不動産売買契約での売手側の必要書類リストと入手方法【良い条件で売るために必要書類を揃えよう】
この記事でわかること
- 不動産売買契約の「手順と流れ」が理解できる
- 不動産売却に必要な書類がわかる
- 必要書類を準備する際のポイントが理解できる
不動産を売却する際には、さまざまな書類を準備する必要があります。
必要書類の中には、身分証明書や住民票といった馴染みのあるものから、普段は目にすることのない専門的な書類など、権利や物件に関わる多くの書類を要求されることがあります。
また、マンションや戸建てといった物件種別によって必要な書類や時期も異なるうえ、紛失してしまった場合などには再度取得を急がなければならないものもあります。
そのため、不動産の売却を検討される際には、いつ、どのような書類が必要か、事前に知っておくことがおすすめです。
この記事では、不動産売却の手順を確認しながら、必要書類とその時期やポイントについて詳しく解説していきます。
目次
- 1 不動産売却の手順と流れ
- 2 不動産売却に必要な書類リスト
- 3 必要書類を準備するときのポイント
- 4 まとめ
不動産売却の手順と流れ
まずは不動産売却の手順を見ていきましょう。
不動産売却が完了するまでには、大きく分けて下の5つのステップがあります。
- ・物件査定
- ・媒介契約
- ・売却活動
- ・契約
- ・決済
これらの手順を進めるうえで、売主は不動産会社および買主から「物件に関する情報」と「権利に関する情報」が記載された書類を求められます。
必要書類は、売却初期から決済にかけて、どんどんと増えていくことが一般的です。
物件査定に必要な書類
不動産会社に依頼する物件査定では、実は必要な書類はほとんどありません。
不動産会社は、土地と建物の大きさや築年数、周辺物件の成約価格などから想定売却価格を算出して査定報告書を作成します。
そのため、上記のような机上で行う「簡易査定」であれば、所有者から提出する書類はなく、住所などを伝えればネットのみで完結することも可能です。
一方で、精度の高い査定価格を算出するためには「訪問査定」が必要です。
より具体的に物件の情報が必要となるため、不動産会社から測量図や建物図面などを求められる場合があります。
媒介契約で必要な書類
売却活動を開始する際には、依頼する不動産会社との間で媒介契約を締結します。
この媒介契約時には、通常、不動産会社から権利証と身分証明書の提示を求められます。
不動産は高額な商品であるため、依頼主が本当の所有者であるか、もしくは売却する権利を有する人物であるか、取引の安全を確保するために権利に関する確認が必要となるのです。
売却活動で必要な書類
売却活動に際しては、物件の測量図や建物図面などを求められます。
売却活動が始まると仲介会社によってネットやチラシなどへ広告を掲載するため、より具体的な物件の情報が必要となるのです。
また戸建てやマンションなどは、リフォームや水回りの交換などを行っていた場合、物件のアピールポイントともなるため、修繕履歴書などがあると良いでしょう。
契約に必要な書類
売買契約を行う際には、身分証明書や印鑑証明書、権利証など、権利に関する書類を求められます。
権利を手放す売主においては、契約書への押印は印鑑登録をした実印でなくてはなりません。
こうすることによって、売主本人であること担保し、取引の安全を確保することができるのです。
また、稀に契約時点で印鑑登録をしていない売主さんもいます。
その場合は、決済までに契約で使用した印鑑を実印として登録しなければいけません。
所有権移転登記を行うためには、登記を行う司法書士に権利証と印鑑証明書を提出する必要があるからです。
決済に必要な書類
決済では、所有権移転登記を行うための権利に関する書類のほか、買主へは物件に関する全般的な書類を引き継いでいきます。
この様に、各ステップで求められる書類はさまざまあるため、具体的にご自身の場合は何がいつ必要なのかを事前に知っておくことが重要です。
不動産売却に必要な書類リスト
以下の表は、物件の種別に分けて必要書類を分類したものです。
後ほど項目別に詳しく解説していきますので、ご自身の所有する不動産が該当するものについてチェックしてみましょう
No | 項目 | 戸建て | マンション | 土地 | 入手場所 |
---|---|---|---|---|---|
1 | 登記済権利証 | ○ | ○ | ○ | 再発行不可 (紛失措置あり) |
2 | 固定資産税納税通知書 | ○ | ○ | ○ | 行政 |
3 | 間取り図 | △ | △ | × | 不動産購入時 (登記所の窓口でも取得可能) |
4 | 印鑑証明書 | ○ | ○ | ○ | 行政 |
5 | 身分証明書 | ○ | ○ | ○ | (種類による) |
6 | 建築確認済証、検査済証 | ○ | × | × | 行政 |
7 | 地積測量図・境界確認書 | ○ | × | ○ | 測量士へ相談 |
8 | マンションの管理規約 | × | ○ | × | 管理組合 |
9 | ローン残高証明書 | △ | △ | △ | 金融機関 |
10 | 住民票 | △ | △ | △ | 行政 |
11 | 重要事項説明書 | △ | △ | △ | 再発行不可 |
12 | 耐震診断報告書 | △ | △ | × | 建築士等 |
13 | アスベスト使用調査報告書 | △ | △ | × | 専門会社 |
14 | マンション維持費関連書類 | × | △ | × | 不動産会社 |
15 | 建物状況調査報告書 (ホームインスペクション) | △ | × | × | 専門会社 |
16 | 建設住宅性能評価書 | △ | × | × | 専門会社 |
17 | 物件状況等報告書 | ○ | ○ | ○ | 不動産会社 |
18 | 付帯設備表 | ○ | ○ | × | 不動産会社 |
19 | 物件取得時の売買契約書等 | ○ | ○ | ○ | 再発行不可 |
登記済権利証
登記済権利証は略して「権利証」とも呼ばれます。
その不動産を所有する者は誰なのかが記載された証書であり、不動産会社との媒介契約を締結する際には提示を求められ、決済時には所有権移転登記をするために司法書士への提出が必要です。
この権利証は再発行をすることができません。
ただし、万が一紛失してしまった場合は、以下の様な方法で対応することができます。
事前通知制度
「事前通知制度」とは、正当な理由により権利証を提出できない場合に、登記を申請する法務局の登記官によって登記義務者として認めてもらう制度です。
この精度を利用する場合、費用はかかりませんが、書類の手配や郵送期間など手間と時間がかかります。
資格者による本人確認情報の提供制度
「資格者による本人確認情報の提供制度」とは、司法書士が本人に面談し、運転免許証や健康保険証等の本人確認書類の提示を受けて本人確認証明情報書面を作成する制度です。
登記申請する際は、この本人確認情報書面が権利証の代わりを果たすわけです。
これらは全て司法書士の判断と手続きによって行われるため、本人の手間と時間はかかりませんが、司法書士への手数料が発生します。
公証人による本人確認制度
「公証人による本人確認制度」とは、印鑑証明書、実印、委任状を持参して公証役場へ足を運び、公証人の立ち会いのもと所定の手続きを行う制度です。
書類が真性なものとして公証人に認められることで、委任状自体が権利証の代わりとして公的に認められる制度です。
少し手間はかかりますが、司法書士などに支払う手数料よりも安く済むため、費用を極力抑えたい方におすすめの方法です。
固定資産税納税通知書
固定資産税とは、毎年1月1日現在の土地、家屋および償却資産の所有者に対し、その固定資産の価格をもとに算定される税額をその固定資産の所在する市町村が課税する税金です。
固定資産税納税通知書には納税すべき年税額が記載されており、通常その年の6月に送付されます。
固定資産税納税通知書は、主に決済前に不動産会社から求められることが多いです。
買主に対して税額を知らせる必要があるためです。
また、不動産の売買を行った場合、その年の税金は決済日前日までの分を売主の負担とし、決済当日から後の分を買主の負担とすることが一般的です。
この負担金の計算をするために用いられます。
納税通知書を紛失してしまったら
もし納税通知書を紛失してしまった場合には、まず不動産会社へ相談しましょう。
不動産会社が媒介契約書や委任状により代理して、「公租公課証明書」という書面を行政の資産税課で取得してくれます。
公租公課照明者には税額が記載されているため、これを負担額の算定根拠として使用します。
間取り図
マンションおよび戸建てを売却する場合には、間取り図があると購入者も検討しやすく、販売上有利になることがあります。
マンションや戸建て購入時に受領した設計図などは各部屋の寸法など、詳細な数字が記載されているため、購入検討者は家具の配置などのイメージがしやすくなります。
しかし、中古を購入した場合などは、そもそも間取り図や設計図が無い場合もあります。
その場合には、不動産会社に依頼し、現況の寸法をメジャーなどで計測の上、仮間取り図面を作成してもらいましょう。
印鑑証明書
印鑑証明書は、決済時に本人確認書類として、また所有権移転登記申請をするために必要書類として用いられます。
印鑑証明書は行政の窓口で取得することができます。
契約時に実印登録をしていなかった場合は、決済時までに必ず契約書に押印した印鑑で印鑑登録を済ませておきましょう。
印鑑証明書は3ヶ月以内のもの、共有者がいれば全員必要
登記申請で用いる印鑑証明書は3ヶ月以内に取得したものでなければ使用できないため、書面の日付には十分注意しましょう。
また、不動産が共有の場合は、共有者全員分の印鑑証明書が必要です。
特に共有者の一人が代表して契約を行うような場合には、事前に周知しておきましょう。
身分証明書
本人確認に用いられる身分証明書は、運転免許証やパスポート、マイナンバーカードなど顔写真付きのものを準備できると良いでしょう。
公的な顔写真付きの身分証明書は、それ1点で本人確認書類として用いることができます。
なお、顔写真付きの身分証明書が無い方は、印鑑証明書や年金手帳など公的な身分照明書を2点提出することで本人確認書類とすることができます。
ただし、身分証明書の中には本人確認書類として認められないものもあるため、事前に不動産会社や司法書士に相談しておくと安心です。
建築確認済証、検査済証
建築確認済証・検査済証は、建物の計画や建築をした際に法令や条例に違反せずに建てられたものか検査期機関がチェックし、交付される証明書です。
中古戸建として売却する場合には、法令を遵守した建物である証明書として用いられます。
なお、お手元に保管が無い場合は、行政窓口でも入手することができます。
地積測量図・境界確認書
地積測量図・境界確認書は戸建てや土地の売却の場合に必要です。
測量図と境界確認書の交付や境界の明示は、取引を円滑にするためにも行うことがベストです。
しかし、これら書面が無い場合は作成費用が発生してしまうため、交付や明示を行わないことを売買の条件とすることも可能です。
ただし、取引の安全性や売買価格に影響する可能性もあるため、事前に不動産会社へ相談のうえ決定することをおすすめします。
マンションの管理規約
マンション売却の場合は、マンション管理規約を準備しておきましょう。
手元に保管が無い場合は、管理組合もしくは管理会社へ再発行を依頼すれば入手できる場合が多いです。
ローン残高証明書
住宅ローン利用している場合、不動産には抵当権が付されています。
そしてこの抵当権を抹消する、すなわちローンを完済しなければ所有権移転を行うことができません。
そのため、物件を売り出す際には残債割れが起こらない様に、ローン残高を確認して売出し価格を決定する必要があります。
住民票
売主の現住所と登記上の住所が異なる場合は、所有権移転登記をする際に住所変更登記をする必要があります。
そのため、決済時に住民票を司法書士に提出します。
なお、発行から3カ月以内のものが有効であるため、日付に注意しましょう。
重要事項説明書
重要事項説明書の保管がある場合は、買主へ引き継ぐと良いでしょう。
ただし、重要事項説明書は再交付されることはありません。
保管が無くても特に売買に大きな影響はありませんので、無い場合はその旨不動産会社へ伝えましょう。
耐震診断報告書
耐震診断報告書は、建物の耐震性について専門家が調査を交付するものです。
売却において必須ではありませんが、特に築年が古い場合は耐震性を心配する購入検討者が少なくないため、建物の耐震性を数字で可視化しておくことは販売上のアピールポイントになると言えます。
なお、マンションの場合は管理会社へ問合せると耐震診断の有無を教えてもらうことができます。
診断を行っている場合は、報告書の取得が可能であることが一般的です。
アスベスト使用調査報告書
アスベストは石綿を含有した建材です。
古くは天井や壁材として利用されていましたが、発がん性があるとして健康への影響が懸念されています。
アスベストの有無を専門家の調査により明確にすることは、買主保護や取引の安全性につながると言えます。
またマンションの場合は耐震診断と同じく、管理組合や管理会社へ問合せることにより、診断やアスベスト存否の有無を確認することができます。
マンション維持費関連書類
マンションの売却には、管理費や修繕積立金、設備の仕様説明書、町内会費、施設使用料等が分かる書類も必要です。
基本的にはマンション購入時に配布されるものですが、管理会社によっては新規に交付してくれる場合もあるため、紛失等してしまった場合には問い合せましょう。
固定資産税と同じく、管理費や修繕積立金も日割り精算をすることになるため、これらの書類が売主と買主それぞれの負担額の算出根拠です。
建物状況調査報告書(ホームインスペクション)
建物状況調査報告書は専門家による建物の目視調査の報告書であり、「ホームインスペクション」という名前で知られています。
インスペクションでは基礎や柱、屋根などの主要構造物や防水設備について目視や計測等の調査を行います。
中古市場が拡大する昨今では、このインスペクションを取り入れる中古物件が増えています。
公的書類ではありませんが、一定の品質を証明することで、販売上のアピールポイントになります。
建設住宅性能評価書
建設住宅性能評価書は、建物検査によって劣化状況や性能に関して、専門家が評価して作成する書面です。
中古住宅の場合、木造戸建では築20年以内、鉄筋コンクリート造マンションでは築25年以内でないと買主の住宅ローン控除を受けることができません。
しかし、建設住宅性能評価により新耐震基準の適合証明が取得できれば、買主の住宅ローン控除の対象とすることができます。
建物の状態にもよりますが、築古物件であっても広く集客を図ることができるでしょう。
物件状況等報告書
物件状況等報告書は、物件状況や周辺状況について、売主が知っている内容を記入し、売買契約時に買主へ交付します。
この書類に物件の修繕履歴や物件周辺を含めた懸念事項など記入し、買主へ事前告知することで、引渡し後のトラブルを防ぐ役割があります。
契約条件にもよりますが、事前告知されていなかった不具合が引き渡し後に発見されると、最悪の場合、賠償責任が発生する可能性があるため記入には注意が必要です。
なお、書類は不動産会社がフォーマットを持っており、契約前に記入を依頼されます。
記入の際に不安な場合は、不動産会社に必ず意見を求めましょう。
付帯設備表
付帯設備表とは、物件に関する設備の有無や故障不具合の有無を買主へ告知する書類です。
この書類には、物件状況報告書と同じく、契約時に必要事項を記入のうえ買主へ交付します。
なお、この存在する付帯設備についても、引渡し後に不具合が発見された場合には、一定期間を設けて修繕責任が発生する可能性があります。
必ず設備の状況を確認し、注意して記入するようにしましょう。
物件取得時の売買契約書等
不動産を売却した場合は、不動産譲渡税が課せられる可能性があります。
この不動産譲渡税は売買金額に課せられるものではなく、基礎控除物件の取得費、取得および売却に要した経費を差し引いて残った「売却益」に課せられます。
そのため、物件を購入した際の売買契約書や取得にかかった経費の領収書を準備し、課税対象となるか否かを不動産会社や税理士に相談のうえ、事前に把握しておきましょう。
必要書類を準備するときのポイント
ここまでご覧いただいとおり、準備すべき書類は物件種別によって異なり、また必要なタイミングもさまざまでした。
ここからは、書類を準備するときのポイントを紹介していきます。
必要書類の準備は早めに行う
書類の準備には手間や時間を要することは既にお伝えしたところですが、準備はなるべく早く行うことが重要です。
不動産売却は、売出しから決済まで一般的に3ヶ月から半年程度と言われています。
しかし、中には売出しから数日で購入検討者が現れることもあり、予想に反して早急に契約準備が必要なケースもあります。
さらに、書類が整うにつれて、予期せぬネガティブな物件の状況や情報が判明することも少なくありません。
取引の安全を図るためにも、懸念事項は早めに把握しておきたいところです。
そのため、不動産会社との媒介契約を締結する時点では、ご自身で取得できる書類については極力準備できていることが望ましいでしょう。
買手の立場に立って任意の書類も準備しておく
より良い条件で売却を成功させるためには、買手の立場に立って任意の書類を準備しておくこともポイントの一つです。
特に、マンションや中古戸建ての場合、付帯する設備機器の状態は購入検討者の気になる箇所です。
特に水廻りの設備環境は実生活に大きく影響するため、機器の説明書や修繕履歴等の書類がある場合には、事前に状況を把握し説明できるようにしておくと安心です。
売却完了後も書類は大切に保管しておく
売却完了後も油断は禁物です。
決済翌年には確定申告が控えているため、不動産譲渡税の控除額の算定根拠となる経費の領収書なども大切に保管しておきましょう。
まとめ
条件良く不動産を売却するためには、不動産会社や買主に対しての情報開示がとても重要です。
この記事を参考にしながら、ご所有の不動産ではいつ、何の書類が必要かを把握し、売出し前のなるべく早いタイミングで準備することで、きっと安心安全な取引が実現できることでしょう。