不動産買取のメリット・デメリットとは?仲介との違いや向いているケースを解説
この記事でわかること
- 不動産売却おける買取とは何かがわかる
- 不動産買取の概要や種類がわかる
- 不動産買取のメリットやデメリットがわかる
- 不動産買取の流れがわかる
不動産売却を行う時には、どのようにして買主候補者を探すかが大きな問題となってきます。
買主候補者を早期に発見することができれば、スムーズに新しい住宅を購入して住み替えることができます。
今回は、不動産の売却における「不動産買取」ついて、メリットやデメリット、不動産買取の流れについて詳しく解説します。
不動産買取は、自己所有の住宅をスピーディーに換金する有力な手段ですので、住宅の売却を検討している方は、ぜひこの記事を参考にしてみてください。
目次
不動産買取とは
不動産の売却における買取とは、不動産業者が売却対象となっている土地建物を査定し、自らが買主となって、土地建物の所有者と売買契約を締結することをいいます。
全ての不動産業者がこのような不動産買取サービスを行っているわけではなく、専門の不動産買取業者がこのようなサービスを提供しています。
不動産買取業者は、土地建物を買い取った後、リフォームなどによって不動産の価値を高めて売却したり、老朽化した建物を撤去し更地にして、分譲地として販売したりします。
商業ビルやマンションなどの大きな建物の場合には、建物の価値を高めて再販売するということは古くから行われてきましたが、中古住宅については今まであまり積極的に行われてはいませんでした。
しかし最近になって、住宅のインスペクションの制度などが整備されたことにより、中古住宅の流通が積極的に行われることを見込んで、中古住宅の買い取りを推進している不動産業者が増加しています。
不動産売却における買取と仲介の違い
買取 | 仲介 | |
---|---|---|
買い手 | 不動産業者 | 個人・法人(一般的には個人が多い) |
取引価格 | 市場価格より安くなる | 市場価格 |
手数料 | かからない | 必要 |
期間 | 1週間~1ヶ月 | 3ヶ月~ |
内覧の必要性 | なし | 基本的に必要 |
不動産売却における買取と仲介の大きな違いは、不動産業者自身が買主として不動産売買契約の当事者となる点です。
不動産売買の仲介は、不動産業者が一般の消費者から買主候補者を探します。
売主と不動産業者が締結する契約の種類は、媒介契約(一般媒介契約、専任媒介契約など)です。
このため、売買契約の条件や売却価格を交渉する相手は、一般の買主候補者ではなく買取をする不動産業者ということになります。
このため、オープンハウスや物件見学会などを開催する必要もなく、また複数の買主候補者とコニュニケーションを取る煩わしさもありません。
不動産買取には即時買取と買取保証がある
不動産買取サービスには、大きく分けて二つの種類があります。
一つは即時買取、もう一つは買取保証です。
いずれも、不動産買取を実施する時に不動産業者が買主となることについては同じですが、どのような場合に不動産買取を実施するかという点に違いがあります。
即時買取
不動産買取における「即時買取」とは、当初から不動産業者が買主となる目的で、売買対象物件の訪問査定や建物状況調査などを行い、買取価格について合意した金額で不動産を買い取ってもらうサービスをいいます。
買取価格について複雑な交渉や、時間がかかる土地建物の補修などがなければ、概ね1ヶ月以内に所有不動産の売却が完了します。
買取保証
買取保証とは、いわば不動産売却の仲介と不動産買取を組み合わせたようなサービスです。
当初は売主と不動産売却の媒介契約を締結し、通常と同様に売却対象不動産の売却活動を行います。
不動産売却の媒介契約の有効期間は通常3ヶ月となっており、自動更新とすることはできません。
媒介契約の有効期間内に対象となる不動産を売却できなかった場合には、不動産買取業者が事前に売主と合意した金額で不動産を買い取ることを予め保証するサービスを「買取保証」と呼んでいます。
媒介契約の有効期間内に、買主が見つかり、晴れて一般の買主と売買契約を締結することになった場合には、不動産の媒介手数料を支払う必要があります。
しかし一般の買主が探索できずに、不動産業者と売買契約を締結することになった場合には、媒介手数料は支払う必要がなくなります。
不動産買取の5つのメリット
不動産買取は、不動産業者が買主となるために、売主候補者が発見できた段階から売却活動がスタートするようなものです。
そのため、売主にとっては不動産売買の仲介を依頼する場合に比べて、有利となる点がたくさんあります。
不動産をすぐに換金できる
不動産買取を経験した人が最も重視した買取のメリットは、不動産を売却して現金化するまでの期間が短いことです。
不動産売却の仲介を依頼して売却活動を行うときは、買主候補者を探すことから始めなければなりません。
すぐに買主候補者が見つかればよいのですが、時にはいつまでたっても買主候補が現れないこともしばしばあります。
買主候補がすぐに見つかった場合でも、住宅のインスペクションや買主の住宅ローンの手続き、買主との価格交渉、更地にして引き渡す場合には建物の取り壊し、残置物の撤去などに多くの時間が費やされることになります。
標準的な期間としては、3~6ヶ月程度を見込んでおいた方がいいでしょう。
その点、不動産買取を依頼した場合には、遅くとも1ヶ月以内には不動産の売買契約を締結し引渡し・代金の受領をすることができます。
仲介手数料が不要
不動産買取をすると、不動産業者自身が買主となるため不動産の仲介手数料を支払う必要はありません。
不動産の仲介手数料は、割引がなければ、物件価格(消費税抜)の3%プラス6万円(消費税抜)にもなります。
契約不適合責任を負わなくてよい
不動産買取の場合、契約不適合責任(旧:瑕疵担保責任。2020年民法改正)が免除されることが一般的です。
通常、売買契約において、売主は買主に対して契約不適合責任を負うことが民法上定められています。
契約不適合責任は売主の無過失責任であり、売主にとっても一般の生活の中では不具合を発見することが難しいために、この責任を負うことは、長い間中古住宅の売買が活発化しない要因になっていました。
2020年民法改正では、売主の責任がより厳格に変更されています。
不動産買取を依頼する場合、不動産業者が物件を買い取った後に一般の消費者に再販するために、一般の消費者に対して契約不適合責任を負うのは、不動産業者ということになります。
売却が難しい不動産も買取対象となるケースがある
不動産買取の場合、通常では売却が難しい不整形地、狭小地、広大地、がけ地、築古の戸建て、道路付けの悪い土地、法令上の制限がある土地(市街化調整区域など)など、売却が難しい案件についても、買取対象としてもらえる場合があります。
通常の不動産仲介の場合には、契約期間内に買い手が見つからなければ、売却できずに終了となります。
しかし不動産買取の場合は、一旦不動産業者が買い取って、その上で利用方法を考えたり、有効な土地の活用方法が見つかった段階で再販売するというような方法を取ることができたり、土地の活用についての選択肢が広がります。
その結果、通常では売却できない案件についても、買い取ってもらえることがあるのです。
秘密が守られる
不動産買取を利用する場合には、周囲の住民、友人や家族・親族に知られることなく不動産を売却することが可能となります。
不動産売却について仲介を依頼した場合、不動産情報サイトに自己所有物件が掲載されたり、物件見学会を開催したりすることで、近隣住民や知り合いに物件の売却活動を行っていることが知られてしまうことがあります。
オープンに売却活動を行なっている場合には問題ありませんが、たとえば先祖伝来の土地を売却するような場合や、高級住宅地に立地する大きな土地で売却価格がかなり高額になるような場合などは、周囲に知られたくないこともあるでしょう。
不動産買取の場合、売却活動中に情報が漏れる心配はほとんどありません。
不動産買取のデメリット
不動産の買取を不動産業者に依頼することには、様々なメリットがありますが、買主が不動産業者であることから生じるいくつかのデメリットがあります。
売却価格が安くなる
不動産買取によって所有不動産を売却するときには、売却価格が市場価格の70〜80%に設定されることが一般的です。
不動産業者は物件を買い取った後、ハウスクリーニングやリノベーションを実施し、建物の価値を上げて再販売します。
不動産業者は物件の仕入れ価格に、自社の利益を上乗せして販売活動を行うために、買取価格は市場価格よりも割引されることが大半です。
一般の不動産仲介による売却活動の場合、買主は不動産を購入しようとしているエンドユーザーであり、不動産業者は仲介手数料を受け取るのみです。
売却価格がそのまま市場価格となるために、不動産買取サービスより売却価格は高めになります。
次に誰が住むのかがわからない
不動産買取の場合、直接の購入者が不動産業者であるために、次に誰が売却対象の住宅に住むのかは分かりません。
今まで住んできた家に思い入れがあればあるほど、購入者がどのような人なのかというのは気になるものです。
特に、近隣住民との付き合いが引っ越し後も続くような場合には、新しい住人とも顔を合わせることがあるかもしれません。
このような場合には、購入者が不動産業者であることがデメリットに感じる方もいるようです。
マンションの場合要件が厳しい場合がある
木造一戸建ての住宅の買取については、買取価格さえ納得できれば買取が成立することが多いですが、マンションの場合はやや厳格な要件を設けている不動産業者があります。
たとえば、
- 新耐震基準に基づいて建設されたマンションであること
- 延床面積の合計が40平米以上であること
- 鉄筋コンクリート造あるいは鉄骨鉄筋コンクリート造であること
などです。
ファミリー向けのマンションであれば、要件を満たすために問題にはなりにくいですが、投資用に購入したワンルームマンション、1DKマンションなどは、買取に制限を設けている場合があります。
このような場合には、一般の不動産仲介による売却活動をすることになるでしょう。
不動産買取が向いているケース
不動産買取には大きなメリットがある反面、デメリットもあります。
したがって、不動産買取サービスの利用を検討するときには、自身のケースが不動産買取に向いているのか否かを判断しなければなりません。
以下のようなケースについては、不動産買取を利用することを積極的に検討した方がよいでしょう。
売却活動のスケジュールが決まっている
何らかの理由で、期限までにどうしても不動産を売却しなければならない事情がある場合には、不動産買取を検討すべきです。
たとえば、
- 転勤などで引っ越しする期限が決まっている
- 相続税の申告期限が迫っている
- 離婚調停により早期に不動産を換金する必要がある
など、確定した期限がある場合には、不動産買取サービスが強い味方になります。
また、自宅の築年数が非常に古く、安全上建物を解体して更地にして売却しなければならないような時は、全ての手続きを終えるまで多くの時間とコストがかかります。
このような場合には、不動産売却の理由について事前に不動産業者に相談し、適切なアドバイスをもらいながら、不動産買取を利用することを検討した方がよいでしょう。
売却中・売却後の煩わしさを軽減したい
不動産買取を選択すると、売却中、あるいは売却後に生じる様々な手間や煩わしさから解放されます。
このような手間や煩わしさによる心理的・経済的な負担を軽減したい、あるいは回避したいという場合には、不動産買取の方が合っています。
不動産仲介を選択する場合、住宅の補修、リフォーム、オープンハウスや物件見学会での買主候補者とのコミュニケーション、また売却対象不動産についての契約不適合責任(瑕疵担保責任)を負うことなど、様々な手間や負担がかかります。
不動産買取には、このような負担が一切生じません。
契約不適合責任についても、相当程度軽減されているのが通常です。
一般の売却活動では購入者が現れない
売却対象不動産が、一般の消費者には売却することが困難である土地については、不動産買取を選択することがむしろ一般的です。
以下のような場合には、不動産買取についても視野にいれて売却を検討するとよいと思います。
- ロードサイド土地や繁華街など住宅地ではないところに存在する場合
- 広大地でマンションの開発や店舗の開発などに適している土地の場合
- 住宅が建てられない・建てにくい土地の場合(道路付けが悪い土地、市街化調整区域に存在する土地、不整形地、がけ地、日照や通風が悪い土地など)
場合によっては、不動産買取を行っている開発業者を紹介してもらうために、不動産の仲介をお願いするということも十分にあり得ます。
不動産買取の流れ
所有する不動産を、買取業者に買い取ってもらう際の流れを確認しておきましょう。
まずは、周辺の土地の相場を確認しておきましょう。
買取業者は専門業者として、土地の相場などの最新の情報を持っています。
そのため、土地の相場を知っていなければ、買取価格の交渉を行う際に、不利な条件で売却してしまうことがあります。
少しでも有利な条件で売却できるよう、周辺の取引価格の状況などを調べておく必要があるのです。
また、買取を依頼する場合は、1社の買取業者にいきなり依頼するのではなく、複数の業者に依頼し、見積もりを出してもらいましょう。
相見積もりの上で、最も条件の良かった業者と売買契約を締結します。
契約締結後、売買代金の授受を終えて引渡しを行い、所有権移転登記が終われば売却は完了です。
不動産を買い取ってもらった時に所得が発生した場合は、売却した年の翌年に確定申告を行い、所得税を納税しなければなりません。
不動産買取の注意点
不動産の買取をしてもらう際には、いくつか注意点があります。
まず、見積もりをしてもらった時の査定価格から、実際の買取価格を下げてくる会社は要注意です。
査定価格で買取をしてもらわなければ、見積もりを依頼した意味はありません。
あえて高めの金額で査定を行い、その後何らかの理由をつけて値下げしているとも考えられるため、査定価格で買い取ってもらわなければならないと明言しておきましょう。
また、古くからの土地は、隣地との境界線が不明確になっているケースがあります。
これまではお互い問題にしなかったとしても、買取業者に買い取ってもらう際には、その境界を明確にしておく必要があります。
ただ、境界を確定するには数十万円の費用がかかるため、そこまでの出費をして買い取ってもらうべきなのか、よく考える必要があります。
まとめ
不動産買取は、不動産売却を決めてから不動産売買契約を締結し、代金を受領するまでの期間が非常に短く、売却スケジュールが立てやすいという点が大きなメリットです。
しかし、住宅ローンの残債額が多い場合や、じっくりと購入者を探索してできるだけ高値で売却したいというような場合には、一般の不動産仲介による売却活動をしたほうがよいケースもあります。
今回説明した不動産買取のメリットやデメリット、向き不向きを十分理解した上で、自分に合った不動産売却の方法を検討してみてください。