安心して買ってもらうための「インスペクション」 そのメリットと留意点とは
目次
今回は不動産のインスペクションについて皆様にお伝えできればと思います。
さて、不動産のインスペクションという少し複雑な言葉を使用しましたが、不動産のインスペクションについて皆様はご存じでしょうか?
インスペクションというのは元々和製英語であり、「~について調べる、検査する」という意味合いを持ちます。
さて、不動産に対してインスペクションを行うというのは果たしてどのような意義があるのでしょうか?
不動産取引の場面では、不動産のインスペクションがされているかどうかにより、購入者の安心感がかなり変わってくるといわれています。
今回は、インスペクションがどのように行われ、どのような利点があるのか等についてわかりやすくお伝えしていきます。
インスペクションについて
インスペクションというのは、不動産を点検するということですが、「住宅診断士」という専門の資格を持った人が不動産について問題がないかどうか、もし修理が必要となった場合にはどの程度のものとなるか等について確認を行うためになされます。
「不動産を点検する」ということですが、同じような意味で、不動産の耐震を調べるということをイメージされる方もいらっしゃるかもしれませんが、厳密にはこれらは異なるものです。
耐震診断の場合は、不動産インスペクションとは異なり耐震性にのみフォーカスがなされます。
不動産インスペクションはどこを見ているの?
先ほど耐震性は不動産インスペクションには含まれないというお話を少しさせていただきましたが、それではインスペクションというのはどのような内容を点検することになっているのかについてみてきたいと思います。
不動産のインスペクションとしては、以下のようなものが対象となっています。
- (1)雨漏りや水漏れの恐れがある場所
例)屋根・天井・内壁・外壁など - (2)設備配管がある場所
例)給水管・排水管・排気ダクト・給油管など - (3)構造的に問題となりそうな場所
例)基礎部分・床・梁・柱・壁など
どのようにインスペクションが行われるの?
先ほどインスペクションが行われるべき場所について確認をしていきましたが、今度はインスペクションの具体的内容についてみていきたいと思います。
不動産の現況を調査します
ここでは、不動産の現場を確認し、一般的に生活をしていく中で特別問題が生じるリスクがあるかどうかを点検していきます。
この段階では、およそ目視による方法にて不動産を見ていきます。
不動産を総合的に内部調査します
ここでは、不動産の内部構造に問題がないかどうかについて、場合によっては不動産の破壊調査も含めて念入りに点検をしていくことになります。
不動産の性能上の問題について調査します
ここでは、不動産をリフォームすることを前提とした事前のインスペクションを実施します。
リフォーム対象箇所が現状どのような状態にあるのかを正確に把握し、場合によっては破壊調査も実施されることになるかもしれません。
不動産を売るためのインスペクションについて
不動産を売るためのインスペクションは、上図のように手続きが進んでいきます。
先ほどもお話ししましたが、不動産のインスペクションは住宅診断士が行うことになりますので、住宅診断士に依頼をしなければいけません。
依頼の方法としては、不動産業者に連絡を取っていただくか、ご自身で適当な方を探すという方法も考えられるでしょう。
ただし、ご自身で住宅診断士を探される場合には、特別業界に詳しい方でない限り、何社かと見積もりをとり、信頼できる方にお願いをするようにしてください。
インスペクションを進めるためにはどのような書類が必要となるか?
不動産のインスペクションを有効に進めるためには、以下のような書類が必要となります。
- (1)仕様書
- (2)周辺地図
- (3)建築確認申請書
- (4)地番調査書、地番改良施工報告書等
- (5)内部仕上げ表
- (6)平面図・建物配置図・設備図等の図面
上記書類を用意しておくことで、不動産のインスペクションの診断結果の制度がやはり変わってきますので、準備できるものは準備しましょう。
インスペクションにはどれほどかかるの?
インスペクションは内容によって時間は前後しますが、およそ2~3時間で完了します。
これはあくまでインスペクション当日にかかる時間であり、インスペクションの手続き開始から終了までの時間を考えると約1週間はかかるとみてもよいのではないでしょうか。
不動産のインスペクションの結果としての文書の受理が当日以降になるという可能性もありますので、完了結果の手続き感についても確認をしておくのがよいでしょう。
不動産を売る際のインスペクションのメリットとは?
不動産のインスペクションを行うメリットとしては、以下のようなものが挙げられるでしょう。
- (1)不動産のインスペクションを適正に受けたことをアピールできる
- (2)物件引渡しをしてからのトラブルを事前に予防することができる
- (3)不動産の価値を高めることができる
上記の通り不動産のインスペクションを受けておくと、やはり不動産に詳しい人にとってはとても安心して購入をすることができるという一つの指標となりうるでしょう。
インスペクションを行うために売主が気を付けなくてはいけないこととは?
不動産のインスペクションを行うにあたり、以下の点にはご注意ください。
問題が発覚したらそれを明示すること
不動産のインスペクションを行った結果として何らかの問題点が起きたとしてもそれを隠蔽することは違法性、有責性の観点から問題となります。
問題点についてはきちんと内容を報告しなければいけないということに注意が必要です。
不動産のインスペクションは誰が行ったかが信用度に影響します
そうはいっても不動産のインスペクションを売主と提携している業者が行った場合には、若干不正をしているのではないのかという疑問を持たれる可能性があります。
実際には、そのようなことは少ないと考えられますが、不動産というと信用性が第一となりますので、少しでもリスクは減らさないといけません。
瑕疵担保責任とは別個に考えなければいけません
不動産のインスペクションの問題は不動産の瑕疵担保責任の問題と非常に似ていますが、ここでは瑕疵担保責任における点検という意味とは別個に考えていただく必要があります。
インスペクションをしなくても問題はないの?
不動産のインスペクションを行うことはコストがかかってしまいますので、売主側としては可能であるならば避けたいというのが本音ではないでしょうか。
しかしながら、宅地建物取引業法の改正により以下の内容について買い手に対する説明をしなければいけないことになりました。
- (1)不動産のインスペクションの業者を斡旋することができるかについて
- (2)不動産のインスペクションを実施したかについて
- (3)不動産のインスペクションの調査の結果について
まとめ
不動産のインスペクションについては、今後ますますコンプライアンス問題が大きくなるにつれて重要視されていくことになるでしょう。
不動産のインスペクションについてきちんと理解をし、適法に行わなければいけません。