共有持分権とは?かかる費用や手放す方法・必要書類まとめ
この記事でわかること
- 共有持分権とは何かがわかる
- 共有持分権の土地にかかる費用や負担方法がわかる
- 共有持分権を手放す方法がわかる
共有している不動産があるときには、共有者全員に共有持分権が発生します。
共有持分権を持っている場合、不動産の売却やリフォームをする際に他の共有者の同意が必要になるなど、権利と同時に制限も受けてしまいます。
そのため、共有持分権を手放して共有状態を解消したいと考える人もいることでしょう。
今回は、共有持分権とは何か、共有持分権を手放すときはどうしたらいいのか、共有持分権を保持し続けるときの注意点を解説します。
目次
共有持分権とは
共有持分権とは、共有物の共有持分を保有することにより発生する様々な権利のことです。
共有持分権を持っている共有物に対して、以下の権利・行為を行使できます。
- 共有物を使用する権利
- 収益を上げる権利
- 維持修繕する行為
- 不動産を管理する行為
- 売却など処分する行為
しかし、この管理行為や処分行為などの権利行使は、共有者と共同で行わなければなりません。
つまり、共有物に対して様々な権利を持つと同時に、権利を行使するためには一定の制限を受けることとなります。
たとえば、共有している不動産の売却は共有物の処分行為に該当しますが、このような場合は共有者全員の許可が必要になります。
その他、共有不動産をリフォームする場合は変更行為に該当し、変更行為を行うためには共有者の過半数の同意が必要です。
共有持分とは
共有持分とは、不動産を複数人で共有しているときの所有権割合です。
仮に1億円の土地をA・B・Cの3人で共同購入した場合、各自の共有持分は出資額によって以下のように決まります。
- Aの出資額6,000万円:共有持分は3/5
- Bの出資額2,000万円:共有持分は1/5
- Cの出資額2,000万円:共有持分は1/5
土地や建物に共有持分が設定されている状態を共有名義といい、共有者は持分の割合に応じて管理や使用する権利などを行使できます。
ただし、一部の権利行使には共有者全員の同意が必要となり、共有持分に応じた管理義務なども負わなければなりません。
また、共有者は以下の費用を負担する必要もあります。
共有持分のある不動産にかかる費用
不動産には以下の経費がかかるので、共有している場合は持分権利者が負担しなければなりません。
- 必要費:維持や管理に必要となる費用
- 不当利得:必要費以外の費用
必要費と不当利得は以下のような内訳になっています。
必要費
不動産を所有すると、以下の必要費がかかります。
- 固定資産税
- 都市計画税
- 維持管理費
固定資産税は税率1.4%の自治体が多く、市街地の不動産には0.3%の都市計画税もかかりますが、税額は「固定資産税評価額×税率」で計算。
されています。
また、不動産の維持管理費として以下のような費用も発生します。
- 分譲マンションの場合は管理会社に支払う管理費
- 借地に家屋を建築している場合は地主へ支払う地代
- 建物の修繕費
なお、固定資産税や都市計画税には連帯納付義務があり、管理費や地代は「不可分」の債務となるため、共有者全員が協力して支払わなければなりません。
建物の修繕費は計画的に積み立てておく必要があるでしょう。
不当利得
不動産を共有している場合、「不当利得」が費用になるケースもあります。
必要費には該当しませんが、以下のような費用は共有持分の権利者へ請求できます。
- 有益費
- 電気や水道、ガスなどの使用料金
不動産の資産価値を上げる費用は有益費になるので、壁紙の張り替えやシャワー付きトイレへの交換など、建物の価値を上げるためにかかった費用を請求できます。
また、共有している建物の電気料金や水道料金など、光熱費の関係も共有者へ請求できる不当利得となります。
ただし、共有不動産を1人で占有すると、他の共有者から不当利得として家賃請求されるケースもあるので注意してください。
この場合の家賃は持分割合に応じた金額を請求されます。
共有物の費用の負担方法
共有持分権がある不動産の費用の負担方法は2種類あるため、その負担方法を紹介します。
共有持分の割合によって各人が負担
共有持分権がある不動産の費用を負担する方法の1つとして、保有している共有持分の割合に応じて、共有者全員がそれぞれ費用を負担する方法があります。
持分ごとで支払いをするため、各共有者の負担額が明確になる反面、誰かが各共有者全員から金銭を集めなければいけない手間が発生します。
代表者1人が全額負担し、他の共有者に請求する
共有持分権のある不動産の費用負担方法として、代表者1人が費用を一旦全額で負担し、負担した金額を各共有者に割合に応じた費用を請求していく方法があります。
この方法だと、一度全額費用が払われるので支払い遅れなどが発生しにくくなる反面、立て替えた費用を支払ってくれなくなる共有者が出てくることが難点です。
共有持分権を手放す方法・必要書類
共有持分権があると、共有物である土地を利用できるなどの権利がありますが、それと同時に共有者と土地を維持していくという制限も受けます。
しかし、共有者と関係が悪く維持をするのが困難な場合など、共有持分権を手放したいと考えることがあるかもしれません。
そのようなときに、どのように共有持分権を手放したらよいのか、手放すときにはどのような書類が必要なのかを解説します。
共有持分を放棄する
共有持分を放棄するときは、共有者の同意は必要なく、自分自身の一方的な意思表示で放棄することができます。
しかし、共有持分を放棄したことを登記するためには、共有者と協力をして登記の共同申請をする必要があります。
そのため、共有持分を放棄することは自分でできるものの、放棄したことを証明する場合には共有者の協力が必要ということになります。
共有持分を放棄したことを登記する場合には、共有している不動産を管轄する法務局へ次のような書類を持参することで登記が可能です。
共有持分を放棄する人の必要書類
- 登記済証または登記識別情報通知
- 登記原因証明情報
- 印鑑証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
- 固定資産評価証明書
- 実印
- 本人確認書類
なお、放棄する人の住所・氏名などが登記情報と異なっているときは、以下の書類も必要になります。
放棄する人の住所・氏名が登記情報と異なる場合の必要書類
- 住民票または戸籍の附票
- 戸籍謄本
- 地番変更証明書
地番変更証明書は市町村役場で交付してもらえます。
共有持分を放棄する人以外の共有者の必要書類
- 住民票
- 認印
- 本人確認書類
なお、共有持分を放棄するときの登記には登録免許税が課税されるため、どのくらいの課税金額になるかあらかじめ司法書士などに確認しておきましょう。
共有持分を売却する
共有持分権を手放す方法として、共有持分を売却するという方法があります。
共有している不動産全体を売却する場合には、共有者全員の売却承諾が必要になりますが、自分の共有持分だけを売却するときは、他の共有者の承諾は必要ありません。
共有持分を売却するときには、共有持分を買取している不動産会社に依頼をします。
一般的に、共有持分を購入する個人はいないため、不動産会社に買い取ってもらうことが前提となります。
個人で共有持分を購入したとしても利用できる行為が制限されるため、購入しても使い道が少ないというのが理由です。
不動産会社に共有持分を買取りしてもらうときに必要な書類は、以下のとおりです。
共有持分を買取りしてもらうときに必要な書類
- 登記済証または登記識別情報通知
- 印鑑証明書(発行日から3ヶ月以内のもの)
- 固定資産税評価証明書
- 実印
- 本人確認書類
上記の書類は必須書類ですが、補助書類として不動産会社から請求を受ける書類があります。
必要に応じて提出しなければならない書類は、次のとおりです。
必要に応じて提出しなければならない書類
- 確定測量図(土地や一戸建ての場合)
- 建物図面(一戸建てやマンションの場合)
- 建築確認(一戸建てやマンションの場合)
- 検査済証(一戸建てやマンションの場合)
- マンション関係書類(マンションの場合)
土地の場合は共有持分を分筆する
共有持分権を手放す方法として、土地を共有持分の割合に応じて分筆するという方法があります。
これは手放すというよりは、共有を解消するという意味合いになります。
土地は建物と違い、分筆をして分けて所有することができます。
たとえば、3人の共有者がそれぞれ持分3分の1ずつの共有持分権を持っていた場合、土地を3分割し、分割した土地それぞれを共有者それぞれが単独名義として所有します。
これにより、共有状態が解消され、共有持分権もなくなります。
ただし、分筆をする場合には法務局へ分筆登記申請をしなければなりません。
分筆登記申請をするのに必要な書類は、次のとおりです。
分筆登記申請に必要な書類
- 申請書
- 境界確認書
- 境界の同意書
- 境界の協定書
- 地積測量図
- 現地案内図
分筆登記申請に必要な書類のほとんどは、一般個人では用意できない書類です。
そのため、土地家屋調査士に分筆登記の依頼をして、確定測量から開始してもらう必要があります。
共有持分権に関する注意点
ここからは共有持分権に関する注意点を紹介していきます。
共有持分権には制限がある
共有持分権には制限があり、共有不動産を自分一人で好きに利用することはできません。
共有持分権を利用するときにかかる制限は、次のとおりです。
共有者の同意が必要かどうか | 共有している不動産でできること |
---|---|
単独で可能 | 保存:不動産の現状維持のため、建物を修繕などをすること 使用:共有している不動産に住むこと |
過半数の同意が必要 | 利用:不動産を短期賃貸借あるいは賃貸契約を解除すること 改良:不動産にリフォームやリノベーションすること |
全員の同意が必要 | 処分:不動産売却、抵当権設定などをすること |
このように、共有不動産は自分の自由に使うことはできません。
共有持分を持っているからといって、勝手に不動産を売却できないことに注意しましょう。
共有者が増える相続はトラブルになりやすい
共有持分権を長く保有すればするほど、共有者に相続が発生してしまう可能性が高まります。
共有者が少なくても共有者間でトラブルが発生しやすいにもかかわらず、相続によって共有者が増えてしまうと、より一層トラブルになりやすくなります。
しかも、相続が発生すると共有者の数が増えるだけでなく、どんどん縁が遠い共有者が増えてしまいます。
当初は夫婦や兄弟間で共有していることが多いですが、兄弟の1人が亡くなり相続が発生すると、甥や姪が共有者になる可能性があります。
顔も見たことがない人物が共有者になると、不動産売却や維持費の支払いが途端に難しくなるケースがあります。
納税の義務がある
共有している不動産には、固定資産税や都市計画税などの税金が課税されます。
固定資産税などの課税通知は持分の一番多い共有者や、登記簿の所有者欄で一番上の共有者に代表として送付されます。
しかし、これはあくまで手続き上の話であり、共有者全員の連帯債務として税金を納税しなければなりません。
そのため、自分の持分の固定資産税や都市計画税を納税しても、共有者が自分の課税分を納税しない場合は、市町村から督促や差押えが来てしまいます。
納税が確実に行われているか、共有者とは連携をとるようにしましょう。
まとめ
共有持分権とは、不動産の共有持分を保有することにより発生する様々な権利のことを指します。
共有持分権を持っていると、共有不動産への保存行為・変更行為・処分行為などを行うことができます。
しかし、この各権利を実行するときには、共有者の同意を取らなければなりません。
また、相続などによって共有者が増えると、共有者同士での連携が困難になり、トラブルが発生しやすくなります。
共有持分権を保有し続けることにはデメリットがあるため、共有持分権でトラブルが発生している場合には、専門家に相談してアドバイスをもらうことをおすすめします。