ローン残債がある家の売却の流れ・コツ【オーバーローン時の対処法も解説】
この記事でわかること
- 住宅ローンが残っている家を売却する流れやコツがわかる
- 住宅ローンが残っている家を売却する時の注意点を解説している
- ローン残債がある家を売却してオーバーローンになったときの対処がわかる
住宅ローンは、20年、30年と長く続くローンです。
しかし、その期間は人生の大きなライフイベントが続く時期でもあります。
ずっと住むと思って購入した家でも、転勤や子どもの進学といった事情で引っ越しが必要になることもあります。
しかし引っ越すにしてもまだまだ住宅ローンが残っている状態だと、こんな風に悩んだことがある方が多いのではないでしょうか。
「住宅ローンが残っているのに売却ってできるの?」
「売却しても住宅ローンだけ残ったらどうしよう。」
住宅ローンが残っている家を売却することはできますが、売却価格がローン残債を上回れるかどうかが大きなポイントです。
今回は、住宅ローン残債がある家を売却するときの流れや注意点について、詳しくご紹介します。
しっかり知識を増やして、売却に取り組みましょう。
ローン残債がある家を売る際の流れ
住宅ローン残債がある家を売却する場合、そのローンを完済しなければなりません。
住宅ローン残債がある家には銀行による抵当権がついていますので、住宅ローンを完済してその抵当権を抹消する必要があります。
売却の流れを見ていきましょう。
【STEP1】ローンの残債を確認する
まず、住宅ローンの残債額を確認しましょう。
住宅ローンの残債は、金融機関から毎年10月~11月頃に送られてくる「ローン残高証明書」を確認することができます。
残高証明書には、現時点でのローン金利、残高、毎月の支払額が記載されています。
インターネットバンキングなど一部の銀行では、ローン残高証明書を郵送していない場合もありますので、その場合にはネットバンキング上でローン残高を確認しましょう。
【STEP2】売却額を査定する
ローン残債が確認できたら、その金額を上回る額で家が売却できるかどうか検討します。
家の売却金額を知るためには、不動産会社による売却査定をしてもらいます。
インターネットなどで複数の不動産会社に査定依頼をし、出てきた査定報告書をもとに大まかな売却金額を掴みましょう。
【STEP3-1】ローンを完済できる場合
家の売却金額がローン残債および売却にかかる諸費用を上回る場合は、そのまま売却活動を進めることができます。
売却活動は不動産会社に依頼して広告を出し、内覧などを経て買主と売買契約を締結します。
売買契約の決済時に、買主と売主、ローンの担当者と司法書士が同席し、ローンの完済と売却を同時に成立させることができます。
【STEP3-2】オーバーローンの場合
家の売却金額がローン残債および売却にかかる費用を下回ることを、オーバーローンといいます。
その場合、下回った金額をどう埋め合わせするかが問題となります。
残った金額だけローンを払い続けることはできないため、家の売却と同時に一括で返済する必要があります。
残債の返済方法については後述します。
ローンが残っている家を売却するコツ
住宅ローンが残っている家を売却するときにはどんなコツがあるのでしょうか。
ひとつは、協力を得られる不動産会社を選ぶこと。
そしてもうひとつは、売却する時期に気をつけることです。
【コツ1】協力を得られる不動産会社を選ぶ
住宅ローンが残っているときはもちろん、そうでなくても不動産会社の選択は重要です。
特に住宅ローンが残っている家を売却するときは、売却金額や売却の時期、内覧時の制限など売主側にある程度の制約があります。
そういった事情を考慮し、売主側に十分配慮した売却活動ができる不動産会社を選ぶ必要があります。
媒介契約は1社とのみ締結するべき?
売却活動をする場合、不動産会社と媒介契約を締結します。
1社のみに依頼する専任媒介契約と、複数社に依頼できる一般媒介契約がありますが、どちらがよいのでしょうか。
結論から言うと、住宅ローンが残っている家を売却するときは、信頼できる1社と媒介契約を締結することが望ましいです。
売却活動中には、買主から金額や入居時期といった細かいことまで交渉が入りますが、複数社に依頼しているとそういったこまごまとした調整が困難になります。
専任の不動産会社が1社であればその担当者とやりとりするだけなので、調整もしやすく売却までがスムーズです。
買主側の不動産会社としても、売主側が専任になっていると話を進めやすいと感じるようです。
【コツ2】売却する時期に気をつける
もし家を売るタイミングに選択の余地があるならば、より売却がしやすい時期を選びましょう。
まず、新築の戸建てやマンションが値上がりしている時期は、中古の家を売却しやすいです。
周辺に建った新築物件の金額が今までより高いと思ったら、それは売却のタイミングかもしれません。
また、引っ越しシーズンである2月~3月は、家を売るのに最も適した時期です。
小学生、中学生の子どもがいるファミリー層は、学年末での引っ越しを希望するため、この時期を想定して物件探しをすることが多いです。
3月に引き渡しをするためには、前年の11月頃から売却活動を始める必要があります。
ローンが残っている家を売却するときの注意点
ローンが残っている家を売却するときには、どんな点に注意が必要なのでしょうか。
ひとつは、売却時にかかる諸費用に気をつけること。
もう一つは、売却と同時に新しく家を購入する場合ですが、売り買いのタイミングに気をつけることです。
【注意点1】売却時の費用を把握する
家を売却するときには、別途諸費用がかかります。
ローン残債を賄える金額で売却できたとしても、諸費用で足が出てしまっては意味がありません。
どんな費用がかかるのかをしっかり押さえておきましょう。
- 不動産会社に支払う仲介手数料
- 契約書に貼付する印紙税
- 司法書士に支払う抵当権抹消費用
- 住宅ローン返済手数料
- 譲渡益が出た場合の譲渡所得税
これらの費用は売却金額の5%程度かかると言われています。
これを考慮して、売却金額がローン残債を超えることができるよう注意しましょう。
売却金額が高めであれば譲渡所得税に注意
家を売却して利益がでると、その翌年に譲渡所得税という税金を支払うことになります。
この譲渡所得に対して所得税と住民税がかかるのですが、その2つをまとめて譲渡所得税と呼びます。
売却価格が高ければ高いほど、譲渡所得税がかかる可能性が高まりますので、注意が必要です。
【注意点2】売却と同時に購入する場合は「売却が先」が安心
ローン残債がある家を売却するのと同時に新しく家を購入する時には、売却が先か購入が先か注意する必要があります。
一般的には、資金的な面で安心なため「売却を先」にすることが多いです。
売却が先の場合、家の売却が決まってから購入する家を契約することになります。
その場合、居住しながらの売却活動になることや購入する家を探す時間が少ないというマイナス面はありますが、資金的には余裕を持つことができます。
どうしても購入する家にこだわりたい場合は、売却した家から仮住まいに引っ越して購入する家を探すというケースもあります。
資金面がクリアできるのであれば「購入が先」でも可
購入が先の場合、家の売却活動をしながら先に新しい家を購入して引っ越すことができます。
売却する家の残ったローンに加えて新しい家のローンを組む必要があるため、資金計画が立てづらく、銀行によっては審査がおりないこともあるでしょう。
ただ、売る家が空き家になるため買主による内覧もしやすく、売却活動には有利になります。
資金面に問題がなければ、購入を先にしてもよいでしょう。
売却してもオーバーローンとなったときの対処法
前述したように、必ずしも売却金額がローンの残債と売却費用を下回ることもあります。
こういったオーバーローンの家を売却するには、どんな方法があるのでしょうか。
それぞれの方法と注意点を詳しく解説します。
【方法1】自己資金から補填する
オーバーローンとなってしまう家を売却するには、残りのローンを自己資金から支払って完済する方法があります。
この場合は、売却が決まり決済のタイミングで残債を支払い、抵当権抹消の手続きを行います。
残債の金額が大きいと家計に大きな影響を与えてしまいますが、実家に住み替えるなど売却後に新しく家を購入したり賃貸したりする必要がない場合は、最も早く売却を完了することができます。
【方法2】新しい住宅ローンに上乗せする
オーバーローンとなってしまう部分を、新しく購入する家の住宅ローンに上乗せするという方法があります。
購入する家の住宅ローンに残債を上乗せするため、当然ローン金額は大きくなり、金融機関によるローンの審査は厳しくなります。
ローン審査に通らなかったり、優遇金利が使えず金利が高くなったりすることもあります。
また、新しい住宅ローンに上乗せする方法は、タイミングが難しいのがデメリットです。
持っていた家の売却と新しく購入する家の購入の決済、引き渡しを同日に行わなければならないため、とてもタイトなスケジュールになります。
逆に言えば、そのスケジュールに合わない買主や購入物件は選択できないということです。
買主も購入する物件も限られてくるため、充分注意が必要です。
【方法3】任意売却を使用する
オーバーローンとなってしまう家を売却するのに、任意売却という方法があります。
任意売却とは、住宅ローンの返済ができなくなりさらに自己資金で返済することも難しい持ち主が、金融機関の了解を得た上で不動産を売却する制度です。
まず大前提として、任意売却は金融機関の合意なしに行うことはできません。
住宅ローンが払えなくなった場合、通常は金融機関が抵当権を実行して強制的にその家を競売にかけることになります。
しかし競売では相当に低い金額しか回収することができません。
金融機関はできる限り高く家を売却するために、競売を回避して任意売却を行います。
任意売却は信用情報に影響する
任意売却を利用すると、持ち主は信用情報機関に登録されることになります。
そうすると、新たなローンが組めない、クレジットカードが作れないといった影響が出てきます。
また、最近は賃貸契約の際の審査でも信用情報を使用する場合があるため、賃貸の審査に通らず引っ越し先が確保できないといったケースもあります。
そういった不便さを考えると、任意売却を利用するのは最終手段とするべきでしょう。
まとめ
住宅ローンは長い期間をかけて返済するため、その間にライフスタイルが変わって引っ越しが必要になることがあります。
住宅ローンが残っていてもその家を売却することは可能ですが、やはり資金的には負担がかかりますし、スケジュール調整も必要なため時間も多く費やすことになります。
売却しなければならない場合は、できるだけローンを完済できようにしっかりと計画しましょう。
ローン残債がある家を売却できるかどうかは、そのエリアの中古住宅の需要が高いかどうかが重要です。
中古住宅が活発に動いているエリアであれば、ローン残債を上回る額でのスムーズな売却活動が可能になります。
普段から周辺の中古住宅の動きをチェックして、大体の売却価格を把握しておきましょう。