住宅ローン返済中の家でも売却する方法はある?ローンの残債にうまく対応するコツ
この記事でわかること
- 住宅ローン返済中の家を売る方法がわかる
- 住宅ローンと抵当権の関係がわかる
- 売り先行と買い先行のメリット・デメリットがわかる
ずっと住むつもりで長い返済期間のローンを組んで購入したマイホーム。
しかし、転勤や親との同居などの理由で手放さなければならないこともあります。
家の広さが家族構成に合わなくなったときも、住み替えを検討するタイミングです。
子どもが増えて広い間取りの家に引っ越したいという方もいるでしょう。
子どもが巣立ち、夫婦2人でコンパクトな家に住み替えたい場合もあるでしょう。
マイホームを手放したり住み替えたりするとき、ついて回るのが資金の問題です。
住宅ローンを完済してしまって、次の家は自己資金で買えるなら心配ありません。
でも、住宅ローンが残っている場合、家の売却代金で完済できるか気になります。
そこで、住宅ローン返済中の家を売る方法を詳しく解説します。
家を売却してから購入先を決めたほうがよいのか、先に新しい家を買うほうがよいのか、双方のメリット・デメリットも見ていきます。
住宅ローンの返済中に住み替えを検討する方は、ぜひ、参考にしてください。
目次
住宅ローン返済中の家を売ることができる条件
月々の返済額を低くするために、35年など長期の返済期間を設定した住宅ローンを組むことがあります。
このローン返済期間中に、住宅ローンを組んで購入した家を売ることはできるのでしょうか。
法律と実際は違う?
住宅ローンを組むと、通常、借入先の金融機関が対象物件に抵当権を設定します。
たとえばたとえば、AさんがB銀行から家の購入資金3,500万円を35年ローンで借り入れたとします。
B銀行は、この3,500万円の貸付金を担保するため、Aさんが購入した家に抵当権を設定するのです。
このケースで、Aさんは住宅ローンを組んでから20年目に、家を売ることができるでしょうか。
まだ住宅ローンは返済中なので抵当権は抹消されていません。
法律上は、抵当権がついている家を売ることに制約はありません。
つまり、住宅ローン返済中でも、家を売ることはできるということです。
ですが、抵当権がついたままの物件を買う人はいないので、Aさんは何らかの策を講じなければ、家を売ることはできません。
住宅ローン完済が基本
Aさんが家を売るには、B銀行に抵当権を外してもらう必要があります。
抵当権を外すには、住宅ローンを完済しなければなりません。
住宅ローン完済に充てる費用をどうするかが、Aさんの悩みどころです。
住宅ローン返済中の家についている抵当権とは
マイホームの登記事項証明書を見たことがある方もいるのではないでしょうか。
念願かなって購入したマイホームの所有者として、自分の名前が記載されているのを見ると嬉しいものです。
登記事項証明書には、所有者の情報だけでなく所有権以外の権利についても記載され、その代表例が抵当権です。
抵当権は、ローンを返済できないときの備え
抵当権というと馴染みがないかもしれません。
簡単に言えば、住宅ローンなど借金を担保するための手段です。
先ほどのケースで考えてみましょう。
Aさんが、借りた3,500万円と利息を返せないときは、B銀行は、担保となっている家の競売代金から優先的にお金を返してもらうことができます。
競売とは、裁判所で行う強制的な売却手続きのことで、Aさんが滞納を続ければ競売を拒むことはできません。
抵当権は、お金を借りた人(債務者)にとって酷な権利ですが、お金を貸した人(債権者)を守るための制度です。
もし抵当権という制度がなかったら、金融機関は高額の住宅ローンを貸し付けないでしょう。
住宅ローンを借入られなければ、マイホーム購入資金全額を一括で用意しなければならなくなってしまいます。
抵当権はマイホームを手に入れたい方にとって、大切な制度なのです。
どうやったら抵当権は消える?
抵当権を外すには、抵当権で担保されている借金を完済しなければなりません。
借金がなくなれば抵当権も消滅するからです。
抵当権が消滅すれば抵当権抹消登記をすることができ、家に設定されていた抵当権が消えます。
売却する前に残債と売却額を調べよう
住宅ローン完済前に家を売る場合、残債と売却見込み額を把握することが大切です。
残高証明書を貰う
まず、借入先の金融機関に残高証明書や償還予定表の発行を依頼しましょう。
ローン残高を自分で把握しているつもりでも、利息を考慮していなかったり端数を覚えていなかったりする場合もあります。
正確な残債を知るためにも、早めに残高証明書を取り寄せてください。
査定の注意点
不動産会社に査定してもらうときに、住宅ローン返済中である旨を伝えると、そのあとの売却活動がスムーズに進みます。
残債額より低い価格でも売るのか、希望の価格で売れるまで待つのかなど、細かい希望も不動産会社に話しておくと良いでしょう。
不動産売却では、3つの価格が出てきます。
- ・査定価格
- ・売出価格
- ・売却価格(成約価格)
この3つの価格は必ずしも一致しません。
買い先行などの事情があれば、査定額より低い価格で売り出さなければならない可能性もあります。
不動産会社にしてみれば、売却の事情を把握していないと、適切なアドバイスができません。
売却活動が進む過程で、価格につき不動産会社とのコミュニケーションを円滑にとれるように、希望条件や事情を早めに話しておくことが大切です。
売却代金でローンを返済できない場合の対処法
いざ家を売りに出したけれども、住宅ローンの残債よりも売却額が低くなる場合、どうすればよいでしょうか。
主に3つの方法があります。
自己資金でまかなう
1つ目は、自己資金を残債の返済に充てる方法です。
一番簡単な方法ですが、住み替え費用や老後の資金が足りなくなる可能性が高いので、注意しましょう。
住み替えローン
2つ目は、住み替えローンや無担保ローンを利用する方法です。
住み替えローンとは、住宅ローンの残債のうち、家の売却代金でまかなえない分と、買い換える新しい家の資金を借り入れる方法です。
住み替えローンは便利なシステムですが、ローンが多くなるというリスクを伴います。
住み替えローンを利用する場合、申し込み時の収入だけでなく、完済時の見込み収入など綿密なファイナンシャル・プランを立てる必要があります。
また、無担保ローンは、使い道が自由であったり審査が緩かったりという利点がある反面、金利が高いという難点があります。
任意売却
3つ目は、任意売却です。
たとえば、住宅ローンの残債が3,000万円で家の売却額が2,700万円だと、売却代金で住宅ローンを完済できません。
完済できないと、住宅ローンを担保するために設定された抵当権を外せないので、家を買ってくれる人はいないでしょう。
このようなケースには、任意売却も有効な手段です。
任意売却とは、金融機関の同意を得て、売却代金を充てても残る残債を返済していくという方法です。
たとえば先ほどの例で、家の売却代金2,700万円を住宅ローン3,000万円の返済に充て、抵当権を外してもらいます。
ただし、このケースでは住宅ローンは完済されておらず、残債300万円を返済していかなければなりません。
任意売却は金融機関との話し合いがうまくいくかどうか不透明です。
売却見込み額が低い時の1つの手段という程度にとらえて、任意売却を期待し過ぎない資金計画を立てましょう。
売り先行と買い先行とは?メリットとデメリットを解説
住宅ローン返済中にマイホームを買い換える場合、売却と購入のどちらを先に行えばよいのでしょうか。
売り先行と買い先行のメリット・デメリットを見ていきましょう。
売り先行のメリットとデメリット
売り先行とは、今住んでいる家を売却したあと、購入する家を探す方法です。
この方法なら、売却代金を先に手にすることができるので、売却額に見合った価格の新居を探すことができます。
資金計画の点で不安がないのがメリットと言えるでしょう。
一方、購入先をすぐに探せるとはかぎらないので、賃貸物件を借りるなど、仮住まいをしなければならない場合もあります。
売り先行のメリットは資金面ですが、デメリットは引っ越し計画の不透明さです。
売り先行を選ぶのであれば、メリット・デメリットを良く考える必要があります。
買い先行のメリットとデメリット
買い先行とは、先に買い替え先を探し転居してから、今住んでいる家を売る方法です。
この方法なら仮住まいの心配はありません。
一方、買い先行で一番気をつけなければならないのが資金面です。
売却期間が長引いたり、予定していたよりも売却価格が安かったりすると、資金計画に支障を来たします。
買い先行の資金繰りを手当てするため、つなぎ融資を行っている金融機関もあります。
ただし、つなぎ融資を当てにすると、資金計画のリスクが高いので注意しましょう。
返済シミュレーションを利用しよう
ウェブサイト上に「住み替え資金シミュレーション」のコーナーを設けている銀行があります。
売却予定額、自己資金、ローン残高、新規購入価格に加えて、年収や借入希望期間などを入力します。
住み替えを検討している方は、金融機関のシミュレーションサイトを利用してイメージをつかみましょう。
住み替えを考える時は理想を追ってしまい、新しく購入する物件の予算が膨らむこともあります。
しかし、ご自身で計画する資金は、ゆとりを持って返済できる額とはかぎりません。
人生100年時代だからこそ、先の収入予想をしっかり立ててゆとりある返済計画を考えるのも、住み替えで成功するコツです。
まとめ
住宅ローンの残債が残っていても、工夫すれば家を売ることができます。
ただし、売り先行が良いか買い先行が良いか、双方を同じタイミングで行うべきかなど、検討しなければならないことがたくさんあります。
買い替えのタイミングや資金計画に対する的確なアドバイスをしてくれる不動産会社を探しましょう。
また、住宅ローンを途中で完済するためには借入先である金融機関での手続きもしなければなりません。
銀行との細かな段取りもいとわない不動産会社に売却を頼まないと、すべて手続きを自分で行うことになります。
住宅ローン返済中だけれども売却したい事情ができたときは、早めに不動産会社に相談することをおすすめします。