マンション売却に税金がかからないケースと節税の注意点
この記事でわかること
- マンション売却にかかる税金がわかる
- マンション売却に税金がかからないケースとかかるケースがわかる
- マンション売却時の譲渡所得税を計算する流れがわかる
- マンション売却時に節税するときの注意点
マンションを売却するときには、誰しも手元に多くのお金を残したいものです。
いくら手元に残るかは諸経費だけなく、税金がいくらかかるのか理解しておかないといけないため、税金の知識を得ておかなければいけません。
税金の知識については特に手元に残る金額に大きく影響するため、売却時にどのような税金がかかるのかだけでなく、特例や控除の内容まで理解しておくことが大切です。
本記事では、マンション売却にかかる税金がかかるケースや、計算方法、節税の注意点について解説しますので、マンション売却して手元にいくら残るのか気になる人は参考にしてください。
目次
マンション売却にかかる税金
マンション売却にかかる税金は、次のとおりです。
マンション売却にかかる税金
- 印紙税
- 登録免許税
- 消費税
- 譲渡所得税
マンション売却時には、これら4つの税金が課税されます。
この中で特に税額が大きくなる可能性の高い、譲渡所得税には気を付けなければいけません。
ただし、節税しやすい税金でもあるため、譲渡所得税についての理解を深めることが非常に大切です。
では、それぞれの内容について詳しく見ていきましょう。
印紙税
印紙税とは、印紙税法に定める課税文書を書面で作成したときに課税される税金です。
マンション売却時に作成する課税文書は、不動産売買契約書です。
不動産売買契約書を作成し、契約を締結すると、次の表にある印紙税額が課税されます。
なお、表は特例措置で印紙税額が減額されており、2024年3月31日までに作成される不動産売買契約書に適用されます。
不動産売買契約に記載された売買金額 | 印紙税額 |
---|---|
1万円未満 | 非課税 |
1万円以上10万円以下 | 200円 |
10万円を超え50万円以下 | 200円 |
50万円を超え100万円以下 | 500円 |
100万円を超え500万円以下 | 1,000円 |
500万円を超え1,000万円以下 | 5,000円 |
1,000万円を超え5,000万円以下 | 1万円 |
5,000万円を超え1億円以下 | 3万円 |
1億円を超え5億円以下 | 6万円 |
5億円を超え10億円以下 | 16万円 |
1億円を超え50億円以下 | 32万円 |
50億円超え | 48万円 |
(参照元:国税庁)
なお、印紙税は不動産売買契約書に印紙税額相当分の収入印紙を貼り、割印をすることで納付します。
収入印紙を貼っただけで割印していない場合は納税したとみなされないため、注意しましょう。
また、割印は印章や署名によって行わなければいけないため、ただ単に丸の印鑑が押されている、あるいは斜線を引いただけでは割印とは認められません。
登録免許税
登録免許税とは、法務局に登記を行ってもらうときに課税される税金です。
マンション売却時、売主に登録免許税が課税されるのは、抵当権抹消登記を行うときです。
抵当権抹消登記を行うときには、抵当権を1件抹消するごとに1,000円の登録免許税が課税されます。
たとえば、マンションの土地に2件、建物に2件の抵当権が設定されていた場合の登録免許税は次のように計算します。
1,000円 × (2件 + 2件)= 4,000円(登録免許税)
このケースでは、抵当権抹消登記をするときに4,000円の登録免許税が課税されます。
消費税
消費税とは、日本国内で物品やサービスを消費したときに課税される税金です。
マンションを売るときには、仲介手数料や司法書士への報酬、住宅ローンの繰り上げ返済手数料に消費税が課税されます。
マンション売却に関連する消費税の税率は10%です。
たとえば、仲介手数料が200万円だった場合の計算式は、次のとおりです。
200万円 × 10% = 20万円(消費税)
このケースでは、仲介手数料を払うときには20万円の消費税を上乗せし、不動産会社に支払います。
そして、不動産会社は顧客から受け取った消費税を、顧客の代わりに納税します。
譲渡所得税
譲渡所得税とは、不動産の売却時、譲渡益が発生した場合に課税される税金です。
譲渡所得税は、マンション売却時に譲渡所得が発生しなかった場合は課税されません。
しかし、課税されるときには、数百万円にも上るケースがあるため、要注意です。
譲渡所得税の課税が大きくなる原因の1つが、下記の表のような税率の高さです。
区分 | 短期譲渡所得 | 長期譲渡所得 |
---|---|---|
期間 | 5年以下(※) | 5年超(※) |
税率 | 39.63% (住民税・復興特別所得税含む) | 20.315% (住民税・復興特別所得税含む) |
※所有期間は、次のような考え方で判定されます。
不動産を売却した年の1月1日現在で所有期間が5年以下なら短期譲渡所得の適用を受け、5年を超えている場合は長期譲渡所得が適用されます。
なお、譲渡所得税は計算方法がわかれば、不動産の知識が少ない人でも算出が可能です。
計算方法については、「マンション売却時の譲渡所得税を計算する流れ」にて後述します。
マンション売却に税金がかからないケース
マンション売却に税金がかからないケースは、次のとおりです。
売却に税金がかからないケース
- 電子契約した場合
- 譲渡所得が発生しなかった場合
- 特例・控除を利用した場合
マンションを売却するときに課税される税金は、一定条件を満たすと課税されなくなります。
どのようなケースで税金が課税されないのか理解しておくことで節税が図れますので、ぜひ参考にしてください。
電子契約した場合
不動産売買契約を電子契約で締結した場合、印紙税は課税されません。
印紙税は課税文書を「書面」で作成することにより、課税される税金です。
しかし、電子契約では書面を作成しないため、印紙税が課税されません。
電子契約を利用するためには、次のような条件があります。
- 売却を依頼している不動産会社が電子契約に対応していること
- 買主に電子契約をするための承諾を得ていること
残念ながら不動産における電子契約は普及しているとは言い難く、売主の一存では行えないため、印紙税を節税するのは難しいかもしれません。
譲渡所得が発生しなかった場合
譲渡所得が発生しなかった場合は、譲渡所得税は課税されません。
譲渡所得税は譲渡所得に対して課税される税金であり、譲渡所得が発生しなければ税金を徴収する理由がなくなるからです。
譲渡所得が発生したかどうかは、次の計算式を使って算出します。
たとえば、次のような条件のマンションを売却したとします。
- 売却金額:3,000万円
- 取得費:5,000万円
- 減価償却費:1,000万円
- 譲渡費用:100万円
- 特例・控除は利用しない
上記の場合の計算式は、次のとおりです。
3,000万円 -(5,000万円 – 1,000万円 + 100万円)= -1,100万円(譲渡所得)
この場合、譲渡所得の金額がマイナスになるめ、譲渡所得は発生せず、譲渡所得税も課税されません。
特例・控除を利用した場合
譲渡所得が発生したとしても、特例・控除を利用した場合には譲渡所得税が課税されないケースもあります。
譲渡所得税の特例・控除の中には、譲渡所得を控除できる制度があります。
特例・控除の控除額が譲渡所得を超えている場合は、譲渡所得税が課税されません。
たとえば、居住用財産の3,000万円控除を利用した場合、譲渡所得から3,000万円の控除が可能です。
譲渡所得が3,000万円以下であれば、居住用財産の3,000万円控除を利用するだけで譲渡所得がゼロになります。
譲渡所得がゼロになれば、譲渡所得税は課税されません。
しかし、特例・控除を利用しても譲渡所得が残ってしまう場合には、譲渡所得税が課税されます。
そのため、譲渡所得がいくらなのか確認しておくことが重要になります。
マンション売却に税金がかかる可能性が高いケース
マンション売却で税金のかかる可能性が高いケースは、次のとおりです。
税金のかかる可能性が高いケース
- 価格が上がっているときにマンションを売却するケース
- 取得費がわからないケース
- 一定の条件下で住宅ローン控除を利用するケース
マンション売却時に税金がかかるかどうかは、一定の条件を満たしているかどうかで判断が可能です。
税金がかかる可能性の高い状態でマンションを売却するときには、必ず税金がいくら課税されるのか確認しておきましょう。
価格が上がっているときにマンションを売却するケース
価格が上がっているときにマンションを売却すると、譲渡所得税がかかるケースも増えるため、注意しましょう。
譲渡所得税は、購入時よりも安く売ると課税されにくくなります。
マンション購入代金は取得費に計上できるため、取得費が多くなればなるほど譲渡所得は発生しにくくなります。
反面、マンションを安く購入し、売却するときに購入代金よりも売却代金が上回っていると譲渡所得が発生しやすくなります。
このような理由があり、マンションの価格が上昇しているときには、譲渡所得税が課税されやすくなるため、注意しなければいけません。
取得費がわからないケース
取得費がわからないケースは、譲渡所得税が課税されやすい状態です。
マンション購入代金や購入諸経費は取得費に計上できますが、相続で受け継いだマンションの場合取得費がわからないというケースがあります。
取得費がわからない場合、概算取得費として売却金額の5%を取得費としての計上が可能です。
しかし、売却金額の5%は取得費としてかなり低い金額と言わざるをえません。
マンション購入代金が売却金額の5%ということは、まずないからです。
概算取得費を利用する場合は、譲渡所得が抑えられず、譲渡所得税を課税される可能性が高くなります。
一定の条件下で住宅ローン控除を利用するケース
一定の条件下で住宅ローン控除を利用するケースでは、譲渡所得税の課税が増える可能性もあります。
一定の条件下とは、次のような条件です。
- マンションの住み替えを行う
- 住宅ローン控除を行う
- 新居に入居した前々年から翌々年に、昔住んでいた自宅を売却する
上記のような条件で住み替えして住宅ローン控除を利用すると、譲渡所得税の主な特例・控除が利用できません。
特例・控除の一部には、特定の特例・控除を利用した場合、利用した年の前々年~翌々年に適用できない制度があります。
たとえば、次の特例・控除は、住宅ローン控除を適用した年の前々年~翌々年に適用できません。
- 居住用財産の3,000万円控除
- 10年超所有軽減税率の特例
- 特定の居住用財産の買い換えの特例
譲渡所得税を節税するための特例が利用できなければ、税金を課税されてしまう可能性も高くなってしまうので注意しましょう。
マンション売却時の譲渡所得税を計算する流れ
マンション売却時の譲渡所得税を計算する流れは、次のとおりです。
- 減価償却を計算
- 譲渡所得を計算
- 譲渡所得税を計算
マンションを売却するときの譲渡所得税の計算方法はやや複雑ですが、計算方法を理解すれば税額を算出できます。
譲渡所得税の計算方法を理解し、税金がいくら課税されるのか確認しておきましょう。
減価償却の計算の流れ
譲渡所得税を計算するときには、まず減価償却を計算します。
減価償却とは、築年数の経過により不動産の価値がどのくらいまで落ちているのかを表した数字です。
不動産の価値が落ちた分は入居者が不動産の価値を利用したと考えられるため、取得費とはみなされません。
そのため、取得費を計算するには、減価償却がいくらなのか計算する必要があります。
減価償却を計算するには、不動産の耐用年数と償却率を計算しなければいけません。
耐用年数の計算
売却するマンションを中古で購入したときには、耐用年数の計算をしなければいけません。
耐用年数を計算するときには、次の表を利用します。
構造 | 法定耐用年数 | |
---|---|---|
木造 | 22年 | |
鉄骨造 | 骨格材厚 3mm以下 | 19年 |
骨格材厚 3mm~4mm | 27年 | |
骨格材厚 4mm超え | 34年 | |
鉄筋コンクリート造(RC造) 鉄骨鉄筋コンクリート造 | 47年 |
マンションの構造によって、耐用年数が変わります。
売却するマンションの構造はどれか確認し、耐用年数が何年なのか見ます。
【法定耐用年数を超えた中古マンションを購入した場合】
法定耐用年数を経過した中古マンションを購入した場合の計算式は、次のとおりです。
【法定耐用年数がまだ経過していない中古マンションを購入した場合】
法定耐用年数がまだ経過していない中古マンションを購入した場合の計算式は、次のとおりです。
なお、売却するマンションを新築で購入したときには、耐用年数の計算は必要ありません。
新築マンションを購入した場合は、次の償却率の計算を確認ください。
償却率の計算
耐用年数を計算したら、次に償却率を計算します。
償却率の計算方法は、次のとおりです。
なお、新築マンションを購入した場合は、次の表を確認して償却率を利用します。
構造 | 償却率 | |
---|---|---|
木造 | 0.031 | |
鉄骨造 | 骨格材厚 3mm以下 | 0.036 |
骨格材厚 3mm~4mm | 0.025 | |
骨格材厚 4mm超え | 0.020 | |
鉄筋コンクリート造(RC造) | 0.015 |
減価償却を計算
減価償却の計算方法は、次のとおりです。
減価償却を計算するときには、建物の購入代金を調べる必要があります。
土地には減価償却という考え方がないため、減価償却は建物だけ計算します。
マンションの購入代金には土地代金が含まれているため、土地の価格と建物の価格を分けなければいけません。
譲渡所得を計算
譲渡所得の計算方法は、次のとおりです。
なお、マンション購入時に取得費に計上できる費用は、次のとおりです。
- マンションの購入代金
- 不動産取得税や登録免許税、印紙税
- 購入時の仲介手数料
- オプション費用 など
マンション売却時に譲渡費用に計上できる費用は、次のとおりです。
- 印紙税
- 売却時の仲介手数料
譲渡所得税を計算
譲渡所得税の計算方法は、次のとおりです。
譲渡所得税の税率に適用される税率については前述の「譲渡所得税」をご覧ください。
譲渡所得が発生した場合は、売却した年の翌年に確定申告をしなければいけません。
そして、譲渡所得税の納税時期は、確定申告の期日(マンション売却の年の翌年の2月16日~3月15日まで)です。
マンション売却時に使える税金の特例・控除
マンション売却時に使える主な税金の特例・控除は、次のとおりです。
マンション売却時に使える主な税金の特例・控除
- 居住用財産の3,000万円控除
- 10年超所有軽減税率の特例
譲渡所得税を抑えるためには、特例・控除を利用します。
譲渡所得税を抑えられる特定・控除にはどのような制度があるのか紹介していきますので、ぜひ参考にしてください。
居住用財産の3,000万円控除
居住用財産の3,000万円控除とは、一定条件を満たし自宅を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる制度です。
居住用財産の3,000万円控除が適用されれば譲渡所得3,000万円までであれば、無条件で譲渡所得税の課税がゼロになります。
適用条件など詳しい内容は、国税庁ホームページ「No.3302 マイホームを売ったときの特例」をご確認ください。
10年超所有軽減税率の特例
10年超所有軽減税率の特例とは、一定条件を満たし自宅を売却した場合、譲渡所得税の税率が低くなる制度です。
10年超所有軽減税率が適用されたときの税率は、次のとおりです。
- 譲渡所得6,000万円以下の部分:14.21%
- 譲渡所得6,000万円超の部:20.315%(長期譲渡所得と同じ税率)
※住民税・復興特別所得税を含む税率
10年超所有軽減率は、譲渡所得6,000万円までの部分にしか適用されません。
6,000万円を超えた部分は、長期譲渡所得と同じ税率が適用されることに注意しなければいけません。
適用条件など詳しい内容は、国税庁ホームページ「No.3305 マイホームを売ったときの軽減税率の特例」をご確認ください。
マンション売却時に節税するときの注意点
マンション売却時に節税するときの注意点は、次のとおりです。
- 特例・控除を利用する場合には確定申告が必要になる
- 長期譲渡所得が適用されるまで売却を待つ
- 取得費と譲渡費用を正確に計上する
マンション売却時に節税するには、税金について正確な知識を得ておく必要があります。
どのような知識を得ればよいのか、紹介していきます。
特例・控除を利用する場合には確定申告が必要になる
特例・控除を利用する場合には、確定申告をしなければいけません。
譲渡所得税の特例・控除は、確定申告で利用を申請しなければ利用できません。
仮に年末調整を行っている会社員だとしても、年末調整に加えて確定申告をする必要があります。
確定申告は、マンションを売却した年の2月16日~3月15日までに行わなければいけません。
また、各特例・控除を利用するには提出しなければいけない書類もあるため、余裕を持って準備しておくようにしましょう。
長期譲渡所得が適用されるまで売却を待つ
マンションを売却し、譲渡所得が発生する場合は、短期譲渡所得・長期譲渡所得のどちらが適用されるかまず確認しましょう。
もし期間を少し置くだけで短期譲渡所得から長期譲渡所得になる場合、長期譲渡所得に切り替わってから売却を進めることをおすすめします。
短期譲渡所得の税率は39.63%、長期譲渡所得は20.315%の税率が適用されます。
譲渡所得が1,000万円に短期譲渡所得が適用された場合の譲渡所得税は約396万円ですが、長期譲渡所得であれば約203万円です。
この場合、短期譲渡所得と長期譲渡所得とでは、約193万円の税額の差があります。
短期譲渡所得と長期譲渡所得の税率の差は大きいため、売却を待てるのであれば、長期譲渡所得が適用されてから売却しましょう。
取得費と譲渡費用を正確に計上する
取得費と譲渡費用は正確に計上し、確定申告を行いましょう。
取得費と譲渡費用に計上できる項目は多くあり、見落としがちな費用・税金があります。
きちんと取得費と譲渡費用を計上すれば、譲渡所得を抑えられます。
また、取得費と譲渡費用を水増しすることや、計上が認められていない費用を計上すると、譲渡所得税の過小申告で罰則を受けます。
確定申告をするときには正確な計上を心がけ、節税対策を行うようにしましょう。
まとめ
マンションを売却するときには、税金が課税されますが、譲渡所得税は課税されるケースと課税されないケースがあります。
課税されるケースの該当にすると、売却するマンションによっては課税額が数百万円になるケースもあります。
譲渡所得税は高額になるケースがあるため、注意しなければいけません。
譲渡所得税がいくら課税されるのかは計算できるため、マンションを売却するときには課税額を調べておくことが大切です。