共有持分を買取業者に売却するメリット・デメリット!相場はいくら?
この記事でわかること
- 共有持分の買取方法がわかる
- 共有持分を買取業者に売却するメリット・デメリットがわかる
- 共有持分の買取価格の相場がわかる
- 共有持分を買取以外で売却する方法がわかる
共有名義の不動産は単独では売却できず、扱いに困っている人も多くるのではないでしょうか。
売却するには共有者全員の同意を得なければならず、なかなか売れないのも仕方ありません。
しかし、共有持分であれば、単独の判断で売却が可能です。
ただし、共有持分の売却にはデメリットがあるため、注意しなければいけません。
この記事では共有持分を買取業者に買い取ってもらうメリットやデメリット、売却時の相場などについて解説していますので、共有名義の不動産の扱いに困っている方はぜひ参考にしてください。
目次
共有持分の買取方法
共有持分とは、共有名義となっている不動産のうち、それぞれの所有権の割合をいいます。
共有持ち分の買取は、次の2つの方法があります。
- 共有持分を買取業者に買い取ってもらう
- 共有物分割請求を行使して共有持分を買い取ってもらう
共有持分だけを購入しても不動産を自由に使えないため、通常の売買で買い手を探すのは困難です。
共有持分を売却するときには、不動産会社に買い取ってもらうか、共有物分割請求を行使し買い取ってもらいます。
ここからは、それぞれの買取内容について解説しますので、共有持分の売却を検討している方はぜひ参考にしてください。
なお、本記事では、共有持分を不動産会社に買い取ってもらう方法をメインに解説していきます。
共有持分を買取業者に買い取ってもらう
共有持分を売却するときには、買取業者に買い取ってもらうのがよいでしょう。
共有名義の不動産売却と違い、共有持分は単独の判断で売却が可能です。
しかし、エンドユーザーは共有持分を買い取るメリットがなく、買い手はなかなか見つかりません。
買取業者であれば共有持分を買い取って、事業につなげていけるため買取をしてくれます。
買取業者は共有持分の取得後、共有分割請求を行使して他の共有者に持ち分を購入してもらうことや、すべての持ち分を買い取って不動産を売却して利益を上げます。
共有物分割請求を行使して共有持分を買い取ってもらう
共有物分割請求を自ら行使し、共有持分を買い取ってもらうこともできます。
共有物分割請求とは、裁判所を介して共有名義の解消を図るための訴訟です。
共有物分割請求が行使された場合、必ず共有名義の解消に協力しなくてはならず、裁判所の決定した解消法に従わなければいけません。
共有物分割請求は原告と被告で勝敗を争う訴訟ではなく、共有名義の解消に向けて共有者全員が裁定を仰ぐものです。
また、裁定によっては共有持分を買い取ってもらうのではなく、共有者全員で不動産を売却するという判断が下されることもあります。
そのため、共有名義の不動産の扱いに困っている場合は、共有物分割請求を起こしてもよいでしょう。
共有持分を買取業者に売却するメリット・デメリット
共有持分を買取業者に売却することには、メリットとデメリットがあります。
共有持分を買取業者に売却する際には、メリットとデメリットを理解してから進めていきましょう。
共有持分を買取業者に売却するメリット
共有持分を買取業者に売却するメリットは、次のとおりです。
共有持分を買取業者に売却するメリット
- 共有関係を解消できる
- 単独の意思で売却できる
- 現金が手に入れられる
- 売却に時間がかからない
- 自分の相続人に迷惑がかからない
共有持分を買取業者に売却するメリットは多くあり、共有名義の不動産を手放したい人に向いています。
共有持分を買い取ってもらうメリットを把握し、共有名義の不動産の悩みを解決していきましょう。
共有関係を解消できる
共有持分を買い取ってもらえば、共有者との関係を解消できます。
共有名義の不動産は共有者全員の同意がなければ売却できず、賃貸物件として貸し出すとしても単独では賃貸借契約も締結できません。
利用を制限されているにも関らず、固定資産税や維持管理などのランニングコストは持ち分に応じて支払わなければいけません。
共有持分の買取を利用すれば、このような費用負担などから解放されます。
単独の意思で売却できる
共有持分の売却は単独の意思で行えます。
共有名義の不動産は、共有者全員の売却の同意がなければ売却できません。
しかし、共有持分はあくまで自分だけの権利であるため、単独で売却が可能です。
共有名義の不動産の売却に反対され所有し続けることが負担であれば、共有持分だけ買い取ってもらいましょう。
現金が手に入る
共有持分を買取業者に売却すれば、現金を得ることが可能です。
共有名義の不動産が売却できない場合は、所有し続けることになってしまいます。
先述したように、不動産を所有していれば固定資産税や維持管理費もかかってきてしまい、現金を得るどころか支出が増加することになります。
共有名義の不動産の維持管理が負担になってきているのであれば、共有持分の買取を検討した方がよいでしょう。
売却に時間がかからない
買取は直接買取業者が購入するため、買い手を探す必要がなく売却に時間がかかりません。
買取は仲介での売却に比べてすぐに終わるため、すぐに現金がほしいという人に合っています。
また、共有持分の売却であれば、通常の不動産売却のような残置物の撤去や境界の確定などをしなくても済みます。
余計な手間がかからないだけでなく、売却の費用を抑えることが可能です。
すぐに現金が欲しい人や費用を掛けずに売却したい人は、共有持分の買取査定を依頼してみましょう。
相続人に迷惑がかからない
共有名義の不動産を保有したままに自分が亡くなってしまうと、共有持分は相続人に引き継がれます。
しかし、共有持分を相続することにはデメリットが多いため、相続人に迷惑がかかってしまいます。
相続人が共有持分を取得しても不動産を自由に扱えるわけでもなく、維持費用だけ払っていかなければいけません。
しかも、相続人にとっては他の共有者は縁遠い人が多くなり、共有持分を売却したくても話し合いすらまともにできないケースもあります。
相続人に迷惑を掛けたくないのであれば、共有持分を売却してしまうのも1つの方法です。
共有持分を買取業者に売却するデメリット
共有持分を買取業者に売却するデメリットは、次のとおりです。
共有持分を買取業者に売却するデメリット
- 買取価格が安い
- 共有者とトラブルになる可能性がある
- 不動産からの収益が受けられなくなる
共有持分を買取業者に売却するメリットは多くあるものの、デメリットもあります。
買取業者に共有持分を買い取ってもらうときには、デメリットを理解した上で進めていきましょう。
買取価格が安い
共有持分の買取価格は安く、考えるほど高くは売れません。
共有持分を売却した資金で借金を返済するなどを考えている場合は、手元にどのくらいの金銭が残るか確認しておく必要があります。
もし少しでも共有持分を高く売却したいのであれば、複数の買取業者から買取査定を受けるようにしましょう。
買取業者の買取査定は各社の規定により異なるため、買取価格に差が出ます。
1社だけの買取査定を受けてしまうと高いのか安いのか比較できないため、複数の買取業者から査定を受けてどこに依頼するか判断しましょう。
共有者とトラブルになる可能性がある
買取業者は共有持分を買い取った後、利益を出すために他の共有者に持ち分の買取や売却を要求します。
共有者からしてみれば知らない人と共有になった上に、持ち分を買い取るか売却するかの選択を迫られるので、気分の良いものではないでしょう。
買取業者によっては他の共有者に買取・売却の相談をする前に、共有物分割請求を行うケースもあります。
いきなり裁判所から共有者に共有物分割請求に関する通知が届いてしまうとびっくりしてしまうことは想像に難くありません。
さらに、共有持分を売却した人に対し「なぜ共有持分を買取業者に売却したんだ」と言い、トラブルになる可能性があります。
共有持分は単独で売却できますが、トラブルを避けるためにも共有者に持ち分の売却を検討していると買取前に伝えておいた方がよいでしょう。
不動産からの収益が受けられなくなる
共有名義の不動産が賃貸物件だった場合、持ち分に応じて家賃収入を得られますが、持ち分を売却してしまうと収入を受け取れなくなります。
もし維持管理費よりも収益が上回っているのであれば、共有持分を売らずに保有し続けるのもよいでしょう。
しかし、収益よりも維持管理費の方が多い、収入は多くても管理の負担が大きいという場合には買取を検討した方がよいかもしれません。
共有持分の買取価格の相場
共有持分を買取してもらう前には、買取価格の相場を把握しておく必要があります。
共有持分の買取価格の相場の目安は、次の方法で計算します。
たとえば、不動産の買取価格が3,000万円、共有持分の割合が1/3の買取価格の目安は、次のとおりです。
3,000万円 × 1/3 = 1,000万円(買取価格の目安)
なお、不動産の買取価格は相場の6割程度になるといわれています。
そのため、不動産の買取価格の目安を知るためには、まず不動産相場を確認しなければいけません。
不動産相場を確認したら、確認した価格の0.6を乗じた金額が不動産の買取価格になります。
不動産相場を調べる方法は、次のとおりです。
- レインズマーケットインフォメーションで成約事例を調査する
- 土地総合情報システムで成約事例を調査する
- 固定資産税評価額を0.7で割り戻す
- 公示価格を調査する
上記の方法を利用して、相場を確認していきます。
不動産相場が確認できたら、共有持分の買取価格目安を計算します。
上記の確認方法の中で利用をおすすめするのは、固定資産税評価額を0.7で割り戻す方法です。
固定資産税評価額は、毎年自治体から送られてくる固定資産税通知書に記載されています。
記載されている固定資産税評価額は、所有している不動産の評価であるため、成約事例と比較しなくても買取価格目安が計算できます。
なお、レインズマーケットインフォメーションや土地総合情報システム、公示価格を利用して相場を確認するときには、必ず所有している不動産に似ている物件をピックアップしなければいけません。
たとえば、所有しているのが北向きの土地にも関わらず、南向きの土地の事例を参考にしてしまうと間違った相場を把握することになってしまいます。
調査した物件が所有している不動産に似ているかどうかをきちんと確認した上で、共有持分の買取価格の目安を計算することが大切です。
共有持分を買取以外で売却する方法
共有持分は買取以外の方法でも売却する方法があります。
買取以外で共有持分を売却する方法は、次のとおりです。
- 換価分割や代償分割を行う
- 他の共有者に持ち分を買い取ってもらう
- 共有者全員の承諾を得て不動産を売却する
共有持分を取得してしまうと、処分がなかなかできなくなります。
早目に対処しておけば、共有名義になる前に売却できることもあります。
しかし、共有名義の不動産を取得しても売却する方法があるため、どのように共有持分を売ればいいのか理解しておきましょう。
換価分割や代償分割を行う
相続の発生時に換価分割や代償分割を行えば、共有名義で不動産を手にする必要はありません。
換価分割とは、不動産を売却し、現金で相続をする方法です。
換価分割をすれば不動産を共有で相続しなくてもよくなり、共有トラブルが起きなくなります。
また、代償分割とは、相続人の1人が相続財産を取得し、現物を取得した人が相続をしなかった人に現金などを渡して相続する方法です。
たとえば、相続人が兄弟2人として、兄が相続財産として3,000万円の不動産を相続し、弟は相続財産を受け取っていないとします。
これでは不公平な相続になってしまうため、兄が弟に対して3,000万円の現金などを渡して公平性を保つわけです。
このように代償分割すれば、不動産を共有しなくてもよくなります。
換価分割や代償分割をすると、共有のトラブルを回避できます。
他の共有者に共有持分を買い取ってもらう
共有名義の不動産を相続することになってしまった場合は、買取業者ではなく他の共有者に買い取ってもらうのもよいでしょう。
共有名義の不動産の名義人には、自分と同じく共有になっている状態を負担に感じている人もいます。
もし共有名義の不動産を保有していることを負担に思っている人であれば、共有持分を買い取って共有の状態を解消するように動いてくれるかもしれません。
持ち分を手放したいときは、他の共有者に共有持分を買い取ってもらえないか確認し、買取する意思があるか確認してみましょう。
共有者全員の承諾を得て不動産を売却する
共有名義の不動産は、共有者全員の承諾があれば売却が可能です。
共有持分を売却したいと考えているときには、まず共有者全員に不動産を売却する意思があるか確認しましょう。
共有持分を売却するよりも、不動産を売却して持分に応じた金銭を受け取った方が手残り金額も多くなります。
また、不動産を売却すれば、共有持分だけ売却したときのトラブルも防止できます。
共有者全員の承諾を得るのは難しいことかもしれませんが、共有持分を売却する前には一度共有者に売却の意思がないか確認しておきましょう。
【補足】共有者から持分買取請求権を行使されたときの対処法
共有者から持ち分の買取請求権を行使されてしまったときの対処法は、次のとおりです。
- 買取請求は拒否できない
- 共有持分の買取価格について協議する
- 登記申請を交渉材料にする
- 調停で和解できるように話をする
ここからは、共有者から持ち分の買取請求権を行使されたときの対処法を解説します。
買取請求は拒否できない
持ち分の買取請求権を行使された場合、買取の請求は拒否できません。
持ち分の買取請求権とは、次のような民法に規定された権利です。
第二百五十三条 各共有者は、その持分に応じ、管理の費用を支払い、その他共有物に関する負担を負う。
2 共有者が一年以内に前項の義務を履行しないときは、他の共有者は、相当の償金を支払ってその者の持分を取得することができる。
引用:e-Gov「民法」
共有名義の不動産の保有者が持ち分に応じた管理費用などを1年間支払っていない場合、他の共有者は費用を払っていない人の持ち分を買取できるという内容です。
民法の条文では「取得することができる」と規定されており、不払者に拒否権はありません。
そのため、持ち分の買取請求権を行使されると共有持分を失ってしまいます。
共有持分を保有し続けたい場合は持ち分の買取請求権を行使されないよう、維持管理が負担だとしても持ち分に応じた費用は支払うようにしましょう。
共有持分の買取価格について協議する
共有者から持ち分の買取請求権を使われてしまったとしても、無料で持ち分を取得できるわけではなく、権利を行使した共有者は持ち分を買取ために金を払わなければいけません。
支払う金銭の額については民法に明確な規定がないため、共有持分の買取価格について協議する必要があります。
このように買取価格については交渉の余地があるため、権利行使者から提示された金額に納得できないときは交渉をしてみましょう。
登記申請を交渉材料にする
買取価格の交渉をするときには、登記申請を交渉材料にするのもよいでしょう。
共有持分の名義人を変更するには、共有者全員で登記申請をしなければいけません。
共有者の1人が登記に反対すれば、共有持分の登記変更はできないわけです。
不払者が登記に反対することもでき、反対すれば登記を行えないため、登記に同意する代わりに買取価格を少し上げてほしいと交渉します。
協議で和解できるように話をする
持ち分の買取請求権を行使されても価格交渉はできますが、買取を拒否することはできないため、権利行使者と揉めない程度の交渉に留めておきましょう。
価格交渉で揉めてしまうと、調停を起こされる可能性があります。
不払人の立場は決して強くないため、裁判所を利用されてしまうと公正な判断をされ買取価格も下がってしまう可能性が高くなります。
自分の置かれた立場を考慮しつつ、買取価格を交渉するのがコツです。
まとめ
共有名義の不動産を保有していると、様々な負担やトラブルを抱えることがあります。
しかし、不動産自体を売却するためには、共有者全員の承諾を取得しなければいけません。
共有者の1人でも売却に反対した場合は、不動産を売却できないため、所有し続けることになってしまいます。
そのようなときには、共有持分を買取業者に買い取ってもらうことを検討しましょう。
買取業者に共有持分を買い取ってもらうことにはメリットもデメリットもあるため、内容を理解して買取を進めていくことが大切です。