【2020年度最新】土地売却にかかる税金は?計算方法と共に節税対策になる特例を詳しく解説
この記事でわかること
- 土地を売却するときにかかる税金の種類がわかる
- 譲渡所得税についてその概要と税金の計算方法がわかる
- 土地を売却したときの印紙税の概要がわかる
- 土地を売却したときの譲渡所得税の軽減に関する特例の内容がわかる
自己所有の土地を売却したときには、仲介手数料やローン事務手数料、抵当権抹消費用などの諸費用がかかります。
しかし諸費用の中でも、忘れやすいのが税金です。
土地売却を経験した人の中にも、税額の計算については不動産仲介の担当者が知りえない情報が必要になってくるために、売却シミュレーションの中に織り込まれておらず、慌てた経験がある方も多いといいます。
今回は、土地を売却する際にかかる税金について、その概要、計算方法、土地売却の時に使える特例について詳しく紹介します。
土地売却の際の税金は場合によっては高額になってきますので、きちんと資金計画の中に織り込んでおく必要があります。
今回のコラムを参考にして、シミュレーションしてみてください。
土地売却にかかる税金3種類
自己所有の土地を売却したときには、以下の3種類の税金がかかります。
- ・所得税
- ・住民税
- ・印紙税
それぞれについて、納付先、納付方法、税額の計算方法が異なりますので、まずは概要についてみていきましょう。
土地売却における所得税・住民税のあらまし
所得税、住民税はなじみの深い税金で、皆さんも給与所得、事業所得などの所得に対し所得税・住民税を納付していることでしょう。
給与所得のみの場合には別段納付の手続きはありません。
支払事業者が源泉徴収をし、年末調整で税額を調整することにより、代わりに納付しています。
しかし、事業所得、不動産所得などほかの所得がある場合には、「確定申告」をして税額を明らかにし、納税する必要があります。
土地売却について譲渡所得が発生する場合においても同様に確定申告が必要です。
確定申告は基本的に毎年3月15日(土日・祝日の場合には翌営業日)が期限となっており、法定の納期限も同日となっています。
支払方法は現金納付のほか、銀行振替、クレジットカード、コンビニ払いが利用できます。
課税のルールについては、給与所得などの総合課税のグループと土地売却にかかる譲渡所得などの分離課税のグループとでは大きな違いがあります。
給与所得、事業所得などは、それぞれの所得を合算し累進課税の税率を乗じて税額が計算されます。
それに対して土地売却をした場合の利益にかかってくる譲渡所得税・住民税は、後に述べるように総合課税の所得とは別に特別のルールに従って計算されます。
土地売却をした年の翌年の確定申告では、毎年納税している所得税・住民税に加算されて土地売却にかかる譲渡所得税・住民税がかかってくるのです。
印紙税のあらまし
印紙税は、経済的な取引を行った場合、契約書や領収書などの文書を作成したときに印紙税法に従って課税される税金です。
印紙税法では、20種類の課税文書が規定されており、その他の文書は非課税文書とされています。
不動産を売却したときの「売買契約書」についても課税文書とされており、売買金額に従って印紙税がかかります。
印紙税は、収入印紙を郵便局や法務局、コンビニ(200円以下のもの)で購入し文書に貼付して、印鑑で割印することによって納税します。
所得税と住民税は譲渡所得によって決定される
土地売却の時にかかる所得税と住民税は、譲渡所得を確定申告によって申告することで納税額が決定します。
譲渡所得とは、土地の売買価額から、売却した土地の取得費用と売却費用とを差し引いて算出された利益に相当する所得です。
簡単な例では、土地を取得したときよりも、不動産市況がよくなって土地が高値で売却できたときには、売却益については譲渡所得として申告しなければなりません。
譲渡所得の計算方法
譲渡所得は、具体的には以下のような計算方法によって算出されます。
(譲渡所得)=(土地の売却価額)-{(取得費)+(譲渡費用)}
土地の売却価額に含まれるもの
土地の売却価額には、売買契約上の土地価額のほか、固定資産税・都市計画税の精算金も含まれます。
不動産売買の時には、契約日を境に固定資産税・都市計画税を分担する商慣習があるために、1月1日の土地の所有者である売主が支払う固定資産税・都市計画税について、買主が分担金を日割計算により売主に支払います。
税金ですので厳密には売却価格とは異なるものとも考えられますが、国税庁の解釈では売却価額に含めるべきとされています。
取得費に含まれるもの
取得費には、土地の取得価額のほか、取得時の仲介手数料、不動産取得税などの税金、取得時にかかった測量費、造成・整地費用、土地利用のために建物付きの土地を購入した場合の建物撤去費用などが含まれます。
特に注意しなければならないのは、相続や贈与によって土地を取得した場合です。
この場合の取得費に含まれる土地の所得価額は、従前の土地の所有者(被相続人や贈与者)の取得価額を引き継ぎます。
先祖伝来の土地のように取得費がわからない場合には、売買価額の5%を取得費とすることができるルールがありますが、このような場合には譲渡所得が高額になりがちです。
譲渡費用の計算方法
譲渡費用には、譲渡時の仲介手数料や印紙税、測量・境界確定にかかった費用、古い建物や構築物を解体・撤去して更地で売却する場合の撤去費用を含めることができます。
譲渡所得税・住民税の税率
譲渡所得にかかる所得税・住民税の税率は累進課税ではなく、所有していた年数によって決められた税率を適用します。
具体的には、売却した日を含む年の1月1日時点において、所有期間が5年以下の場合には短期譲渡所得、5年を超える場合には長期譲渡所得とされ、以下のような税率が適用されます。
所得税率 (復興特別所得税含む) | 住民税率 | 合計 | |
---|---|---|---|
短期譲渡所得 | 0.15315 | 0.05 | 0.20315 |
長期譲渡所得 | 0.3063 | 0.09 | 0.3963 |
土地を相続や贈与で取得したときには、短期か長期かの判断についても従前の所有者の取得日を引き継ぎます。
たとえば、2020年に相続した土地を2021年に売却する場合であっても、被相続人が2000年に取得した土地であるときには、長期譲渡所得となります。
譲渡所得税を計算するときの注意点
譲渡所得税を計算・申告するときに注意しなければならないのは、売買契約と決済・引渡日が年をまたいでいる場合です。
以下の例を見てみましょう。
(例)
土地取得日:2015年11月30日
土地売買契約締結日:2020年12月20日
土地代金決済・引渡日:2021年1月31日
この場合には、2020年11月30日に土地の取得から5年が経過していますが、短期か長期かの判断はあくまで譲渡日を含む年の1月1日時点において判断します。
2020年1月1日時点においては土地の所得からまだ5年が経過していないので、土地売買契約日を譲渡日として考えるならば、本件取引は「短期譲渡所得」に該当します。
では、例のように、土地代金決済・引渡日が年をまたいでいる場合にはどのように考えたらよいのでしょうか。
このような場合に、売買契約日を譲渡日とするか土地代金決済・引渡日を譲渡日とするかの選択については、当事者に任されているのが実情です。
例のような場合には、土地代金決済・引渡日を譲渡日と解釈し、確定申告を翌年にずらすことによって長期譲渡所得の税率を適用することができます。
所得税、住民税合わせて約20%も税率が異なりますので、慎重に判断しましょう。
印紙税は売却時の価格によって異なる
印紙税は、課税文書に記載された金額によって税額が決定します。
土地売却の場合には、売却時の売買契約書に記載された土地売買代金の価格によって決まります。
印紙には、10万円、6万円、5万円、4万円と色々な種類がありますので、契約書には所定の印紙税額に相当する額の印紙(複数でもよい)を貼付して割印します。
通常は、売主、買主双方の印鑑で割印します。
印紙税の税額
土地売却の際にかかる印紙税額は以下の表の通りになります。
売買価額が10万円を超える場合には、平成26年4月1日から令和4年3月31日までの間に売買契約書が作成された場合には軽減税率が適用されます。
土地価額が1万円以上10万円以下の場合には軽減税率の適用はなく印紙税は200円、1万円以下の場合には非課税になります。
契約金額 本則税率 軽減税率 1万円以下 非課税 - 1万円以上10万円以下 200円 - 10万円を超え50万円以下のもの 400円 200円 50万円を超え100万円以下のもの 1千円 500円 100万円を超え500万円以下のもの 2千円 1千円 500万円を超え1千万円以下のもの 1万円 5千円 1千万円を超え5千万円以下のもの 2万円 1万円 5千万円を超え1億円以下のもの 6万円 3万円 1億円を超え5億円以下のもの 10万円 6万円 5億円を超え10億円以下のもの 20万円 16万円 10億円を超え50億円以下のもの 40万円 32万円 50億円を超えるもの 60万円 48万円
印紙税がかからない場合
契約書を1通しか作成せず、当事者の一方が正本、他方がコピーを保存することで印紙税を節約することができるということを聞いたことがある人もいるかもしれません。
課税文書が契約書の場合には、「契約の成立を証明する目的で作成された文書で、契約当事者の双方または一方が署名・押印があるもの」について印紙税が課税されることになっています。
単なる契約書のコピーを保管するときには、コピーに印紙を貼付する必要はありません。
しかし例外として、以下のような場合にはコピーであっても印紙を貼付しなければなりません。
印紙税を節税するためにコピーで対応する場合には、後で税務調査の際に指摘されないために、以下のような文書にすることを避けましょう。
- ・「本契約書は正本と相違ない」など原本証明文言が入っている場合
- ・コピーに契約当事者双方、もしくは契約の相手方(コピーの所持者以外の者)の記名押印があるもの
- ・原本とコピーに割印がなされているもの
- ・土地売買契約書に「契約成立の証として本書2通を作成し、売主・買主双方が各1通を保管する」という文言がある場合
(本書1通を作成し、買主が1通を保管するという文言ならばコピーは非課税です)
土地売却で活用したい控除・特例
土地を売却したときには、譲渡所得が高額になる場合があります。
また、やむを得ず土地を売却した場合にも譲渡所得税を納税しなければならないのは、税負担の不公平が生じます。
したがって、土地を売却した事情に応じて様々な特別控除や軽減税率の特例が用意されています。
平成21、22年に取得した土地についての特別控除
購入時期が平成21年1月1日から平成22年12月31日の間であって、かつ平成21年取得のときには平成27年以降、平成22年取得のときには平成28年以降に売却した場合には、譲渡所得から1,000万円の控除が受けられます。
譲渡所得が1,000万円以下の場合には全額が控除されます。
平成21年の前年にリーマンショックで大規模な金融の引き締めがあったために、平成21年から平成22年には不動産価格が大暴落しました。
したがって、この時期に購入した土地については、多額の譲渡所得が発生する可能性があるために、特別控除によって税負担を軽減しようとしたものです。
公共事業などのために土地を売却したときの特別控除と買換特例
土地収用法などによる土地の収用のため、あるいは公共事業を行う目的で国と地方公共団体に売却したときには、譲渡所得から5,000万円を限度として控除を受けることができます。
(主な適用要件)
- ・売却対象土地は、不動産事業において売却目的で取得したもの(商品・棚卸資産)として計上しているのではなく、あくまで固定資産として計上されていること
- ・公共機関から買い取りの申出があってから6か月以内に土地を売却していること
- ・年をまたいで複数回にわたり売却した場合には、最初の年の売却に限り適用することが可能
複数の土地を売却したことにより、特別控除の対象となる所得について、短期譲渡所得と長期譲渡所得が混在する場合には、5,000万円を限度として、①短期譲渡所得②長期譲渡所得の順番で控除します。
一方で、譲渡してから2年以内に譲渡代金を元手に他の土地・建物を購入した場合には、今回の売買がされなかったものとし、譲渡所得がなかったものとみなす特例もあります。
先述の5,000万円の特別控除とは選択適用になり、どちらか一方を選ぶことになります。
土地区画整理事業などのために土地を売却したときの特別控除
国や地方公共団体が行う土地区画整理事業のために、土地を売却した場合には、譲渡所得について2,000万円を限度として特別控除を受けることができます。
「土地区画整理事業」とは公共機関が住宅地の開発、防災街区の整備、古都の保存や緑地の整備などを目的として行う事業で、時には民間所有の土地の買い取りを伴います。
土地所有者にとっては公共の利益に貢献するために土地を売却することから、税負担が軽減されているのです。
2,000万円の特別控除についても、年をまたいで複数回土地を譲渡した場合には、最初の年のみの適用になります。
住宅地造成事業などのために土地を売却したときの特別控除
特別の法律により指定された、公共機関が行う住宅開発事業のために土地を譲渡する場合には、1,500万円を限度に特別控除を受けることができます。
たとえば以下のような場合が該当します(詳細な条件は特別法に規定されています)。
- ・公営住宅や空港の建設、公共施設の整備ための買い取りの場合
- ・中心市街地の活性化のための買い取りの場合
- ・景観計画の実行や歴史的風致の維持のための土地の買い取りの場合
- ・工業用地の造成事業を行うための土地の買い取りの場合
- ・生産緑地地区内にある土地について、地主が買い取り請求をすることによって行う場合
農地保有の合理化ために土地を売却したときの特別控除
農地や森林の保有に関して合理化を図るために公共機関に土地を譲渡した場合で一定の要件を満たすときには、譲渡所得から800万円を限度として特別控除を受けることができます。
農業振興地域内の農地等を農業委員会の斡旋により売却した場合や、森林組合に委託して森林保有の合理化のために地域森林計画の対象となる森林を売却した場合などが該当します。
相続した土地を売却したときの取得費加算
相続や遺贈などによって取得した土地を売却した時には、一定の要件を満たした場合、譲渡所得の計算における取得費のなかに既に支払った相続税額の一部を加算することによって、譲渡所得を軽減することができます。
加算する相続税額は、対象となる土地の所有者が相続した正味の遺産総額のうち、対象土地の相続税評価額の割合に応じて算出された相続税額です。
相続税額が譲渡所得を超える金額の場合には、譲渡所得全額が控除されます。
この特例を適用するためには、譲渡日が相続開始の日から相続税申告期限の日から起算して3年を経過するまでの間でなければなりません。
この特例を適用する時に最も注意なければならない点は、相続税の取得費加算を適用する期限を迎える前に、相続人間で遺産分割協議を終わらせることです。
相続税の申告期限までに遺産分割協議が完了していなければ、いったん法定相続分に従って遺産を相続したとみなし相続税の申告をすることになりますが、その後に遺産分割協議が完了すれば、税額を更正することは可能です。
しかし、取得費加算を適用する期限まで遺産分割協議がまとまらなければ、適用することはできません。
居住用財産を売却したときの特別控除
土地売却時には更地であったとしても、その土地に以前家屋が存在しマイホームとして住んでいた場合には、譲渡所得から3,000万円の控除を受けられる可能性があります。
この場合、以下の要件を満たす必要があります。
- 1 土地売買契約が建物を解体・撤去した日から1年以内に締結され、かつ家屋に住まなくなった日から3年を経過する日を含む年の12月31日までに売却されたこと
- 2 建物を解体・撤去した日から売買契約の日までに駐車場などほかの用途に使用していないこと
特例を適用するためには確定申告が必要
これらの特例を適用するためには、譲渡所得を申告して特例を適用するための明細書や特別に定められた添付資料を提出する必要があります。
特例を適用した結果、譲渡所得が生じないからといって申告の必要がないというわけではありません。
適用要件については複雑なものもありますので、不動産の専門家や税理士と相談しながら申告手続きを進めることをお勧めします。
まとめ
自己所有土地の売却計画を立てるときには、売却代金のみならず、売却時に支払う税金についても計画に織り込んでおくことが重要です。
印紙税は申告などの手続きがないために放置されがちですが、税務調査の時には真っ先にチェックされる項目です。
売却額が高額になると印紙税も数万円、数十万円になりますが、必要経費と割り切って対処すべきです。
譲渡所得税の計算は、売買価格だけではなく取得費が譲渡費用の算出が必要であり、また短期譲渡所得と長期譲渡所得で税率が異なるために、売主から積極的に相談しないと見過ごされてしまうことにもなりかねません。
特例の適用についても合わせて担当者に相談してみましょう。
今回のコラムの内容を十分に理解して、土地売却を成功させてください。