家を売却する方法|流れや相場、費用、高く家を売るコツも紹介
家を売るためにやることは何があるのでしょうか。
査定の流れや売るための手順、家を売る方法がわからない人も少なくありません。
売るためにかかる費用相場や、少しでも高く売るやり方があれば、事前に知っておきたいところです。
今回は、家を売却する方法と流れ、売却にかかる期間や費用の目安、注意点を解説します。
家や不動産の売却を検討している場合は、ぜひ参考にしてください。
目次
家の売却方法
家の売却方法は大きく分けて4つあります。
どの方法にもメリットとデメリットがあります。
下表でメリット・デメリットを把握し、売却方法を検討しましょう。
メリット | デメリット | |
---|---|---|
仲介 |
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買取 |
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個人売買 |
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任意売却 |
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仲介
仲介とは、不動産会社に仲介してもらって家を売却する方法です。
不動産売買のもっともオーソドックスな方法でもあります。
売り出し価格を自分で決定できるため、4つの方法の中ではもっとも高く売却できます。
ただし、買い手が見つからないと売却に時間がかかってしまいます。
また、仲介してくれる不動産会社に対して仲介手数料が必要です。
家が売却できた際に支払うだけですが、家の売却額の3%+6万円(税別)がかかります。
売主に代わって売却先を探してくれますが、費用がかかる点に注意が必要です。
買取
買取とは、不動産会社に家を買い取ってもらう方法です。
早く家や土地を売って現金化したいときに有効で、買取で獲得した資金で、次の不動産購入に必要な資金計画を立てやすくなるでしょう。
売主が買主を待たなくてもいいので、とにかく早く現金化したい場合におすすめです。
しかし、仲介と比較して価格が70~80%となってしまいます。
こちらが希望する売却価格では売れませんが、住み替えや遺産分割など、早急に現金化したい場合には有効な方法です。
個人売買
個人売買とは読んで字のごとく、不動産会社を介せず家を売却する方法です。
仲介手数料もなく、売り主の言い値で家を売却できます。
一方で不動産売買には専門知識や資格が必要で、決してハードルが低いとは言えません。
家を売るのが初めて、個人売買できる自信がない場合は選択しない方がいいでしょう。
任意売却
任意売却とは、ローンを完済せずに家を売却する方法です。
家の売却額よりも住宅ローン残高が上回りローンを返済できないオーバーローンの際に利用できる売却方法です。
この方法を利用することで、ローン返済中でも金融機関が許可を出せば売却が可能になります。
ただしこの方法を使うと金融機関に支払い能力がないと判断され、ブラックリストに載る可能性があります。
ローンを完済しないまま抵当権を抹消することになるので、事実上の不良債権扱いです。
また、売却後も無担保のローン残債は支払い続けなければなりません。
やむを得ない事情で家を売却しなければならない状況を除いて、選択肢に含めない方がいいでしょう。
家を売却するまでの期間
「家を売却しよう」と決めても、すぐに売却できるわけではありません。
仲介を使う場合、相場を調べて査定をし、その後に媒介契約となります。
契約締結後も買主を探すための売却活動が必要で、おおむね3~6ヶ月はかかるといわれています。
この期間は持ち主は売主になるので、住宅や土地にかかる固定資産税などの税金は、支払いの義務があるので注意しましょう。
家を売却するまでの流れ
家を売却するまでの流れは以下のとおりです。
仲介の場合を例にとっていますが、いずれの方法でも基本の大まかな流れは変わりません。
それぞれの詳細もあわせて解説します。
相場の調査と査定
家を売却すると決めて、最初に行うのは相場調査と査定依頼です。
相場調査とは自分で家の買取相場を調べることです。
いきなり査定依頼をしても問題はありません。
しかし、事前に相場を知っておくことで不動産会社が提示する査定額が妥当なのかどうかがある程度判断できるようになります。
調べ方は不動産会社が運営しているポータルサイトや、不動産流通機構「レインズ」を使いましょう。
相場がわかったら、不動産会社へ査定を依頼します。
査定の方法は、主に以下の2つがあります。
・簡易(机上)査定
築年数や所在地など、家の基本情報などで簡易的に査定額が出せる。電話やメールでも可能。
・訪問査定
売却予定の家を訪問してもらい査定を行う。状態などを細かく確認するため、より正確な査定結果が出せる。
なお、これらの査定は1社ではなく複数の不動産会社から受けることをおすすめします。
相場調査を事前にしていても、実際に算出される金額が異なる場合もあるからです。
あくまで目安ですが、最低3社は見積り依頼をだすといいでしょう。
算出された査定額に納得できれば、次の工程へと移ります。
契約締結
仲介で家を売却する場合は、契約締結をします。
仲介の場合は査定後に行う「媒介契約」と、買手が決まってから結ぶ「売買契約」がありますが、この時点で結ぶのは前者です。
媒介契約には種類があり、以下のように内容が異なります。
専任媒介契約 | 専属専任媒介契約 | 一般媒介契約 | |
---|---|---|---|
複数業者との契約 | 不可 | 不可 | 可能 |
不動産流通機構「レインズ」への登録 | 7日以内 | 5日以内 | 任意 |
契約有効期間 | 3ヶ月 | 3ヶ月 | 指定なし |
自己発見取引 (売主が買主を直接探す) | 可能 | 不可 | 可能 |
媒介契約は不動産会社にどこまで営業を任せるかの取り決めです。
どの契約でなければならないなどの規定はありませんが、専売契約を結んでしまうと契約した不動産会社でしか売買できず、買手が見つかりにくくなる可能性があります。
一般媒介契約を結ぶのが一般的なので、特別な事情がない限りはこちらを選択しましょう。
売却活動
媒介契約締結後、いよいよ売却活動を開始します。
売却活動とは、家を売りだすための活動で物件情報の掲載や内覧対応などを総称した呼び方です。
仲介の場合、不動産会社が次のような宣伝を実施してくれます。
- インターネット上での広告展開
- 店頭広告の掲載
- チラシの投函
売主が済みながら売却活動を行っている場合、内覧対応を行います。
内覧は家の売却に大きく影響することなので、家をきれいに見せたり、買主候補者の質問に答えたりするなどの対応が必要です。
この時の印象で買主候補者が契約するかどうかが決まるといっても過言ではないでしょう。
売買契約・引き渡し
買主が正式に決まれば、最後の売買契約と引き渡しです。
売買契約では、宅地建物取引士が読み上げる重要事項説明で契約内容を確認します。
双方に異論がなければ晴れて契約締結となります。
なお、売買契約は一度結ぶと破棄できません。
売買契約がまとまり引き渡し日も確定したら、売主も引っ越しの準備を進めましょう。
それと同時に代金の決済や所有権移転登記・抵当権の抹消をしてください。
また、不動産売買によって譲渡所得税が発生します。
これは翌年に確定申告する必要があるので、忘れずに申告しましょう。
家を売却する際の相場とかかる費用
家を売却する際にかかる費用は、立地や土地だけ・家付き土地などの条件で変動します。
ここでは都市部の一戸建ての平均である2,000万円程度を想定。
家を売却するときには費用がかかることを覚えておきましょう。
【売却価格2,000万円の不動産売買にかかる費用の例】
金額の目安(税抜) | |
---|---|
仲介手数料 | (2,000万円×3%)+6万円=66万円 |
抵当権抹消登記 | 不動産1件につき1万円 |
登録免許税 | 数千~数万円 |
司法書士への報酬 | 1万円~(司法書士による) |
印紙代 | 3万円程度 |
譲渡所得税 | 0円(特別控除の上限額である3,000万円を越えない場合) |
リフォーム・クリーニング代 | 10~数十万円 |
家の売却に必要な書類
家の売却に必要な書類は査定依頼時と引き渡し時で異なります。
以下の表を参考にして書類を準備しましょう。
【査定時の必要書類一覧】
マンション | マンション | 一戸建て | 土地のみ |
---|---|---|---|
登記簿謄本もしくは登記事項証明書 | 必要 | 必要 | 必要 |
売買契約書 | 必要 | 必要 | 必要 |
物件購入時の重要事項説明書 | 必要 | 必要 | 必要 |
登記済権利書もしくは登記識別情報 | 必要 | 必要 | 必要 |
土地測量図・境界確認書 | 必要 | 必要 | 必要 |
固定資産税納税通知書、固定資産税評価証明書 | 必要 | 必要 | 必要 |
物件の図面 | 必要 | 必要 | ― |
設備の仕様書 | 必要 | 必要 | ― |
建築確認済証、検査済証 | ― | 必要 | ― |
建築設計図書・工事記録書 | あればよし | ― | あればよし |
マンションの管理規約もしくは使用細則 | 必要 | ― | ― |
マンション維持費関連書類 | 必要 | ― | ― |
耐震診断報告書 | あればよし | あればよし | ― |
アスベスト使用調査報告書 | あればよし | あればよし | ― |
【引き渡し時の必要書類一覧】
マンション | マンション | 一戸建て | 土地のみ |
---|---|---|---|
本人確認書類 | 必要 | 必要 | 必要 |
実印 | 必要 | 必要 | 必要 |
印鑑証明書※1 | 必要 | 必要 | 必要 |
住民票※2 | 必要 | 必要 | 必要 |
銀行口座の通帳もしくは振込先情報 | 必要な場合のみ用意 | 必要な場合のみ用意 | 必要な場合のみ用意 |
ローン残高証明書もしくはローン返済予定表 | 必要な場合のみ用意 | 必要な場合のみ用意 | 必要な場合のみ用意 |
物件の補足資料(パンフレットなど) | 必要な場合のみ用意 | 必要な場合のみ用意 | 必要な場合のみ用意 |
※1:有効期限がないため実印の変更がなければ古い物でも可
※2:取得から3ヶ月以内のものでなければ不可
高く家を売却するコツ
少しでも家を高く売却するにはコツがあります。
査定前から可能なこともあるので、ぜひ意識して見ましょう。
適正価格を設定する
少しでも高く売りたいからと完全に売主の言い値に任せていては、いつまでたっても売れなくなってしまう可能性があります。
基本的には不動産会社が提示する「確実に売れるだろう」という価格に上乗せするのが一般的です。
上乗せする額については、家を売りに出すときの住宅相場を参考にしましょう。
住宅相場が上昇傾向なら上乗せ価格を高めに、そうでなければ少なめに設定します。
また、売手が早く売りたい場合も上乗せは少なくするといいでしょう。
住宅相場の動向は、不動産会社の担当者と相談して決めることをおすすめします。
家を売り出す時期を考える
家を高く売るためには、売却のタイミングも大きなカギを握ります。
時期としては2・3月、新生活が始まる前がいいでしょう。
また、世相による売却時期の検討も大切です。
国土交通省発表の「不動産価格指数」によると、現在の不動産売却の傾向は以下のような状態であることがわかっています。
この傾向から、マンションは比較的好条件が続いているものの、一戸建てや土地だけの場合は時期を見て売却するのが得策のようです。
また、近隣で大イベントがあったりすると、住宅相場は上昇する傾向にあります。
2021年の東京オリンピック、2025年に予定されている大阪万博が代表例です。
分からない場合は一度不動産会社に相談してみるといいでしょう。
内覧時の対応を良くする
内覧時の対応は、来客を迎えるように丁寧に接しましょう。
買主候補者は家の状態はもちろん、売主の人柄も見ています。
片付けを徹底してきれいにしておくことはもちろん、売主の印象がよくなるような対応を心掛けましょう。
また、もし売り出し中の不動産に何らかの不具合がある場合、必ず買主候補者に伝えてください。
もし何も伝えずに契約締結をし、売却後に発覚すると、契約不適合責任を追及されてしまうかもしれません。
もし契約不適合責任を負わされると補修費用の負担や損害賠償の支払いが発生する場合もあります。
不具合を伝えるのは気がひけますが、あとあとのトラブルを避けるためにも、売買契約前に必ず伝えておきましょう。
早く売りたい場合、買取も検討する
どうしても早く売りたい場合は、仲介ではなく買取も検討しましょう。
転勤や離婚、相続などで少しでも早く手放してしまいたい場合、仲介ではすぐに買手が見つからない可能性もあります。
高くは売れませんが、買取をすることで早く手放せるようになります。
媒介契約で一般媒介契約を結んで、不動産会社だけではなく売主自身で買手を探すのも方法のひとつです。
しかし、とにかく急ぐ場合は買取を前提にするといいでしょう。
【タイプ別】家の売却方法
ひと口に家を売るといっても、いろいろなタイプがあります。
それぞれに適した売却方法があれば知りたいと思っている人もいるでしょう。
ここでは以下の3つのタイプに適した売却方法を紹介します。
築年数の古い家の場合
築年数が古く、買手がつかないだろうと予測される家は、リフォームをするか更地にしてしまうことで売却するといいかもしれません。
近年ではリノベーションが流行しているので、そのままでも買手が見つからないわけではありません。
しかし中にはリフォーム完了済みの住宅を探していたり、土地だけを探していたりする人がいます。
基本的には不動産会社との相談後の対応になりますが、手段として検討しておくといいでしょう。
家のローンが残っている場合
ローンが残っている家を売却する場合、大前提として売却することでローンの完済ができるかどうかが焦点になります。
実はローンが完済できなくても家の売却自体は可能です。
しかし、もし残債があるまま売却してしまうと、抵当権の問題で買主がローンを組めなくなってしまいます。
家の売却価格でローン完済ができるなら、残債の支払いと抵当権の抹消手続きをしましょう。
ただし、売却予定の家が購入時より価値が下がっているケースがあります。
そうなると、売却価格よりも残債のほうが大きくなり「担保割れ」と呼ばれる状態になってしまいます。
売却してから担保割れが発覚すると、残債を売主の預貯金で完済しなければなりません。
売却前によく確認しておきましょう。
住み替えを検討している場合
住み替えを検討している場合は、まず査定で今の家がいくらで売却できそうかを判断してもらうところから始めましょう。
売却価格がざっくりでもわかれば、次の住宅購入の価格目安が立てられます。
ただし、売却時にかかる諸経費などがひかれることをお忘れなく。
また、住み替えには「先行売却」と「先行購入」の2種類があります。
違いは新居を探す時間を優先するか、予算を重視するかです。
万が一旧居が売却できなかった場合を考えると、二重ローンで苦しむ可能性がない先行売却のほうがいいでしょう。
先行売却 | 先行購入 | |
---|---|---|
メリット | 売却価格にめどがついているのでリスクなく新居が選べる | 新居探しの時間が確保できる |
デメリット | 新居が見つからないと仮住まいになる | 想定していた売却価格より低かった場合、資金計画の練り直しは必要 |
家を売却する際の注意点
家を売却する際にはいくつかの注意点があります。
「知らなかった」では済まされない内容なので、必ず確認しておきましょう。
契約不適合責任について確認する
「内覧時の対応を良くする」でも触れましたが、売買契約成立後に重大な不具合が発見され、かつそれが売買契約前に売主から申告されていなかった場合、契約不適合責任が発生します。
2020年4月1日までは「瑕疵担保責任」であったものが、民法改正に伴って変更されました。
内容は同じで、契約後に内容と異なる点が発見された場合、売主が責任を負う制度です。
不動産売買においては修繕費用の請求や損害賠償請求に発展しかねません。
どこまでを買主に伝えればいいか不明な場合は不動産会社に相談しましょう。
名義人を確認する
不動産売買は原則、土地建物の名義人かその代理人しかできません。
つまり不動産の名義人による意思が必要です。
しかし、名義人が違う不動産が売買されるケースがあります。
代表的な例は以下のものがあります。
- 家族が名義人(相続登記ができていないなど)
- 共有名義で持ち分割がある
- 土地と建物の名義人が異なる
繰り返しになりますが、上記の状態で不動産を売却するには名義人の意思がなければ意味がありません。
名義人の異なる不動産を売却する場合は、事前に名義変更の登記を行わなければなりません。
確定申告が必要か確認する
家を売却して利益が出た場合や控除を受ける場合、確定申告が必要です。
家の売却にかかる譲渡所得税には特別控除として3,000万円が設けられており、確定申告しなければこの控除は受けられません。
また、所有して10年が経過した物件を売却する場合も軽減税率の対象になります。
あわせて、家を売却して損益が出た場合も確定申告をしておくといいでしょう。
損益の場合は確定申告の義務はありませんが、何かしらの形で還付が受けられる可能性があります。
事前に要件を確認し、受けられる還付があれば確定申告をしましょう。
まとめ
家の売却は、完了までにそれなりの時間と労力を有します。
また、売却できても税金関係の手続きが必要であったりするなど、注意すべきポイントは随所にあります。
機会が少ない不動産売買なだけに、この記事で紹介した内容に注意をして、損や間違いがないように家の売却手続き準備をはじめましょう。