個人で不動産売買を行う際の必要書類は?個人売買のメリット・デメリットも合わせて説明
この記事でわかること
- 不動産の個人間売買のメリット・デメリットがわかる
- 不動産の個人間売買をする際の必要書類がわかる
- 不動産の個人間売買をする際の必要経費がわかる
不動産の売買は必ず不動産業者を仲介に入れなければいけないわけではありません。
場合によっては不動産会社を入れずに、売主と買主だけで不動産の売買を行う場合もあります。
この売主と買主だけで行う取引のことを、実務上は個人間売買と呼んでいます。
不動産売買全体からすると個人間売買は非常に数が少なく、インターネットなどで調べてもなかなか注意点が見つからないようなレアケースだと言えるでしょう。
そこで、不動産業者が仲介をしている場合と比較しながら、個人間売買のメリットとデメリットをわかりやすく説明していきます。
目次
不動産の個人間売買のメリット
不動産業者が仲介しないということは、連絡のやりとりからお金の受け渡しまで全て当事者だけ進んでいきます。
つまり、売主と買主の双方が不動産取引を理解し協力すれば非常にスムーズな取引方法とも言えるでしょう。
この場合のメリットは大きく分けて金銭的メリット、心理的メリット、そして時間的メリットにわかれます。
ここではこの3つのメリットを具体的に説明していきます。
専門家に依頼する費用を節約することができる
第一のメリットは、不動産業者を入れる場合に比べて契約にかかる費用が安くすむ点です。
つまり、不動産業者に仲介を依頼せずに直接売買をすることになるので、不動産業者の仲介手数料を節約することができます。
ただし、個人間売買であっても税金は支払う必要があるので注意が必要です。
なお、不動産業者に支払う仲介手数料は不動産の売買金額に応じた割合で決まっているので、売買金額が高い不動産ほど手数料は節約できるメリットが大きいです。
他人を取引関係に入れると負担になる場合もある
第二のメリットは、不動産業者という他人を介在するという心理的な負担が少ない点です。
一般に個人間売買の場合は、親族や友人、知人などすでに何らかの人間関係ができていることが多いです。
そのため人間関係の中に不動産業者である他人を入れることは心理的な負担になる場合があるのです。
たとえば、親子間での取引の場合に不動産業者を入れてしまうと、家族なら言いたいことが言えたのに言えなくなってしまったという事例がありました。
当事者間だけで進むのでやりとりが早く進められる
第三のメリットは、不動産業者が間に入らず当事者間のやりとりだけで進むので、やりとりが非常に早いという点です。
つまり間に第三者を挟むと伝言ゲームのように伝えたいことが行ったりきたりするために時間がかかってしまうということです。
しかし、個人間売買は売主と買主が直接やりとりするため時間的に早く進められるのです。
不動産の個人間売買のデメリット
不動産の個人間売買のデメリットは、やはり専門知識がないことによって発生するものばかりです。
代表的なものである、不動産の知識がないので売買契約書を作成することができない、金融の知識がないので住宅ローンが組みづらい、そしてトラブル解決の経験がないので不動産のトラブルが人間関係のトラブルに発展してしまう、という3つのデメリットについて説明していきます。
売買契約書の作成が難しい
第一のデメリットは、個人間売買では不動産の知識がないため売買契約書の作成に労力と手間がかかる点です。
もちろん、個人間売買では契約書を作成する義務はないのですが、契約書を作成しないと将来のトラブルの原因になるため、売買契約書を作成することが一般的と言えます。
ちなみに、不動産業者が仲介に入る場合は、宅地建物取引業法に基づいて不動産業者が「重要事項説明書」と「売買契約書」を作成することになっています。
その上で、不動産のプロである宅地建物取引士が重要事項説明書を説明することが義務付けられているのです。
この契約書と重要事項説明書の作成と専門家による重要事項の説明によって、買主は不動産の内容が理解でき、円滑な不動産売買が行えると考えられています。
しかし、個人間売買ではこのような契約書の作成も難しく、また重要事項説明書と同程度の理解をすることも困難でしょう。
住宅ローンを組むのが難しい
第二のデメリットは、個人間売買では住宅ローンの融資が、不動産業者が仲介に入る場合よりも組みづらい点です。
通常、金融機関に住宅ローンを申し込んだとしてもそれだけでローン審査が始まるわけではありません。
この場合、金融機関は必ず担保として不動産の情報を求めてきます。
しかし、個人間売買だと金融機関が求めてくる不動産の情報を提供することが難しいのです。
ちなみに、金融機関が求める情報というのは、基本的に売買契約書と重要事項説明書に含まれているものばかりです。
そのため、不動産業者が仲介として入っている場合は、スムーズに正確な情報を金融機関に提供することができるので、住宅ローンの審査と通過までが早くなるということになります。
思わぬ人間関係のトラブルに発展する可能性がある
第三のデメリットは、不動産売買をきっかけにして人間関係のトラブルに発展する場合があるということです。
たとえば、元々円滑だった人間関係だったのですが、当事者間で売買した不動産に双方が気がつかない隠れた欠陥があって多額の損額が発生してしまった場合などです。
この場合、表面上はお互いに納得していたとしてもやはり人間関係がギクシャクしてしまいます。
また、売買金額についても素人同士では客観的な相場に関する知識がないので、双方が納得する価格を決定することが難しい点もトラブルの原因になると言えるでしょう。
不動産個人売買の契約に必ず必要な書類の一覧と取得方法
不動産の個人間売買であっても、基本的に契約に必要な書類は不動産業者が仲介に入っている時と変わりません。
しかし違う点は、不動産業者が仲介として入っている場合は、専門家が代わりに集めてくれたり手助けしてくれたりするのに対して、個人間売買の場合は自分でやらなければならない点です。
いざと言うときに慌てて書類を探さなくていいように、書類収集は時間の余裕をもって行いましょう。
売主が用意しなければならないものと取得方法
売主が用意する書類は、主に所有権を移転するために必要なものです。
所有権を移転するという重要な行為に対しての書類なので、基本的には売主本人しか取得できない書類であることが共通点になっています。
普段聞き慣れない名前の書類もあるので、書類の内容と取得方法についてわかりやすく解説していきます。
登記識別情報(権利証)
登記識別情報とは、売主が不動産を取得したときに法務局からA4サイズの紙で通知される英数12桁のパスワード情報のことです。
この情報がないと不動産の所有権を移転することができません
なお、2005年よりも前に不動産を取得した場合は、申請書類の副本を「権利証」という形で持っています。
この登記識別情報は売主が新たに集める書類ではなく、不動産を取得したときにもらっているので、すでに持っている書類ということになります。
ちなみに、登記識別情報は紛失しても再発行することができません。
もしも紛失して見つからない場合は、不動産があるエリアの法務局か専門家に依頼することをお勧めします。
実印
実印とは、市町村役場で陰影を登録し「印鑑登録をした印鑑」のことです。
不動産を売買した後に法務局に所有権移転登記を申請するのですが、その法務局に提出する書類は、売主が実印で押印をしなければいけません。
そのため、不動産売買契約については実印が必要になります。
また、所有権の移転登記の際には、司法書士に委任をすることが一般的ですが、司法書士への委任状にも実印を押印する必要があります。
そのため、所有権移転登記だけ司法書士に依頼する場合でも、実印を持参する必要があります。
印鑑証明書
印鑑証明書とは、市町村役場に複製しにくい印鑑の陰影を届け出て、その陰影を証明する公的な書類のことです。
売主が契約に実印を持参しても、その実印が本当に実印なのかどうかは印鑑だけでは判断できません。
つまり、印鑑証明書に印字された陰影と照らし合わせて初めて、それが実印であることが証明できるのです。
取得方法は、市町村役場で、1通あたり300円前後で取得できます。
最近は市町村役場だけではなく出張所、コンビニエンスストアなどでも印鑑証明書は取得できることも多いです。
なお、不動産売買においては、印鑑証明書は3ヶ月以内もの、という有効期限があるので注意しましょう。
固定資産評価証明書
固定資産評価証明書とは、固定資産課税台帳に記載されている土地や建物の価格についての証明書のことです。
不動産を売買した後に法務局に所有権移転登記を申請するのですが、その法務局に提出する書類と一緒に、登録免許税という税金を納税する必要があります。
そして、この登録免許税の計算のために、固定資産評価証明書が必要になるのです。
取得方法は、東京23区内であれば都税事務所で、それ以外の市町村であれば市町村役場にて1通400円前後で取得することができます。
買主が用意しなければならないものと取得方法
買主が用意する書類は、所有権を取得するために必要なものです。
売主に比べると、買主が用意する書類はあまり多くありませんが、馴染みのない書類もあるので、書類の内容と取得方法についてわかりやすく解説していきます。
住民票の写し
住民票の写しとは、「氏名」「生年月日」「性別」「住所」「住民となった年月日」「届け出日および従前の住所」などが記載された公的な証明書です。
買主に所有権が移転すると、今後は毎年固定資産税を納税する義務が発生します。
そこで、買主がどういう人なのかを証明するために所有権移転の際に住民票の写しを提出する必要があるのです。
取得方法は、印鑑証明書と同様に市町村役場だけではなく出張所、コンビニンスストアなどでも住民票の写しを取得できる場合があります。
売主と買主で用意しなければならないもの
売主と買主が協力して用意する書類は、不動産売買契約が合意していることを証明するための書類です。
実務上は売主と買主が作成するというよりも、どちらかが作成して最後に双方が押印をする、という形が一般的でしょう。
登記原因証明情報(売買契約書)
法務局に所有権移転登記を申請する際に、所有権が移転する原因となった法律行為を書面で証明する必要があります。
この書類のことを、登記原因証明情報を呼びます。
通常は、司法書士に登記申請を依頼する場合は司法書士が作成しますが、個人間売買だと売主と買主が作成しなければなりません。
この書類は、法務局に対して提出するための書類で、売主と買主が連名で不動産売買があったことは間違いありません、と証明をする内容なので、売買契約書の写しでも登記手続き自体は行うことができます。
不動産売買に推奨される書類の一覧
不動産売買自体には必須ではないものの、その書類があれば契約がスムーズに進むような書類もあります。
これらの書類は基本的には買主のために売主が準備しておくという性質のものです。
建築確認通知書
建築確認通知書とは、建物が建築基準法等に適合しているかどうかを証明する書類です。
この書類は、建物が建築基準法の耐震構造などの基準をクリアしているか、という観点での証明書なので、仮になかったとしても不動産売買契約上は特に支障はありません。
しかし、買主からすると建築確認通知書があると心理的に安心する、という書類です。
建築確認通知書は、新築時に施工会社から受け取る書類なので、すでに受け取っている書類です。
再発行はできないので、まずは手元にあるかどうか確認しましょう。
なお、万が一紛失していても「建築計画概要書」「台帳記載事項証明書」を市町村役場の建築指導課などで発行してもらうことで証明ができる場合もあります。
土地の測量図、建物の平面図
不動産売買の際に、土地の測量図、建物の平面図があれば、
測量図や平面図は、土地の広さや建物の構造などの理解を助けるための書類なので、売買契約上必須の書類とは言えませんが、あれば非常に便利な書類です。
これらの書類は、基本的には新築時に作成されて受け取っているはずの書類ですが、万が一紛失していても法務局で取得できる場合もあります。
個人で不動産売買の際の必要経費は
個人間売買の不動産売買の際に必要な経費はどれだけでしょうか。
ここでは個人間売買であっても節約できない税金を中心に説明していきます。
印紙税
印紙税とは、契約書に収入印紙を貼って納める税金のことです。
売主と買主のどちらが負担するかは法律では決まっていませんが、実務上は契約書原本を受け取る方が負担することが多いです。
仮に売主、買主がそれぞれ原本を受け取るとしたら、それぞれが負担することになります。
個人間売買であっても、不動産業者が仲介に入ったとしても印紙税の金額自体は変わらないためご注意ください。
登録免許税
登録免許税とは、所有権の移転登記を申請する際に法務局に対して納める税金です。
この登録免許税は所有権の移転の理由によって税率が異なっており、土地の売買であれば固定資産税評価額の2.0%、相続であれば0.4%と決まっています。
また、政策的な配慮から軽減税率も定められており、2021年3月31日までは売買でも1.5%に軽減されています。
この登録免許税は、法務局に申請する際に現金か収入印紙で納付します。
まとめ
以上が、個人間売買のメリット、デメリットと必要書類、必要書類の説明でした。
不動産売買契約がスムーズにできれば費用もかからずメリットも大きいのですが、やはりリスク自体は大きく、売主・買主双方の負担も大きいので、必要に応じて専門家にも相談することとも必要でしょう。
メリットとデメリットを理解した上で、個人間売買をうまく活用してください。