マンションの実勢価格の推定方法は?【固定資産税評価額から建物価格を調べる方法を解説】
この記事でわかること
- 実勢価格と他の不動産の価格の違いがわかる
- 土地・建物の実勢価格の推定方法がわかる
- マンションの実勢価格の考え方が理解できる
マイホームや投資用などマンションの売却を検討する際、一番気になるのは価格ではないでしょうか。
できれば高く売りたいと思う方は多いでしょう。
では、土地や建物、特にマンションの価格はどうやって決まっているのでしょうか。
ショーウインドーに値札が付いて並べられているわけでもなく、分かりづらいのが不動産の価格です。
この記事では不動産の「実勢価格」と呼ばれる価格や、他の「価格」との違いについて詳しく解説します。
自分でマンションの実勢価格を調べるときの注意点もお伝えしますので、マンション売却を検討中の方は、参考にしてください。
実勢価格とは
実勢価格とは、不動産の時価のことで、細かく言うと次の価格です。
実勢価格とは
- ・周辺の類似物件の取引価格
- ・実際に取引されると予測される価格(取引事例がない場合)
売り出す物件と類似の取引事例がなければ、実勢価格は次の要素を考慮して推定します。
- ・周辺類似物件の取引事例
- ・売り出す物件(土地)の公示価格、固定資産税評価額、路線価
不動産の実勢価格を推定するために参考にする公的な価格
発表・確定する公的機関 | 特徴、発表日 | |
---|---|---|
公示地価 | 国土交通省 | 土地取引の指標、3月中旬 |
基準地価 | 都道府県 | 土地取引の指標、9月下旬 |
路線価 | 国税庁 | 相続税路線価、固定資産税路線価、7月上旬 |
固定資産評価額 | 市区町村 | 固定資産税徴収などが目的、4月上旬 |
公示地価と基準地価は国土交通省が発表するのか、都道府県が発表するのかが違いますが、その目的は同じです。
土地部分の実勢価格の推定方法
まず、土地の実勢価格の推定方法を見ていきましょう。
路線価による土地の実勢価格の推定
注意しなければならないのは、マンションの実勢価格を推定する場合でも、敷地の持分についても算出する必要があることです。
マンションの敷地の持分が多ければ多いほど、実勢価格は高くなります。
マンションの専有部分の評価は低い場合でも、敷地持分が多い場合、土地と専有部分の合計額は高くなる可能性もあります。
マンションの実勢価格を知りたい場合は、併せて敷地持分について調べましょう。
敷地全体の実勢価格を算出し、持分を乗じてください。
土地を評価するための価格
先述の通り、土地の評価額や取引の指標となる価格は、実勢価格、公示地価または基準地価、相続税評価額(相続税路線価)、固定資産税評価額の4つです。
この4つの価格を「一物四価(いちぶつよんか)」と言います。
路線価による土地の実勢価格の推定
実際の取引事例がない場合、土地の売買において使われる指標の代表例は路線価です。
ここでは、路線価をもとに土地の価格を算出し、実勢価格を推測する方法を確認しましょう。
例えば、100㎡の土地の実勢価格を算出する場合、以下の式によります。
路線価×100=実勢価格
路線価は㎡単位で公開されています。
路線価が250,000円なら、上記の100㎡の土地は、以下の実勢価格と推定することができます。
250,000円×100=25,000,000円
路線価の調べ方
路線価は、「路線価図・評価倍率表」という国税庁のホームページで調べることができます。
都道府県に分かれた日本地図が出ているので、自分が調べたい土地が所在する都道府県をクリックすると、路線価図や評価倍率法が出てきます。
路線価を調べたい土地の周辺まで地図をどんどんクリックしていきます。
そうすると、地図上の土地周辺の道路上に、数字とアルファベットが組み合わされた数値が出てくるので、その数値を目安とします。
数字は1㎡の路線価(1,000円単位)、アルファベットは借地権割合表に記載されている記号です。
なお、路線価図の道路上の路線価に、奥行価格補正率、側方路線影響加算率を乗じなければならない土地もあります。
また、土地と建物の所有者が違う場合、土地の路線価は借地権割合を乗じて算出しなければなりません。
路線価を計算するのが簡単な土地もありますが、不動産の知識がないと路線価算出が難しい土地もあるので、注意しましょう。
建物部分の実勢価格の推定方法
路線価は道路を基準とした土地の価格なので、建物の価格を算出することはできません。
では、建物の取引事例がない場合、どのように建物の実勢価格を算出するのでしょうか。
特に、マンションの専有部分の実勢価格を算出する際の注意点も見ておきましょう。
建物の固定資産税評価額から実勢価格を推定
建物の場合は固定資産税評価額を目安に、実勢価格を推定します。
固定資産税評価額は、先述の通り、固定資産税や都市計画税の徴収の基準とするために、市区町村が決定する価格です。
固定資産税評価額は、3年に1回の評価替えが行われています。
ここで注意しなければならないのは、土地の固定資産税評価額と違い、建物の固定資産税評価額は、新築後どんどん下がっていくということです。
つまり、築年数が経過しているマンションほど、専有部分の固定資産税評価額が低いことになります。
専有部分を新築同様にリフォームしていたとしても、外壁などの大規模修繕が終わっていたとしても、専有部分の固定資産税評価額は予想以上に低いケースもあります。
マンションの場合、詳しくは後述しますが、必ずしも専有部分の固定資産税評価額が実勢価格とはなりません。
専有部分の固定資産税評価額が低いからといって、売却をあきらめないようにしましょう。
なお、固定資産税評価額は、固定資産課税台帳や固定資産税の納税通知書に記載されているので、比較的容易に調べることができます。
自分でマンションの実勢価格を簡単に調べる方法
今まで解説した内容と他の手法も加えて、マンションの実勢価格を自分で調べる方法を考えていきます。
周辺に類似物件の既存の取引事例がない場合と、ある場合に分けてお話します。
周辺に類似物件の既存の取引事例がない場合
先述の通り、マンションの敷地については、路線価と固定資産税評価額を調べると、実勢価格を簡単に推定することができます。
例えば、郊外の中古マンション(3LDK)でイメージしてみましょう。
なお、簡単なイメージ作りなので、総戸数など細かい点は、ここでは考慮しないことにします。
- ・75㎡の中古マンション(3LDK)
- ・建築後30年経過
- ・専有部分の固定資産税評価額 5,000,000円
- ・敷地面積200㎡
- ・敷地の実勢価格 ㎡単価650,000円
このケースでは、以下の額が専有部分と敷地の実勢価格です。
5,000,000円(専有部分)+(650,000円×200÷敷地の持分割合)
なお、敷地の持分割合は、10,000分の1235など細かい割合のマンションも多く、一概に言えません。
敷地の持分割合は、専有部分の床面積割合で決まります。
専有部分の登記事項証明書に敷地の持分割合が記載されているケースと、専有部分と敷地の登記簿が別のケースがあるので、調査の時は法務局に出向いて行うとよいでしょう。
周辺の類似取引事例がある場合
周辺に類似物件の既存の取引事例があれば、それを調べることで売りたいマンションの実勢価格が分かります。
レインズを使った実勢価格の調べ方
次に、レインズを使った実勢価格の調べ方を解説します。
レインズとは、国土交通大臣指定の不動産流通機構により運営されている不動産物件情報交換のためのコンピュータネットワークシステムです。
中古マンションの価格は、レインズマーケットインフォメーションで調べることができます。
レインズマーケットインフォメーションで調査できる内容
- ・都道府県別、地域別のマンション、戸建の価格
- ・エリアごとの直近2年間の平均成約価格、平均㎡単価、平均専有面積の推移
- ・対象地域の事例一覧
レインズマーケットインフォメーションを活用するコツは、追加検索条件を使うことです。
自分が売りたい物件の地域や築年数と類似の物件価格を調べなければ、精度の高い実勢価格を推定することはできません。
地域や築年数など物件の条件はできるかぎり詳細に指定しましょう。
平均価格などにより推定する中古マンションの実勢価格
ここまで、実勢価格の推定方法を見て来ましたが、不動産相場を知る方法に「平均単価」を調べる方法がありますので、ご紹介します。
特に、中古マンションの平均価格を参考にしてください。
中古マンションの平均価格
各不動産会社や、相場情報提供サイトなどが不動産の平均価格を公表しているので、不動産売却を検討している方は、参考になるでしょう。
中古マンションの平均価格の公表内容の例
- ・中古マンションの平均価格
- ・中古マンションの平均坪単価
- ・平均価格や駅からの平均的な距離
ただし、相場情報サイトで公表されている中古マンションの平均価格などが、後述する公的な機関で公表している数値を参考にしているかどうかもポイントです。
公的機関が公表する数値
信頼できる住宅相場は次の2つです。
公的機関が公表する数値
- ・国土交通省から発表されている「不動産価格指数 」
- ・不動産流通機構が提供する数値
土地情報総合システムを使った中古マンションの実勢価格の推定方法
中古マンションの取引事例を調べ、実勢価格を推定する方法として、土地情報総合システムを使うのもよいでしょう。
参考:土地情報総合システムで分かること
- ・中古マンションの取引事例一覧
- ・最寄り駅からの距離
- ・取引総額
- ・専有部分の面積
- ・専有部分の間取り
- ・専有部分の用途
- ・専有部分の改装(リフォーム)状況
- ・土地上の建物の将来の用途など
- ・敷地の用途地域
- ・敷地の建ぺい率
- ・敷地の容積率
中古マンションの取引事例一覧は、非常に参考になります。
中古マンション取引を予定している方は、路線価、固定資産税評価額、レインズで調べる取引価格など、総合的に活用するとよいでしょう。
不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法
それなりの正確性をもって所有マンションの価格を調べたい場合、不動産鑑定士に鑑定を依頼する方法があります。
不動産鑑定士は次の基準により鑑定します。
不動産鑑定基準
取引事例比較法 | 対象物件と似た複数の取引事例を比較し、売却事情や売却時点により補正し、個別の要因を加味して価格を試算する方法 |
---|---|
原価法 | 対象物件と同様の土地を再造成、建物を再建築するといくらかかるか試算する方法 |
収益還元法 | 対象物件を賃貸したらいくら収益が出るかにより、物件価格を試算する方法 |
ただし、不動産鑑定士に鑑定を依頼すると、それなりの鑑定費用がかかるので注意してください。
マンションの実勢価格を調べるときの注意点
ここまで、実勢価格や平均価格について見てきましたが、最後に自分で実勢価格を調べるときの注意点を見ていきましょう。
不動産の「価格」はプロにまかせる!
次にご説明する3つの価格を知らずに、実勢価格という言葉に惑わされてはなりません。
知っておきたい、実際の売買で出てくる3つの「価格」
マンション売却を考えるなら、実際の売買で出てくる3つの「価格」を忘れないようにしましょう。
不動産売却を考えるなら必須の知識です。
最近、実勢価格、相場、平均価格と様々な言葉の情報があふれています。
マンション売却を考える前に、「いくらくらいで売れるのかな?」と自分で調べて勉強するのは悪いことではありません。
しかし、実際の売却活動に入り、自分で調べた実勢価格と、査定額や成約価格の開きに落胆してしまう人もいるかもしれません。
中古マンションを売り出す時は、不動産会社に依頼する方がほとんどでしょう。
不動産会社に依頼した場合、「実勢価格」に一番近いのが査定価格ですが、100%一致するとはかぎりません。
また、実勢価格が「早めに売れそうな値段」かといえば、そうではありません。
では、実際に不動産会社に売却を依頼して売り出し、成約するまでにどんな「価格」に出会うでしょうか?
中古マンションを実際に売出した時の3つの価格は以下の通りです。
実際の売却活動で出てくる3つの価格
査定価格 | おおむね3か月以内に売却できると考えられる価格 |
---|---|
売出価格 | 不動産会社と媒介契約を締結し、売り出す価格 |
成約価格 | 売買契約締結時の最終的な代金額 |
不動産会社が査定する場合、不動産鑑定士が用いる鑑定方法のうち、主に取引事例比較法を用いて査定します。
もちろん、収益用マンションであれば、収益還元法も併用します。
中古マンションの査定価格には以下の要因が査定価格に影響します。
中古マンションの査定価格に影響する例
- ・室内の損傷度
- ・室内の設備の状況
- ・建築後の経過年数
- ・管理形態や管理状況(自主管理か委託管理か、日勤か常駐か巡回か、エントランスなど共用部分の状態)
- ・修繕積立金の残高、修繕の実施状況
- ・管理費滞納者はいないか
- ・住民同士のトラブルはないか
エリア、築年数、間取りが同じ他のマンションの取引事例をもとに、以上を加味した実勢価格は3,000万円だと考えていたとしても、査定価格が変わるということです。
査定価格は「おおむね3か月以内に売れる価格」であり、売り急いだり、逆に高値で買ってくれる人を待ったり、事情によって売り出し価格は変わります。
最終的な売買価格である「成約価格」は、売り出し価格から指値(さしね)されて低くなることも少なくありません。
実際に売り抜ける額を予想するのは、不動産のプロでなければ難しいということです。
「実勢価格」を知ることは、あくまでも、マンションの売却を真剣に考えるきっかけとするとよいでしょう。
なお、査定には簡易査定(机上査定)と訪問査定があり、次の特徴があります。
簡易査定の特徴
- ・現地を見ずに物件の価格を算出する査定方法
- ・簡易査定では、査定をする段階で明らかになっている情報を基に物件の価格を算出する
訪問査定の特徴
- ・不動産会社の担当者が売却予定の物件を確認して算出
- ・物件の特徴を考慮して価格を算出
一括査定サイトを利用しよう
自分で実勢価格を調べるときの注意点として、査定価格について理解する必要があることが分かりました。
不動産会社1社に依頼すると不安な場合、一括査定サイトを利用するとよいでしょう。
一括査定サイトは、複数の不動産会社数社が参加していますので、複数の査定価格を一度に知りたいときは便利です。
一括査定サイトの査定は、簡易査定によるので、必ずしも売出価格と一致しません。
なお、一括査定サイトを利用すると、査定価格には、不動産会社によって非常に幅があることが分かります。
高い査定価格を出した不動産会社だけでなく、複数の不動産会社の話を聞くとよいでしょう。
ご自身の物件の良いところ、悪いところをひっくるめて、誠実に伝えて査定してくれた不動産会社を選ぶのがコツです。
まとめ
実勢価格とは何か、不動産の他の価格、マンションの実勢価格の推定方法について見てきました。
また、実勢価格と対比して、実際の不動産売却の流れの中で出てくる「価格」もお伝えしました。
実勢価格という言葉が最近よく使われています。
ただし、解説したとおり、実勢価格はあくまでもマンションを売り出すときの「目安」です。
一番気をつけなければならないのは、実勢価格は査定価格や売り出し価格、成約価格と一致するとはかぎらないということです。
不動産は同じように見える物件でも、1つ1つ個性があり、取引ごとの事情があります。
また、景気の変動により昨日3,000万円だった物件が5,000万円に、逆に昨日は5,000万円だった物件が3,000万円になることもあります。
ご自身が所有する不動産の個性や、売却事情、景気動向など総合的に考えて「ベストな価格」で成約することが、後悔しない不動産売却です。
「ベスト」とは価格が高いことだけを指すわけではありません。
不動産売却の事情を満たすことを優先しましょう。
その結果、高値で売るか、少し安くても確実に売れそうな時に売るか、決断すればよいのです。
価格の意味にまどわされず、後悔しない不動産売却をするためにも、信頼できる不動産会社に相談することをおすすめします。