不動産の査定をスムーズに進めるための準備と重要ポイント
この記事でわかること
- 不動産会社に依頼する査定の意味がわかる
- 査定額と売出価格、成約価格の違いがわかる
- 査定から実際に売却するまでの流れがわかる
不動産売却を進めていくと、3つの価格が登場します。
「査定額」「売出価格」、「成約価格」です。
無料査定サービスを行う不動産会社が多いので、査定額という言葉は聞き慣れているかもしれません。
しかし、売出価格と成約価格は初めて聞くという方もいるのではないでしょうか。
不動産売却に成功するためには、査定についての知識を備えておく必要がありますが、それだけでは足りません。
査定額、売出価格と成約価格の関係を理解していなければ、不動産売却の手続きが進んでいくと戸惑う場面があるからです。
この記事では査定についての知識を詳しく解説します。
また、成約に至るまでに注意すべきポイントもみていきますので、スムーズに不動産売却を進めたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
不動産の査定が行われる仕組み
不動産売却の検討を始めたら、不動産会社に物件を査定してもらいましょう。
査定というと、なんとなく敷居が高いイメージがあるかもしれませんが、身構える必要はありません。
査定には「簡易査定」と「訪問査定」があります。
それぞれの特徴を理解しておくと、不動産会社にどちらの査定を依頼すればよいか判断しやすくなります。
気軽な簡易査定
まだ不動産売却の意思を固めていない方におすすめなのが、簡易査定です。
不動産会社の店舗に相談に行けば、簡易査定なら短時間で行ってもらえます。
また、電話やメールでも簡易査定を受け付けている不動産会社もあります。
ただ、簡易査定は机上査定ともいわれるとおり、現地を見ずに物件の価格を算出する査定方法です。
簡易査定では、類似物件の取引事例や築年数など、査定をする段階で明らかになっている情報を基に物件の価格を算出します。
簡易査定を受ける場合、以下の情報を整理してから不動産会社に伝えましょう。
- ・物件所在地、更地、一戸建てか分譲マンションかなど
- ・面積や間取り
- ・築年月日(築年数)
なお、他にも不動産会社から質問される事項にはできるだけ回答すると、より精度の高い査定額を算出してもらうことができます。
簡易査定では、物件を確認して初めて分かる物件の特徴や周辺環境は考慮できないので、本格的な査定価格ではありません。
不動産売却の意思が固まっている方は、思い切って訪問査定を依頼するほうが成約への近道です。
本格的な訪問査定
不動産会社の担当者が売却予定の物件を確認して価格を算出する方法が訪問査定です。
訪問査定では、物件の特性を確認して査定を行います。
訪問査定は、査定物件の細かい特徴を考慮して価格を算出する点が、簡易査定との大きな違いです。
例えば、以下の物件の特徴を考慮します。
- ・周辺の環境
- ・日当たり
- ・騒音
- ・土地の形
- ・前面道路の幅
- ・物件の劣化具合
- ・対象物件がマンションの場合、管理の状況(共用部分の劣化具合等)
なお、査定額の算出方法には、「取引事例比較法」、「原価法」、「収益還元法」の3つがあります。
不動産会社は主に取引事例比較法を用いて物件価格を算出しますが、適宜、原価法や収益還元法を併用します。
取引事例比較法 | 対象物件と似た複数の取引事例を比較し、売却事情や売却時点により補正し、個別の要因を加味して価格を試算する方法 |
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原価法 | 対象物件と同様の土地を再造成、建物を再建築するといくらかかるか試算する方法 |
収益還元法 | 対象物件を賃貸したらいくら収益が出るかにより、物件価格を試算する方法 |
不動産の査定額を決める3つの重要ポイント
不動産の査定額を決めるポイントはいくつかありますが、次の3つを理解しましょう。
- ・土地の場合…法令上の制限
- ・建物の場合…築年数
- ・マンション特有のポイント…管理状況
法令上の制限
建築基準法などの法令で、建物の大きさや用途が制限されています。
特に、建築基準法に定める用途地域の制限と、建ぺい率・容積率の制限は、土地の価格に大きく影響します。
用途地域
「用途地域」とは、建築物の用途を規制するために定められた区分で、以下の13種類があります。
- ・住居系…第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地域、第1種中高層住居専用地域、第2種中高層住居専用地域、第1種住居地域、第2種住居地域、準住居地域
- ・商業系…近隣商業地域、商業地域
- ・工業系…準工業地域、工業地域、工業専用地域
例えば、第1種低層住居専用地域、第2種低層住居専用地域、田園住居地域、第1種中高層住居専用地域では、建築物の用途を事務所とすることはできません。
用途地域の規制は購入希望者にとって重要な事項なので、物件の査定でも重要なポイントとなります。
なお、用途地域が定められていない区域もあります。
売却予定の物件がどの地域に属しているかについては、物件が所在する市区町村で調査することができるので、気になる方は確認してみましょう。
建ぺい率と容積率
建物が所在する地域に定められている建ぺい率と容積率により、建築できる建物の大きさが決まります。
- ・建ぺい率…敷地面積に対する建物の建築面積
- ・容積率…敷地面積に対する建物の延床面積
例えば、建ぺい率が80パーセントの地域に所在する100平方メートルの土地に建築できる建物の建築面積は、80平方メートルです。
容積率が200パーセントの地域に所在する100平方メートルの土地に建築できる建物の延床面積は、200平方メートルです。
このように、建ぺい率と容積率は建築する建物の大きさに関係するので、査定額に影響します。
売却予定の物件の建ぺい率と容積率は所在する市区町村で調査することができます。
なお、容積率は前面道路の幅員により制限されるので注意しましょう。
建物の築年数、管理状況など
建物は建築後の経過年数により、その価格が下がり、分譲マンションの場合はその管理形態や管理状況が物件の価格に影響します。
例えば、分譲マンションの管理方法には次の2つがあります。
- ・自主管理(管理組合の役員や構成員が自分たちで管理)
- ・委託管理(管理会社に委託)
委託管理の場合、管理員が常駐しているか巡回かなども査定のポイントとなります。
不動産査定をスムーズに進めるための事前準備
不動産の査定方法、査定額のポイントなどをみてきましたが、不動産査定をスムーズに進めるために準備すべきことを確認しておきましょう。
以下の準備をしておくと、スムーズに訪問査定を受けることができます。
- ・必要な書類の準備
- ・設備や建具などに不具合があるか確認
- ・修繕やリフォームの必要性があるか
- ・クリーニングの必要があるか
- ・ローン残高の把握
- ・分譲マンションの場合、大規模修繕終了の有無を確認
- ・境界線が明確になっているか
ただ、すべて確認してから査定を依頼しようと思うと、なかなか不動産売却が進みません。
また、自分で確認したつもりでも、不動産のプロが見たら、見えない部分に不具合があるかもしれません。
例えば、建物の配管の劣化など、プロでなければ気がつかないことがたくさんあります。
書類についても同様です。
媒介契約締結までに準備すべきか、引き渡しまでに準備すればよいのかなど、不動産会社の担当者が細かく教えてくれます。
不動産売却に必要な書類も、自分で全て用意したと思っていても、不足が出てくることが多いので、考え過ぎないようにしましょう。
不動産売却を進めるためには、早期に査定してもらうことが大切です。
準備が整わなくても、思い切って不動産会社に相談しましょう。
<査定前に準備しておくとよい主な資料>
登記済証(登記識別情報) | 物件の所有者であることがわかる書面のひとつ |
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法務局で発行する書面 | 登記事項証明書、公図、地積測量図、建物図面など |
物件取得時の資料 | 売買契約書、重要事項説明書、物件状況報告書、境界確定書など |
固定資産税などの納税通知書 | 税金関連の書類 |
相続物件で未登記の場合 | 戸籍謄本、除籍謄本、被相続人の住民票の除票 相続人の印鑑証明書、遺産分割協議書その他 |
不動産の査定後から売却までの流れを知っておこう
不動産売却は、査定から成約まで、次のようなステップを踏みます。
- ・相談と簡易査定
- ・訪問査定
- ・媒介契約締結
- ・内覧対応
- ・売買契約
売出価格と媒介契約締結
不動産の訪問査定が終わったら、媒介契約締結に進みます。
媒介契約締結時には、売出価格を取り決めます。
売出価格は、査定額と一致するとは限りません。
例えば、査定額が3,000万円でも、売主の希望に従い3,200万円で売り出すことができます。
媒介契約には、「一般媒介契約」、「専任媒介契約」、「専属専任媒介契約」の3種類があります。
複数の不動産会社に依頼することができるのが一般媒介契約、1社のみに依頼することができるのが専任媒介契約と専属専任媒介契約です。
専任媒介契約と専属専任媒介契約の違いは、自己発見取引ができるかどうかで、専属媒介契約では認められていますが、専属専任媒介契約では認められていません。
なお、「自己発見取引」とは、自分で買主を探して契約することです。
内覧対応と売買契約
媒介契約を締結したら、不動産会社は次のような方法で物件の販促活動を行います。
- ・インターネット広告
- ・新聞折り込みチラシ
- ・自社の購入見込客への物件紹介
- ・現地案内所の開催
- ・他社への紹介
まだ入居中の物件であれば、売主は物件の内覧希望に応じます。
そして、代金額や引渡し時期、リフォ―ム費用の負担など細かな条件が整えば、いよいよ売買契約です。
この売買契約時の代金額が「成約価格」です。
成約価格は査定額や売出価格と一致するとは限りません。
納得できる価格で成約できるように、売却の事情や希望を早めに不動産会社に伝えましょう。
まとめ
最近はインターネットで気軽に数社に簡易査定を依頼できる一括査定サイトも人気です。
ただ、不動産は個々の特徴が価格に大きく影響します。
数多くの不動産会社に簡易査定を行ってもらっても、正確な査定額が出るわけではありません。
また、査定額が高くても、買い換えなどの事情で早期に売却したい場合、査定額で売り出すのがよいとは限りません。
数社に依頼した結果、査定額に一喜一憂していると、かえって回り道になることもあります。
それよりも、税金や相続対策なども安心して相談できる不動産会社を探し、早期に媒介契約締結に進めるように運ぶことが大切です。