住宅ローンが苦しいときにやるべきこと・やってはいけないこと【返済が困難になる原因も解説】
この記事でわかること
- 住宅ローンの返済が困難になる原因がわかる
- 住宅ローンの支払いが苦しいときにやるべきことがわかる
- 住宅ローンの支払いが苦しいときにやってはいけないことがわかる
住宅を購入するときにあれもこれもと理想を追求してしまい、気がついたら予算より高額な住宅ローンを組んでしまったというケースは少なくありません。
一般的に住宅ローンの返済額の目安は世帯年収の2割程度といわれています。
世帯年収が600万円であれば年間120万円、月額10万円が目安です。
もし住宅ローンの支払いが苦しい、返済が困難になってきたと感じるようであれば、できるだけ早急に対策をする必要があります。
対策が早ければ早いほど、大きな事故を防ぐことになります。
そこでこの記事では、住宅ローンの返済が苦しいときにやるべきこと、やってはいけないことを詳しく解説いたします。
目次
住宅ローンが苦しくなる原因
住宅ローンの支払いが厳しくなる原因は大きく分けて以下の3つが考えられます。
- ・収入に対してローン総額が高い
- ・住宅ローンの金利が高い
- ・生活環境の変化による世帯収入の低下
それぞれのケースを詳しくみていきましょう。
収入に対してローン総額が高いケース
住宅を購入するときは「一生に一度のものだから」と、ついより良いものを求めてしまいがちです。
その結果、予算をオーバーしても「何とかなるだろう」と購入してしまう人は少なくありません。
しかし、収入に見合った返済額の範囲内に収まるようローンを組まないと、ゆくゆく返済に苦しむことになります。
月々の住宅ローン返済額の目安は、世帯収入の20%~25%程度といわれています。
世帯収入が600万円の家計を例にしてみましょう。
- 世帯収入:600万円
- ローン返済率20%の場合、月々のローン支払い:10万円
- ローン返済率30%の場合、月々のローン支払い:15万円
ローン返済率が30%を超えている場合、一般的には厳しい返済率だと考えられます。
住宅ローンの金利が高いケース
日本でゼロ金利政策がとられてからもう20年を経過しています。
そのため、住宅ローンは低金利が当たり前という人がほとんどでしょう。
とはいえ、事情があって高金利で住宅ローンを組んでいる人も実は少なくありません。
固定期間をつけるなど安全性を重視して、結果的に高金利になるケースもあります。
3,000万円の住宅を購入する場合のローン金利による返済額の違いをみてみましょう。
- 購入住宅:3,000万円、35年間ローン(元利均等払いの場合)
- 金利0.7%の場合 月の返済額80,556円、返済総額3,333万円
- 金利1.4%の場合 月の返済額90,392円、返済総額3,796万円
金利が0.7%高くなると、月々の返済額が約1万円、返済総額で400万円以上の差がつきます。
住宅の購入金額が同じでも、金利によって返済額は大きく変わってしまいます。
生活環境の変化による世帯年収の低下
住宅ローンは、多くの場合、何十年も続きます。
そのため、長い年数が経過している間に生活環境が変化する場合が少なくありません。
転職や離婚で生活が変わるといった大きなことから、教育費やレジャー費の出費が増えるといった細かなことまで、生活環境の変化は家計に影響を及ぼします。
住宅ローンは家計のなかで最も大きな割合を占めるため、ちょっとした家計の変化でも住宅ローンの支払いが苦しくなってしまうのです。
住宅ローンを延滞したらどうなるのか
住宅ローンの支払いが苦しくなると、だんだんと支払いを延滞するようになります。
住宅ローンの滞納をするとどうなるのか、滞納の期間別にみてみましょう。
住宅ローンを1か月~3か月滞納した場合
住宅ローン用の口座を別にしていると、うっかりと入金をし忘れてしまうことはよくあります。
銀行から未納の通知書が届いて発覚することもあるでしょう。
多くの場合、1回の滞納であれば翌月に2か月分をまとめて引き落として対処してくれます。
そのときに銀行から届く通知も、はがきなどで簡易な文面です。
しかし2か月、3か月と滞納を重ねていくと、銀行から督促の電話がかかってくるようになります。
また、ローン延滞分だけでなく遅延損害金の支払いを求める内容の督促状が届きます。
住宅ローンの滞納が4か月を超えた場合
住宅ローンの滞納が4か月を超えると「期限の利益の喪失」を通知する書面が届きます。
ここでいう期限の利益とは、購入時に借りたローン金額を毎月分割して返済する権利のことです。
通知に記載された期限が過ぎればもう分割返済はできなくなり、その代わりにローンの一括返済が求められます。
しかし分割返済ができなければ一括返済などできないことがほとんどでしょう。
一括返済ができなければ、抵当権を実行されて自宅を競売に出されることになります。
住宅ローンの滞納が6か月を超えたら競売へ
自宅が競売に出されるときの道のりは2つあります。
ひとつは、銀行などの金融機関が競売の手続きをするケースです。
もうひとつは、購入時に契約した保証会社から金融機関が代位弁済を受け、その後の手続きを保証会社が受け継いですすめるというケースです。
最近は住宅ローンには保証会社の契約が必須になっているため、必然的に後者のケースがほとんどです。
競売にかけても返済が終わらないことも
競売とは、裁判所を通じて不動産を売る売却方法です。
住宅ローン債権を受け継いだ保証会社は、裁判所に競売の申し立てをします。
一般的に競売の落札価格は一般取引より安く、7割程度といわれています。
そのため落札された金額でローン残債をすべて返済できないことも多く、その差額を引き続き保証会社へ返済する必要があります。
住宅ローンが苦しいときにやるべきこと
住宅ローンは、家計の中で最も割合が高くかつ最も重要な項目です。
そのため最優先で支払いをする必要があります。
住宅ローンが支払えないでいるならば、その原因を早急に解消しましょう。
収入が減少したことが原因の場合
長期間住宅ローンを支払っている間に、経済情勢の変化や家庭環境の変化によって収入が減少してしまい途中で支払えなくなってしまうことがあります。
このような場合には、家計の見直しや転職、副業などの検討をおすすめします。
家計の見直しを早急にする
住宅ローンの額や条件は適正なのに、収入の減少によって支払えなくなってしまうことがあります。
こういった場合、まずおこなうべきは家計の見直しです。
とはいえ、食費、光熱費といった衣食住に関連することを削るのは難しいですし、生活の豊かさがなくなってしまいます。
生活の豊かさがなくなってしまうと、働く気力がなくなりますます収入減になる悪循環です。
家計の見直しでおすすめしたいのは、まず衣食住以外の固定費を減らして住宅ローンの返済額を確保することです。
そして、残った分をレジャーなど生活の豊かさを感じられる一時的な支出にする方法です。
固定費を減らして一時的な支出に変える
家計の中で見直すべき固定費は以下の3つです。
- ・生命保険や医療保険
- ・子供の習い事や必要以上の教育費
- ・車やバイクの費用
これらの固定費を削減または圧縮すれば、その分を住宅ローンに充てることが可能です。
生命保険や医療保険については安いものにかけかえて、住宅ローンの支払いが終わってから再度加入するのがおすすめです。
子供の習い事や教育費は、固定費にせず、季節講習や短期間のレッスンでまかなえるものを検討すると良いでしょう。
車やバイクは思い切って手放して、カーシェアリングやレンタカー、レンタルバイクを利用する方法もあります。
転職や副業を検討する
長期的に収入の減少が予想される場合には、転職や副業なども検討する必要があります。
特に勤務先の会社が業績悪化したための収入減少であれば、同時期に転職を検討している人も多いはずです。
同条件の転職希望者が多ければ転職するのも不利になってしまうため、できるだけ早急に活動しはじめましょう。
また、減少幅がそこまで大きくなければ副業で収入を得ることを検討してみましょう。
最近は副業を許可している会社も増えているため、まず就業規則を確認することです。
住宅ローンが高すぎることが原因の場合
自宅を購入するときは気持ちが高揚しているため、予定より高額のローンを組んでしまうということは少なくありません。
何年か高額な支払いをがんばったけれど、もう支払えなくなったというケースもあります。
こういった場合には、住宅ローンの見直しか自宅の売却を検討することをおすすめします。
住宅ローンの見直しをする
住宅ローンの見直しをすべきなのは以下のようなケースです。
- ・住宅ローンの返済額が年収の30%を超えている
- ・住宅ローンの金利が1.5%を超えている
- ・住宅ローンの返済年数を30年未満に設定している
住宅ローンの見直しは比較的簡単におこなうことができます。
今は金融機関も住宅ローンの借り換えに積極的なため、別の金融機関に借り換えの相談をしても良いでしょう。
ローン内容を見直して、月々の返済額が安くなることも可能です。
自宅の売却を検討する
自宅の売却を検討すべきなのは以下のようなケースです。
- ・自宅が不必要に豪華、立地が良い、メンテナンスに経費がかかる
- ・現在より安い住宅に移り住むことが可能
住宅ローンの額が高い場合、当然自宅の価値も高いのです。
そのため、好条件で売却して安い住宅へ住み替えることも可能になります。
例えば駅前のタワーマンションの高層階など、購入価格より高い金額で売却できるようなケースもあります。
ただし引っ越しが必要なため、家族の理解を得なければなりません。
住宅ローンが苦しくてもやってはいけないこと
住宅ローンの支払いが苦しいと、一時的にその状況を乗り切るために無理をしてしまうことがあります。
しかし、住宅ローンの返済額は家計の中でも高い比率であり、通常は一時的に乗り切れるようなものではありません。
そのため、長期的な視点で対策を考える必要があります。
ここでは、住宅ローンの支払いが苦しくてもやってはいけないことを紹介します。
消費者金融やカードローンで埋め合わせるのは危険
住宅ローンの支払いが苦しいからといって、消費者金融やカードローンなどで借金をして返済することは絶対にしてはいけません。
消費者金融やカードローンの金利は住宅ローンよりはるかに高いため、住宅ローンが支払えない状態で借入をしても返せなくなってしまうからです。
消費者金融やカードローンが返せなくなったら、その先は自己破産しか道がなくなってしまいます。
金融機関に無断で自宅を賃貸に出してはだめ
自宅が好立地にあり賃貸の需要があるような場合、自宅を賃貸に出してその賃料でローンを支払いたいと考える人がいます。
しかし、住宅ローンを支払い中に自宅を賃貸に出すことは契約違反となってしまいます。
住宅ローンはあくまでも自分が住むことを目的としたローンのため、金融機関に無断で自宅を賃貸に出したりすると、最悪の場合ローン契約が解除となり全額返済を求められることもあります。
住宅ローンが苦しいときの相談先
住宅ローンの支払いが苦しいと思ったときに相談する先はどんなところがあるのでしょうか。
今後住宅ローンを支払い続けていくのか、それとも支払うことは難しいのか、自身の状況を冷静に判断したうえで相談先を選ぶ必要があります。
住宅ローンを支払い続けるときは金融機関に相談
住宅ローンの支払いが一時的に厳しいけれど長期的には支払うことができる場合には、ローンを借りている金融機関に相談するのが良いでしょう。
金融機関としてもローンを安全に返済してもらうことが一番望ましいものです。
そのため、金融機関からローン期間の延長や返済条件の変更などを提案してくれる場合があります。
今後もローンの返済を継続していくためには、滞納を繰り返す前に相談をすることが大切です。
住宅の売却をしたいときは不動産会社に相談
住宅ローンを今後も支払っていくことが困難な場合は、自宅を売却して賃貸物件や実家に移り住むことも選択できます。
その場合は、不動産会社に自宅の売却を相談すると良いでしょう。
売主が居住中でも売却活動をしてくれる不動産会社は多いので、すぐに売却活動を開始して、買主が決まってから引っ越しすることも可能です。
住宅ローンの支払いは困難だが住み続けたい場合は任意売却
住宅ローンを今後も支払っていくのが困難だけれど、子供の学区や近所の手前などでどうしても住み続けたいというケースも少なくありません。
そういう場合は、任意売却の窓口に相談するのがおすすめです。
任意売却とは、住宅ローンの債権が保証会社に移ってから保証会社の同意を得て住宅を一般市場価格で売却することをいいます。
一般的には競売より高値で売却ができるため、保証会社の同意も得やすい方法です。
そして、任意売却の売却先を投資家に指定して引き続き自宅に賃貸として住み続けるという要望を出すことが可能です。
子供の環境を変えたくないなど子育て世代が希望するケースが多いです。
ただし、住宅の市場価値や住宅ローンの種類によってできる内容は変わってきますので、きちんと専門の窓口に相談することが大切です。
住宅金融支援機構なら再起支援借り上げ制度を利用
もし自宅の住宅ローンを住宅金融支援機構または旧住宅金融公庫で組んでいれば、再起支援借り上げ制度を利用できます。
再起支援借り上げ制度とは、一時的に自宅を借り上げて第三者に賃貸し、その家賃収入を住宅ローンの返済に充てることができる制度です。
移住・住み替え支援機構がおこなっている借り上げ制度のひとつで、年齢要件がないため50歳未満でも利用が可能です。
通常の住宅ローンは本人が住むことを条件としているため、転勤などの理由がなければ自宅を賃貸に出すことはできません。
しかし、住宅金融支援機構の再起支援借り上げ制度を利用すれば、賃料から住宅ローンの返済が可能です。
また、住宅金融支援機構が借り上げているため、空室でも家賃保証が受けられることや一定期間賃貸した後に自宅に戻ることができるといったメリットもあります。
ちなみに住宅金融支援機構でなくても、金融機関によっては再起支援借り上げ制度の利用を承諾してくれる場合もありますので、問い合わせてみると良いでしょう。
まとめ
住宅を購入して長い間住み続けていると、つい住宅ローンを支払っていることを忘れてしまうのかもしれません。
しかし住宅ローンは低金利といえども立派な借金です。
家賃とは違い、滞納してしまうと最終的には全額返済を求められます。
住宅ローンの支払いが苦しいと感じたときに、一番大事なのはできるかぎり早く対策を講じることです。
お金の工面や金融機関への相談は、早ければ早いほど効果的です。
また、実際に苦しくなって金策に走り回っていると、焦って冷静な判断ができなくなるといったマイナス面もあります。
深みにはまる前に一歩踏み出すことが、一番重要なのです。