【家の査定と費用の関係】無料査定と有料査定(不動産鑑定)はどう違う?
この記事でわかること
- 無料査定と不動産鑑定評価の違いについて理解できる
- 目的に応じた査定の依頼が自分でできる
- 無料査定のメリット・デメリットがわかる
広告などを見て査定業者が行う無料査定は知っていても、査定する人が誰なのか、資格を持っていなければ出来ないのかなど詳細についてご存じない方は多いでしょう。
有料で行われる不動産鑑定についても、無料で行える査定をなぜ有償で行わなければならないのか、その目的や鑑定書の意味についてご存じない方も多いのではないでしょうか。
この記事では無料・有料(不動産鑑定)それぞれの査定の違いと目的について解説を行いながら、無料査定における注意点やポイントについて詳細に解説します。
家の査定における無料査定と有料査定の違いとは
無料査定は不動産会社が査定依頼を受けて、販売を目的として近隣の販売事例や諸条件を参考にしながら算出します。
一般的に不動産会社が販売活動を行っている不動産流通価格にあたるものです。
通常で査定を行うのは不動産業者の社員で、査定には必ずしも資格を必要としません。
これに対して、有料査定は土地家屋調査士が鑑定評価します。
土地家屋調査士は鑑定評価を生業としていますので、査定(鑑定評価)は有料になります。
ここでは査定目的の違いについて解説を行います。
無料査定を行う不動産会社
無料査定の目的は、中古市場に流通させ売買を行うことであり、その価格を算出するために不動産業者が無料査定を行います。
厳密に言えば、査定を有料とするか無料とするかは業務を行う業者次第になります。
一般的な業者は、取引成立後の成功報酬である仲介手数料で査定費用を補うことから査定を無料で行います。
ですから単純に査定だけを行いたい場合には、不動産コンサルティング業として常識的な査定費用を請求することを宅地建物取引業法で禁じている訳ではありません。
しかし、多くの不動産業者では、査定を無料で行っていることから査定無料のイメージが定着しています。
中古物件の売買を取り扱う業者は宅地建物取引業免許が必要です。
この免許業者に従事している社員で、適切な教育訓練さえ受けていれば誰でも査定をおこなうことが出来ます。
宅地建物取引業免許は、よく宅地建物取引士免許と混同されがちです。
宅地建物取引業免許は会社や企業に対して宅地建物取引業を業として行うことを、同一県内のみに本店や支店がある場合には都道府県知事から、都道府県をまたいで支店が存在する場合には国土交通大臣からの認可を受けている免許が必要となり、都道府県知事免許・国土交通大臣免許と呼ばれます。
これに対して宅地建物取引士免許は、あくまでも宅地建物取引士試験に合格した個人が登録をしている免許になります。
宅地建物取引業法では、宅地建物取引業者の従業者5名につき1名以上は宅地建物取引士であることを義務付けています。
同一の業者内で、有資格者は適切に無資格者への助言を行う義務があるとともに、宅地建物取引業法で定められている法35条書面と呼ばれる重要事項説明書の説明業務や、法37条書面と呼ばれる売買契約書の内容を確認した上での記名押印が義務付けられています。
この条件さえ満たしていれば、不動産業者の従業者は業務を行えますから、宅地建物取引士ではなくても査定業務が行えるということです。
不動産業者が査定結果をまとめた書類は「査定報告書」もしくは「査定提案書」などと呼ばれます。
有料査定を行う不動産鑑定士
不動産鑑定士の主たる業務は鑑定評価です。
土地や建物などの不動産経済的価値について、周囲の地理的状況や各種の法規制、市場経済における価値などの要素を考慮して鑑定評価を行います。
この鑑定評価は「不動産鑑定評価書」にまとめられます。
この不動産鑑定評価書の名称を用いて評価書を作成できるのは、不動産鑑定士のみとなります。
この鑑定評価結果については主に以下の用途で用いられます。
- ・国や都道府県が土地の適正価格を一般公表するための地価公示価格の参考
- ・公共用地の取得・相続税標準地の評価・固定資産税標準地の評価の参考
- ・裁判所からの依頼による不動産評価
- ・会社合併時の不動産評価など主に公的な指標を定める。
公的な指標となる不動産価値を評価できるのは、不動産鑑定士の専従業務であると理解して下さい。
家の査定における無料査定のメリット・デメリット・注意点
一般の方が不動産査定と言われる場合には、主に無料査定を指します。
ここでは無料査定の流れや方法を簡単に説明しながら、メリット・デメリットについて詳細に解説をおこないます。
一般的な査定の流れは、以下のような順番で行われます。
- 1.査定業者を選ぶ
- 2.書類準備を行う
- 3.連絡をして査定日時を調整する
- 4.訪問査定を実施する
- 5.査定結果の報告を受ける
- 6.媒介契約を締結する
- 7.販売活動開始
実際には「5.査定結果の報告」を受けて、査定金額や業者の信頼性を検討して依頼業者を決定しますので、1~5までが査定の流れであると理解してください。
6以降は実際に販売活動に入る手順となります。
この流れをご理解頂いたうえで、無料査定のメリットとデメリットについて解説します。
無料査定のメリット
費用がかからないのが最大の魅力です。
査定依頼の連絡をして、業者から断られることはまずありません。
訪問査定であれば、営業担当者の費用対効果も含めて業者はそれなりの負担をしていますが、基本的にはどの業者も無料で行っています。
ただし宅地建物取引業法では不動産コンサルティング業務など、査定を含めた資産活用や有効利用のコンサルティング業務について、仲介手数料とは別に特別依頼報酬としての請求を禁じている訳ではありません。
販売意思が無く、とりあえず価格を知りたいなどの目的による査定依頼については、予め依頼業者にその旨を説明して無料でよいのかを確認した方がよいでしょう。
簡易的な机上査定と、本格的な訪問査定が選択できる
先述したように、サイトのシステムを利用して簡易的に査定を行うシステムもありますが、最低限の情報入力で簡易的に算出される査定システムですので、訪問査定と比較すると価格に開きがでます。
それよりも多少は精度が上がる方法として、電話で詳細を説明して、訪問を受けずにおおよその査定額を知ることが出来る机上査定もあります。
こちらは口頭ではありますが営業担当者が詳細な情報をヒアリングしてきますので、サイトのシステムと比較すれば多少は精度が高くなります。
正確な市場価格を知りたければ訪問査定が必要になります。
ご自分の目的に応じて、これらの査定方法を活用しましょう。
販売可能な査定額を知ることが出来る
簡易査定や机上査定ではあくまでも目安金額ですが、訪問査定ではおおむね3か月以内に販売可能な目安とされる精度の高い査定額を知ることが出来ます。
実際の市場で流通している価格に即していることから、すぐに売り出さなくても自分の資産を確認することが出来るのです。
販売に関してのアドバイスが受けられる
訪問査定は不動産のプロが行いますので、訪問時や査定報告書の説明時に詳細な説明を受けると共に、的確なアドバイスを受けることが出来ます。
無料でアドバイスを受けられるメリットは大きいと言えるでしょう。
無料査定のデメリット
無料で受けられる査定にはメリットが多くありますが、デメリットも存在します。
ここでは無料査定のデメリットについて解説します。
査定業者選びを失敗すると、しつこく連絡を受けるというのもデメリットの一つです。
査定業者は売買契約が完了してからの成功報酬で、無料査定に必要な経費を補いますので必死になるのも仕方がないといった部分もあります。
他にはどのようなデメリットがあるのか、詳しく見ていきましょう。
時間や手間がかかる
訪問査定を受ける場合には、下記の様な準備を事前に行わなければなりません。
1.基本情報をまとめる
- ・物件所在地
- ・地番(登記簿に記載されている地番・家屋番号)
- ・土地㎡数
- ・建築年月日
- ・連絡先
2.建築図面の準備
建築確認書や建築請負契約書・売買契約書などに添付されている建物図面の写しを準備する
3.残高証明書を準備する
金融機関で発行されている償還予定表や残高証明書などを予め準備します。
4.メンテナンス記録を準備する
リフォーム工事を実施している場合や設備機器を交換している場合など、査定額に影響を与える情報は図面や工事内容も含めて、詳細に準備が必要です。
5.伝達事項をまとめる
不利益情報もまとめる必要があります。
たとえば心理的瑕疵に該当する、火災・事故・自殺などの情報も全て伝えなければなりません。
6.徹底的な清掃が必要
見た目の印象も大切なことから、訪問査定前には居室はもとより特に汚れやすい水回りなどは、徹底的に清掃が必要になります。
これらを全て準備したうえで訪問査定はおおよそ60分前後、査定報告時にも同じくらいの時間が必要になります。
訪問査定は複数業者に依頼が鉄則ですので、依頼する業者の数だけ時間が必要になります。
査定額が高額すぎるにも注意が必要
査定業者は、媒介契約を締結して取引を行わなければ報酬が得られないことから、必死に売り込みをかけてきます。
紳士的な業者ばかりではありませんので中には相場を度外視した査定額を報告して、しつこく売り込みをかけてくる業者も存在します。
不動産には適正な相場がありますので、根拠も無く高値の物件が販売出来る可能性は限りなく低くなります。
そのような業者と対応するだけでもストレスがたまるものです。
資金状況や売却理由などすべてを開示しなければならない
査定依頼を行う際には、査定額で残債が抹消できるかどうかなども事前に確認する必要がありますから、売却に関しての資金計画や、売却の理由なども詳細に説明する必要があります。
もちろん査定業者には情報漏洩禁止の守秘義務もありますが、初対面の相手に内情を話すのも気が重くなりがちです。
出来れば隠したい情報も開示の必要がある
過去にあった事件・事故・火災など出来れば人に話したくない不利益情報の開示も、デメリットと言えます。
これらの情報は「心理的瑕疵」と呼ばれ査定額に影響を与えますので、開示は依頼者の義務となります。
心理的瑕疵とは、「購入者がその内容を事前に知らされていれば購入を検討しなかった」内容になりますので、明確に時効が定められている訳ではありません。
たとえば15年前に自殺があった場合など、出来れば思い出したくないような話でも査定時に開示する必要があります。
古い情報は査定業者による表面調査では発覚しにくいことから、開示をせずに売買取引が終了した場合でも、その後に購入者がその事実を知った場合には損害賠償請求などの裁判に発展する場合もあります。
これらの情報開示も、心理的負担になるものです。
無料で家の査定を受ける際の注意点
無料で査定を受けることが出来るメリットは多くありますが、気持ちよく査定を受けるためには守って欲しい注意点も存在します。
ここでは無料査定の注意点について解説します。
無料査定で経費は請求されない
無料査定に費用はかかりません。
査定業者は適切な査定額を算出するために、様々な調査を行います。
たとえば登記情報の取得や路線価・固定資産税評価額・水道下水敷設図など専門的な調査も行います。
それらにも経費が必要ですし、実際の訪問査定を行う人件費なども含めると、1件の査定をおこなうのに業者は相応の経費負担を行っているのは事実です。
先ほどもご説明しましたが、それらの経費は全て成功報酬としての仲介手数料で補っています。
もちろん査定を行っても確実に売却依頼を受けるとは限りませんから、各社は必死になって他社との差別化を図り、売り込みをかけてくることもあります。
複数の会社に依頼して販売依頼をする業者を決定した場合には、そのほかの業者に断りを入れる必要がありますが、万が一経費を請求されても支払う必要はありません。
必ず複数会社に依頼する
査定業者選びや事前書類の準備だけでもそれなりの労力を必要としますが、訪問査定も時間が必要であることから出来る限り少ない業者に依頼したくなりますが、査定依頼は必ず複数業者に依頼することを徹底しましょう。
目安としては2~3社の業者を絞り込み、訪問査定を実施して報告を受け、結果として相性も合わないのであれば、更に2~3社の業者を絞り込んで査定依頼を行います。
非常に手間に思えるかもしれませんが、有利な売却を行うには信頼できる査定業者に依頼することが大切です。
たとえば1社だけに依頼をした場合には、査定根拠や査定額も含めて比較することが出来ません。
複数の業者から査定報告書の内容について説明を受けることにより、適正な価格帯と不動産売却に対する基本的な知識が身につきます。
有利な売却を行うためには必要な労力だと理解して、複数業者への依頼を徹底しましょう。
アピールポイントは積極的に
アピールする情報は建物の状況などに限る必要はありません。
たとえば校区内の小学校の登下校に対する安全配慮や、近隣幼稚園の評判も立派なアピールポイントですし、近所のスーパーの特売日や、お惣菜の値下げ時間も実際に住んで生活していなければ分からない情報です。
これらの情報を思いつくままに資料にして、査定業者や購入希望者に手渡すなどすれば好印象が得られます。
結果的には高値査定や早期売却の期待が高まることにもなります。
あまり見映えを気にせずに、積極的にアピールする心構えが大切です。
広く見えるレイアウトに模様替えをする
見た目の印象が大切なのは室内においても同様です。
新たに家具を購入する必要はありませんが、インターネットや雑誌で情報を収集して、リビングを広く見せるレイアウトなどを積極的に取り入れて模様替えをしてみるのも印象を変えるよい方法です。
レイアウトによっては、同じ空間だったとは思えないほどに印象が変わります。
もちろん高値査定や早期売却の期待も高まります。
自分で出来る補修はやっておく
経年変化によるフローリングやカウンターの傷、クロスの継ぎ目が開いている場合などは、ホームセンターで販売されている簡易補修キットを利用して補修することができます。
プロに依頼すると相応の金額が必要ですが、時間をかけてコツコツと行えばご自分で補修することは充分に可能です。
見た目で印象が変わりますから、出来ることは自分で行いましょう。
見た目の綺麗さはとても大切
どうしても時間がなければ、プロのハウスクリーニングなどを利用するのも方法ですが、費用がそれなりにかかります。
査定依頼前には汚れやすい水回りを中心に大掃除を行い、出来る限りその状態を維持するように心がけましょう。
ちょっとした気遣いは査定額に影響を与えるばかりか、実際の購入希望者にも好印象を与えますので早期売却にも期待が持てるようになります。
問題は先に手を打つ
一戸建ての場合には、土地の境界明示も所有者の義務になります。
境界は地積測量図で確認して、境界鋲の明示があるかの確認も必要です。
また隣家などから越境している木の枝なども、あらかじめ隣家と話をして伐採してもらう必要もあります。
将来的に相隣関係でトラブルが起こらないように事前に手を打っておくことが大切です。
まとめ
今回の記事では有料査定と無料査定の違いから始めて、無料査定における注意点やポイントなどについて広く解説させて頂きました。
査定前の準備から始まる無料査定は、記事をご覧いただければお分かりになる通り相応の手間がかかります。
しかし、今回の記事に書かれている注意事項やポイントを実行するだけで高額査定も期待できるようになり、見た目の印象も良くなることからも早期売却の期待が高まります。
少しでも取り入れて、高額査定を受ける一助にしてください。