相続した土地をすぐ売却した方が良いケースとは?控除・特例も紹介
この記事でわかること
- 相続した土地をすぐ売却した方が良いケースがわかる
- 相続した土地をすぐ売却しなくても良いケースがわかる
- 相続した土地の売却に使える控除・特例がわかる
- 相続した土地をすぐ売却するときの流れ
相続した土地を使う予定がない場合、売却を検討する人は多いかもしれません。
しかし、利用の予定がないだけでなく、他にも相続した土地を売却した方が良いケースがあります。
また、相続した土地を売却するときには、税金の控除や特例が利用できるケースもあります。
控除や特例を利用すれば税金の課税額を抑えられるため、内容を理解しておくことが大切です。
本記事では、相続した土地をすぐ売却した方が良いケースやすぐに売却しなくても良いケース、売却時に利用できる控除や特例について解説します。
目次
相続した土地をすぐ売却した方が良いケース
相続した土地をすぐに売却した方が良いケースは、次のとおりです。
- 相続税を納税する現金がない場合
- 遺産分割をしにくい場合
- 相続時の控除・特例を利用できる場合
- 相続後に不動産を活用しない場合
相続した土地をすぐに売却した方が良いケースは多く、上記の項目に該当している場合は売却を検討しましょう。
ここからは、相続した土地をすぐに売却した方が良いケースについて解説します。
相続税を納税する現金がない場合
相続税を納税する現金がない場合は、すぐに土地を売却しましょう。
相続税は原則現金納付であるため、手持ちがない場合は土地を売らざるを得ません。
相続税の納付期限は、相続があったことを知ってから10ヶ月以内であるため、売却する場合はすぐに手続きを行う必要があります。
土地の売却はすぐにできるものではなく、すぐに買い手が見つかったとしても、買い手の住宅ローン申請や土地の確定測量など、時間がかかる手続きをしなければいけません。
住宅ローン申請は約1ヶ月、確定測量は約2ヶ月かかると思っておきましょう。
遺産分割をしにくい場合
遺産分割しにくい土地であれば、すぐに売却して現金化しましょう。
土地は分筆することで各相続人に相続させられますが、土地によっては分筆しにくいケースがあります。
たとえば、間口が狭い土地で、分筆するとすべての土地の接道義務が守れない、分筆した土地がいびつな形になってしまうなどです。
分筆しにくい土地の場合は、共有名義で相続する方法もあります。
しかし、共有名義で相続してしまうと、売却するのに共有名義人全員の同意が必要になり、勝手に土地の処分ができなくなるため、注意しましょう。
相続時の控除・特例を利用できる場合
相続時の控除・特例が利用できる条件を満たしているのであれば、土地の売却を検討すると良いでしょう。
土地を売却するときに譲渡所得が発生すると、譲渡所得税が課税されます。
譲渡所得税は高額になるケースもありますが、控除や特例を利用すると納税額を減らせます。
納税額を減らせる条件を満たしていれば、税額を抑えて土地を現金化させることが可能です。
相続後に不動産を活用しない場合
相続後に不動産を活用しない場合は、すぐに土地を売却した方が良いでしょう。
土地を所有していると、固定資産税や維持管理費がかかります。
維持管理費を浮かせるために自分で草刈りをする方法もありますが、毎年何回も行うのは大きな負担です。
活用しない土地は出費だけが発生してしまうため、売却の検討をおすすめします。
相続した土地をすぐ売却しなくても良いケース
相続した土地をすぐ売却しなくても良いケースは、次のとおりです。
- 相続税が発生しない場合
- 遺産分割がスムーズに進む場合
- 土地を活用する方法が決まっている場合
相続した土地をすぐ売却しなくても良いケースに該当する場合は、本当に売却する必要があるか検討しましょう。
ここからは、相続した土地をすぐ売却しなくても良いケースについて解説します。
相続税が発生しない場合
相続時に相続税が発生しない場合は、土地をすぐに売却しなくても良いケースです。
相続税を納税しなくても良いのであれば、現金をすぐに用意する必要はありません。
そのため、土地を売却する必要性が低い状態といえます。
もちろん借金も相続して現金が必要というような場合は、すぐに土地を売却した方が良いでしょう。
遺産分割がスムーズに進む場合
遺産分割がスムーズに進む場合は、すぐに土地を売却しなくても良いケースでしょう。
たとえば、相続人が2人いたとして、1人が土地を相続し、もう1人が現金を相続したとします。
しかも、土地の評価と現金の額がほぼ同じであれば、土地を現金化しなくても相続はスムーズに進みます。
このような場合、相続手続きがすぐに終わるため、土地を売却する必要はありません。
土地を活用する方法が決まっている場合
土地を活用する方法が決まっている場合は、売却することができません。
土地を相続して賃貸マンションを運営するなど、活用方法が決まっているのであれば土地が必要になります。
土地を活用する場合は、売却に向けた準備は必要ありません。
相続した土地の売却に使える控除・特例
相続した土地の売却に使える控除・特例は、次のとおりです。
- 相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
- 空き家の3,000万円特別控除
相続した土地の売却時には、様々な控除・特例が利用できます。
しかし、それぞれの控除・特例の内容は異なるため、違いを理解しておかなければいけません。
ここからは、相続した土地の売却に使える控除・特例について解説します。
相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例
相続財産を譲渡した場合の取得費加算の特例とは、不動産売却時の譲渡所得を計算するときに、納税した相続税の一部を取得費として計上できる特例です。
通常の譲渡所得の取得費に。相続税は計上できません。
相続税を取得費に計上すれば譲渡所得が減り、譲渡所得税の課税額も減ります。
空き家の3,000万円特別控除
空き家の3,000万円特別控除とは、一定条件を満たした空き家を売却した場合、譲渡所得から3,000万円を控除できる特例です。
空き家の3,000万円特別控除を利用するには、売却する予定で相続した空き家の条件と、相続人の条件の2つを満たす必要があります。
適用条件は厳しいですが、譲渡所得から3,000万円を控除できるのは大きいため、利用できるかどうか確認してから、相続した不動産を売却することをおすすめします。
相続した土地をすぐ売却するときの流れ
相続した土地をすぐ売却するときには、次のような手順を踏みます。
- 1)不動産会社の査定を受ける
- 2)媒介契約を締結する
- 3)売買契約を締結する
- 4)相続した土地の引き渡しをする
- 5)確定申告をする
ここからは、相続した土地をすぐに売却するときの流れについて解説します。
1)不動産会社の査定を受ける
相続した土地を売却するときには、まず不動産会社の査定を受けます。
不動産会社の査定を受けて、相続した土地の査定額を確認します。
査定額を参考にして売出価格を決めるため、複数の不動産会社から査定金額と査定根拠を聞いておくとよいでしょう。
2)媒介契約を締結する
売却を依頼する不動産会社を決定したら、その会社と媒介契約を締結します。
媒介契約には、次の3種類の契約方式があります。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
それぞれの媒介契約の内容の違いは、次のとおりです。
専属専任媒介契約 | 専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
依頼可能な会社数 | 1社のみ | 1社のみ | 複数社 |
依頼主への報告義務 | 1週間に1回以上 | 2週間に1回以上 | なし |
レインズへの登録義務 | 媒介契約締結から5営業日以内 | 媒介契約締結から7営業日以内 | なし |
契約期間 | 最長3ヶ月 | 最長3ヶ月 | 法律に期間の定めはない |
自己発見取引 | 不可 | 可 | 可 |
表のように媒介契約には違いがあるため、不動産会社から内容をきちんと聞いておきましょう。
3)売買契約を締結する
媒介契約を締結したら販売活動が開始され、買い手を探し、見つかったら不動産売買契約を締結します。
不動産売買契約では、売買金額や引き渡し時期、住宅ローンの借り入れの有無など様々な項目の取り決めをします。
4)相続した土地の引き渡しをする
不動産売買契約が終わったら、契約内容に記載された期日までに不動産を引き渡します。
土地を売却するときには、契約後に確定測量を行い、古家を解体します。
引き渡しをする前には、契約書で取り決めした内容を終えたかどうか確認しつつ、進めていきましょう。
5)確定申告をする
相続した土地を売却したときに譲渡所得が発生した場合や、税金の特例・控除を利用する場合には確定申告をしなければいけません。
確定申告は不動産を売却した年の翌年、2月16日~3月15日までに行う必要があります。
なお、譲渡所得が発生したかどうかは、計算方法がわかれば算出が可能です。
次章で譲渡所得の計算方法を詳しく解説していますので、自分で計算してみたいという人はそちらを参照ください。
相続した土地を売却したときの税金計算方法
相続した土地を売却したときの税金計算方法は、次のとおりです。
- 譲渡所得を計算する
- 譲渡所得に税率を掛けて譲渡所得税を算出する
ここからは、相続した土地を売却したときの税金計算方法について解説します。
譲渡所得を計算する
相続した土地を売却したときの税金計算をするときには、まず譲渡所得を計算します。
譲渡所得の計算方法は、次のとおりです。
譲渡所得の計算式
譲渡所得 = 譲渡収入 -(取得費 + 譲渡費用)
譲渡費用とは不動産の売却金額をいい、取得費は売却した不動産の購入代金と購入諸費用を足した金額、譲渡費用は売却諸費用のことです。
なお、相続した不動産の取得費は、亡くなった人(被相続人)が購入したときの金額を引き継げます。
また、取得費が不明の場合は、譲渡収入 × 5%の金額を取得費として計上できます。
譲渡所得に税率を掛けて譲渡所得税を算出する
譲渡所得が計算できたら、税率を掛けて譲渡所得税を算出します。
計算式は、次のとおりです。
譲渡所得税の計算式
譲渡所得税 = 譲渡所得 × 税率
譲渡所得税の税率は不動産の所有期間によって、次のように変わります。
不動産を売却した日の属する日の1月1日現在で所有期間5年以下 | 短期譲渡所得(税率39.63%・復興特別所得税と住民税含む) |
---|---|
不動産を売却した日の属する日の1月1日現在で所有期間5年超え | 長期譲渡所得(税率20.315%・復興特別所得税と住民税含む) |
なお、相続した不動産の所有期間は、被相続人が所有していた期間と相続人が所有している期間を通算できます。
まとめ
相続した土地をすぐに売却した方が良いかは、相続人の考えや状況によります。
相続税を支払う現金がない場合や土地を活用する予定がない場合、遺産分割がうまくいかない場合はすぐに売却した方が良い状況だといえるでしょう。
相続した土地を売却するときには、流れや税金額を抑えるための控除・特例、税金の計算方法を理解しておきましょう。
土地の売却の基礎知識を得ておけば、スムーズに売却を進めていくことができます。