてしまう自己発見取引の可能性はあるものの、他の不動産業者でも取引が可能である一般媒介契約と比較すると、他の不動産業者と取引が成立する可能性はありません。
そのため、不動産仲介業者、営業担当者にとっては、営業努力が無駄になる可能性は低く、広告費を投じて、積極的な営業を期待することができます。
また、専任媒介契約を締結した宅建業者は、指定流通機構(通称:レインズ)へ売り物件としての登録を媒介契約締結日から7日以内に行い、登録した証として登録済み証を依頼者に渡さなければなりません。
専属専任媒介契約について
専属専任媒介契約は不動産業者からの営業状況の報告が3種類の契約の中で最も高く設定されているため、売主は販売状況を把握しやすいということと、専任媒介契約よりもさらに広告費などをかけて、より積極的に売却活動をしてもらいやすくなります。
しかし売主にとっては、売却する方法が限定的となります。
専属専任媒介契約は、媒介契約できる不動産仲介業者は1社のみ、かつ自己発見取引についても、媒介契約を締結した不動産仲介業者に仲介手数料を支払わなければなりません。
たとえば、所有不動産を売りに出したものの、結果的には親族や知人が買主になった場合などです。
専任媒介契約、一般媒介契約では、仲介手数料は不要ですが、この専属専任媒介契約では不動産仲介業者に仲介手数料を支払う義務が生じるため、やや不動産仲介業者にメリットが偏っていると思います。
一般媒介契約について
一般媒介契約については、売主・不動産仲介業者のどちらにとっても、あまり具体的な縛りはありません。
一般媒介契約のみ許可されているのが、複数の不動産業者と同時に媒介契約を締結することです。
さらに自己発見取引も可能で、不動産仲介業者に対して、仲介手数料を支払うことなく直接的に取引ができます。
しかし、一般媒介契約は、営業状況の報告義務がないため、不動産仲介業者がどのような営業活動をしているのかわからないことや、レインズへの登録義務がなく、売り物件として情報が広まらないため、結果として販売が長引いてしまったりするケースもあります。
さらには、不動産仲介業者にしてみると、営業活動をしても他社の不動産仲介業者にて成約になってしまう可能性もあるため、あまり広告費をかけない傾向もあります。
なお、一般媒介契約には、依頼先を公表する明示型と、依頼先を公表しない非明示型があり、明示型の場合で公表していない不動産業者と新たな契約を結んだことを報告しないと営業経費等の支払いが必要となりますので、ご注意ください。
専任媒介契約のメリット
前述したとおり、もし媒介契約の種類について、お迷いであれば専任媒介契約をお勧めいたします。
ではその理由について、解説します。
営業スタッフのマインド向上
専任媒介契約を締結すると、1社としか媒介契約を締結することができないため、他の不動産仲介業者にて売買契約に至ってしまうことがありません。
そのため、媒介契約を締結した不動産仲介業者は預かった物件を売却し、仲介手数料を売主から受領することになります。
また、その不動産の買主が、自身の顧客であれば、買主からも仲介手数料を受領することができるため、
積極的に売却活動に取り組みます。
その結果、早期に売主の思い通りの価格にて売却することも可能です。
自己発見取引が可能
専任媒介契約は自己発見取引が可能です。
これは、専任媒介契約を締結した後、売主自らが取引相手となる買主を見つけ、当人同士で取引をすることになった場合、専属専任媒介契約では不動産業者への仲介手数料の支払い義務が生じるものの、専任媒介契約では不動産仲介業者に支払う仲介手数料がかかりません。
たとえば、親族の方との取引などが主です。
内覧のスケジュール調整について
媒介契約を締結すると、次のステップは不動産仲介業者が実際に買主を案内することとなります。
不動産仲介業者から売主へ連絡が入り、「●曜日の▲時に案内可能でしょうか」という感じです。
その結果、売主のスケジュールが合えば、「案内可能です」などと回答することになります。
1社との媒介契約を締結する専任媒介契約であれば、1人の不動産仲介の営業担当者から連絡が入り、スケジュール調整も容易です。
しかし仮に、3社と一般媒介契約を締結したとすると、どのようになるかイメージが付きますね。
A社担当者、B社担当者、C社担当者のそれぞれとスケジュールの調整が必要となり、大事な案内にも関わらず、案内の時間などを忘れてしまい、売却の機会を逃すこともあり得ます。
専任媒介契約のデメリット
一方、専任媒介契約のデメリットについてご説明します。
仲介業者の力量の寄る部分が大きい
1社のみとしか、媒介契約を締結することしかできないため、媒介契約を締結した会社の営業力や、担当している営業スタッフの営業力がとても大きなカギとなります。
不動産仲介業者が買主を集めてくれないことには、自然と買主が発生するわけではないですし、また営業担当者の営業力が弱ければ、買おうかなと迷っている方がいても、買うという決断をしてくれない可能性もございます。
結果として、売却のタイミングを逃してしまい、想定よりも売却価格が低くなることや、販売が長期化することになります。
売り止めや囲い込みには注意が必要
あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、「売り止め」や「囲い込み」に注意が必要です。
前述したように、不動産仲介業者は売主や買主から仲介手数料を受領することが事業の内容です。
売主から預かった物件が売却できれば、売主から仲介手数料を受領し、買主が探している物件を買主に紹介し、売買が成立すれば買主から仲介手数料を受領します。
つまり、1社の不動産仲介業者が売主から預かった物件に対して、自社が買主を探すことができれば、その不動産仲介業者は、1物件で買主、売主の双方から仲介手数料を受領することができるのです。
これを不動産業界では両手といいます。
不動産仲介業者は両手仲介を成立させるため、自社が預かった物件に対して、一定期間は他業者からの買主紹介をストップさせ、自社で物件を抱え込むことです。
具体的には、他社の不動産業者から「御社が担当されているA物件を買いたい人がいるので案内させて欲しい」と電話があったとします。
そうすると「すみません、その物件はすでに申し込みが入ってしまって案内できません」と嘘をついて、紹介を断るのです。
そして、まずは自社顧客の中で買主を探し出し、それが上手く成立すると、その不動産業者は、売主からも買主からも仲介手数料を得ることが可能となります。
つまり、1物件で手数料を2倍得ることができるため、どの不動産仲介業者もこの両手仲介を望むのです。
売主からしてみると、どの業者の買主であっても、売却金額などに大きく変わりはないものの、不動産業者の多く利益を得たいという自己都合だけで、売却の機会を減らしていることになります。
通常であれば、不動産仲介の依頼を受けた不動産業者は、売主の利益を確保しなければならないものの、裏ではこのようなやり取りが行われていることが実態です。
囲い込みや売り止めについては、現状では、立証することが難しく、レインズ側でも罰則規定はあるものの、具体的な対策が追い付いていない状況が続いています。
全ての不動産業者がこのような悪質な行為をするとは限りませんが、不動産業者や営業マンの見極めも重要なので、覚えておいていただければと思います。
専任媒介契約の法規制に注意
これまで、専任媒介契約を中心に、媒介契約に関して説明してまいりました。
全ての媒介契約に共通する注意点がありますので、紹介いたします。
それは、売主は、媒介契約期間中に不動産仲介業者によって紹介された買主と、媒介契約終了後の2年間は直接取引を禁止しています。
なぜなら、売主が仲介手数料を支払いたくないため、わざと媒介契約を終了させてから、買主と直接取引をするという行為を防ぐためです。
つまり、不動産業者が広告費や人件費を投じて集客した買主と、売主が直接取引をすることによって、本来であれば得るべき仲介手数料を得ることができなくなってしまうためです。
万が一、直接取引をし、それが発覚すると、不動産業者から損害賠償請求などをされる可能性もありますので、ご注意ください。
不動産業者だけでなく、誰でもが法務局にて手数料を支払えば不動産登記簿謄本を取得することができます。
不動産登記簿謄本を確認すると、現所有者の氏名や従前の所有者の氏名、また所有権移転の時期などが簡単にわかることができますので、どうせばれないというお考えは間違っていますので、ご注意ください。
まとめ
以上、不動産の売却の際、必要不可欠の手続きである3種類の媒介契約に関してご説明してまいりました。
初めての不動産売却には、普段なかなか耳にする機会がないような言葉も多く、難しいと感じられる方も多いと思います。
しかし、しっかりとした不動産仲介業者のしっかりとした営業マンと媒介契約を締結することによって、未然にトラブルを防ぐことが可能です。
3種類ある媒介契約の中で、どの種類の媒介契約が自分にマッチしているのかをお考えいただき、後悔のない不動産取引を行ってください。